HOME マーケ 調査人 経営に組織と戦術はどう関わる?「ビジネスマンはなぜ、サッカーにマネジメントを学びたがる?」 Synapse編集部 組織 経営 戦術
2017.12.6

調査人 経営に組織と戦術はどう関わる?「ビジネスマンはなぜ、サッカーにマネジメントを学びたがる?」 Synapse編集部 組織 経営 戦術

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※本記事は2014年6月発売のSynapse vol.2「逆襲のバラエティー」に掲載されたものです。

 

ブラジルW杯で盛り上がるサッカー界。戦略・戦術を大いに語るだけでなく、自らのビジネスに当てはめる。そんな人、見かけませんか?

日本代表の5大会連続ワールドカップ出場で、大いに盛り上がりを見せている日本サッカー界。平成25年の統計では小中高校生のサッカー競技人口が野球を抜き、スポーツ全体で1位となった(編集部調べ)。

書店を覗いてみればサッカーの関連書籍は多い。なかでも目につくのは、サッカーとマネジメントを結びつける書籍類だ。確かにサッカーにはその戦術をビジネスになぞらえて”語りたがる“ファンが多いように思える。飲みの席などで、サッカーの戦術を例えにマネジメントを語る同僚や上司、皆さんの職場にもいないだろうか? サッカーには、ビジネスマンになにか”語らせたがる“魅力があるのかもしれない。

サッカーをはじめ、各種スポーツを放映している東京・渋谷のスポーツバー『MǀSPO』店長の足立恭介さんは、「特にヨーロッパリーグの試合を放送していると、戦術を分析するビジネスマンは多いです。日本代表戦となるとイベント色が濃いですが、最近では戦術やプレー、本田圭佑選手、香川真司選手といった有名選手の動きについて語り合うことを楽しんでいるファンが多くなっていると感じますね」という。

同時に、ファンはサッカーを語るうえでの情報源を欲しているようだ。スポーツ各種のデータを収集・分析し、メディアへ提供する『データスタジアム』では2012年から、サッカーのより詳細なデータを提供するサイト「Foot Ball LAB」を展開中だ。「近年では一般のファンの方からもデータに関するお問い合わせが増え、関心が高まってきているという実感があります」(広報担当者)

また、そのデータについても、「『ボール支配率』や『シュート決定率』などわかりやすいものから、『敵陣でのパス成功率』や『時間帯別得失点』といった複数の要素を組み合わせた複雑なデータの需要が高まってきています」(同担当者)。これらの深掘り化ニーズに応えるデータの充実が、”語りたがる“ビジネスマンの出現に寄与しているのかもしれない。

そもそも日本には”スポーツを語る文化“が根付いていると、早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦教授は分析する。「日本では『(テレビで)見る、(ラジオで)聞く、(新聞や雑誌で)読む』というスポーツ文化が昔から発達しており、大正時代にはすでに『アサヒスポーツ』という専門誌も誕生しています。ただ、近年では世界で活躍する選手に学びたがっているようです」

実際に、長谷部誠の『心を整える。』、長友佑都の『日本男児』など、世界で戦うサッカー選手が出す著作は話題を集めている。これは選手個人個人がイタリア・イギリス・ドイツなど、どの国でもプレーする国を選べるサッカーの自由さ・多様さが、ビジネスチャンスがあればどの国にでも進出していく日本人サラリーマンの環境と類似しているのかもしれない。そして、選手個人の生き方に共感して終わりではない。サッカーには、会社の組織運営面でも日本企業のビジネス環境との類似性があるようだ。

原田教授は続ける。 「”常にボールが動いている“サッカーは、ボールをキープしているプレーヤー以外も、さまざまな動きをしています。そこが現在の複雑化しているビジネスシーンとの親和性が高いのかもしれません。さらに『コーチング』などのサッカー用語が浸透してきており、自分が監督となってロールプレイしやすい環境になっているのではないでしょうか」

常に選手全員が連動して動いている点、そして途中でプレーを止めることができないという点において、サッカーの戦略・戦術の組み立て方には、より企業の組織運営に近いものがあるのだろう。一度試合が始まってしまえば、監督がプレーの一つひとつを指示することはできない。チーム全体で方針・戦術の共有を徹底し、試合では各選手が自らの判断で試合展開に応じて最適なプレーを選択、実行していく。

現代のビジネス環境でも、柔軟かつスピーディに変化へ対応をするため、方針や戦術を一度決めたら、あとは現場にいる部下へ極力権限を委譲し、各現場で判断させる必要がある。こうした自律型の組織・チームづくりの象徴であるサッカーに、ビジネスマンがマネジメントを学びたくなるのは必然なのかもしれない。

 


 

サッカーの名監督からビジネスやマネジメントを学べる主な書籍(編集部調べ)

 

01. Jリーグサッカー監督プロフェッショナルの思考法(城福 浩/カンゼン)

チームを動かす「ロジカルな思考法」を城福監督独自の視点で紐解く。

 

02.  名将への挑戦状~世界サッカー監督論~(ヘスス・スアレス/東邦出版)

ベンゲル、モウリーニョら名監督13人の監督像を独自の切り口で分析。

 

03.  グアルディオラのサッカー哲学(フアン・カルロス・クベイロ、レオノール・ガジャルド/実業之日本社)

選手、監督として成績を残すグアルディオラの言葉と、そのサッカー哲学。

 

04. 世界一流のサッカー監督から学ぶマネジメント(ピーター・クライルガート、ダニエル・ソレン、 ヘンリック・ソレンセン/クロスメディア・パブリッシング)

経営者がサッカー監督から学んでおきたい資質10 項目を実例と共に解説。

 

05. 世界王者のリーダー論 スペインサッカーが重視するキャプテンの存在(ルイス ビジャレホ(著)、Luis Villarejo(原著)/ベースボールマガジン社)

グアルディオラ、シャビ、トーレスらの証言から、スペインの強さに迫る。

 

06. モウリーニョのリーダー論 世界最強チームの束ね方(ルイス・フローレンス/実業之日本社)

名将のメンタリティー、哲学、強さの秘密を本人や選手の証言で明かす。

 

07. ザ・マネージャー名将が明かす成功の極意(マイク・カーソン/ソフトバンク・クリエイティブ)

ファーガソンやベンゲル、モウリーニョら名監督のリーダーシップ論。

 

08. サッカー名監督超一流の思考(児玉光雄/東邦出版)

ザッケローニはじめ5人の名監督の思考から、リーダーシップを学ぶ。

 

09. 必ず結果を出す!サッカー名監督のすごい言葉(桑原晃弥/PHP研究所)

世界的なサッカーの名将15人の名言と、彼らのマネジメントの極意を解説。

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