Synapse編集部×Billboardコラボ企画「音楽番組の影響力とは?vol.2 〜Billboard Japan Hot 100から分析してみる〜」

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Synapse編集部×Billboardコラボ企画「音楽番組の影響力とは?vol.2 〜Billboard Japan Hot 100から分析してみる〜」

Text: ビルボード事業部 ビルボード総研グループ 太田明宏氏

Synapse編集部がBillboardとコラボし、音楽番組の影響力の一端を明らかにしていく連載の第2弾! Billdoard太田氏による、各音楽番組とアーティストにおける分析事例をご紹介します。

前回、「音楽番組の影響力とは?~Billboard Japan Hot 100から分析してみる~」という記事で、各音楽番組が楽曲にどのような影響力を持つのかを、Billboard Japan Hot 100の各指標(CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、Look Up、Twitter、ミュージックビデオ、カラオケ)と株式会社ビデオリサーチの視聴率を基に分析した。今回は、前回の分析データを更新しつつ、新たに各音楽番組とマッチすると考えられるアーティストが誰なのかを探っていくことにする。

分析するにあたって

分析した番組は前回と同様、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系、以下『Mステ』)、『うたコン』(NHK)、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系、以下『関ジャム』)、『バズリズム02』(日本テレビ系)、『COUNT DOWN TV』(TBS系、以下『CDTV』)、の5つとしている。対象期間は前回の対象期間に加え、2019年4月1日から5月7日の期間の放送回の一部を対象としている。対象楽曲数は、『Mステ』が110曲、『うたコン』が152曲、『関ジャム』が48曲、『バズリズム02』が53曲、『CDTV』が66曲である。

音楽番組の分析方法は前回と変わらず、以下の計算式を使用することにした。計算式の説明等に関しては、前回の記事「音楽番組の影響力とは?~Billboard Japan Hot 100から分析してみる~」を参照してほしい。

本コラムで使用する番組平均視聴率は、株式会社ビデオリサーチに許諾を得たうえで、共同研究としてすべて関東地区の世帯視聴率を用いるものとする。また、『関ジャム』では、番組の最後に行われるライブ以外にも企画で様々な楽曲を紹介しており、そこで特にフォーカスを当てられた楽曲はパフォーマンスされていなくても分析の範囲内とした。

それでは、上記の計算式で得られた数値を基に、各音楽番組の影響力を探っていくことにする。

音楽番組ごとに「得意な」指標と「苦手な」指標がある

ここでは、分析によって出た各指標の数値のうち、前回同様でセールス指標(CDセールス、ダウンロード、ストリーミング)にまず絞って見ていくことにする。ただし、今回は前回と異なり、上記の計算式で得られた楽曲の各指標の数値を番組ごとに集計して平均値を出し、ランキング化してみた。

順位 音楽番組 CD DL STRM
1 CDTV 2 3 5
2 バズリズム02 1 4 2
3 関ジャム 5 1 1
4 Mステ 4 2 3
5 うたコン 3 5 4

上記の表は、番組平均視聴率1%につき、どれだけ各指標の占有率に番組が貢献しているかをランキング化しているため、視聴率の順位とは異なるランキングとなった。また、表には記載していないが、5つの音楽番組すべての結果を合計してみると、CDセールスとダウンロードの指標は同程度で影響を与えているが、ストリーミングは他2指標の1/8程度の影響力となっている。

では次の項で、各音楽番組が「得意な」指標を、もう少し詳しく見ていくことにする。

各音楽番組にマッチするアーティストも見えてくる

上記の計算で、視聴率1%当たり各指標の占有率にどれだけ貢献したかを調べたが、ここでは、最も占有率が上がった指標を楽曲ごとに集計し、番組ごとにまとめ、その割合を示した円グラフを作成した(※ただし、すべての指標で全く影響がなかった楽曲は除く)。ちなみに前回の記事でも同様のことをしたが、今回は新たに加えた対象期間も含んでいる。

そして、この分析結果を利用し、各音楽番組にマッチすると考えられるアーティストを挙げていく。そのために、例えばダウンロード指標に強いといった、アーティスト傾向についてまとめた記事「『2019年度上半期のヒットを徹底分析』~アーティストをタイプ別に分類する」を用いることにする。

『COUNT DOWN TV』

Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8
BUMP OF CHICKEN DL LU R K TW MV CD
新しい地図 join ミュージック TW DL R
HIROOMI TOSAKA TW DL LU CD STRM MV R K
女王蜂 DL TW LU STRM R MV CD
MISIA DL STRM K LU MV R TW CD
宮本浩次 DL MV TW STRM R K
※「R」はラジオ、「LU」はLook Up、「TW」はTwitter、「MV」はミュージックビデオ、「K」はカラオケを表している。
※Look Upは、CDをPCに取り込んだ回数を表している。

『CDTV』はダウンロードの指標とTwitterの指標で強い傾向が出ている。この傾向と似ているアーティストは、ご覧のとおり。独自の音楽性も持ったアーティストが並び、これらのアーティスト出演による訴求が期待できる。

『ミュージックステーション』

Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8
新しい地図 join ミュージック TW DL R
SEVENTEEN TW MV STRM DL R
EXO TW MV STRM DL CD
みやかわくん TW CD R DL LU STRM
MONSTA X CD TW LU DL
※MONSTA XはCDセールスとTwitterの傾向の強さが同程度だったため、選出

『Mステ』はTwitterの指標がダントツで高く、次いでダウンロードの指標が強い傾向が出ている。この傾向と似ているアーティストとして男性アーティストが並んだが、アーティストの属性としてはよりTwitterでのチャート・プレゼンスの高いアーティストであり、一層の訴求がTwitter→ダウンロード増加が期待できる。

『うたコン』

Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8
バックストリート・ボーイズ R DL MV STRM TW
KANA-BOON R DL K TW LU MV CD
THE YELLOW MONKEY R DL TW
YUKI R DL TW LU
欅坂46 CD LU TW STRM MV DL K R
吉本坂46 CD R TW DL LU MV

『うたコン』はラジオの指標、ダウンロードの指標、CDセールスの指標で強い傾向が出ている。この傾向と似ているアーティストには、いずれのアーティストも広い世代での訴求が見込めることが分かり、現行の出演ラインナップとも矛盾していないことが分かる。

『バズリズム02』

Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8
槇原敬之 R MV TW K DL STRM LU
Suchmos R STRM DL TW CD
竹内まりや R DL TW LU CD K
ポルカドットスティングレイ R TW STRM MV DL
ビッケブランカ R STRM DL MV TW
ウルフルズ R TW MV DL

『バズリズム02』はラジオの指標や、CDセールスの指標、Twitterの指標で強い傾向が出ている。この傾向と似ているアーティストは、ベテランから若手まで幅広くラインナップしており、こちらも出演ラインナップと類似している。『バズリズム02』出演での訴求によって、ラジオ・Twitter→CDセールス・ダウンロード増加が期待できる。

『関ジャム 完全燃SHOW』

Type 1 Type 2 Type 3 Type 4 Type 5 Type 6 Type 7 Type 8
MAN WITH A MISSION DL R STRM TW MV
WANIMA DL LU MV R K CD TW
倉木麻衣 DL LU CD K TW R
鈴木雅之 DL LU R TW CD STRM K
Aimer(エメ) DL LU STRM K TW CD MV R
Foorin DL LU STRM K CD R TW

『関ジャム』はダウンロードの指標が特に強い結果となった。なので、マッチすると考えられるアーティストとしてダウンロード指標が一番強いアーティストを並べたが、この多くは次いでルックアップが強い傾向を持っている。また、『関ジャム』のルックアップの比率は他の番組よりも高い。ダウンロードだけでなくルックアップの増加も期待できる。

このように音楽番組ごとにマッチすると考えられるアーティストを並べてみたところ、アーティストの並びだけを見ても、現行の出演ラインナップと近似し、かつ、それぞれある程度一貫した特徴を持つものとなっている。そして、音楽番組に起因するユーザー視聴動向を掴むことで、一層の出演効果を上げられるラインナップが考えられる。Billboard JAPANは今後も、TV番組の影響力をチャートデータと照合、ユーザー動向を描き出すリサーチを継続していく。

(この記事は以下ビルボードジャパンのサイトに掲載された記事を編集したものです。
http://www.billboard-japan.com/special/detail/2714

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