【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】 〜第3回 信用と信念〜

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【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】 〜第3回 信用と信念〜

【ふかわりょうの「魔法が解けたなら」】 第3回 <毎週金曜更新>

「視聴率低迷のため、打ち切りになります」

こういった事例が何度かありました。バラエティ番組はいつまで続くかわからないままスタートするのでこのような表現はあまりされないですが、ドラマのように全12回や1クールなど、期間を決めた上で始まる番組は、「打ち切り」という表現がしばしば使用されます。

この、視聴率低迷を理由に打ち切るという行為こそ、視聴者の信用を失う要因のひとつ。

「今日はお客さんがあまり入らなかったので、15曲やる予定でしたが、8曲で終了したいと思います。ということで、次が最後の曲です」

あなたの好きなバンドがライブでこのような行為をしたら、どんな気分でしょうか。これからも応援できるでしょうか。実際、世の中に存在しているバンドは、客入りが悪かろうが、来ているお客さんのために精一杯、むしろいつも以上にパフォーマンスをするでしょう。それでお客さんはさらに好きになる。

なのに、視聴率低迷のために打ち切りだなんて、お客さんを裏切る行為ではないでしょうか。

ライブはチケット代を払っているから? そんなことは理由になりません。無料だろうが有料だろうが、来ているお客さんに不誠実な対応をしていたら、二度と来てくれなくなります。


番組制作サイドも打ち切りたくて打ち切るわけではありません。スポンサーの意向などによる総合的な判断。苦渋の決断。

となると、憎むべきは視聴率が低いと打ち切らなくてはならないシステムでしょう。スポンサーも、たとえ視聴率が悪くても番組を応援しますという姿勢の方が支持される可能性だってあります。

テレビで広告を打つということはそれくらいの覚悟が必要ですが、企業もお金がないので、ならばネット広告で効率よくという流れになっている現実。

何れにしても、わざわざ時間を合わせてテレビの前まで来てくれたことは、もはや映画館に足を運ぶことに等しい時代。はるばる遠方からやってきたお客さまを一番大切にするという意識こそ「信用」を取り戻す第一歩。


では、「信念」はどうでしょう。

番組の立ち上げからコンセプトが変わることはあります。これ自体は悪いことではありません。

企画書でイメージしたものが、蓋を開けたら感触が違うことは多いですし、コンセプトにこだわりすぎると策に溺れることもあるので柔軟性も必要です。

ただ、ラーメンのスープの味が変わるわけですから、お客さんが離れることだってあります。

スープどころか、ラーメン屋じゃなくなってしまうことも。たまたま出した賄いのカレーが好評だからといって、カレー屋にシフトするのは「ポリシー」がないと思われてしまうでしょう。

同様に、放送時間帯を変更するのも、お店が移転するようなもの。裏通りから大通りに移転したのに、味が大幅に変わってもったいないこともあります。

どの時間帯に放送するべきか熟考するのは大事ですが、一番良くないのは「迷い」。

正しいかどうかではなく、貫いているものに人は惹かれるのです。


世の中の変化がめまぐるしいからこそ、テレビに安心を求める者は少なくありません。

「変わらないもの」「相変わらずなもの」を観たい。

結局、「マンネリ」と言われようが、視聴率やネットの声に振り回されず、辛抱強く続けたものが勝利を手に入れる。

テレビの勝利とは、視聴習慣を手にいれること。

視聴者の生活リズムに組み込まれること。

「信用」と「信念」。

生真面目な言葉ですが、内容は真面目である必要はありません。

くだらなくてもいいのです。この二つがあれば、「自由」を手にすることができるのです。

<了>

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