【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】テレビに期待する「事件」

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【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】テレビに期待する「事件」

【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】第38回


フジテレビの「SMAP×SMAP」という番組を作っていた時のこと。

前室で、僕があるメンバーに新企画をプレゼンしていたのだが、そのメンバーはその企画をやることを不安がっていた。しかし、たまたま次の収録である『ビストロスマップ』のコーナーにゲストで来てくれていた爆笑問題の太田さんがその話を聞いていて、「すごくいいと思うよ」と言ってくれた。

「スマスマ視聴者はさ、『事件』が見たいんだよ」と。

その、「事件」というのは、「今週はSMAPのメンバーがこんなことをした!」という驚きでもある。

その言葉でふと思い出す。結局、僕らがテレビに期待していたのは「事件」だった。


中学生・高校生の時に僕や周りの人が毎週「とんねるず」の番組を見ていたのも、とんねるずは毎回、なにかしらの「事件」を起こしてくれたからだ。その起こした「事件」を次の日学校でみんなで話して興奮する。

テリー伊藤さんの作る番組も、何かと「事件」が多かった。もちろんそれは演出されていたのだろうが、テレビは「事件」を見せてくれるからワクワクするのだ。

僕が江頭2:50さんのことを好きなのも、出てきただけで何らかの「事件」が起きることを期待してしまうからだ。「笑っていいとも!」にエガちゃんが出てくると、お客さんが「キャー」と言っていた。だって客席にダイブしようとするんだもの。

もしかしたら、今の時代はそんなこと期待されていないのかもしれない。「事件」なんかじゃなく、なんとなくおもしろくて寄り添ってくれるものが大事なのかもしれないが。


この10年でテレビでの大きな「事件」って何かなと考えた時に、真っ先に思い浮かんだのが「笑っていいとも!」の最終回だった。

ゴールデン帯で放送されたそのスペシャル番組では、タモリさんを筆頭にとんでもないメンバーが、あの小さなステージの上に集まった。

もうドキドキした。メンバーそれぞれにいろいろなドラマがある。歴史がある。それがぶつかり合う。

とんでもない「事件」だった。テレビ界に入ってあんなに童心に帰ったのは初めてかもしれない。

ほかにもこの2年放送されていないが、フジテレビの「FNS27時間テレビ」なんかは「事件」が起きる場所だった。だからついつい眠い目をこすってずっと見てしまう。


なんでこんなことを書いたかと言うと、こういう特番で大物と大物が共演するのは「事件」だからである。滅多に共演することのない人たちが同じ画面に映っている。大したことが起こらなくても、その緊張感で十分に場が持つのである。

そこにその人たちがいることで「企画」となりえる瞬間である。

そして時に、大物と大物を組ませる番組がレギュラーで始まることがある。

僕もかなり前にそんな番組の構成に入ったが、あまり長く続かなかった。

大物と大物が特番で「共演」する時には、それ自体が企画になるが、レギュラー番組ではそうはいかない。「恋愛」の時にはドキドキしていたものが「結婚」だとそうじゃなくなることに似ている気がする。

視聴者も、毎週その組み合わせが画面に映るようになるとドキドキしなくなる。

「事件」だったものが「事件」じゃなくなる。


大物同士のレギュラー番組。本当に難しいと思うのだが、逆に言うと、その人たちが言った企画は通るはずである。そうじゃないと成立しない企画がある。

だからこそ、このテレビ界において、大物同士のレギュラー番組で、「事件」が起きる番組を作ってほしいと思う。


<了>

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