HOME マーケ 営業を科学するマーケティングで、日本の商習慣に変革を起こす~ベルフェイス株式会社 マーケティンググループ マネージャー 近内健晃さん~
2020.3.2

営業を科学するマーケティングで、日本の商習慣に変革を起こす~ベルフェイス株式会社 マーケティンググループ マネージャー 近内健晃さん~

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ベルフェイス株式会社 マーケティンググループ マネージャー 近内 健晃さん

 

営業に特化したWeb会議システム『bellFace』を開発・提供するベルフェイス(株)は、照英さんを起用したタクシー広告などで一躍その名を知らしめた。しかし、営業先を訪問する従来の商習慣を根本から覆すサービスの普及と、売上につながるマーケティングを実現するためには、緻密な戦略と仕組みづくりが必要だった。あらゆる立場からマーケティングに関わってきたキャリアを持つ近内氏は、自身の経験と情熱を武器に、新しい未来を切り拓く! 


さまざまな経験で身についた、マーケティングの力

 

─ベルフェイス入社前のご経歴をお聞かせください。

私は社内でも転職歴が多い人間の一人で、ベルフェイスが5社目なんです。キャリアのスタートは総合人材会社です。最初は新卒や第二新卒採用の広告営業をしながら、制作物のディレクションにも携わっていました。1社目は自分にとっての営業の原体験になりました。

2社目は、インターネット広告専業の代理店です。ターゲットは、B to BのIT製品やサービスを持っているお客様、例えばIT系のベンダーやSIer(システムインテグレーター)の方々でした。ネット広告や顧客情報を活用したデジタル施策、そして展示会などのオフライン施策を横断して総合提案をしていました。

最初の2社では、“広告”というマーケティングに関係のある仕事ではありますが、クライアントを外部の立場から営業兼ディレクターという立場でサポートするキャリアを積みました。

 

─3社目では立場が変わりましたか?

はい。3社目では、経営指導・人材育成教育などを行う事業会社に転職しました。広告代理店の立場では、お客様の本質的な課題に踏み込めないもどかしさを感じていた部分があり、もっと「課題解決のためにマーケティングをどう活かすか」という視点で関わりたいと希望していました。「これは事業会社のマーケターになるしかない!」と、キャリアチェンジを決断しました。

最初はマーケティングとセールスを兼務するオールラウンダーとして動いていました。顧客情報を活用したメールマーケティングやセミナー運営が中心でしたが、新規事業立ち上げの責任者、社内コンサルに近いような形で各部署のマーケティングを支援する部署も経験しました。

 

─かなり広範囲にわたる業務で、ご苦労もあったのでは?

最も頭を悩ませたのは、競合との差別化を図るためのリブランディングや、自社より何倍もリソースがある競合とやり合っていく戦略立案やそれを実行するための仕組みづくりでした。そのときはマーケティングからセールスまで、ほとんど一人でやっていましたからね。

4社目では中国系の外資に転職し、日本法人のマーケティング責任者を1年間やりました。

 

─また少し毛色が違いますが、なぜそちらに行こうと思われたのですか?

主な理由は二つあります。一つは、当時その企業はマーケティング組織が確立されておらず、ゼロからの立ち上げにチャレンジできることが大きな魅力だったこと。
もう一つは、これから間違いなく中国市場は無視できない存在になっていくはずなので、中国市場の攻略法や、彼らのことをもっと学びたいと思ったことです。中国の方々と一緒に働いて、それらを肌で感じながら自分のキャリアに活かしていきたいと考えたのです。

 

─実際に中国の企業で働いてみて、どのようなことを感じましたか?

仕事の進め方のギャップを感じることや、日本市場の攻め方で意見が真っ二つに分かれるようなこともありました。カルチャーショックも多く、グローバルで働くには「異文化コミュニケーションをどう乗り越えるか」が最も重要なことのひとつだと痛感しましたね。

 

 

「営業を科学する」に共感

 

─さて、5社目でベルフェイスに入社されるわけですが、その動機や当時のお気持ちをお聞かせください。

4社目の外資系企業を選んだ時と同様に「仕組みづくりをゼロからやりたい」という気持ちがありました。入社当時のベルフェイスの社員数は40人くらいだったので、ゼロから立ち上げて急拡大させていくプロセスに貢献できますし、さらにその先もう一段階、二段階と事業を拡大していくためのマーケティング活動にも携われる。マーケターとしてのやりがいは充分。「こんなチャンスはなかなかないぞ!」と思いましたね。

また、日本ではマーケティングというと「リードの獲得」にフォーカスしている会社が多いのですが、私は常々「マーケティング=商い」だと考えていました。リードの獲得だけではなくて、それをどのように確実な売上につなげるか。そのための仕組みづくりや体制をどう作り上げていくか。
そのようなことを重要視している会社で、マーケターとしてチャレンジしたかったんです。弊社社長の中島と話をしたとき、「この会社には自分の求めているフィールドがある!」と感じました。

 

─マーケティングに対する考え方が一致していたんですね。

弊社の目指すところに「営業を科学する」という重要なテーマがあるのですが、私もそこに非常に共感しています。いかにマーケティングで科学してリードの獲得や育成を行い、再現性のある打ち手や仕組みを作れたとしても、そこから先の受注に至るまでのラスト1マイルはブラックボックスなんですよ。
日本の企業はここを何とかしないと、営業が俗人化したままでは組織の営業力が上がりにくい。実際の売上や成長につなげることは難しくなるのではないかと感じてきていました。これは、私自身が営業やマーケティングに携わるなかで抱いていた課題でした。

弊社が開発・提供している営業に特化したWeb会議システム『bellFace』は、まさにその課題を解決するソリューションだったんです。その仕組みをマーケターとして拡げていけることは、この上ない魅力でしたね。マーケティングの方針はもちろん、プロダクトまで自分の求めていたものと合致したのは、とても幸せなことだと思います。

 

─入社から間もなく社内表彰されたと伺いました。

入社は2018年9月ですが、ひと月の準備期間を経て正式にチームを立ち上げ、10月から本格的にマーケティング活動を開始しました。翌11月にオーナーシップ賞を受賞し、2019年3月には下半期MVPを獲得しました。入社するタイミングで、既に「こういう仕組み・体制を作れば、おそらくいけるだろう」というイメージは見えていたので、それを1~2ヶ月で急速に整えていったような状況でしたね。

 

営業の在り方を変えるために使ったのは、主に交通広告

 

─マーケティング戦略を立てる際、特に注力したことをお聞かせください。

ベルフェイス最大の競合でもある「営業=訪問が当たり前」という、昔ながらの商習慣をどう変えていくか…ですね。訪問営業を全否定するわけではありませんが、「オンラインで完結できる商談はオンラインでやるほうがいい」という文脈で提案しています。
ただ、日本の商習慣では、それが受け入れられにくいという現実が間違いなくあるので、そこをどう乗り越えていくか、そのためにCMをどう活用していくかということに重点を置きました。

 

─まだ成長過程にある企業にとって、CM活用は並大抵の決断ではなかったのでは?

私たちの直接のお客様である各社営業の方々に『bellFace』を受け入れてもらっても、その先にいる彼らのお客様が抵抗を示したら意味がない。そこで、CMを用いて世間にしっかり認知していただき、「オンライン商談は当たり前なのだ」という世界観を作り出そうとしたんです。
これは会社として一つのチャレンジでした。しかしそれを実現しない限りは、インサイドセールスという新しい領域が普及することはないと考えていました。

弊社は「カスタマーサクセス」という考え方を大切にしています。単に『bellFace』を売るのではなく、弊社のユーザーが『bellFace』を使って自社のビジネスを成功させることが大事だと考えているんです。そして、成功したユーザーの口コミによって『bellFace』がさらに拡がっていく。
その相乗効果をおこすためにも「世間への認知」と言うプロセスが非常に重要なので、初動で「CMを使って日本の商習慣を変える」という選択をしました。

 

─かなりのコストをかけてCMを打つことに、ためらいはなかったのでしょうか?

やはり財務に与えるインパクトは大きいので、「どう予算を使うか」というところは慎重に、だけど大胆に動くようにしていましたね。最初はテレビよりも低コストで、なおかつ弊社のターゲットとなる営業責任者クラスに直接アプローチできるタクシー広告や、移動中の営業パーソンをターゲットにしたトレインチャンネルを中心にスモールテストを行いました。その結果を踏まえて、途中からはタクシー広告を中心に露出を増やしていきました。

 

─タクシー広告の活用に不安はありませんでしたか?

確かに当時は他の媒体に比べるとマイナーだったので、今のようにB to BのCMが流れることもほとんどありませんでした。でも営業責任者クラスの方々はタクシーを使う機会も多いじゃないですか。なおかつ個室なので確実にメッセージを届けることができる。
それを考えると、実績はあまり多くないとはいえ、やっぱりそこが一番いいのではないかという結論に至ったんです。最初は日本交通1社からスモールテストを行い、反響が上々だったので拡大していきました。

 

─そして、トレインチャンネルやタクシー広告などの交通広告から、テレビCMに拡げたんですね。

タクシー広告等を一通り打った後に、どれくらい効果がでるのかを見るために試したような感じでしたね。テレビCMについては、弊社のターゲット層の視聴が期待できる『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)に一点集中。この番組を選んだのは、同じようにターゲットにピンポイントでアプローチしているタクシー広告とのパフォーマンスを比較したかったからです。

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