HOME テレビ 【徳永 有美のメディア先読み】テレビの魔法が解けてしまった今、 それでもテレビを観に来てくれた人を抱きしめたい~タレント ふかわりょうさん~
2019.12.4

【徳永 有美のメディア先読み】テレビの魔法が解けてしまった今、 それでもテレビを観に来てくれた人を抱きしめたい~タレント ふかわりょうさん~

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聞き手:フリーアナウンサー 徳永 有美(とくなが ゆみ)

1998年にテレビ朝日入社。『やじうまワイド』『スーパーモーニング』などのMCを務め、2004年4月から『報道ステーション』のスポーツコーナーを担当。2005年4月にテレビ朝日を退職し、2017年に12年ぶりにAbemaTV『けやきヒルズ』のキャスターとして現場復帰。
2018年10月より『報道ステーション』メインキャスターに就任した。

話し手:タレント ふかわ りょう

大学在学中にデビューし、現在は多数のテレビ・ラジオに出演しながら、ROCKETMAN名義でDJとして活動し、エッセイを執筆するなど、多方面に活躍している。TOKYO MX『5時に夢中!』、AbemaTV『AbemaPrime』では番組MCを務め、TBS『ひるおび!』ではコメンテーターとしてレギュラー出演中。


徳永有美のメディア先読み 第4回

徳永さんが『報道ステーション』のメインキャスターになられて早1年、当連載が再始動します!
今回のゲストは、タレント、DJとしても活躍されているふかわりょうさん。徳永さんとふかわさんは、2000年から放送された人気番組『内村プロデュース』で濃密な時間を過ごした盟友です。お二人は年が近かったこともあり、当時から映画や文学などの話題に花を咲かせることも多かったそう。
今回はそんなお二人に「テレビのこれから」をテーマにそれぞれの持論を語っていただきました。テレビを愛するふかわさんと徳永さんが、意見を交わす中で見出した結論とは…。

 

コンテンツの多様化でテレビの魔法は解けた

徳永 ふかわさんお久しぶりです。今日は、「テレビのこれから」というテーマでお話ができればと思っています。ここ数年、ネットが台頭して、放送とデジタルの境目が消えつつあります。それを踏まえて、テレビ全体がどう変わっていくべきなのか。この対談を通じて垣間見ることができたらいいなと考えています。

 

ふかわ 今日はお呼びいただいてありがとうございます。
実は僕、そのテーマ大好きなんですよ。ずっと話したいなって思っていて。その前に、徳永さんってネットだとかテレビの変化といったことに関心あるんですか?

 

徳永 あはは!いきなりですね(笑)。うーん……(笑)。


ふかわ
 いや、もちろんどんな立場でもいいと思うんです。演者として現状に関心をもってカメラの前に立つ人間もいれば、無関心な人もいて然るべきなんです。そこに振り回されないタイプの人の方が功を奏する場合もありますからね。

いきなりではありますが、僕の考える結論を言わせてもらうと、テレビは完全に魔法が解けました。それ以上言うと炎上するかもしれないですけど、これは揺るぎない事実です。

 

徳永  いきなり結論が出てしまったのですが(笑)。ふかわさんがおっしゃるテレビの魔法って具体的にどんなものですか?

 

ふかわ ネットのコンテンツが登場するまで、エンターテインメントの選択肢があまりなかったですよね。コンテンツが少なかったから、他に比べるものがなかった。だけど、今はエンターテインメントの選択肢はそれこそ星の数ほどあります。
もし、この時代にこれからもテレビを続けていくのなら、魔法を使わずにやるしかないんです。

 

 

徳永 魔法を使わずにテレビを制作するとは?

 

ふかわ それはまず「感謝」することです。わざわざテレビを観てくれている人全員を、ぎゅっと抱きしめるくらいの気持ちを持たなきゃいけない。コンテンツが星の数ほどある時代に、スマホを手放し、リモコンを手にし、時間を合わせてテレビの前まで来てくれる。
「はるばるテレビを観に来てくれてありがとう」というくらいの感謝の気持ちを持たないと。これがなくなってしまったら、テレビの寿命はどんどん短くなります。

 

徳永 ふかわさんがテレビの魔法が解けたと感じるようになったきっかけは何かあるんですか?

 

ふかわ これという断定的なものよりも、複合的な要素があるなと思います。とはいえやはりネットの存在は否めないですよね。今ってコンテンツが多様化して選択肢が増えて、好きな時に、好きな端末で、好きなものを観られる。それなのにわざわざ金曜7時に、はるばるテレビを観にきてくれた。もうこれって大げさに言うと海外旅行に行く、くらいのことだと言えます。

そこまでしてくれたのに、テレビの内容が期待はずれだったら、じゃあスマホいじっている方がいいよってなっちゃいませんか? 今や動画コンテンツは無限にあるわけです。そうなった時テレビは何を伝えるべきか。これは相当難しい課題ですが、明確になっているとは言えません。こういう流れがあって、テレビの魔法は解けてしまったんじゃないかなと考えています。

 

『5時に夢中!』から紐解くテレビの面白さ

徳永 ふかわさんは、ゲストコメンテーターを経て『5時に夢中!』(TOKYO MX)の司会を務められています。司会となった今、番組を観てもらうために、心がけていることがあれば教えてください。

 

ふかわ 『5時に夢中!』は、ジャンル分けをすると情報番組かもしれないんですけど、実は人間同士のアンサンブルなんです。例えるなら、『笑点』と一緒です。
『笑点』は明確にお題があって大喜利をやっていますが、『5時に夢中!』も1時間通して人と人とがぶつかり合います。その関係性が面白いから観てくれる人がいて、日常のサイクルの中の視聴習慣にしてもらえているのかなと思います。

 

徳永 確かに、『5時に夢中!』を観ているとふかわさんと共演者の関係性から出てくる言葉が面白いですよね。次はどんな言葉が飛び出してくるんだろうとワクワクします。
例えば地上波でマスに向けて作ると、想像範囲内の言葉で埋め尽くされることが多いと思うんですけど、『5時に夢中!』は言葉が研ぎ澄まされているというか、本音に近いなと感じます。

 

ふかわ 情報は鮮度が大事ですから。例えばニュースや、スポーツの結果も情報だけど、人から発せられる言葉も情報の一つなんです。視聴者は、それがいかに新鮮かというのを無意識に感じ取っているから「ここは活きのいいネタがそろってるね」と思ってくれている部分はあると思います。

 

徳永 特にキー局の地上波は大勢の方々に向けて作っていますから、伝える情報を選ぶにしても最大公約数を気にしないといけないですもんね。

 

 

ふかわ 要は交通整理ですよね。でも、交通整理された情報を求める人もいれば、生きたストリートパフォーマンスのようなものを求める人も一定数いるんですよ。だから、番組に出演するとき、僕はリズムを一番大切にしています。
昔、洋楽が流行ったときだって、歌の意味がわからなくてもみんな聴いていたでしょ。ノリとグルーヴさえあれば観てくれる人たちを楽しませることができると、僕は信じてやっていますね。

 

徳永 なるほど!でも、自分の言葉によって番組の内容が決まってしまう怖さもあるんじゃないかと思うんです。その場ですぐにベストな言葉を返していく、その瞬発力はどうやって磨かれたのですか?

 

ふかわ 奇しくも、僕の持ちネタで「一言ネタ」ってありますよね。あれって自分で言うと抵抗あるんですけど、森羅万象をいかに最小限で表現するかっていうネタなんです。そもそもそういうことが好きなんですよね。
一つの現象に対して、どんな言葉を添えたら一気に輪郭が見えるようになるのか、あるいはひっくり返すことができるのかってことばっかり考えています。

 

徳永 確かに、昔からそんなところがありましたね。ロケバスの中でも、何かと何かをリンクさせて考えて、ある現象とある現象を重ね合わせるみたいな会話をお互いにしていました。ふかわさんは小賢しい説明が好きでしたよね。

 

ふかわ 小賢しいって(笑)。僕は聞かれたから答えているだけです!ロケバスの中では聞かれていなくても話しますけど。

 

視聴者へどうアプローチすればいいのか

徳永 私、今回の対談の中で、ふかわさんに個人的に聞きたいなと思っていたことがあります。それは、ふかわさんがいつもどんな風にオンエアに臨んでいるのかということです。あふれるほどのニュースや情報があって、さらにご自分のお考えもある。そこをどう整理・整頓して生放送で扱っているのですか?

 

ふかわ ぼくのスタイルとしては、視聴者を信じるということですね。感情は観ている側が決めることだから、感情の方向は視聴者に委ねます。DJの例えで申し訳ないですけど、最初の1曲目だけ決めます。後はその時の流れで決めていくんです。

『5時に夢中!』の掛け合いってジャズセッションだと思っているんですよね。ノリでやっているというか。あえて打ち合わせしなかったりするんですよ。出たとこ勝負でやらせてもらっています。もともと僕がDJをやっているからこんな例えになるのかもしれませんが、1時間の番組の中で「お茶の間というフロアをいかに踊らせることができるか」っていうことに真剣に向かい合っています。
さっきも少し触れたんですけど、コンテンツを提供する上で、テンポや間とか、リズムってすごく大事な要素だと思っているので。

 

 

徳永 お茶の間というフロアをいかに踊らせるかという考え方、すごく面白いですね。

 

ふかわ 逆に、徳永さんが『報道ステーション』に出演する時はどうなんですか?以前AbemaTVにも出演されていて、テレビとは少し違う世界観を体感されていましたよね。そこからテレビのど真ん中に戻ってきて、何か感じることはありますか?

 

徳永 先ほどふかわさんから、私が「テレビのこれから」っていうテーマに興味なさそうって言われてびっくりしちゃったんですけど、その通りで、私あまりテレビとネットの違いとか気にならないんです。だから、自分ができる限り最大限の想像力を働かせて、心を込めて番組としてベストを尽くすことだけ考えています。意識としては足りないのかもしれないですけど。

 

ふかわ やっぱり(笑)。だから『報道ステーション』って徳永さんの表情が、情報としてすごく入ってくるんですよね。

そういえば、報道番組って感情を出すことが必要かどうなのかも徳永さんに聞いてみたかったんです。角度とか目線は人それぞれあるので、中には何も言わないフラットな人もいると思いますが。

 

徳永 とても難しいですよね。『報道ステーション』が始まった頃は自分の感情はできるだけ抑えようと思っていたんです。押しつけになるのが嫌で。でも感情を抑えたとしても絶対に抑えきれないものが生じるって思うんです。
そのはみ出すものを自分なりに研ぎ澄ませていこうと思えたのが、番組に関わって半年くらい経ってからですね。感情をむき出しにすることが共感に繋がるってことは絶対にないですし、そんな安易なことはしたくないと思っています。

 

ふかわ 番組のスタイルだったり、時間帯だったり、コンセプトや立ち位置によってアプローチって変わってきますよね。明確な正解はないですから。

 

徳永 『報道ステーション』では、スタジオで自分がコメントできる時間は十数秒くらいなので、自分にとっては武術の居合のように“一瞬”なんです。ですから、番組が始まる前に精一杯ノートに自分の言葉や思い、情報を書き連ねて、自分の真理を携えてスタジオに行きます。ノートは見ないんですけどね(笑)。お守りです。

 

ふかわ 僕もDJやっていて、曲順リストがないと不安でたまらない時期がありました。でもたまたまリスト無しでやることになって。上手くいった部分とそうじゃないところ両方あって、うわーって気持ちもあるんですけど、不思議と気持ちよかったんですよね。リストがあって80点よりも、リスト無しで0点か100点取りたい!って。

 

徳永 私には出来ないです。気持ちはものすごく分かるんですけど。

 

ふかわ 「書を捨てよ、町へ出よう」じゃないけど「ノートを捨てて、報ステに出よう」。用意したものを出すのと、その場でナチュラルに出すのとではきっと感じ方が違うと思いますよ。優等生から卒業してみませんか?

 

徳永 えー!捨てられないですよ!怖いですもん(笑)。

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