HOME テレビ J:COM発!視聴ログを活用した新たなマーケティングの可能性~株式会社ジュピターテレコム(J:COM) 遠田 智洋さん~
2020.1.27

J:COM発!視聴ログを活用した新たなマーケティングの可能性~株式会社ジュピターテレコム(J:COM) 遠田 智洋さん~

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CS広告の営業や企画に携わること15年。遠田さんは、デジタル広告の台頭を感じながら、「J:COM PMP(Private Market Place)」という新たなビジネスモデルの構築に邁進してこられました。従来の概念から脱却しチャンネルの枠を超える。
デジタルに引けを取らないデータを提示しながら、テレビの良さは守っていく。絶妙なバランスで新たな可能性に挑んでいる遠田さんが思い描く、CS業界と「J:COM PMP」の未来とは──?


市場と“データ”の関係

 

─遠田さんのご経歴と現在の業務内容をお聞かせください。

社会人として最初に入社したのは広告代理店で、新規営業を主とした広告営業をやっていました。2社目で株式会社ジュピター・プログラミングに入社(合併し、現在は株式会社ジュピターテレコム)。
グループの5チャンネルを運営していた会社なのですが、そちらの広告営業部で3年弱大手広告代理店担当の営業を経験しました。その後、同じ部内の営業推進という企画側の部に回ったという感じですね。

2017年5月からはメディア事業企画部(現メディア・エンタテインメント事業統括室の名称変更前の部署)と兼務という形になりました。2018年4月からメディア事業企画部1本になりまして、今は部門の中期事業戦略、部門方針策定、新規事業開発推進などの業務を担当しています。

 

─長くCSの広告営業に携わる中で、CS業界の現状をどう感じていますか?

CS放送における2018年度広告売上は前年比の95.8%とマイナス成長でした。総売上金額も同年度に200億円台を割込みました。2019年上期の様相を見ても、あまり芳しくはありません。

 

─何が原因でそうなったと思いますか?

ご存知のとおり、広告の市場はネット広告が主となりつつあって、アメリカではもうテレビ広告がネット広告に抜かれています。ネット広告にはデータが出るという強みがあるので、クライアントの意識そのものが変わってきていると思うんですよね。ネット広告によって今まで見えなかったデータが可視化されるようになり、今までは「何となく分かる」で済んでいたものが、明確に数値化されたために、それがないと物事が進まない世の中になってきました。
その流れを受けて、テレビ業界のマーケティング領域にもデータや数値化が期待されるようになっていると思うんです。現状として「テレビメディアにはネット広告ほどのデータがない」という評価が、前述した市場の逆転現象みたいなものに繋がっている側面もあるのではないかと考えています。

 

 

CS業界の課題と打開策

 

─CS業界の課題について、遠田さんのご見解をお聞かせください。

僕はCS業界には4つの課題があると認識していまして、1つ目は「訴求ポイント」です。今まで、CSは雑誌メディアのようにターゲティングができることを売りにしていました。
CSは、地上波やBSに次ぐ認知メディアでありながら、チャンネルごとに特性を持った専門チャンネルなので、狙いたいターゲット層にピンポイントでアプローチできることが強みだったんです。しかし、今はデジタルで細かいターゲティングができるようになったので、相対的にCSの立ち位置は曖昧になりました。

2つ目と3つ目は、「プランニング」と「効果測定」です。データはあれど、セールスとの連携がうまくできていなかったということが長い間続いていました。

4つ目は「市場風土」です。CSの広告販売って、「映画専門チャンネル=映画ファン」のようなチャンネル単位のターゲットイメージを材料としたセールスが前提なんです。CSとして1つのマーケットとしてあるのではなく、専門チャンネルごとに小さなマーケットが多数あるような構造になっている為クライアントが市場全体を把握しにくい。

 

─改善するための対策はあるのでしょうか?

どのマーケットも同じだと思うのですが、やはり今の時代はデータの高度化がされていないと受け入れていただけないですよね。CSでいうと、複数のチャンネルが24時間365日放送しているなかで、自分たちが欲しいターゲット層がどこにいるのか、どこに優先順位をつけて広告を打っていくべきかというデータがないと、意思決定ができない。クライアントが社内で「やる、やらない」の議論をするときに、データなしでは判断ができないので、まずはデータを出していく必要があると思います。
そして実施した後には、結果を明確なデータ(ファクト)で見せることが重要です。優先順位をつけた結果、狙い通りになったかどうかを見せていかないと「ここがうまくいかなかったので変えましょう」といった会話にならないのでPDCAが回せません。クライアントが一番気にするのは、ROIを明らかにすることなので、ここは必ずやらなければいけないと思っています。

 

─各チャンネルにおける売り方の部分ではいかがでしょうか?

前述のように、CS業界に関わる人は専門チャンネル1チャンネルごとにターゲットイメージを語りがちです。しかしクライアントは、CS全体で、どのチャンネルのどの時間帯を取っていけば自分たちが欲しいターゲットに当たるのかという見方をしているのではないか、と。つまり、全体をある程度まとめて提案し、ターゲットの規模を担保することが必要だと思います。
あとは、クライアントが目指すターゲットにたどり着きやすくすることですね。数十チャンネルがひしめくなかで、個別に発注をかけなければいけないとなると、ターゲットにたどり着くのが非常に面倒なのでクライアントが諦めてしまうケースもあると思います。データの高度化、規模担保、到達容易化。この3つが、改善点だと考えています。

 

 

データの課題を解決した方法とは

 

─データ整備の部分では、我々ビデオリサーチも一緒に取り組ませていただきました。

はい。弊社で持っている視聴ログというものを活用して、データ部分の課題を解決できないかと考え、まずは海外の事例を調べたんです。そこで分かってきたのが、実数データを豊富に存在する領域にもパネルデータを持つアメリカのニールセン社が必ず登場しているという事実でした。
つまり、パネルデータと実数データが共存関係にあるんです。それに対して当時の日本は、対照的に実数データがパネルデータを駆逐していくかのような風潮がありました。しかし僕はアメリカのようにパネルデータと実数データを組み合わせるやり方が、最適解なのでは、と考えました。

 

─視聴ログとは、どのようなデータなのでしょうか?

世帯に配付されるセットトップボックス(以下、STB)という機器から取得できる視聴行動のリアルタイムとタイムシフトのデータで、お客様から許可を頂いている約200万台分のログデータが蓄積されています。ただ、STBはあくまで世帯に配付されるものなので、取れるのは世帯のデータだけで、家族の誰が見ているのかまでは分からないんです。
そうすると広告メディアとしてはあまり意味を成さないので、そこにビデオリサーチのパネルデータを掛け合わせて、どういう個人が視聴しているかを推計する方法が無いかと、相談させて頂きました。

 

─ビデオリサーチのパネルデータはお役に立てましたでしょうか?

弊社の視聴ログには「個人」のデータがない一方、ビデオリサーチは精緻な個人視聴の情報におけるパネルデータを持っているというところが最大のポイントでした。2年ほどの時間をかけて一緒にいろいろと協議させていただき、何とか「おそらくこの世帯にはこういう方々がいて、この人が見てくれてるんだよね」という匿名での推計やプロファイリングができるようになりました。

 

─視聴ログのデータとパネルデータを融合したんですね。

パネルデータと実数データの相互補完は非常に重要で、アメリカでも皆さん必ずパネルデータを使っていらっしゃるので、これが現状の最適解なのではないでしょうか。パネルデータと実数データ双方の良さをクロスしたほうがいいと思います。また、今の時代って技術的には結構何でもできますが、個人情報保護の流れが非常に大きくなってきていますよね。
むしろここから先は「どこまでで止めるか」ということが重要になってきていると思います。様々なデータをクッキーで紐付けて、個人を明確に洗い出すこともできますが、あまりにリスクが大きくなり過ぎる。

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