HOME メディア おいしいDMP 「クライアントや広告主という呼び方ではない、パートナーへ」 小学館 青木岳さん
2017.11.2

おいしいDMP 「クライアントや広告主という呼び方ではない、パートナーへ」 小学館 青木岳さん

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※本記事は2017年9月発売のSynapseに掲載されたものです

小学館の『コトバDMP』は、ユーザーが好んで接触する記事中のキーワード分析から、嗜好性を判別し、記事広告に反映する。小学館が有する幅広いWEBメディアを統合的に活用し、他社との差別化を図っている。

 

小学館 〈 出版社 〉
青木 岳

小学館 デジタル事業局
デジタルメディア室 課長代理
『ビッグコミック』『ビッグコミックスピリッツ』といったコミック誌、幼児誌などの編集を経てデジタル、システム部門へ。コーポレートサイト構築、業務システムなどのプロジェクトマネージャーを歴任し、『コトバDMP』の導入を牽引。

 


幅広い読者層を抱える複数のWEBメディアを、いかにしてマネタイズするか

 

──青木さんがDMPに携わるようになった経緯を教えてください。

「今年で入社20年目なのですが、最初の12年間は紙の雑誌の編集者として、直近の8年間はデジタルに関わることをやってきました。デジタルはWEBメディアの編集からスタートして、コーポレートサイトのリニューアルを担当したのを契機に、プロジェクトマネージャー的な仕事が増え、以降、業務システムの企画から出版物の試し読みができるソリューション開発、アプリの開発などに携わりながら今日に至っています。

この経歴からもわかるように、実は僕、広告・マーケティング分野の経験がないんです。一方で、様々なWEBメディアに携わる中で、アドテクにはずっと触れてきていて、そういった経緯で今回、DMP導入のプロジェクトを担当することになりました」

 

──御社のDMP導入の背景には、どのような狙いがあったのでしょうか?

「きっかけは3年ほど前に、上司からある課題をもらったことでした。弊社は『CanCam』から『DIME』に至るまで、実に多くのWEBメディアを抱えています。各メディアのターゲットも、老若男女にわたっていて非常に幅広い。おかげさまで全体では、月間2・2億PV、5000万UUを誇りますが、その一方で、個々のメディアはまだ規模が大きくないものもあります。

また、すべてのメディアでマネタイズができているかというと、そうではありませんでした。でもこれだけ幅広いユーザーを抱えながら、うまくマネタイズできていないのはもったいない。そこで点ではなく面、枠ではなく人、個々のメディアではなくデジタルメディア全体、という視点でユーザーにアプローチができないかというのが、与えられた課題でした。

試行錯誤の末、複数メディアのユーザーデータをまとめてプールして活用するということは、DMPを導入したら解決できそうだなと思ったのが始まりです。
実はその頃すでに、DMPを導入したもののうまく成果を出せていない企業が多いという話も、多方面から漏れ聞こえてきていました。

原因は様々。しかし気になったのは、ある程度以上にスケールさせようとすると、部門間の谷に落ちてしまうということ。たとえば、店頭の施策とオンラインの施策の部署が分かれていて、オンラインの部門で始めたものが店頭のほうに使えない、とか。または部門ごとに異なるDMPを採用してしまい、結果として全社同時にデータが生かせないなど。

同様の問題はすでに弊社の中にも起きつつあったので、DMPを成功させるにはまず、部門を越えたチームを作ることが大切だと思い、そこから着手したいと上司に相談しました。縦割りの事業局を越えて、全社的にデジタルメディアが連携できる体制作りと並行して、開発を進めてきたのが『コトバDMP』です」

 

記事本文中に含まれるキーワードを抽出・分析できるしくみを導入

 

──『コトバDMP』はどのような特長を持ったDMPなのでしょうか?

「システム自体は弊社が独自に開発したものではなく、DMP等のプロバイダーが提供している、複数のツールを組み合わせて使用しているのですが、それを1つのパッケージサービスとして『コトバDMP』という名前をつけて呼んでいます。

特に『Delta Cube』というキーワードを解析してセグメントを作成・分析するツールが特徴的なポイントになっていて、これを使って各WEBメディアの記事本文中に含まれるキーワードを解析し、ユーザーごとの興味・関心事を把握して、コンテンツ開発に活用できるようにしています」

 

──どのDMPツールを組み合わせるのかといった話は、どのように決めていったのですか?

「初めからイメージとして持っていたのは、自社WEBメディア内の全情報に対してユーザーがどのように接触しているかという、ファーストパーティーデータをプールすること。さらに、そのデータとサードパーティーが持つユーザー属性などがわかるDMPのデータとを、あわせて見る必要があること。

そして自社のメディア群をあたかも1つのサイトのように振る舞わせて、たとえば作成した記事広告を、複数のメディアのユーザーに横断的にあてられるようにするということです。これらのことをどうやって実装し、サービス化するか考えているときに、先ほど申し上げた記事本文内のテキストを抽出・解析ができるツールの話を聞きました。

そこから少しずつサービス化の要件を固めていって、テスト期間を経てどうにかローンチまでこぎ着けたという感じですね。記事ごとに付けられたタグから、どんな記事に接触したかわかるといったようなDMPはあると思いますが、『コトバDMP』は記事の本文中に含まれている単語に接触しているユーザーを、メディア横断で幅広く抽出することで、面白い発見を提供できるのが特長です」

 

ユーザーの情報接触傾向をクライアント向けのコンテンツ開発に生かす

 

──今後、『コトバDMP』をどのように活用していく予定ですか?

「我々は『コトバDMP』のデータを、まずは記事広告のコンテンツの企画開発に活用していきたいと考えています。たとえばサービスのローンチにあたって、テストマーケティングとしてやらせていただいた事例は、まず課題として20代後半?40代前半の女性をほぼ全方位でとりたいが、潜在層へどうアプローチを広げていいかわからないという課題をお持ちのブランドでした。

ブランドサイトに来ているユーザーを分析する際に、職業別での分析は見ていなかったので、それを弊社側のDMPを使って解析したところ、主婦層はとれているが、OL層はあまりとれていないことがわかったのです。そこで改めて、主婦層とOL層がそれぞれどういうキーワードが入った記事に接触しているか、情報の接触傾向の違いを調べました。

繰り返しになりますが、ここで単純にメイクというタグが付いている記事に触れたユーザーを調べるのではなく、メイクというキーワードが本文中に含まれる記事に触れたユーザーを調べられることで、より詳しい情報接触傾向を導き出せると考えています。

実際に調べてみたら、主婦とOLでは明らかな違いがあることがわかりました。たとえば主婦層はヘアスタイル、スキンケア、ファッション系のキーワードによく接触しているのに対し、OL層は料理、旅、ライフスタイル、外遊び系のキーワードに接触していて、まったく傾向が異なっていたのです。

目下の課題はOL層を取り込むことですから、『コトバDMP』のデータをもとに、料理、旅、ライフスタイル、外遊びといったキーワードにマッチしつつ、商品をアピールできるコンテンツを制作すれば、届けたいユーザー層に訴求できますよという提案ができました」

 

コトバDMPの概要

ユーザーの興味や関心を、自社メディアの記事の中に含まれる“コトバ”から解析し、広告主のマーケティング活動を支援する。複数のDMPツールを組み合わせて、独自のデータマーケティング基盤を構築している。

 

 

──その提案のコア部分を形にしてくれるのが『Delta Cube』というわけですね。でも汎用ツールということは、今後ほかのパブリッシャーに追随される可能性もあるのではないでしょうか?

「そうですね。他社が同じように記事中のキーワード解析をやり始めたら、確かにうちの優位性は薄まってしまうかもしれません。ただ僕は、弊社の強みは何よりもこの幅広いメディア群とユーザー層だろうと思っているので、そこはあまり心配してないんです。

我々が今最もやろうとしているのは、潜在層の掘り起こし。先ほどの例でいうと、ブランドサイトに行く手前の段階のユーザーを醸成して、ブランドサイトへ送客することですが、そこにこの幅広いメディア群とユーザー層が生きてくるはずです。

一方で、トータルでとれる層のカバレッジは広いものの、1つ1つのメディアでのユーザー数は、まだ規模が小さいという弱点もあります。ゆえに傾向値を見るにはよいのですが、セグメントを切って販売していくといった使い方をするには、まだ向いていないと思っています。先々はそういうこともやっていく必要があると思いますが、今はそれよりも、キーワードから得た傾向をコンテンツ開発に活用したほうがいいと思っています。

先ほどの事例では、実際に弊社の『美的.com』のサイトで、OL層に向けてライフスタイル提案をするような記事広告を作成したところ、通常よりも2・6倍のPVが出ました。さらに小学館のほかのメディアからも誘導をかけたら、通常の3・5倍くらいのPVになっています。

また実際にブランドサイトよりも、記事広告へのOL層の来訪比率を高められるという、うれしい結果が得られました。一方で来訪者にアンケート調査も行ったところ、OL層の認知が高くなった一方で、商品理解があまり深まっていないという課題も明らかになりました。こういうデータがとれるので、じゃあ次回はこうしましょうという提案ができます。『コトバDMP』を活用することで、潜在層を継続的に掘り起こしていけると考えています」

 

DMPを成功させるには部門間の谷を越えて連動できる組織作りが不可欠

 

 

クライアントの課題を解決して、新しい関係性を築いていきたい

 

──現時点で見えた課題があればお聞かせください。

「わかったのは、こうしたトライをするときに、弊社側はもちろんですが、クライアント側でも新たな調整が必要になってくるということ。たとえば今回のように、いつものアプローチとは違うコンテンツ開発をするとなれば、ブランドマネージャーにも理解を求める必要がありますし、KPIをどこに置くかも双方で考え直す必要があります。そういったクライアントや社内とも、これまでとは違う理解が必要だと思います」

 

──今後は多くのクライアントに間口を広げていくことになると思いますが、データの分析、活用はどのような体制で行っていくのでしょうか?

「まだ手探りのところも多くて、どんなスキルセットの人が何人必要かも案件をたくさん回してみないとわからないところはあるのですが、これまでのような広告セールスや広告メニューの提案とは違うスキルセットが必要になってくるのかなとは思っています。

よりマーケティングの知識に基づいた提案も必要になってくるでしょうし、ブランドサイトと弊社のDMPのデータを連携させる場合は、データを貯める時間も必要になる場合があります。そうなると、双方にとってより中長期的かつ継続的な取り組みにしていかないといけないかもしれません。これまでの記事広告の取り組み方とは変わってくるのかなと思っています」

 

──そういう意味では、御社内でもコンテンツを制作する編集サイドとの調整も必要ですね。

「はい。また編集以前に、クライアントの課題を解決するのにそもそもどの媒体がいいのかという、業務フローも発生します。編集部にも、キーワードの傾向を伝えてこういう記事を作ってほしいと要望を出す必要がある。今は、編集側も面白がってくれていますが、従来になかった業務フローが社内で馴染むかどうか、注視していく必要があると思います」

 

──これからこの『コトバDMP』を、どう育てていきたいか、思いがあれば聞かせてください。

「まずはクライアントの課題を解決できるものにしたい。それが結局、継続的なお付き合いにつながっていくと思います。クライアントと我々パブリッシャーは、これまで以上に緊密な、同じ方向を向いたパートナーとしてやっていけるといいのではないかと、個人的には思っています。

この『コトバDMP』に関しては、クライアントや広告主という呼び方でない、新しい関係性を築いていきたいと思っています。もちろんユーザーを惑わせないような公正な広告表記をしていくことは絶対の大前提なのですが、僕個人としてはコンテンツに取り組む姿勢を、広告と編集記事とで分ける必要はないと思っていて、

ブランドのストーリーをしっかり伝え、かつ読者が知りたかった、わかってよかったと思ってもらえるような記事広告ができれば最高です。さらに先々は『コトバDMP』の知見はWEBメディアだけでなく、紙の雑誌作りにも生かせるものだと考えており、そういう日が来るのが楽しみです」

 

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