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2017.11.1

ラテ兼営局「南海放送」の「もぎたてテレビ」ローカル探訪

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※本記事は2014年12月発売のSynapseに掲載されたものです。

 

1953 年にラジオ南海として開局した南海放送は、AM放送とテレビ放送を行うラテ兼営局。今年で放送24年目を迎えるご長寿番組、『もぎたてテレビ』は“愛媛のいいとこ探し”がコンセプトのローカル情報番組(毎週日曜日11:45〜12:50)

 

地方で話題になっているご当地番組の現場を訪ねるこの連載。今回は、南海放送の『もぎたてテレビ』を訪ねました!

 

これまでの放送回数は、1100回超!なんとも息の長い『もぎたてテレビ』は、メインMCの2人が毎週交代で愛媛県内の市町村やイベントに足を運び、その魅力を紹介する情報番組。特徴的なのは、番組内で地元民からのクチコミ情報を頼りに進行していくという取材方法である点。

「地元の方の口から『あそこが面白いよ』と実際に言っていただいた内容で紹介していくことを大事にしています。直接的なクチコミだからこその思わぬ出会いや発見も多いんです。そこが視聴者の方にも楽しんでいただけてるのかなと思います」(メインMC・寺尾英子さん)

10月からメインMCに抜擢された白石紘一アナウンサーも、「街に出てみて、愛媛の人たちの温かさをあらためて感じました。寺尾さんのように、住民の方と“対話”しながら取材できるようになりたいですね」と話す。 地道かつ丹念な取材で発見した情報が、『もぎたてテレビ』の枠を超えて発展した例も。

県内の過疎集落に1軒だけ残った老夫婦が、60年かけて1本のしだれ桜を育てているというエピソードを元に、スピンアウト番組『さくらさくら』を制作。老夫婦の生活と四季折々の自然を表現したこの番組は、2013年の連盟賞テレビエンターテインメント部門の優秀賞を受賞した。

こうした高クオリティの番組を生み出す秘訣は、丁寧な編集にある。取材を担当したディレクターが本編より少し長めに編集したものを、別のディレクターが再編集して仕上げを行うという過程を経る。客観的な視点を加えることで、普遍性が増し、視聴者に伝わりやすい番組ができるというわけだ。

番組は取材VTR中心で構成し、スタジオ部分の分量は少ない。しかし、視聴者と同じ時間を共有するために生放送にこだわり、災害時にはその情報を挟むこともある。「今後は“1丁目”や“1㎞”など、市町村よりもっと狭い範囲の取材に挑戦してみたいです。人との出会いやつながりを、より深く感じてもらえる番組ができたらと思います」(寺尾さん)

視聴率も好調で今期、番組平均18%超の回も。また、番組販売にも力を入れており、現在シンガポールなど国外でも放映されている。

 

「できない」は禁句。面白そうな企画はなんでもまず挑戦!

 

報道制作局 制作部
宇都宮宏明さん

1996 年に入社後、11年間『もぎたてテレビ』のディレクターを担当。

報道記者を経て、現在は『もぎたてテレビ』のディレクターとプロデューサーを兼務。

「僕が育った南予地方も、もっと紹介していきたいですね」

 


息の長い番組を手がける秘訣とは?宇都宮プロデューサー兼ディレクターの本音に迫る!

 

「愛媛をもっと知ってもらえたら」と、宇都宮D行きつけの居酒屋『くるみ』にお呼ばれ。制作の裏側も教えてくださーい!「毎週金曜の午後イチに、自分も含めた5人のDと両MCが企画会議をしています。各Dが自身の担当放送回の企画の卵を持ってくるんです。その卵に対して、各スタッフがアイデアをどんどん出し合う。

20年以上続いている番組だから、皆県内のことは知っていて、アイデアには困りません。次は街に足を運んで事前リサーチをする。そこで7〜8割まで持っていければOK。残りの2〜3割は現場で起きていることを生かします。もしも最初に想定した8割より面白いことが現場で起きれば8割を捨て、現場の2割を大事にします。

“台本通りの番組ほどつまらないものはない”とずっと教わってきましたからね」 ほかに大事にしてることは?「月並みだけど、チャレンジ精神を持ち続けることかな。ウチの会社はトップが『愛媛マラソンを6時間生放送しよう』と言うような破天荒な会社( 笑)。でも現場も『できない』とは言わない。

トップと現場の双方にチャレンジ精神が根付いてる。結果的に、愛媛マラソンの6時間生放送もすごく反響がありました。『もぎたてテレビ』も、チャレンジしていきますよ!」

 

ラテ兼営局ならではの新たな試みとローカル局が生き残る術を社長自らが語る!

 

代表取締役社長
田中和彦さん

1977 年入社。ラジオ局長などを経て、今年7 月に現職に就任。

ラジオ畑出身で、自ら脚本を書いたラジオドラマ『風の男〜BUZAEMON 〜』が、2014 年の連盟賞ラジオエンターテインメント部門で全国最優秀を獲得。

 


 

FM補完中継局の認可を受け、全国でもいち早くAMとFMの同時放送に着手している南海放送。12月1日にFM放送を開始した。「当社にはラジオがあるからこそ、県民との距離感を縮めることができていると認識しているので、この数年、ラジオが生き残る道を真剣に考えてきました。

補完中継局の開局自体は災害対策ですが、先々FMの音質の良さを表現できるような踏み込んだ番組をどうつくっていくのか、じわじわと考えていきたい。新しいFMステーションのお手本になるような番組をつくっていきたいですね」 ラジオ・テレビ・ネットのすべてをやるメディア情報センターという部署を設置し、クロスメディア戦略も積極的だ。

「私はラジオ出身の人間ですが、ラジオ単独で生き残れるとは思っていません。じゃあネット活用だ! となるけれど、上流にテレビ・ラジオがあって、下流にあるネットに番組を流せば、はいOKというわけでもない。この3媒体が互いの良さを引き出し合えるような手法・コンテンツを開発しなければいけない。

今は新たな芽を模索している段階ですが、ラジオ60年・テレビ55 年の歴史と共にやってきた当社が、今3本目の矢をつくろうとしているのです」 キーになるのは営業だという。「3媒体を絡めたクロスメディアも単につくるだけではダメで、新しい売り方の提案が必要になる。だから、営業が要になるのです。

当社は『制作力の南海』と他局から言われますが、私は営業もいいと思う。営業と制作がリスペクトし合う関係を築けているのがいい。お互い新しい企画を持ってきて、『まずはやってみよう』というマインドが営業・制作の両方にある。だから3本目の矢もできると思います」 制作比率はどうしていくのだろうか?「今後、当社は自社制作比率をもっと上げていきます。

STV(札幌テレビ放送)さんみたいに、地震があった時、NHKじゃなくてSTVをつけるくらいまで地域からの信頼を得られるようにならないと。当社はまだまだ。だからもっとつくっていくんです。そして、小粒でもピリリと辛い、プライドあるローカル局を目指したいですね」

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