HOME マーケ いくつもの輪が重なってできる『ことりっぷ』の世界。 ブランド力を核に、その輪を広げていく。株式会社昭文社 冨田 暁史さん vol.1
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2018.9.12

いくつもの輪が重なってできる『ことりっぷ』の世界。 ブランド力を核に、その輪を広げていく。株式会社昭文社 冨田 暁史さん vol.1

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株式会社昭文社 出版事業本部 出版制作事業部 デジタルプラットフォームグループ 冨田 暁史氏


和風のテキスタイルを大胆に取り入れた表紙、女性が持つカバンにすっぽり入るコンパクトな大きさ。およそ旅のガイドブックらしからぬ体裁の『ことりっぷ』は、2008年の誕生以来、20代~30代の働く女性を中心に絶大な支持を集め、2018年5月時点でシリーズ累計部数1600万部に到達しました。ガイドブックだけでなく、雑誌やWebサイト、アプリなど幅広く展開し、ファンを増やし続けています。

2018年は立ち上げからちょうど10年。『ことりっぷ』の躍進を支える冨田 暁史さんにお話を伺いました。

 

紙もデジタルも経験できた15年

―冨田さんは『ことりっぷ』に携わるまでは、どのようなお仕事をされていたのでしょうか?

私が昭文社に入社したのは1998年。入社後しばらくして、『まっぷるネット』というサイトの編集に携わっていました。当時、当社は旅行ガイドブックの事業で蓄積した情報をデータベース化し、コンテンツとして他社に提供する事業を行っていたのですが、そのショーケース的なサイトですね。その『まっぷるネット』では『お出かけ情報』というニュース配信を提供していて、現在の『ことりっぷ』のWEBで行っているデイリー記事配信の原型となるような、そんな取り組みでした。

その後、ガイドブック『まっぷるマガジン』の東京担当になり、雑誌・書籍の編集業務に10年弱従事しました。六本木ヒルズや丸ビル、表参道ヒルズ、東京スカイツリーができた頃ですね。東京が大きく変化していく時期だったので、いい経験ができたと思います。

―冨田さんは紙・デジタルの両方の編集を経験されたということですね。

はい。編集の仕事で両方を見られる人は、あまり多くないので、そういう意味でもいい経験を積ませていただいたと思っています。その後、一度デジタルの部署に移り、2013年から本格的に『ことりっぷ』に携わる流れになります。

 

女性が本当に欲しいガイドブック

 ―『ことりっぷ』の開発の経緯などを教えていただけますか?

私が『ことりっぷ』に携わったのは2013年からなのですが、誕生のきっかけは女性社員の「自分たちが本当に欲しいと思えるようなガイドブックを作りたい」という声でした。そこで、1000人の女性にリサーチしてみると「全世代向けのガイドブックは“いかにも”な体裁で重いし、持ち歩いてても恥ずかしい」「おのぼりさん感が合わない」「たくさんお店が載っているけど一泊二日程度の旅行なら、こんなに情報はいらない」という声が続々集まってきました。

そんな不満点をつぶしていく過程で、思い切ってターゲットを絞ろうということになり、「週末に一泊二日、または二泊三日程度の旅行に行く、働く女性」をターゲットに設定。従来のガイドブックは数を集めてユーザーに選択肢を与えるスタンスでしたが、『ことりっぷ』では、あらかじめセレクトして「『ことりっぷ』としてのオススメの情報はこれです」というかたちにしました。

紙質も柔らかくてめくりやすいものにすることで、本全体の重さは軽く、厚さは薄くすることが可能に。今までのガイドブックとページ数は変わりませんが、重さは半分から2/3ほどになっています。サイズは正方形に近いサイズにしており、女性が持つカバンからはみ出さないよう設計しています。

 

 

―『ことりっぷ』といえば、この和風のテキスタイルの表紙ですよね。

今、国内版で65タイトル(2018年9月現在)の『ことりっぷ』がありますが、表紙の柄はすべて異なります。これまで主要エリアについては2回全面改訂していますが、そのたびに柄を変えてきたのでざっと150種類、エリアに合わせた柄を作ってきました。

柄は「和」をイメージしています。『ことりっぷ』には「小さな旅」という意味を含ませているのですが、言葉の響きからは「古都」を連想させますよね、京都のような。そういったところから和のイメージにこだわっています。

『ことりっぷ』が誕生した頃は、ちょうど「丁寧な暮らし」とか「カフェ」「和ブーム」といったキーワードが話題になっていて、そうしたものを支持する女性の方に『ことりっぷ』も受け入れていただけたんだと思います。

ちなみに、『ことりっぷ』のテキスタイルは、当初から「いろんな柄を揃えてみたい」と思わせるようなコレクション性を想定して作っています。そのあたりも今までになかったタイプのガイドブックということでご好評いただいているわけです。

―『ことりっぷ』が誕生して5年目の2013年から冨田さんも関わるようになるんですよね。

もともと、ガイドブックには、情報を更新するメンテナンスが年1回、フルメンテナンスとよばれる情報の総入れ替えを3~4年に1回行っています。ただ、このようなスパンですと当然こぼれていく情報がありますし、新規のお店などもなかなかフォローしきれません。「タイムリーな情報がもっと欲しい」というユーザーからの声を受け『ことりっぷ』の出版タイミングの間を埋めるものとしてWEB、さらに同じ紙媒体でもガイドブックとは違う雑誌(季刊誌)の立ち上げを決めました。私が『ことりっぷ』に関わるようになったのは、このタイミングからですね。

 

 

『ことりっぷWEB』の始動

―WEBと雑誌の立ち上げを決めたということですが、まずはWEBからスタートされていますね。

WEBの開始が2013年、雑誌は翌年ですね。雑誌は立ち上げに時間がかかるので、WEBが先にスタートしました。ガイドブック『ことりっぷ』で拾い切れていない、デイリーな情報を補完するサービスですね。WEBでは、『ことりっぷ』の読者に合うようなイベント情報をはじめとした新規性のある記事を発信しています。

WEBは雑誌よりも準備にかかる期間は短いのですが、紙とは違って日々運用する大変さがあります。バックエンド、つまり記事の入力システムの簡便化がいかに重要か、今までの経験から認識していたので、WEBサイト入力システムの設計段階から携わってきました。ガイドブックで協力していただいている制作スタッフやライター、カメラマンが全国にいるのですが、WEBでも同じスタッフに関わってもらっています。

情報がつぎはぎのバイラルメディアとは違い、開始当初よりわれわれは一次メディアとして取材から執筆・撮影まで一貫して行っていて、1日2、3本の記事を公開するスタイルを取っています。紙と同様、関係者と内容をすり合わせた上で、原稿を確認してから公開する。そのタイミングがずれるとすぐにスケジュールが狂ってしまうので気を使いますね。立ち上げ時は、まずはPVを上げようということで走り始めました。

―スタッフさんのなかにはCMSからの入力経験がない人もいらっしゃったのでは?

そうですね。ですので、マニュアルを作ったり、当社に来ていただいたり、あるいはスタッフが出向いたりして使い方をレクチャーしました。ただ20年前、10年前と比較すると、『ことりっぷWEB』を始めた時点では、ブログツールがネット上で浸透していたので、ブラウザから入力することに対する敷居は低くなっていたように思います。

現在、当社の内部スタッフが10名ほど、外部の協力会社・ライターさん40名ほどで運営しています。

―WEBのコンテンツがカバーしているエリアは、どのような範囲なのでしょうか?

現在は首都圏が多いですね。人口比率的に考えると、どうしてもそうなってしまいますね。まずは都市部の情報を増やし、徐々に都市から週末に旅行をするエリアにまで情報の範囲を広げたいという思いはありますが。

もちろん、ユーザーさんは都市部の方ばかりではないし、観光地に住んでおられる方が『ことりっぷ』の読者だったりするので、そういう方にも楽しんでもらえるようなコンテンツをより充実させる必要はあると感じています。

―5年間、WEBを運営してみて、印象に残っていることなどありますか?

反響の大きさに驚いたことがありました。WEBを始めてから1年ほど経った頃、WEBで取り上げた個人経営のお店さんの情報がツイッターで拡散し、それがテレビの目に留まって取り上げられたことから大行列になったことがありました。店が回せないぐらいの事態になったというお話を聞き、びっくりしました。

またそのような反響でWEBに想定外のアクセス数が来ると、サーバーが落ちたりもしまして(笑)。そこまでは想定していませんでしたね。

―WEBについて、今後どのような展開をお考えですか?

『ことりっぷWEB』には、約50社のローカルメディアのパートナーさんがいらっしゃいます。われわれと比べるとやはり地元のことは、ローカルメディアの方々の方が詳しい。一方、われわれの視点、セレクトをローカルメディアの方々にも共有することで、新たな地元の観光資源やヒトの発見につながる。『ことりっぷWEB』を通じて、全国各地でローカル誌を興しておられるメディアさんと紐づけができれば、『ことりっぷ』の読者さんともフィットするのではないかと考えています。ここのところ、東京や都市部から地元に戻ってメディアを立ち上げるといった動きもありますしね。

 

『ことりっぷ』の世界観を伝える季刊誌

―WEBスタートの翌年、2014年から『ことりっぷマガジン』を年4回発刊されていますね。

雑誌は「『ことりっぷ』はこんなことを考えながら作っていますよ」という作り手のメッセージ、つまり『ことりっぷ』の世界観を広く知っていただくことが目的のひとつです。そのためか、旅行に行かず、ガイドブックも買わないといったお客様にも雑誌についてはご購入いただいています。

もうひとつの目的が、季節ごとの旅行を提案すること。ガイドブックですと、ひとつの物件に割けるページ数は長くても1~2ページですが、雑誌なら6ページ、8ページかけてひとつの物件やテーマを掘り下げることが可能です。贅沢ですよね?(笑)

 

 

―『ことりっぷマガジン』では、写真も大きく見せることができますね。

もともと『ことりっぷ』は写真の評判が良く、大判型にしたのも写真をより大きく見せたいという思いもありました。

ガイドブック的ではない視点の記事や写真を意識しています。記事なら、ストーリー性を重視しコラム的なものを盛り込んで、世界観を掘り下げています。写真なら、たとえば軽井沢で花見にフォーカスした”軽井沢のイメージらしくない“カットを載せることで意外性を見せていたり、今でいうSNS映えにも共通するような感じですね。また、書籍版の『ことりっぷ』では載せ切れていないエリアの特集なども組んでいます。

実用性重視のガイドブックでは難しかった視点で切り込めるのが、雑誌の魅力でしょう。読者層が10代~70代ととても幅が広く、巻末につけているアンケートはがきの返信も多くて、フリーメッセージ欄もイラストつきで送ってくださったり、「入院しているけれど、治ったら旅行に行きます」と書いてくださったり、こちらもほっこりしますね。とはいえ、ガイドブックに比べると認知度はまだまだなので、読者の琴線にひっかかるよう、どんな切り口で見せていくかを工夫していく必要があると感じています。(vol.2)に続く

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