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2019.8.9

【TV2020】環境を変える努力とコンテンツの掛け合わせでテレビの未来は変わる テレビディレクター・映画監督 李 闘士男さん

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厳しいテレビの現状を打開するための3つの提言

─シンプルに放送の機能だけで勝負するには、テレビを取り巻く環境は厳しそうですね。

確かに環境は良いとはいえません。ただテレビができること、テレビの未来のために力を入れていかなければいけないことはあると思っています。

1つ目は、‟同時性・速報性にこだわったコンテンツ”を作ること。

2つ目は、‟ネットと連動したコンテンツ”を作ること。

そして、3つ目は‟新しい領域を見つけるための投資”です。

 

─それぞれ具体的に教えてください。1つ目の‟同時性・速報性にこだわったコンテンツ”は?

いわゆるスポーツ中継など、生放送だからこそできるコンテンツです。ニュースやスポーツなどの同時性・速報性のあるコンテンツは、テレビからは無くならないと思います。たとえば情報番組でも「今日何があった?」というようなテーマで、街の出来事やイベントなどの情報を一般の人から自由に投稿してもらうとかね。
三社祭のニュースでも、「実はハトがたくさんいて大変だった」とか、報道では伝えない情報のほうが面白い。見ている人に“体験化”させることが大切。体験した人はインフルエンサーになるので広がりも大きい。

コンプライアンス的に難しい部分もありますが、少しディレイして放送するとか何かしらの手段はあるはず。本気で取り組めば解決策はあると思いますね。

 

─2つ目の、‟ネットと連動したコンテンツを作ること”という提言ですが、テレビのネット連動についてどうお考えですか?

今はテレビを見るにしても、スマホを持ちながらのダブルスクリーン視聴の時代。これを活かさない手はありません。

『#カワイイこみなみには旅をさせよ』(通称『こみ旅』)というBSフジの番組は私がディレクターを務めたのですが、この番組は出演者がどこに旅に行くのか、旅先で何を食べるのかなどがすべて視聴者からのツイートで決まるという企画のものです。そもそも、出演者もTwitterでキャスティングしました。
視聴者からすると、投稿が採用される面白さや自分が参加しているという感覚が魅力で、ネット連動で成功した番組です。放送期間は2017年10月~2019年3月でしたが、放送が終了した今でも番組Twitterはポジティブに動いています。番組のDVD化の要望があったので、「8,000RT されたらDVD化します」とツイートしたところ、実際に8,000RT を超えて販売が決定しました。

 

─テレビのネット連動ものは難しいと耳にしますが。

それはやり方が中途半端なのではないかと思います。先ほど話した8,000RTにしても、この数字がどれだけの意味持つのか、その価値が分かっていない人が多い。「たかが8,000でしょ」みたない反応をする人もいましが、実際にはリツイートした人にフォロワーが100人いれば、8,000×100の価値があるということです。

そして、テレビの人間は番組のことをネットに書かれることを嫌い、距離を置く傾向があるのも理解が進まない原因のひとつだと思います。
『こみ旅』では、ネットマーケティングの専門家に企画会議に参加してもらい、ロケにも同行してもらって、アドバイスをもらいながら一緒に番組作りをしました。どの情報をどのタイミングでどう出していくか、それらはすべて計算したうえで、もっとも効果がある形で情報発信をしていくのです。
テレビとネットでは文法が違うので、そこを埋める必要はありますが、テレビ側からネットに近づいていく必要があるのではないかと思っています。

 

─3つ目、‟新しい領域を見つけるための投資”とは?

今やネットの動画配信番組のほうがテレビ番組よりも制作費をかけているという話も耳にします。出演者へのギャラもテレビより高く、かつテレビより制限もないので、演者もやりやすい。そんな声があるのも事実です。思い切って何かを変えないと、テレビは緩やかに下降していくだけになってしまいかねません。

先ほどNHKが放送同時配信に乗り出したという話をしましたが、これはひとつの投資ですよね。テレビが厳しい中、その突破口のひとつが配信ということは間違いないでしょう。今、スマホで動画を見ることが当たり前になっており、もはやテレビが家にないという人も増えているので、これはおそらく有効な投資でしょう。

 

―投資によってコンテンツ作りの新しい可能性が広がるということですね。

海外では実験的ではありますが、視聴者が自由に出演者を動かせるような番組が制作されています。ゲームなのか、映画なのか、テレビなのか、その垣根がない。実現するにはシステムの開発など投資は必要ですが、その価値はあると思います。誰も見たことのないような映像やストーリーをどう表現するのか、私も勉強中です。

とはいえ、新しさを追求し、とにかく機材や技術に投資さえすればいいという話ではありません。たとえば本来は演出が必要なドラマを、8Kの高精細な映像で撮る必要があるのかということも疑問です。‟隠す”というのもドラマなどの演出では大切なこと。すべてがリアルに見えてしまうことがプラスに働くとは限りません。
コンテンツの新しさは誰もが追求するところでしょうが、一方で新しさだけが求められるのか?というところも疑問です。

コンテンツを掛け合わせることで大きなマーケットになる

─テレビは出演するタレントの存在も大きいと思いますが?

司会や進行が上手なタレントは多いと思いますが、たとえば、たけしさん、鶴瓶さん、タモリさん、ダウンタウンさんなど、圧倒的な存在感と独特のリズムがあり、一瞬でその場の雰囲気を変える力がある。
これぞ‟芸人“といえる人たちはほんの一握りしかいません。また、仮にそういった人が出ているから番組として必ずしも評価されるわけでもありません。これからの番組の切り口を考えるには、コンテンツの解釈を変えることも必要です。

 

―コンテンツの解釈を変えるとは?

人が何を面白いと思っているか、何の情報を必要としているのかということです。

たとえば、バスケットボール専門誌である「月刊バスケットボール」は、発行部数が10万部以上ともいわれ、他のスポーツ雑誌に比べて抜群に売れています。もちろん、学生を中心にバスケ人口が多いことや、昨今のBリーグ発足やNBA選手誕生といった明るい話題などもあると思いますが、それ以前から長年継続して売れている。
その理由が何かというと、全国の中学校・高校のチームの成績をすべて掲載しているからです。全試合掲載されているから、そこに関わっている多くの人が購入して手元に残しておこうとする。ユーザーが本当に知りたい情報、欲しいと思っているものは、実はそこなんです。

 

―他メディアからも学ぶ姿勢は必要ですね。

今まではテレビはメディアの王様でしたが、もはやそんな時代は終わってしまいました。自分たちが中心ではないので、他のメディアからいかに学ぶか、そして‟どう組むのか”も考える必要があります。
みんなテレビを見なくなったといいますが、決して動画コンテンツを見なくなったわけではありません。むしろスマホなどの普及によって、動画を見る機会は増えているのではないでしょうか。昔は大きな水槽だったものが今は細分化されていて、水槽ごとに分かれているイメージです。どうやって他の水槽から他から視聴者を連れて来るかを考える時代です。

たとえばコンテンツの掛け算を考えてみると面白いのではないでしょうか。先ほどバスケ専門誌の例を挙げましたが、仮に40万人の潜在顧客がいるバスケットボールのメディア上で、60万人のファンがいるアイドルを呼んで番組作りをすると、合計で100万人の視聴者が見てくれる可能性が出てきます。
こうしてコミュニティ、コンテンツをレイヤーのように重ねていくことで、数字が伸びる可能性はあるのではないでしょうか。

良質な番組を制作するということは基本ですが、それだけでは難しい時代であることは間違いありません。視聴者が何を求めているのか、そこに届かせるにはどんな手法があるのか、作り手も常に考えていかなければいけないと思います。

 

─本日はありがとうございました。

 

<了>


 

李 闘士男(り としお)

テレビディレクター、画監督。1964年生まれ。 大阪市出身。日本大学芸術学部卒業。バラエティ番組のディレクターとして『とんねるずのみなさんのおかげです』、『サタ★スマ』等数々の人気番組の演出・総合演出を担当。『お父さんのバックドロップ』で映画監督デビューし、『ボックス!』『神様はバリにいる』『家に帰ると妻が死んだふりをしています』などの作品を発表。近年はWEB配信ドラマも手掛けている。

 

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