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2019.8.9

【TV2020】環境を変える努力とコンテンツの掛け合わせでテレビの未来は変わる テレビディレクター・映画監督 李 闘士男さん

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テレビディレクター・映画監督 李 闘士男氏


 

東京五輪まで、あと一年。
2020年は、さまざまな業種で一つの分岐点を迎える年と言われています。
テレビにとっても、若者のテレビ離れや人口の減少、NHKによるテレビ番組のインターネット同時再送信の開始、5Gの商用サービス開始など、影響を及ぼすであろう要素が多く、その先行きの不透明さに対する不安の声も聞こえてきます。

今後テレビの何が、どう変化していくのか。
そして、今後も支持されるメディアであり続けるためには何が必要なのか。
テレビ業界の中・外問わず、様々な視点から2020年以降のテレビを語り、今後の可能性を一緒に考える企画【TV2020】。

第一回目は、テレビバラエティの演出からドラマ、映画の制作などオリジナリティのある話題作を作り続けてきた李 闘士男さん。「映像というコミュニケーションで、みんなをhappyにしたい!」をモットーとする李さんから見る、テレビ業界にとっての【2020】とは? テレビと配信との関わり、コンテンツ作りにおけるアイデアなどを俯瞰的な視点で語っていただきました。

 

【2020】におけるテレビのキーワードは、‟放送”と‟配信”がいかに関わるか

―2020年、いよいよ東京オリンピックが開催されます。各業界がオリンピックに焦点を当てた取り組みを加速化させる中、テレビ業界の動向はいかがでしょうか?

先日、NHKが2019年度内にテレビ番組のインターネットでの常時同時配信を始めると発表しました。これは2020年の東京オリンピックを見据えてのことですが、NHKが従来のテレビの機能である‟放送”だけでなく、本格的に‟配信”を始めるということは業界にとってひとつのインパクトですよね。

NHKの放送同時配信は2016年のリオデジャネイロオリンピック時に試験提供を行ったのが最初です。このときの視聴数の多さから、高い視聴ニーズがあり、さらにSNSなどで拡散されるといったことからも、オリンピックの放送同時配信が視聴機会の拡大につながるという大きな期待がうかがえます。

 

─配信のメリットとはなんでしょうか?

今のテレビ局はデパートのようなもので、売り場面積が決まっています。たとえば、ひとつの放送局で火曜日の20時に流せる番組はひとつであり、これが放送の限界です。
しかし配信であればその制約が外れますので、より多くの視聴者に見てもらえる可能性が増えます。要するに、決まった場所に行かないと欲しいものが買えないデパートと、いつでも好きな時に欲しいものが買えるEコマースの違いのようなものです。

昔は、家に帰ればテレビをつける習慣がある人が多かったですよね。しかし、今はネットがあって、パソコンやスマホで情報が溢れている。また、多くの人が外にいて、スマホで動画を見ている。多様化しているからこそ、そこに対してコンテンツを届けるためにも配信は有効な手段だと思っています。

 

─配信が視聴の環境を更に変えていくのでしょうか?

テレビはいろいろなものに縛られています。そもそも広告ビジネスですから、広告主の意向があります。さらに1980年代後半から芸能プロダクションの力が強くなり、自由に二次利用、三次利用ができなくなりました。もちろん、表現などは放送法によって縛られています。
かつ、エリアの問題もあります。たとえば日本のテレビ局が作ったコンテンツを他国の人に見せるには?などという悩みは、ネット配信であれば考えなくていいことです。これらの縛りはハンデキャップといえます。
だからこそNHKは放送同時配信に乗り出した。この流れに民放が追随するかどうかはわかりませんが、配信によって番組づくりが変化していく可能性はあると思います。

 

動画と人との関わりを読み解くことから考え直す

―“変化”というのは、配信など新しい視聴形態に合わせて、コンテンツを考える必要があるということでしょうか?

内容はもちろんですが、まず根本的に動画と人がどう関わっていくのかということを見直してみることが大切だと感じています。

たとえば、シニア層には自分の興味のあるものや生活の中で参考になるものが好まれるといわれていますが、今の40代、50代がシニアになった時にそうしたものを求めるかどうか。時流を見ながら柔軟に対応していく必要があると思います。一方、若者層は、ネット配信の動画で現実にはあり得ない設定のストーリーをテンポと仕掛けでみせていく刺激的なコンテンツに慣れています。
規制が多いテレビの中でどうやってそこにアプローチしていくのか。動画と人との関わりを改めて考え、距離をどう結ぶのか、そこを考え直す必要があるのではないでしょうか。

 

─ターゲットを明確にすることが必要になるということですよね。

そこが明確なのはEテレですね。『お母さんといっしょ』は長寿番組で、ずっと人気が高い。これは子育て層という一定数のコミュニティ向けの番組だからです。コミュニティを掘って、コミュニティに対してコンテンツをぶつけていく、という発想です。
映像として面白いということだけではなく、必要な情報・求められている情報を網羅していくこと、それが今後求められるテレビだと思います。

 

─視聴率についてはどのように捉えていますか?

たとえば、YouTuberは多くても数万~数百万人に対して動画を作っていますが、テレビは何千万人単位の視聴者がいます。面白さが細分化していく中で、テレビはどうしてもマスを狙わないといけません。だから難しい。
制作側が視聴率にとらわれすぎないために、視聴率とは違った指標があってもいいのではと思います。

 

─テレビ側はコンプライアンス意識が強いのでしょうか?

テレビの場合、放送法の問題やスポンサーの問題などの制約が多いのは事実ですし、その中でどう工夫していくのは制作者の腕の見せ所でもあります。

ただ、最近は、作り手側がいかに問題を起こさないようにするかといった回避意識が強くなり過ぎてしまい、スマートに、より上品に、というものをテレビ局が求めすぎていて、結果、冒険ができない環境になっています。ゲームでもルールは少ないほうが面白いですよね。たとえば、相撲は相手を土俵の外に出すか、倒すかだけというシンプルなルールだから老若男女問わず楽しめる。
テレビ制作においてもルールが増えすぎれば、複雑になり面白さも半減してしまう。エンタメ業界を目指す若い人が、テレビではなく「動画で配信する映像を作りたい」と言っているのを聞くと、テレビ業界が抱えている窮屈さのようなものが伝わっているのだろうと感じますね。

 

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