HOME マーケ 「ライブエンタテイメントの市場規模は2000年と比べると2倍。その理由は?」(前編)ぴあ総研 共創マーケティング室室長 笹井裕子さん
2017.12.19

「ライブエンタテイメントの市場規模は2000年と比べると2倍。その理由は?」(前編)ぴあ総研 共創マーケティング室室長 笹井裕子さん

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2000年からライブ・エンタテインメント市場の統計調査を行っているぴあ総研。音楽や演劇の現在の市場規模や、エンタテインメント業界が置かれている状況はどのようなものなのか。ぴあ・共創マーケティング室長であり、ぴあ総研所長の笹井裕子氏(※以下敬称略)に話を伺った

 

ぴあ 共創マーケティング室 室長
ぴあ総研 所長
笹井裕子(ささい・ゆうこ)

マーケティングリサーチ会社を経て、1999年ぴあ入社。経営企画関連部署を経験し、02年の設立と同時にぴあ総研に所属。チケット販売や顧客データを含む、市場のデータ管理、分析に一貫して携わる。

 


 顧客の声を聞き、マーケティングに生かす

 

―「共創マーケティング室」とは、どのような部署なのでしょうか。

笹井:ぴあには、チケット販売に伴う販売実績や会員データの分析を十年来行っている専門チームがあるのですが、その分析結果は主に社内各部門の実績管理に活用されてきたものの、データが意思決定に十分活かしきれていなかったり、データが散逸したりしてしまうという課題を抱えていました。

しかも、まだまだ多くのデータが未活用のまま眠っている状態でしたので、ビッグデータ時代の本格到来に備え、自社のデータに限らず世の中に溢れる膨大なデータから、真にビジネスに有効な知見をいかに見出し活用していくのか、事業部門とデータ分析部門が手を携えて推進していくことが必要不可欠であるとの考えから、「共創マーケティング室」が2年前に立ち上がりました。

加えて、「共創」という言葉には、顧客理解を深め、新しい顧客体験価値を顧客と共に創造していこう、という思いも込められています。

―具体的にはどのようなことをされているのでしょう?

笹井: ライブ・エンタテインメントに関心のある方々へどのようなプロモーションやリコメンドをしていくと有効なのかを事業部門と一緒に研究しつつ、さらにライブ・エンタテインメントのより深い楽しみ方を伝えたり、セレンディピティ創出したりする試みの一つとして、当社の「ぴあプレミアム会員」を対象に、2~3カ月に一度試験的にイベントを開催してきました。

例えばアートの分野では、森美術館で開催された「六本木クロッシング2016展」をキュレーターと出展作家2名の解説を聞きながら一緒に鑑賞するイベントや、日本最大のアート見本市「アートフェア東京」を世界的に広く知られている“サラリーマン・コレクター”のナビゲートで巡るイベント。他の分野では、落語家さんに芸の継承について都内のお寺で語ってもらうトークイベントや、コンテンポラリーダンスの振付意図の解説を受けた後、実際に自分も踊ってみる体感イベントなど。

社内の人材も講師として登場することがあって、クラシックと演劇に精通する2人で「指揮者と演出家の『妙技』を知る」というテーマでクロストークショーを開催したりもしました。

これは、イベント参加者から当日の感想や日々考えていることなどを直接聞くことで新たな気づきを得たり、顧客との接点をチケット購入時以外にも広げ、関係性をより強固にするための方法を模索したりする試みの一つでもあります。

「プレミアム会員」の方はチケットの購入頻度が比較的高く、音楽、演劇、スポーツなど好きなジャンルの幹はほぼ決まっているのですが、アートやクラシックといったいわゆる芸術・教養系コンテンツにも興味の枝を広げている方がある程度のボリュームで存在しているんですよね。

ライブ・エンタテインメントの魅力を伝え誘うことで、その幹をどう太くできるか、どう枝を伸ばしてもらうか、かつては情報誌『ぴあ』がその役割を一部担っていたのかもしれませんが、時代や顧客のニーズにあったサービスのあり方を色々と模索しているところです。

―それをまた社内で共有されるんですよね。

笹井: チケット販売プロモーション部署のほか、興行やサービスを開発している部署、興行主催者へソリューションを提供している部署など、関連事業部と、データ分析結果を共有して、顧客像のイメージを深堀りして、どのような施策が有効かを一緒に話し合う場が増えてきました。データ分析者と事業担当者がそれぞれ一歩踏み込むことで、さまざまな“気付き”や データドリブンな意思決定につなげることを目指しています。

 

ライブ・エンタメの市場規模は2000年と比べると2倍。アニメ関連ライブが急伸

 

―ぴあ総研さんでは、ライブ・エンタテインメント市場の調査を2000年以降継続し、その調査結果を毎年1回『ライブ・エンタテインメント白書』(発行:ライブ・エンタテインメント調査委員会)にまとめられています。9月には、2016年1月~12月に開催された音楽・ステージ公演を対象とした最新の調査結果を公表されました。市場の全体傾向をお聞かせください。

笹井:ロングレンジでみると、ライブ・エンタテインメント市場(=音楽とステージのチケット販売の合計推計値)の活況が続いています。2000年と比べると市場規模は約2倍、特に音楽は東日本大震災以降、リアルなつながりや一体感を求める風潮を背景に右肩上がりで伸びてきました。

ここまで音楽が成長してきている理由の一つに、幕張メッセや横浜アリーナ、東京ドームのような大規模な会場での公演が増えたことが挙げられます。このような公演が一つあるかないかで、動員数がかなり左右されます。

大規模会場での公演はチケット価格も相対的に高いため全体の平均単価引き上げにつながり、動員数の拡大と単価上昇の相乗効果で、ここまで伸びたと言えます。あとは、野外フェスティバルの増加ですね。ライブ・エンタテインメント市場の成長制約要因の一つは会場です。

ホール・劇場などはそれぞれキャパシティが固定されているので、どうしても動員数の天井がある。その点、野外フェスであれば会場収容人数の制約がかなり緩和されますから。

供給サイドからみると、CDがかつてほど売れない時代になって、チケット収入や物販などが見込めるライブ活動に軸足を置くアーティストさんが増えているという背景もあります。

―長年実施してこられた調査結果のトレンドから見て、特に今年ならではの傾向はありましたか?

笹井:アニメやゲーム関連、声優イベントが急伸しました。アニメ関連ライブは、前年の148億円を大きく上回って、推計値247億円に達しました。同時に、2.5次元ミュージカルも堅調で、アニメやマンガ、ゲームを基にしたコンテンツが勢いを見せています。

後編へ続く

 

 

 

 

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