HOME マーケ 【TV2020】オカルト的な“1%の真実味”に人は集まる~株式会社たきびファクトリー代表 寺井広樹さん~
2020.5.26

【TV2020】オカルト的な“1%の真実味”に人は集まる~株式会社たきびファクトリー代表 寺井広樹さん~

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株式会社たきびファクトリー代表 寺井広樹さん


寺井さんは「涙活」「離婚式」など、メディアからも注目される企画を次々と生み出すプランナーです。しかし、自身はテレビやネットをほとんど観ないというライフスタイルを続け、あくまで自分が興味を持てるものを突き詰めている。そんな独自のスタンスを貫く寺井さんには、テレビやネットの現在の姿はどう映るのでしょうか?多くの人の心を惹きつけるプランナーの感性に迫ります。


株式会社たきびファクトリー代表、文筆家 寺井広樹(てらい ひろき)さん

日本初の”離婚式プランナー”として国内外のメディアから注目を集め、これまで600組以上の離婚式をプロデュース。涙を流すことで心のデトックスを図る「涙活」を発案、銚子電鉄とタッグを組んで企画した「お化け屋敷電車」「まずい棒」が話題に。世界中の文房具コーナーの“試し書き”を集めるコレクターとしても知られる。
『企画はひっくり返すだけ!』(CCCメディアハウス)、『「試し書き」から見えた世界』(ごま書房新社)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『電車を止めるな!』(PHP研究所)など約60冊の著書を執筆。


面白いのは、人間の“素”

 

─普段はテレビやネットをほとんど観ないとお聞きしましたが、情報源はどこから?

ライフワークとして収集している文房具コーナーの「試し書き」の紙は情報を知る手がかりの一つになっています。

 

―“試し書き”を集め始めたきっかけは?

2007年に海外を放浪していた時にたまたま立ち寄ったベルギーの文房具店で出会った「試し書き」に一目ぼれしたのがきっかけです。試し書きには言葉にならない魂の叫び、人の“素”が現れるのでまさに“無意識のアート”なんです。書いた人の年齢、性別、職業などを想像するのも楽しいです。答え合わせはできないんですけど(笑)。

 

―寺井さんにとって試し書きは“娯楽”でもあるんですね。でも、テレビやネットの情報がないと人との会話で困ることはありませんか?

知ったかぶりをして話を合わせます(笑)。試し書きには、いま流行っていることや話題の人物が書かれる傾向があります。

壇蜜さんや、ピコ太郎さんの「ペンパイナッポーアッポーペン」も、試し書きから知りました。「壇蜜」はしばらく食べ物の名前だと思っていたんですけど、電車の中吊り広告で艶めかしい女性がいて「この人のことだったんだ!」って(笑)。「ペンパイナッポーアッポーペン」に至っては、ペンの名前だと思っていましたからね。調べたら、パンチパーマにド派手なヒョウ柄服の男性がリズミカルに歌っていらして想像を超えていました。

 

―試し書きに世相なども反映されているんですね。

「あいうえお」、地名やグルグル模様などが多いですが、「消費税増税」や「令和」、震災時の「絆」などその時代を映す鏡でもあります。

画数の多い難しい漢字を書きたくなるようで、大河ドラマ『麒麟がくる』の影響か「麒麟」や欅坂46の「欅」など、難しい字を書いて人に自慢したいという気持ちの表れでしょうか。「剛力彩芽」さんもよくお見掛けします。リアルタイムではありませんが、少し遅れて世の中の動向を知ることができるんです。

 

 

試し書きからわかる人物像

 

─書き手の人物像もおわかりになるとのこと、どのようなところに特徴が表れるんでしょうか?

たとえば『アナと雪の女王』の影響で雪ダルマを3段で描く人が多くなり、うんこマークでも年齢がだいたいわかります(笑)。アラレちゃん世代はトグロを巻いたうんこを描けますが20代の人はもっとリアルなうんこを描きます。最近では小さいお子さんで『うんこドリル』のキャラを描く人が出てきて、私はこれを「うんこの第6世代」と呼んでいます。

店によってお客さんの年齢層や属性が違っていて、書かれるワードに特徴があるのも面白いですよ。学生街の文具店だと「墾田永年私財法」をよく見かけます(笑)。

若い女性が書いたようなポップな書き込みが並ぶ中に突如、「金目鯛姿煮」という厳めしい筆文字が覆い被さったのを見ると、SNSに似た風情を感じますね。自撮り女子の映える投稿に、空気の読めないオッサンがコメントしてタイムラインを荒らしてしまう、みたいな(笑)。

 

─若い女性の間でアートっぽい文字が流行っているとも聞いたことがあります。

確かに見かけますね。文字も“インスタ映え”を狙う時代なのかもしれません。

試し書きの内容を見ても、最近はSNS上のように、承認欲求の強い人たちが増えているんです。「遠距離恋愛中の彼氏からプレゼントもらった」みたいな、“リア充”ぶった試し書きとか。「いいね!」を求めるような内容が散見されて、無意識で書く時代から人目を意識した試し書きに時代が変わってきたのかなと感じます。シロップがかかったホットケーキが描いてあると、誰かが撮ってくれるのを狙ってるんじゃないか…なんて思ったりも。

 

─地域でも特徴がありますか?

大阪では他人が書いた線の上におかまいなしに無造作に線が書いてあったりします。「なんでやねん!」とツッコミを入れたかと思うと、何かを言い切ったあとに「知らんけど」と自分で小さく書き足してあったり。

余談ですが、二子玉川エリアの文房具店は厳しくて、どこの店も試し書きの紙を譲ってくれないんですよ。試し書き譲渡禁止令でも発令されているのでしょうか(笑)。名前や住所の一部など個人情報を書く人もいるから難しいんでしょうかね。

 

─試し書き、奥が深いですね。

集め始めてから十数年なので、まだまだです。江戸時代でも試し書きはあったと思うのに、それが手に入らないのが悔しくて。平成から令和まではクリアしているので今後も精進して、いつか歴史的文献として発表できたらと。目下、ルーヴル美術館で試し書きの展示会が開催できると嬉しいです。

 

フランスで入手したクレヨンで描かれた試し書き。
ルーヴルでの展示会が実現した暁には額装して飾りたいと寺井氏は語る。

 

ひっくり返し技で、企画が生まれる

 

─試し書き以外にも、離婚式、涙活、まずい棒など、寺井さんが手がける企画は次々に話題になります。企画や発想はどこから生まれるのでしょうか?

常にあるのは「逆の発想」です。たとえば結婚式→離婚式。新郎新婦→旧郎旧婦、仲人→裂人(さこうど)とか。ひっくり返すだけなので非常にシンプルです。

実は、「涙活」のアイデアは「離婚式」から生まれました。離婚式では旧郎様が涙を流すケースが多いのですが、出会ってから別れるまでのスライドショーをご覧になられて、泣いたあとにスッキリしたお顔に切り替わるのを見たとき、「涙には何か凄いパワーがあるのかな?」と思ったんです。調べてみたら、涙1粒流しただけでストレス解消が1週間続くと書いてあり、私も思いっきり泣いてみたら本当にスッキリしたので「これはいいな!」と。

 

─涙活や離婚式はテレビでも大々的に取り上げられましたよね。

離婚式を始めたころは最初、メディアに向けて101通手紙を出しましたが涙活を始めてからは売り込みをしなくなりましたね。私のFacebookなどに書いた情報をマスコミの方が見つけて、取材依頼をいただく流れが多いです。

離婚式より涙活のほうが話題になったのも、より多くの人に当てはまり真似しやすいからだと思います。「涙活」という言葉は、神楽坂を自転車漕いでる時に思いついて、その翌日に商標登録申請をしました。何か企画を思いついたときに「これくらいの人たちがつぶやいてくれるかも?」と想像するのが楽しいです。なかなか予想通りにはいきませんが、その通りになると嬉しいですね。

 

─自身のやっていることを世間に知ってほしいという願望は?

自分のやってることを広く世間に知ってもらいたいとか、ちょっとおこがましくて何だか恥ずかしいですね・・・離婚式や涙活に関してはビジネスですので「こういったサービスや事業を広めなくては」という思いもありましたが、試し書きはあくまで趣味ですし、「もしメディアで紹介されて、みんな無意識に書いてくれなくなったり、ほかの人も試し書きを集めるようになったらどうしよう」という懸念があったので、最初は取材をすべてお断りしていました。でも、そんな心配はまったく要らなかった。試し書きを集める人なんていなかったので(笑)。

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