【ふかわりょうの魔法が解けたなら】〜第12回・番外編 再放送の是非〜

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【ふかわりょうの魔法が解けたなら】〜第12回・番外編 再放送の是非〜

【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】 第12回・番外編 <毎週金曜更新>


もともと全12回なので、本来ならこれが最後なのですが、先日興味深いことがあったので、今回を番外編、次回を最終回ということにしてもらいました。

というのも、テレビをつけたら太川陽介さんと蛭子能収さんがバスに揺られていたのです。以前人気だった「バス旅」はリニューアルした記憶があったので、あれ?好評でまた再開したのかな?と。しかし、よく見るとそれは再開ではなく、再放送。過去のVTRだったのです。ゴールデンタイムに再放送を流す、それもバラエティー番組。画期的ととるべきか、守りと言うべきか。


ジブリ作品がテレビで再放送される際、高視聴率であることが度々報じられます。頻度は低くとも、毎回しっかりと視聴率を獲得することは、ジブリ作品がいかに国民に愛され、リピートに耐えうるコンテンツであるかを証明しています。

再放送には初めてのお客さんもいるでしょうが、おそらく全員が既に観ていたとしても、視聴率は極端に落ちないと思います。と言うのも、視聴者は「世界に浸るため」に観ているからです。

結末や展開を知らないからではなく、わかっているからこそ観る。私も年に一度くらいの頻度で観る映画がありますが、その世界に浸りたくて再生します。それは、以前訪れた海外にもう一度行きたい、ディズニーランドにまた行きたい。そんな心境に似ています。

あの世界にまた浸りたい。そんな気持ちがジブリ作品には芽生えるのでしょう。では「バス旅」にも似たようなものはあるでしょうか。

太川さんと蛭子さん、どちらがミッキーなのかわかりませんが、あのメンバーのやりとりで紡がれるバスの旅はリピートに耐えうるものかもしれません。そういう場合はDVD化によってファンの欲求を満たしていましたが、時を経ての再放送。特別に挿入された秘話などのおまけもありながら、何より予算が格段に安く、視聴率も放送局的には合格点だったようです。

しかし、これはあくまで「例外」であって、再放送を「通例」としてはいけないと思います。それこそテレビの「終わりの始まり」。寿命を縮めるのではないでしょうか。


日曜の昼が本放送、月曜の朝が再放送というラジオ番組を担当していました。お便りを読むと、日曜日聴いていますというものと同じくらい月曜日の出勤の際に聴いている方も多く、それぞれにリスナーがいることを実感しました。生活リズムに合った方を聴く。両方聴く人もいるかもしれませんが、再放送が必ずしも「再」とは限りません。

「朝ドラ」や「チコちゃん」でも再放送スタイルができるのは、NHKのなせる技というのもありますが、どちらも「もう一度あの世界に浸りたい」ではなく、生活リズムに合った方を視聴している。

かつて、夏休みになると再放送される、あだち充さんのアニメ作品には非常にワクワクしたものです。あの世界に浸りたいと言う気持ちが、年に一度という頻度にぴったりでした。ドラマ「相棒」の再放送も決して数字は悪くありません。

ドラマやアニメなどは再放送に耐えうる印象があるのに、どうしてバラエティーは再放送が向いていないのでしょう。それは、「バラエティーはニュース」だからです。

災害、事故、政治問題。報道番組は暗いニュースになりがちで、明るいニュースはパンダの赤ちゃんが生まれた時くらい。それに対して、バラエティー番組は、報道とはスタイルこそ違いますが、面白いものを発信して、世の中に明るい話題を提供しています。

しかし、面白いことは世の中の空気に非常に敏感。今面白いものは、今だから面白い。極端にいえば、昨日面白いと思ったものが、今日面白いと思えるとは限りません。だから再放送をすると、微妙にそのズレが生じてしまう。だから、バラエティー番組は再放送に適していないのです。


せっかく作った番組。素晴らしい番組を観ていない人のためにもう一度放送したい。こんないい番組が低視聴率なのはもったいない。それでも、テレビは新しいものを作るべき。たとえ予算が行き詰まっても、過去の放送はネットに委ね、できる範囲で「いま面白いもの」を流すべき。震災の時がそうであったように、面白いという尺度は、社会の空気や雰囲気に大きく左右されます。テレビ番組の使命は、「いま」を感じさせることだと思います。


余談ですが、好きな映画を語る際に、「観るたびに発見がある」という表現をよく耳にします。大抵作品を褒めるため、「何度見ても面白い」的なニュアンスで発しているのですが、これほど当たり前のことはありません。だって、どんな作品も観るたびに発見はあるのです。

しかし、好きな映画しか何度も見ないので、おのずと好きな作品にだけ「観るたびに発見がある!」と言っているのです。つまり「この作品は、始まって、やがて終わります」と同じ。だから私は、映画でこの感想を言う人の言葉にはなんの説得力も感じません。

と言うことで、次回が最終回の予定です。よろしくお願いします。

<了>


ふかわ りょう

大学在学中の二十歳でデビュー。現在はテレビ・ラジオに出演しながら、ROCKETMANとしてDJ、エッセイを執筆するなど、多方面に活躍している。

TOKYO MX「5時に夢中!」、AbemaTV「AbemaPrime」、NHK-FM「きらクラ!」では番組MCを務め、TBS「ひるおび!」ではコメンテーターとしてレギュラー出演中。

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