Synapse編集部が行く!日本アニメの現状 Vol.9 「大人気!『鬼滅の刃』などアニメ聖地の最新トピックス」

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Synapse編集部が行く!日本アニメの現状 Vol.9 「大人気!『鬼滅の刃』などアニメ聖地の最新トピックス」

ファン行動の一つとして日本に定着したアニメの「聖地巡礼」。今回は、昨今異例のブームを巻き起こしている『鬼滅の刃』の聖地巡礼、また「聖地巡礼」自体をテーマにした劇場版アニメ『魔女見習いをさがして』をご紹介します。Vol.1Vol.2Vol.3Vol.4Vol.5Vol.6Vol.7Vol.8に続き、Synapse編集部が取材した内容を元にお伝えします。)

『鬼滅の刃』の「聖地巡礼」

空前の大ブームとなった『鬼滅の刃』は、かつての『君の名は。』同様、アニメファンのみならず、普段アニメを見ない人たちをも巻き込み、多くのファンを生んだ稀有な作品となりました。

その経済効果は計り知れず、2020年10月16日に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、観客動員数・興行収入共に歴代記録を書き換えるのではと目されている程で、最近では、『鬼滅の刃』の「聖地巡礼」をするファンたちが話題に上ることも多くなり、観光業界でも注目を集めています。

実際にアニメ内で言及されている場所は、主人公・竈門炭治郎が生まれ育った東京都西多摩郡の雲取山(くもとりやま)。

作画上で確認できるのは、第7話で炭治郎が任務でやって来て鬼舞辻無惨と遭遇した浅草(浅草六区)の夜景で、瓢箪池(埋め立てられて現存せず)越しに、現在はもう存在しない凌雲閣、吾妻座、大盛館、江戸館、キネマ倶楽部などの建物が描かれており、また、山育ちの炭治郎が「夜なのに明るい」と驚いていた通りのカットで描かれていたのは、これも現存しない千代田館。いずれも作品の時代設定である大正時代にあった建物です。

上記の場所以外では、アニメの作中や公式情報では明確に特定できるような場所は出てきてはいないのですが、作品を偲ばせる場所として上記とは別の場所を「聖地巡礼」するファンが話題となっています。

具体的な例としては、下記のスポットが挙げられます。

◆ 一刀石(いっとうせき)(奈良県奈良市柳生町柳生字岩戸谷)
戦国時代、3年間この地で毎晩天狗を相手に剣術修行をしていた柳生石舟斎が、ある夜、ついに天狗を切ったと思ったら、実はこの岩だったという伝説がある。中央から2つに割れており、第3話で炭治郎が修行の最終課題として一刀両断した大岩を連想させる巨大な花崗岩。

◆ あしかがフラワーパーク(栃木県足利市迫間町607)
第4話で鬼殺隊最終選抜が行われた藤襲山(ふじかさねやま)は、麓から中腹にかけて鬼の嫌う藤の花が1年中狂い咲いていて、選抜のために閉じ込められた鬼たちはそこから出られない、という設定となっている架空の山。園内の600畳敷きの「八重の大藤棚」や350本以上の藤が咲き誇る様が、藤襲山の藤の花のイメージにそっくりだとファンの間で話題になっています。

◆ 宝満宮竈門神社(福岡県太宰府市内山883)
主人公・竈門炭治郎の名字の由来になったのではとファンの間で話題となり、大宰府政庁の鬼門封じの神社であることや、山頂に上宮がある宝満山(ほうまんざん)(別名「竈門山」)で修行する修験者たちが着ている市松模様の鈴懸(法衣)が、炭治郎の着ている市松模様の羽織を思わせると言われています。

◆ 八幡竈門神社(大分県別府市大字内竈1900)
同じく炭治郎の名字の由来になったのではとの話題の他、「鬼が造った九十九の石段」、「鬼が忘れた石草履」など鬼の伝説が残っていたり、炭治郎が父から継承したヒノカミ神楽を思わせる「かまど神楽」が大晦日から元旦にかけて奉納されていたりする神社。

◆ 会津芦ノ牧温泉 大川荘(福島県会津若松市大戸町大字芦ノ牧字下平984)
館内の吹き抜けロビーで三味線演奏が行われる「浮き舞台」が、鬼の鳴女が琵琶を奏でることで異空間を操る姿を含めて『鬼滅の刃』第26話で鬼舞辻無惨が下弦の鬼を粛清した「無限城」に似ていると話題になっています。

上記の「聖地巡礼」の特徴は、いずれも公式では認められていないこと、作中ではその場所を特定する根拠は確認できないこと、一部のファンが見つけてSNSを通じて広まり「聖地巡礼」に訪れるようになったこと(仕掛け人が不在なこと)の3点です。

元々『鬼滅の刃』には「聖地巡礼」を起こさせるような要素は少なく、版権元や自治体も「聖地巡礼」による経済効果に期待を抱いてはいなかった状況だったにも関わらず、ファンたちが自ら開拓して自然発生的に「聖地巡礼」が広まった今回の事例は、「聖地巡礼」文化がいかに浸透し、且つファン行動としての人気が高いことを感じさせてくれました。

「聖地巡礼」をテーマにした劇場版アニメ『魔女見習いをさがして』

2020年11月13日に公開された『魔女見習いをさがして』は、『おジャ魔女どれみ』シリーズの20周年記念として製作された劇場版アニメで、放送開始当時のスタッフやキャストが再結集して制作されました。

『おジャ魔女どれみ』シリーズとは、35年以上にわたって東映アニメーションのレギュラー枠となっており、現在はプリキュアシリーズが放送されているテレビ朝日系列の日曜朝8時30分枠で、かつて放送されていた主に女児向けの魔法少女アニメです。

1999年から2005年にわたってテレビアニメ4作品、OVA1作品、映画2作品が製作されました。

<『おジャ魔女どれみ』シリーズ>
『おジャ魔女どれみ』 1999年2月7日~2000年1月30日放送・全51話
『おジャ魔女どれみ♯』 2000年2月6日~2001年1月28日・全49話
『も~っと!おジャ魔女どれみ』 2001年2月4日~2002年1月27日・全50話
『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』 2002年2月3日~2003年1月26日・全51話
『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』 2004年6月26日~2004年12月11日・全13話
『おジャ魔女どれみ♯』 2000年7月8日劇場公開
『も~っと!おジャ魔女どれみ カエル石のひみつ』 2001年7月14日劇場公開

『魔女見習いをさがして』は、かつて子供の頃に『おジャ魔女どれみ』のアニメを見ていた女性3人が、作中のメイン舞台となっているお店・MAHO堂のモデルとなった鎌倉の洋館で出会い、互いに『おジャ魔女どれみ』ファンであることから意気投合して、一緒に『おジャ魔女どれみ』の舞台となった地へ旅行に出かける、というストーリーです。

まさにアニメの「聖地巡礼」をテーマにした作品というわけです。

作中では、映画『も~っと!おジャ魔女どれみ カエル石のひみつ』でどれみたちが遊びに訪れた祖父母の家がある岐阜県の飛騨高山、シリーズ第4期の『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』第11話「奈良!運命の再会」、第12話「京都!終わらない夜」でどれみたちが修学旅行で訪れた奈良と京都が描かれています。

飛騨高山では舞台地が明確ではないため、旅の目的こそ『おジャ魔女どれみ』ゆかりの地でしたが、実際には白川郷や高山祭屋台会館など、作品とは直接関係のない観光地を巡っていました。

奈良や京都では、クラスのみんなで記念撮影をした東大寺南大門や、主人公・春風どれみが転んだ三年坂、ジンクスを破ってどれみが振り返ってしまった渡月橋、FLAT4の暁と小竹哲也がどれみをめぐって争った桂川の土手など、作中での場面を辿る「聖地巡礼」らしい旅が描かれていました。

過去のアニメで「聖地巡礼」をテーマにしたものとしては、2017年放送のアニメ『アニメガタリズ』第6話で、主人公が所属するアニメ研究部が、アニメ『ガールズ&パンツァー』(作中では『ガールズタンクトップ』)の聖地巡礼をする様子が描かれたことはありましたが、作品全体で「聖地巡礼」をテーマにしたものは今回が初めてです。

「聖地巡礼」をテーマにした作品が今後も作られるかはわかりませんが、『魔女見習いをさがして』は「聖地巡礼」を語る上で欠かせない作品になるのではないでしょうか。

<了>

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