HOME テレビ 「TV SideView」の機能をアップデートして開発! 私のつくり方「テレビの見方が変わる番組表付きリモコンアプリのつくり方」 Sony
2017.11.8

「TV SideView」の機能をアップデートして開発! 私のつくり方「テレビの見方が変わる番組表付きリモコンアプリのつくり方」 Sony

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その名は『Video & TV SideView』。2013 年1月にリリースされた時は、ソニーのテレビ、ブラビア®とブルーレイディスク™(BD)を操作できるシンプルな「番組表付きリモコン」アプリで、名前は『TV SideView』だった。それが少しずつアップデート。独自の録画予約ランキングやレコメン、どこででも録画番組が見られる機能など追加。アプリ誕生と進化の背景を、なぜ「Video」なのかを、制作に関わるソニーのみなさんに聞いた。

※本記事は2016年3月に発売されたSynapseに掲載されたものです。

Sony

中・木田哲朗さん。アプリの商品企画とビジネス戦略を統括。

左・赤川聰さん。デザイン、UX、ビジュアル面を含めたディレクションを担当。

右・武村知昭さん。アプリ自体と機能の開発を担当。

ちなみに好きなテレビ番組は『ブラタモリ』(木田さん)、『タモリ倶楽部』(赤川さん)、『歴史秘話ヒストリア』(武村さん)

 


 

共通リモコンアプリをつくる。

そもそもソニー製品のリモコンアプリは存在した。が、製品別にバラバラに開発されていたのだ。最初のミッションはそれをひとつにすること。

 

― どういう経緯で開発されたんですか?

木田「ソニーでは以前からリモコンになるアプリはつくっていました。ただ商品に紐づく開発で、テレビとBDレコーダーのチームがそれぞれでつくっていて。テレビとレコーダーで使い分けるなんてユーザー目線でナンセンスなので、ソニー共通のリモコンアプリをつくろうという話になりました」

 

― 開発コンセプトを教えてください。

武村「最初はセカンドスクリーン体験を手元に持ってこようというのがテーマでした」

木田「テレビは“テレビコンテンツを見るための機械”なので、できれば操作系のことはテレビ画面に出さず、手元で見られて、そのまんまリモコンとして使えるべきだと考えていました。だから、まずはリモコンと番組表のふたつの機能を持たせることにしたんです」

 

― 苦労された点は?

赤川「番組表ですね。まず、従来のテレビのEPGを手元で見せるのが、ともかく難しかったんです。表の横並びに何チャンネル分出すべきか、縦の時間軸は何時間分表示すると心地よいのか非常に難しいんです。しかも日本だけではなく、当社のハードウェアが販売されているエリアに対応したグローバル展開アプリなので、例えばアメリカ版はチャンネルが縦軸で時間帯が横軸になったりして……」

 

― チャンネル数が全然違いますもんね。

武村「それに日本とアメリカとヨーロッパでは信号のタグがそれぞれ違うので、アプリ上でその信号を同期して選局を行うところの開発が“ver 1・0”では最も大変でした」木田「また、同じ番組表でも国によって“ゴールデンタイム”と呼ばれている時間帯が違っていて。例えばドイツは午後8時15分からだったりするんですよ(笑)。そのあたりは一旦リリースしてから、現地のチームの協力も得て改善を重ねました」

 

― グローバルで、表示パターンはいくつあるのですか?

木田「表示は日米欧の3パターンで、67言語対応ですね」

 

― その後どのようなアップデートをしてきましたか?

赤川「デザイン的にはドロワー(機能一覧表示)を取り入れた点が大きいですね」

武村「最初は各機器に繋いだ時、その機器に対応する機能だけが表示されていたんですが、レコーダーとテレビを繋いだ時に全機能が一覧できるよう仕様を変えたんです」

木田「もうひとつ大きかったのは“見どころピックアップ”の開発ですね。“予約ランキング”“あなたへのおすすめ”“現在放送中”などのカテゴリーで番組が一覧できます。スマホって画面が小さく一覧性が低いので、決められた時間帯だけを表示する番組表だと、望みの番組を探すのが手間という声が届いていたんです」

赤川「トップページにおすすめ番組の画像を組み込み、時間に従って探すのではなく、世の中で人気があるものや自分の好きなものがひと目で見られるようにしようと考えたんです」

 

― “世の中で人気があるもの”はどういう基準ですか?

武村「ユーザーのみなさんが録画予約している数を集計したランキングで並べています」

 

ユーザーにコンテンツをおすすめする。

まず、テレビとB Dレコーダーの使いやすさをアップする使命をクリア。より面白く、よりたくさんテレビを見たくさせる、というステージへと進む。

 

― 録画予約はテレビ、BDレコーダー、アプリのどこからもできますよね。予約データは1カ所に集約されてますか?

木田「はい。全部同じサーバーで一元管理してます。そのデータをもとに予約ランキングとしてアプリに搭載しています。実は当初、テレビとBDレコーダーは別々のサーバーにデータ管理していたんですが、このアプリのリリース後、一元化した方が分かりやすいということで、そこも改善しました」

 

― それは大変そうですね。

木田「一元管理移行へのサーバー開発は大変でしたが、アプリは非常にスピーディーにアップデートできます。商品は年数回の発売サイクルですけど。アプリから得たアクションデータは、次世代のBDレコーダーに反映させるなど各開発チームと密に連絡を取り合っています」

 

― ユーザーの予約/視聴傾向からレコメンしてますよね?

赤川「ログインしていただくことで、それぞれの好みに合った番組が推薦される“あなたへのおすすめ”を提供しています」

武村「このアプリで番組表内の番組詳細を開いたり録画予約をしたり、各番組の詳細ページでブックマークボタンを押していただくと、お客様の好みを学習していきます」

木田「もともとBDレコーダーで“おまかせ・まる録”という機能があり、本体内で番組タイトルや出演者を分析しておすすめ番組を自動録画するということをしていたんですが、おすすめの機能の改善は、個別の機器の内部でやるよりサーバー側でやったほうがチューニングも容易ですし精度も高めやすいんです。今はアプリとテレビは同じ解析エンジンを使って同じロジックで分析しています」

 

― それはタイトル・出演者・ジャンルみたいなタグで?

「加えて、ある番組を見たり録画したりした人が、“他にこんな番組を見ています”という方式を組み合わせています。その組み合わせの配分については、おすすめしたものがどれだけクリックされたかを評価指標にして常に品質改善をしています」

 

― 社内横断で開発してきたことで生まれた新しいサービスや機能などはありますか?

木田「これはブラビアの商品企画チームと連携して開発し、先日搭載された機能なんですが、“テレビスタート通知”という機能があります。最新バージョンの『Video & TV Side View』が入ったスマホを持って家に帰り、ブラビアの近くに行くと、スマホ画面にTVの電源ボタンが表示され“ タップして電源を入れますか?”

っていうノーティフィケーションや、放送中の人気番組の通知がポンと表示されるんです。クリックすると即、そのテレビ番組が見られる。これはブラビアの商品企画のチームから出てきたアイデアなんです」

 

― テレビを見る機会が自然に増えていきそうですね。

木田「そうなんです。リビングの大型テレビだけでなく、とにかく隙間時間でもテレビを見る機会を増やしてほしいというのが、我々の思いです。“どの機器でも使える便利なリモコン”から始まったアプリでしたが、今は“テレビの視聴スタイルを変えよう”と。そのためにスマホの中にテレビを入れちゃおう、という考えが生まれました」

 

 

いつでもどこででもテレビを見られるように。

業界内ルールの整備に伴い、通信を活用したテレビ放送や録画番組のスマホ視聴が可能に!このアプリが標榜するのはいつでもどこでもテレビが見られる「TV ANYWHERE」。

 

― 外からもテレビが見られるようになりましたよね? 

武村「2014年春から外からどこでも視聴とリモート録画予約ができるようになりました。Wi‐Fiに繋げばパケット代も気にせず、出先でも、放送中の番組も録画も楽しめます」

 

― 録画した番組をB D レコーダーからスマホに転送して持ち出せますよね。ちなみに1時間番組で転送時間は?木田「約2分半です。サイズは1番組あたり約400MB」

 

― 局さんとメーカーさんとの取り決めはあるんですか?

木田「総務省のロードマップをもとに、放送事業者さん、通信事業者さん、我々メーカーなどでつくる『NexTV‐F(次世代放送推進フォーラム)』でルールの整備を進め、その動きをにらみつつ開発を始めたんです。それもあってリモート視聴のサービスに関しては家電業界初で提供できて、お客様のあいだでも話題になりました」

 

― 視聴者の声はどういう手段で吸い上げているのですか?

武村「アプリ利用ログの分析に加え、アプリストアの評価から、毎週、星ごとにレポートのかたちで届きます。それを内部でレビューして、良い点・悪い点をプライオリティをつけて対応するんです。あとは、定期的にアプリ上でアンケートも」

 

― レスはありますか?

武村「あります! アツいです(笑)。先日も、しばらくテレビを見てなかったという主婦の方が“このアプリのおかげで、たくさん見るようになりました”と。我々開発陣のすごいモチベーションになりますね(笑)」

 

― 予約ランキングのデータで、嗜好性の分析もされます?

木田「はい、しています。分析の結果の一例ですが、クリック数の多いドラマ・アニメに関しては、ひと手間かけてクールの変わり目に特集ページを組んで公開してます。そこからも予約できるようにしています」

武村「どういう機能が使われているかもログが出ているので、改善のために活用しています」

 

― テレビの新しい楽しみ方を提案していますね。

赤川「これまでスマホって“セカンドスクリーン”という位置づけだったのが、“TV ANYWHERE”に進化したと考えてるんです。家の中でも外でもどこでもテレビ視聴、録画予約。テレビに対する姿勢の大きな転換点だと思いますね」

武村「テレビをつけずに、これとBDレコーダーだけでテレビコンテンツを楽しんでる若い人もいるって聞きます」

木田「今後、見逃し配信の部分も広がるでしょう。それに加えてオンライン上にあるテレビ番組のビデオ、あるいはYouTube、ニコニコのアニメなんかもこのアプリの中で楽しんでいただく。スマホをユーザー視点でみれば、テレビ番組もその他のネット上のTVも大きな意味での“ビデオコンテンツ”であろうと。

そういう意味でアプリ名を『Video & TV Side View』に変えました。テレビやビデオコンテンツが、モバイル上で1カ所で見られるように。テレビの見方が変わるならば、そうした新しいライフスタイルにテレビを近づけるよう持っていければ、まだまだテレビはもっと見てもらえるようになるのではないかと思っています」

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