HOME 新規事業 360動画配信を手掛ける!「強力なコンテンツを持つところと一緒に、VRを盛り上げたい。」360Channel 中島健登さん
2017.11.21

360動画配信を手掛ける!「強力なコンテンツを持つところと一緒に、VRを盛り上げたい。」360Channel 中島健登さん

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<未来予想図 2020>

急成長を続けるゲーム会社が、VRゲームの次に目をつけたのは360度ぐるりと見渡せる映像。VR映像コンテンツのプラットフォーマーとして、オリジナル番組制作から配信まで手がける先には、どのような未来を見据えているのか。キーパーソンに聞いた。

360Channel
経営企画/プロデューサー 中島健登

コロプラ社長室、新規事業立ち上げを経て、『360Channel』の事業責任者に抜擢される。プロデューサーとして番組制作からサービス運営、バックオフィスまでカバー。インプットを重視し、誰よりも多くのVRコンテンツを見ていると自負する。


目指したのは高品質な番組を配信する 360度映像専門のテレビ局

 

──『360Channel』を開設された経緯から教えてください。

「親会社であるコロプラが、VRに取り組み始めたのは2014年です。まずは本業であるゲームからスタートして、次に映像にも手を広げました。背景にはハリウッドがVRコンテンツに本腰を入れ始めたり、20年にはVRコンテンツの市場規模が、3兆円になるというシンクタンクの予測データなどもありますが、何より社長の馬場(注:コロプラ社長、馬場功淳氏)自身が、実際にVRを体験してそのすごさを痛感し、ゲームはもちろん、映像でも何かやってみようと動いたのが一番のきっかけです。360度映像の配信プラットフォームを立ち上げるにあたっては、CGM(Consumer Generated Media)という方向性もありましたが、360度映像はまだ、誰もが簡単に撮って公開できる段階にありません。ネット上ではユーザーの投稿映像、ライブ配信などが流行ってはいますが、まずはプロが作った高品質な映像を配信して、多くの人にVRを体験してもらえる、テレビ局のようなプラットフォームを作ろうと考え、15年の11月に会社を作り、翌年5月にローンチしました」

──コロプラの一部門ではなく、最初から別会社として立ち上げたのはなぜですか?

「大きく2つあります。1つは〝360度映像専門のテレビ局〟を作るにあたって、ゲーム会社の印象が強いコロプラとのブランディングを分けるため。もう1つは、意思決定を早くするためです。コロプラ自体ももちろん、意思決定はかなり早いですが、それよりさらに早くなければ、ローンチから1年あまりで、とてもここまでは来られなかったと思います。会社の設立時はプロデューサーの僕とエンジニアやデザイナーなど、わずか数名でのスタートで、コンテンツ制作については、本当にゼロからの出発でした。そもそもコロプラはゲーム会社なので、社内に映像制作の経験者がいなかったんです。中途採用で制作会社のディレクター経験者など、経験豊富なプロに参加してもらって、徐々に体制を整えてきたという感じです。当時、360度映像についてはまだ市場もゼロ、競合もゼロ、情報もほぼゼロという状態で、制作のノウハウを持っている人間など、誰もいませんでした。機材も最近でこそようやく揃ってきましたが、当時はそうしたこともすべて手探りで、映像が制作できる体制が整うまでは本当に大変でした」

──従来の映像と360度映像では、コンテンツの作り方などに、どのような違いがあるのでしょうか?

「企画、撮影、編集という制作のフローは基本的に同じですが、編集工程では、複数のレンズで捉えた映像を切れ目なくつなぐ〝スティッチ〟と呼ばれる作業が必要で、これは360度映像独特のものです。スティッチには処理能力の高いパソコンと専門的な技術が必須で、社内にある2つの編集室で、スティッチャーと呼ばれる専門のスタッフがこの作業を担当しています。ほかにも360度映像ならではのノウハウはたくさんあります。たとえば〝VR酔い〟への配慮が必要ということもその1つです。『360Channel』は今、Webやスマートフォンアプリのほか、PlayStation®VRでも見られる国内では唯一の360度映像のプラットフォームとなっているのですが(2017年4月12日現在)、ヘッドマウントディスプレイでの試聴は、慣れてしまうと何時間でも見ていられるのですが、慣れていないと疲れるので、映像の尺は5~10分と短めにする必要があり、その短い尺の中でストーリーを組み立てなければいけない。またカメラを固定して定点で撮る、早い動きを避ける、被写体に近づきすぎないなど、カメラワークでもVR酔いが起きないような工夫が必要です」

 

 

 

 

 

──『360Channel』では幅広いジャンルの映像が配信されていますが、どのようなジャンルが人気なのか、360度映像ならではの傾向はありますか?

「これはPlayStation®VRに対応して、ヘッドマウントディスプレイで試聴するユーザーが増えてから顕著になってきたのですが、VRコンテンツとしてはやはり、トラベルや風景、季節ごとの景色といった疑似体験ができるものがよく見られているようです。あとは360度というよりインターネット配信との相性がいい、ペット動画のような思わず見てしまうもの。それから、セクシー度の高いコンテンツですね。また、没入感があるので、ホラーもVRとは相性が良いジャンルといえます」

 

今映像に関わっているところは、これからVRを避けては通れないはず

 

──サービスのローンチから1年を経て、今、どのような手応えを感じていますか?

「2年前は、まだYouTubeがようやく360度移る映像に対応したかどうかというくらいのタイミングで、まさに市場ゼロといった状態からのスタートでした。それから考えれば、今はDMMさんやフジテレビさんでもコンテンツの配信が始まっていますし、この1年でVRもかなり盛り上がってきたなという実感はありますね。我々のコンテンツも、ローンチ時には22タイトルしかありませんでしたが、今では300タイトルを超えるところまできています。一方でVRユーザー、つまり視聴者の広がりという面は、まだまだこれからだとも思っています。スマートフォンをセットするだけで使えるヘッドマウントディスプレイなど、ハードウェアが普及してもっと手軽にVRを体験してもらえる機会が増えないと、そもそものパイが広がっていかない。ただ、市場は確実に盛り上がってきているし、テレビ局などでも積極的に取り組みを始めています。今何らかの形で映像に関わっているところは、これからVRを避けては通れないはずなので、業界全体でこの機運を押し上げていければと感じています」

 

 

──現在は動画への広告挿入や課金はされていませんが、『360Channel』はビジネスとして、どのようにマネタイズしていく計画でしょうか?

「『360Channel』では360度映像の配信と、コンテンツ制作の両方を手がけていますが、現状では、コンテンツの制作受託がビジネスの中心になっています。今配信されている全日空の『ANA機体工場見学』や、トラベルジャンルにある地方自治体のコンテンツなどがそうですね。今は質の高い360度映像が作れる人材が圧倒的に不足しています。だから、制作受託を行いながら経験を積みつつ、目指すところはあくまでも、360度映像のプラットフォーマーになることです。将来的には配信部分だけにフォーカスして、そこでお金を得ていきたいと考えています」

──映像配信のプラットフォーマーとして専業できるようになるのは、いつ頃になりそうですか?

「少なくてもあと2~3年はかかるでしょうね。逆に言えばVRに関してはこの2~3年が勝負になると思います。プロデューサーとして、これまで多くの360度映像を見てきたと自負していますが、正直なところ、まだこれだと思える映像には出会えていません。今年中にこれはおもしろいと思えるものが出なければ厳しいと思いますし、そんな映像を自分の手で出したい、出さなければいけないと思っています」

 

強力なコンテンツを持つところを積極的に巻き込んでいきたい

 

──VRをさらに広げるためには、何が必要だと思われますか? どんなきっかけがあれば、いわゆるキャズムを超えられるのでしょうか?

「1つにはやはり、ブームを牽引するコンテンツを出すこと。たとえばものすごく強力なIP(知的財産)をVR化することでしょうね。でもそれには相応のコストもかかるし、コストをかける分だけリスクも大きくなります。また、せっかく力のあるコンテンツを送り出しても、視聴者がそれをVRで楽しめる環境が整っていなければ、一時的に盛り上がるだけで終わってしまう危険性があり、その意味では出すタイミングがとても重要です。今はまだ、そんな大勝負に出るときではないですが、テレビ局など強力なIPを持つところを、積極的に巻き込んでいきたいということは常に思っています」

──今年3月の放送のタイミングにあわせて配信された、TBS『SASUKE2017』のVRコンテンツもそうした思いから実現したものですか?

「そうですね、こちらからお声がけさせてもらって、SASUKEのステージが体験できるVRを共同で制作・配信しました。ほかには共同テレビさんとも、アンタッチャブル柴田さんとふなっしーさんが出演する動物番組を共同制作しています。一緒にやることで先方も360度映像制作のノウハウが蓄積できるので、どちらにもメリットがあるコラボレーションだと思いますし、制作会社さんには今後、360度映像の配信プラットフォームとしても活用いただきたいので、いろいろな面で協力関係を築いていきたいですね」

──タレントのチュートリアルさんを起用したコンテンツもありますが、あれもどこかの制作会社さんとのコラボレーションですか?

「いえ、あれは完全自社制作のオリジナル番組なんです。見て頂けるとわかりますが、手前味噌ながらかなり本格的なバラエティ番組になっていて、スタッフもマネージャーさんまで含めると数十人規模と大所帯。つまり、それなりの制作予算を割いて取り組んでいます。今後360度映像の配信プラットフォームとして他との差別化を図っていくためにも、ここでしか見られないオリジナルのコンテンツを持っていることはとても大切だと考えているので、そこは敢えてコストをかけて取り組んでいます」

 

VRはこの2~3年が勝負になる。

今年中にこれはおもしろいと思えるコンテンツを出さなければいけない

グループで100億円規模を投資 それだけVRに可能性を感じている

 

──今後プロデューサーとして、作ってみたいVRコンテンツはありますか?

「360度映像の配信は、現状の電波ではできなくて、インターネットだからできること。インターネットならインタラクティブな仕掛けなど、将来はもっといろんなことができるようになるはずです。たとえばストーリーがゲーム的に分岐して、ユーザーの選択によって異なる結末が見られるようなものとか。360度の映像でももちろん、ドラマやホラーなどいろいろなものをVR化してみたいと思っていますが、一方でそんな風に映像の枠に収まらないものにも挑戦できたらという気持ちもあります。VRの世界では、やろうと思えばコミュニケーションツールも作れるし、世界の為替情報が360度見渡せるようなものだって作れる。コロプラグループとしてもそういった可能性にも注目していて、実はゲームや映像のほかにも、ソフトウェアからハードウェアまで、VRに関連する様々な分野に100億円規模の投資を行っています。グループとしてVRの将来に、それだけ大きな可能性を感じているということです」

──VRはこれから2~3年が勝負という言葉もありましたが、2020年、VRをとりまく環境はどうなっていると想像されますか?

「ヘッドマウントディスプレイを使ってVRが体験できるような環境は、今よりも確実に広がっているでしょうね。今でも漫画喫茶などでVRを体験できるところが増えてきていますが、そういう体験スポットもまだまだ増えるでしょうし、価格的にもハードウェアがもっと安価になって、手軽に手にとれるものになっているでしょうね。希望もありますが。また、都心だけでなく、地方にも広がって、どこにいてもオリンピック会場を疑似体験することができるようになっていたら楽しいですよね。そうなったときに、『360Channel』は360度映像では一番のプラットフォームだと言われる存在でありたいです」

 

 

 

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