【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】特大ホームランとドラマ

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【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】特大ホームランとドラマ

【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】第37回


最近なにかと話題の視聴率。

いまだに世帯視聴率を取り上げるネットメディアが多い一方で、最近の会議では世帯視聴率のことは本当に話さなくなっていて、個人全体視聴率(4歳以上の個人全体の視聴率)やコア視聴率(各局が重点を置いているターゲットでの視聴率)のことのほうが話題に上がる。

5年前には、テレビ界でこんなことが起きるなんて思ってもみなかった。でも、遅いくらいだったんだろうね。


この視聴率に対する変化によってドラマも大きく変わってきましたよね。一時期は、F3、M3(50代以上の男女層)の視聴率を獲得するために、医療ドラマや刑事ドラマが増えまくったが、最近はそのようなものがかなり減ってきたご様子。

こんなことを言ったらなんだが、名俳優や伝説の脚本家の方が亡くなられて、以前だったら、追悼スペシャル番組としてゴールデン帯で多くの過去ドラマを放送していたと思うが、ここ最近は昔ほど放送されなくなったのをみると、これも視聴率に対する変化なのかなと勝手に思ったり。

これからはコア視聴率を取りにいくために、恋愛ドラマが90年代のように増えてくるような予感はしている。個性的なドラマが増えてくれることを個人的には願うのだが…。


先日、視聴率が取りにくい深夜帯のドラマのことを言っているのだと思うのだが、とあるテレビ局の人と話していたら、その人はコンテンツ部門でもあるからだろうか、ドラマの視聴率よりもビデオ(映像コンテンツ)としてどれだけ「回る」かが大事だと言っていた。

放送終了後のビデオ(映像コンテンツ)としての「回転数」、「再生数」というやつですね。テレビでも、局や作品によっては、視聴率よりも「回った数」が大事にされることもある。

その時にすごくおもしろいことを言っていたのだが、「回る作品」を多く作っていると、固く回る作品、要するにテーマや出演者など、配信としてある程度回ることが見えている作品を作る人が増えるんだとか。


冒頭で、F3、M3狙いで刑事ドラマや医療ドラマが増えたと書いたが、今の時代、回る数が大事になってくると、配信でのヒットを狙う人も増える。そうなると、そこでも外さないドラマが増えてくるのだなと。

刑事ドラマ・医療ドラマが増えた中で、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」のような特大ホームランも生まれはしたが、近年はテレビドラマでも外さない作品が増えてきた気がする。反対に特大ホームランが減った。80年代90年代は、大外しも多かった分、特大も多かった。

配信での数字を大事にする局が増えると、個性的なドラマも増えて、特大ホームランも増えるんじゃないかとも思ったが、プロデューサーの立場からしたら、それはそれで外したくないわけで、ある程度回ると思われるドラマを作りたくなる気持ちもわかる。そう考えると、コア層を獲得するために、恋愛ドラマなども数多く作られてくるであろう中で、特大ホームランよりも、ある程度の回転数が見える作品、というのがやっぱり増えてきてしまうのだろうか。


ところで、Netflixでやっている財閥ファミリーを描いた韓国ドラマ「Mine」、とんでもなくおもしろい。

でもね…やっぱりね。テレビが好きだから。

ドラマはバラエティーとは違う。1クールで終わるからこそ、特大ホームランを打とうとするバッターが沢山現れることを願う。それが一番テレビを楽しく救うことになるのだから。


<了>

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