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2017.11.1

「書き起こすことで、面白い情報やアイディアを みんなでシェアしたかった」 雑誌サイゾーを経て独立、ログミー川原崎 晋裕さん

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カンファレンスやセミナー、記者会見、スピーチ、対談などの発言をすべて書き起こすメディア、ログミー。テキスト化(ログ)することで価値あるコンテンツを多くの人とシェアすることを目標としている。ログが広まることで、どのような新たなる価値が生まれるのか。代表の川原崎晋裕さんに話を聞いた。

※本記事は2015年9月発売のSynapseに掲載されたものです。

 

ログミー株式会社
代表取締役
川原崎 晋裕

ネット求人広告の営業を経て、2007年、サイゾーに入社。日刊サイゾーを立ち上げ、編集・運営・マネタイズを担当。その後、プロデューサーとして10以上のウェブメディアの立ち上げに携わる。2013年8月、フロックラボ(現・ログミー株式会社)を設立し、代表取締役に就任。ログミーを運営する他、外部のメディアコンサルティングにも携わる。

 


編集を否定した0.5次情報の発信。

 

― まず最初に『サイゾー』編集部に入られたきっかけは?

「昔から編集の仕事に憧れていて、好きだった『サイゾー』の編集長宛てに直電話をしてお願いしたら、たまたま雇ってもらえたんです。なので、丁稚奉公みたいな感じで入らせてもらいました。その後、入社してからわずか1カ月でウェブメディアの日刊サイゾーを立ち上げることに。

当時はまだ多くの紙媒体があまりウェブに力を入れていなくて、ウェブは敵だ、という風潮だったんです。編集者も雑誌の『サイゾー』がやりたいという人がほとんど。でもそういう人に対して当時の編集長で現社長の揖斐憲さんは『雑誌にできてウェブにできないことってある?』っていう質問をいつもするんです。これがみんなけっこう答えに詰まるんですよ。揖斐さんは長年、紙媒体に携わってこられたのにそんなことを言うんだ、と印象的でしたね」

 

― 日刊サイゾーはウェブメディアのなかでもユニークな存在でしたよね。

「当初は雑誌のこぼれネタが中心でした。当時のウェブには2ちゃんねるをはじめ、玉石混淆の情報が存在していて、マスコミが報じない部分を伝えることをよしとする認識がありました。そんななか『サイゾー』のコンテンツもマスコミの裏を読むというもので、相性がよかったんですね。それで爆発的にアクセスが伸びたんだと思います」

 

― その後、10以上のウェブ媒体を立ち上げられていますが、編集者ではなくプロデューサーへと立ち位置を変えられた理由を教えてください。

「これも揖斐さんの言葉なんですが、入社してすぐ『これからは編集者として生きていかなければダメだ』と言われたんです。『テクニックや知識を身につけるのも大事だけど、編集はそういったものではなく生き方なんだ』と。確かに『編集とは生き方』という視点で周囲を見ると、みんなコンテンツをつくることに命を懸けている。

時間やお金よりも、良いコンテンツをつくる方が優先順位が高いんです。でも、僕は取材にタレントが2~3時間遅れてきたりするだけで、性格的にどうしても非効率だと感じてしまうんです。でも編集者は面白いものができるなら、そこは効率とか関係ない。自分には向いていないなと気付いて、プロデューサーになろうと思いました」

 

― その後独立し、2013年にログミーを立ち上げられますが、そのきっかけは?

「動画やイベント、社内セミナーなどにあふれている面白い情報・アイディアを書き起こすことでシェアしたかったんです。動画を全部見るのは大変だし、イベントにも足を運ばないとその情報を知ることができない。特にイベントなんて、企画に1カ月もかけたり、人を呼んでディレクションしたりと、すごくパワーがかかっているのに、1~2時間で打ち上げ花火のように終わるのはもったいない。社内セミナーも同じです。書き起こせば、必ず面白いものになると思いました」

 

― では、当初はイベントの書き起こしから始めたんですか?

「初期はニコニコ生放送やIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)の書き起こしが多かったですね。常に著作権の問題がついて回るので、絶対に怒られない、または喜んでくれそうなところを選んでいました。GREEの田中良和さんやGMOの熊谷正寿さんなど、有名な起業家の方が登壇した回の記事は注目度が高かったですね」

 

― 現在はIVSとはどのような関係になっているのでしょうか?

「主催者の方は知名度が上がって参加者も増えたと喜んでくださっていて、公式メディアパートナーという形になりました。今では約400の記事をアップしています。でも、実は登壇者の方には嫌がられることも多くて。発言が書き起こされて残ってしまうと、矛盾や間違いなどがあった時に困るからだと思います。

我々も揚げ足取りをしたいわけじゃないので、公開前に原稿をお見せして、問題のありそうな箇所は言い回しを変えたり、カットしてもらっています。ブラックなジョークだったりとか(笑)。そこに気を遣って登壇時に面白いことをしゃべれなくなってしまうと本末転倒ですからね」

 

― 記者会見などは、ほぼそのまま掲載されていますよね?

「基本的に構成を変えたり、部分的に削ったりなどはしていません。ただ、ある程度意味が分かる程度に整文は行っています」

 

― できるだけ手を加えないことには、どのようなこだわりがあるのでしょうか?

「通信社が伝える一次情報には必ず編集が入りますが、ログミーはすべてを伝えます。一次情報よりも前の情報にリーチできるのがログミーの裏テーマ。いわば、0・5次情報みたいなイメージですね。ある意味、編集の否定というか。今は、書き起こすことで動画を見なくて済むとか、自分のペースで読めるといった部分の価値が前面に出ていますが、実は報道的な価値も追求しているんです」

 

― 「編集の否定」とは、なかなか刺激的な言葉ですね。

「あえて編集をしないメディアというのも面白いなと思っています。とはいえ、掲載するネタの取捨選択や読んでもらうためのタイトル付け、提携企業とのリレーションという意味では、結果的に編集しているという見方もできるんですけどね」

 

― ネタ選びという意味で、記憶に残っている記者会見などはありますか?

「野々村議員の号泣会見はスゴかったです。100万PVを超えていたと思います。泣きながらしゃべっていたんで、ほとんど言葉になっていないのですが、嗚咽を擬音にして『ヴァー』とか『ヒィェー』とかすべて書き起こしたんです(笑)。そこが面白くて広まったんでしょう」

 

― では、ログミーの可能性を感じられた書き起こしは?

「最近やっていて面白いなと思ったのは『東京ときめきチャンネル』の書き起こしです。街角の女の子に『好きな男性の仕草は?』みたいなテーマで5~10分くらいインタビューをした動画を掲載しているサイトなのですが、ログミーの真面目なイメージを崩してくれるのではないかと期待しています。

僕はもともと真面目なことや、いわゆる意識高い系といわれることをやりたいわけではないんです。追求しているのは、ログの可能性。記者会見や報道の全文を残しておくことで、後に検証ができたり、矛盾を見つけることができたりと、便利な使い道があると思っているんです。そういう意味では、書き起こしにこだわらず、Togetterのようにツイートを集めるのもログだし、Facebookのチャットもログだと考えています」

 

 書き起こすことで、面白い情報やアイディアをみんなでシェアしたかった。

 

テレビやラジオこそ書き起こしをやるべき。

 

― これからのログミーが進む方向として考えていることはありますか?

「テレビやラジオの書き起こしはやってみたいですね。今、ウェブメディアがテレビ番組の発言を拾って記事にして、PVをたくさん稼いでいます。でも、これって本来はテレビ局がやるべきことなんですよね。コンテンツ保有者が、自らそのコンテンツを基に別のコンテンツを作り出せば、ひとつの経済圏が生み出される。独占という人もいるかもしれませんが、それはそれで正しい姿だと思います」

 

― テレビやラジオ以外ではいかがですか?

「例えば、知り合いの経営者やウェブの世界の有名人に10分間、決まったテーマで話してもらって、それを書き起こすのも面白そうだなと考えています。ブログやメルマガを書くのは大変で続かないことも多いので、書く代わりに話してもらえればいいかなと。あと、ログルという投稿型のサイトも最近稼働し始めました。

編集部ではリーチできない、追い切れない地方講演などの記録を残していくためには協力者が必要なので、CGM化したいと考えているんです。一般の方々などいろんな人にログを投稿してもらって、みんなで世の中を便利に、面白くしていけたらいいなと思っています。

ログの段落ごとにコメントを付けたりシェアできるので、引用された箇所を目立たせることも、どこを読めばいいかすぐに分かります。それに記事全体ではなく、話のどの部分に人が反応しているのかといったデータも取れる。そこにも、まだ見ぬログの可能性を感じますね」

 

― 課金など、マネタイズについてはどうお考えですか?

「今はあまりマネタイズを意識していません。課金についても今の十倍くらいの規模になってから考えようと思っています。僕のサービスの思想は、ログは使うものだということ。Wikipediaみたいなものです。ログミーの全文を使って記者が再取材してコンテンツをつくる。そんな世界をつくりたいと考えています。なので、今のところ課金などせずに全公開でいきたいですね」

 

― 最後に、メディア全体の未来についてお聞かせください。

「イメージは、コンテンツ自体がどんどん裸になっていく感じです。昔は雑誌のなかにコンテンツがびしっと張り付いていて、コピー不可能だからそこから動かなかった。でもネット時代になって、それがコピペされて増殖するようになりました。例えば、現在ログミーはソーシャルからの流入が4割、キュレーションサイトからの閲覧が4割、検索とdirectが残りの2割なんです。

これまで、キュレーションサイトにはコンテンツを取られるという感覚もあったのですが、どこで見られてもコンテンツを見てもらえているということに変わりはないと考えるようになりました。

これからは自社サイト上に限らず、どんな経路でもコンテンツをたくさん見てもらえて、そのコンテンツをつくった人やサービスに評価が蓄積されていくという風に変わってくるでしょう。それがマネタイズにもつながっていくと思っています」

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