劇団四季とのタイアップも!いくつもの輪が重なってできる『ことりっぷ』の世界。 ブランド力を核に、その輪を広げていく。株式会社昭文社 冨田 暁史さん vol.2

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劇団四季とのタイアップも!いくつもの輪が重なってできる『ことりっぷ』の世界。 ブランド力を核に、その輪を広げていく。株式会社昭文社 冨田 暁史さん vol.2

株式会社昭文社 出版事業本部 出版制作事業部 デジタルプラットフォームグループ 冨田 暁史氏


前回の記事はこちら(vol.1)

作り手とユーザー、ユーザー同士をつなぐ『ことりっぷ』アプリ

―WEBサイト、雑誌と立ち上げて2015年にはスマホアプリ『ことりっぷ』をリリースされました。

ターゲットであるF1層にスマートフォンが浸透し、アプリにも親しめるようになってきた状況を見て、われわれもアプリをリリースすることにしました。

スマホアプリのリリースは2013年の時点で想定していたのですが、開発に時間がかかり、WEBの公開が先になりました。このアプリはわれわれがデイリーで記事を配信するメディア的な役割に加え、ユーザーが写真を投稿できる機能や、気に入った写真を投稿している人をフォローできる機能を備えていて、コミュニティアプリの性質が強いです。

―このアプリは、メディアにインスタグラムの要素が加わったようなつくりですね。

そうですね。われわれが配信している記事は「『ことりっぷ』の写真はこういうテイストですよ」というサンプルになっています。登録してもらったユーザーの皆さんに「こういう写真を撮ってみませんか?」というお手本ですね。だから、投稿されてくる写真にあまりブレがないんです。メディアで世界観を提示し見守ることで、コミュニティを保っていくという感じですね。

人が集うとコアな層もできていて、こちらが知らないスポットの写真が投稿されたりします。そういうのって、こちらがモノを作るときのヒントにもなるんですよね。われわれが配信する記事にコメントをつける機能はありませんが、写真を介してわれわれとユーザーさんをつなぐ役割を果たしてくれています。

―アプリやWEBから集まるデータは、今後いろいろと活用できるのではないでしょうか?

現在は、広告などの営業資料として活用しています。行動調査までは行っていないので、どんな活用方法があるのかといった検討は、この先の話になりそうです。現在は、デジタル分野での『ことりっぷ』をビジネスとして確立するフェーズにあると感じています。ここ5年、いろいろ実験や試行錯誤をしてきましたが、WEBを始めて5年という区切りを迎え、今後、ユーザーにどんなサービスを提供できるか検討する時期に来ていると感じています。



さまざまなタイアップを生むブランド力

―『ことりっぷ』のブランド力を背景に、自治体や企業とのタイアップにも積極的に取り組まれているそうですね。

自治体とのタイアップが多いですね。『ことりっぷ』が浸透するにつれ、自治体からお問い合わせをいただくようになり、タイアップ企画として『ことりっぷ』と同じ編集方針でその自治体のスポットを取り上げてフリーペーパーを制作する、といったお仕事につながっていきました。

自治体は、自分たちでパンフレットを出すよりも『ことりっぷ』というブランドを利用することで手に取ってもらえる可能性が高くなる、と『ことりっぷ』のブランド力に期待していただけているんだと思います。また、新聞などで「『ことりっぷ』とのタイアップ本が出ました!」と記事が出ると、ほかの自治体からも問い合わせのお声がかかったりするケースもあります。

われわれとしても、1冊のガイドブックとしては成立しないエリアでも、このようなタイアップのフリーペーパーなら作ることができます。結果として出版物の数が増えて『ことりっぷ』の世界が広がるわけですから、こちらとしてもありがたいですね。

―自治体以外では、どんな企業とのタイアップがありましたか?

電鉄会社さんともお付き合いさせていただいています。あと、ユニークなところでは劇団四季さんですね。劇団四季の会員向けに、『ウィキッド』の北海道公演と『キャッツ』の大阪公演のプロモーションをしたいということでご相談いただきました。ダイレクトメールに『ことりっぷ』とのタイアップ小冊子をつけて、劇の告知とともに劇場周辺のガイドを掲載しました。テキスタイルはウィキッド柄とキャッツ柄をデザインしたんです。

発送後早々に、会員の方がツイッターで「劇団四季からこんな冊子が送られてきた!」とアップされていました(笑)。当社に声をかけてこられた劇団四季さんの目の付け所がスゴイと感心しました。

そのほかに、腕時計やトラベルグッズ、靴や傘、豆乳飲料やお弁当など、さまざまな異業種の企業様とのコラボ商品も発売させていただきました。これからも「旅行」がキーワードの場でお手伝いができればと考えています。


リアルとデジタル、『ことりっぷ』を楽しめる取り組み

―2018年、10周年を迎えた『ことりっぷ』ですが、今後の展開についてお教えください。

11月3・4日に目黒で『ことりっぷ 旅するマルシェ』というイベントを開催することになっていて、今はその準備をしています。これまでガイドブックやマガジンに掲載させていただいたお店などにお声がけをし、昨今、盛んに行われているマルシェイベントをイメージしたものですね。『ことりっぷ』でこれまでに紹介した、全国各地のよいもの、かわいいものを購入いただけます。

これまで、行政の方にお声がけをいただくなどして、小さなイベントはちょこちょこ開催していたのですが、2日間の大きなイベントをやってみようということで企画しました。こうしたイベントをきっかけに、本やWEB以外のサービスを提供できればと考えています。

―楽しみですね。でも、コンテンツや書籍などを作るのとは別のパワーが必要ですね。

ちょっとドキドキしています(笑)。これまで『ことりっぷ』に携わるなかでタイアップをはじめとしていろんなお話をいただいてきました。そのなかで、イベントのような"リアル"なものを含めた、複合的な取り組みを希望されるクライアント様が徐々に増えているんです。今度のイベントは、どのくらいの規模なら自分たちで運営できるのかといった検証をしていく場でもあります。

―イベントのさらに先、なにかイメージされていることはありますか?

『ことりっぷ』を10年やってきたなかで、WEBも紙媒体も、そして今度開催するようなイベントもひとつのブランドで手がけることができる点がわれわれの強みと考えています。

われわれは書籍という実業がベースにあって、WEBメディアを無料で展開しています。課金制のWEBメディアをやるつもりはありません。日本では、情報にお金を払うという感覚がなかなか根付きにくいところがありますし、仮に当社が課金しても他メディアが無料ならそちらに流れてしまうでしょう。

われわれが目指すのは、集まっていただいている皆さんに、『ことりっぷ』の世界観を楽しんでいただけるようなサービスを提供すること。それがWEBであっても、リアルのイベントであっても、当社なら複合的に組み合わせて提供できると思います。



『ことりっぷ』の世界をつくる輪

―『ことりっぷ』の理想形を教えてください。

『ことりっぷ』には"日々の暮らしも小さな旅も一緒につながる"というテーマがありますが、「旅」という非日常と、スマホアプリやマルシェイベント、グッズといった日常のものがここまで地続きになることは想定していませんでした。これからも、日々の暮らしの延長にある自然体の旅を提案するスタイルを貫いていきたいですね。WEBやアプリで見た写真、あるいはマルシェなどのイベントをきっかけに、旅に出たいなと思っていただき、ガイドブックを買ってもらう。旅行先ではアプリで写真を投稿して...と循環するイメージです。

―日常のシーンにも、旅という非日常のシーンにも『ことりっぷ』が出てくるというイメージですね。

はい。書籍、WEB、雑誌といろんなアイテムのユーザー層の輪が少しずつ重なっていて、真ん中に全部持ってるよという層がある。いちばん色の濃い部分を広げていきたいですね。われわれは『ことりっぷ』として全てひとつのチームでやっているので、全体を俯瞰して見えるのが強みだと思います。

―これからも、『ことりっぷ』の世界はまだまだ広がりそうですね。今日はありがとうございました。

(了)



株式会社昭文社
出版事業本部 出版制作事業部 デジタルプラットフォームグループ

冨田 暁史(とみた あきふみ)

1998年に入社。『まっぷるネット』の運用、『まっぷるマガジン』の編集を経て、2013年より現職、ことりっぷ担当チーフとして『ことりっぷ』事業全般の業務に携わる。


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