HOME テレビ 【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】世の中の変化とともにテレビも新時代に
2019.6.4

【 鈴木おさむ の WHAT’S ON TV ? 】世の中の変化とともにテレビも新時代に

SHARE ON

このエントリーをはてなブックマークに追加

 

番組の価値を決定付けるもの

―鈴木さんはどんなデータの見方をするのでしょうか?

たとえば僕が今Abema TVでやっている、「おはようロバート」という番組では、リアルタイムの放送時間をあえて朝にしています。そして、番組の一部を切り出して、YouTubeに流すんです。そうするとYouTubeの再生数が一つの基準になってきます。
ただ、YouTubeでたくさん再生されてツイッターのトレンドに上がっていても、Abema TV内のビデオはそれほど回らないということもありますので、そこはどういう番組がYouTubeやツイッターの数値がよくて、どういうものがビデオで観られるかなどの分析が必要となってきますね。
YouTubeのデータはオンタイムで出るので、「今現在どれくらい再生されているか」がハッキリと見えるので、非常にシビアだなと。それを受けて、「今日の内容は反応が悪かったから明日は変えていこう」といった具合に、番組の作り方もどんどん変えていくんですよね。

 

―どの指標も基準を自分の中に持っておくのが大事になりそうですね。

テレビ番組でも、たとえ視聴率が一桁しかなくても、「世の中で話題になっている」ということが、一つの基準にされていますよね。
実際にツイッターのトレンドの話は、制作のメンバー内でもよく出ます。視聴率が同じ5%だとしても、「トレンドに入っているかどうか」が、一つプラスの評価基準になるのは紛れもない事実です。ヤフー等の検索ランキングよりも、ツイッターのトレンドが重視されている感じですね。Abema TVの僕がやっている番組では、世界トレンドに入れば世の中のツイッターをやっている人たちに知ってもらえるので、テレビにはないリーチがあるという判断をしていると思います。

個人視聴率やコア視聴率など、使えるデータが増えて混乱している現状ではありますが、ラジオだけでなくテレビでもTBSが少し進んでいるような印象を受けています。たとえば『水曜日のダウンタウン』は、世帯視聴率が10%に届かなくても、個人視聴率はもちろん、ネット上で見えたり感じたりする「世の中の評判」みたいなものも換算して、番組の価値が判断されているように思います。こういう番組があることは、テレビの希望だなと感じています。

 

―「世の中の評判」もデータ化できると、番組の後押しになるかもしれませんね。

おそらく、そんな評価の仕方も出てくるのではないでしょうか。モノが売れたりすると一番わかりやすいのですが、今どき音楽だってCDの売上だけで見るというのも難しいですよね。僕が知りたいなと思うデータは、直接的な数字と、世の中への影響力です。TOKYO FMでやっている『SCHOOL OF LOCK!』なんかは、数字的には同じ時間帯にやっている番組より小さいかもしれないけれど、高校生に特化すると、実はこっちのほうがめちゃくちゃ凄い影響力を持っているとか。500万人が観ている・聴いているだけという番組と、1万人がお金を使う番組だと、後者のほうが世の中を動かすという話もあるじゃないですか。

基本のデータベースがありながら、そういう影響力が見える指標があるといいですよね。これからの世の中は、結局はマネタイズが重要になっていきますから。

 

ローカル局はどう時代に乗るか

 

─ローカル局のマネタイズについてはどう思いますか?

地方局は、東・阪・名も含めて、ゴールデン番組の自社制作が増えている気がします。たとえば関西テレビでいうと、火曜夜7時8時はフジテレビの番組をネット受けしていない。
「地元のことを観たい」という視聴者は多いので、各局が独自で作って自分の所だけで放送して儲かっていくことができたら、本当はそれが理想的なのかもしれません。ラジオ化していくようなイメージですね。ローカルのワイドショーは地元の視聴率が良いので、地元に残っている40代以上の方々からの視聴率を取って、地元のお店がそこに広告を出すというのも一つのビジネスモデルになります。それはそれで、ローカル局の残り方の一つなのではないでしょうか。

 

─とは言え、制作費の問題は大きいですよね。

毎週500万円で番組を作るとして、その費用を捻出し続けることができるのかどうかは、一つの課題になりますね。地元に根付いていることで、意外とやっていけるのではないかとも思うのですが。北海道テレビ放送では、50周年の地上波ドラマの放送に先駆けて、Netflexで先にリリースしていました。視聴者との接触を増やすためにも、そういうことをもっとやっていくべきだと思います。さらに、広告以外のところで商売もしていかなければ難しいと思います。

 

─「こういう取り組みをするといいかも」という事例などはありますでしょうか?

放送以外の収入をいかに増やしていくかということを、具体的に考えなければいけませんよね。
たとえばテレビ局という名のもとに、ちゃんと“儲かる”イベントやフェスを開催するとか。テレビで放送されていることをベースに、いかにイベント化していくかを、イベント会社として考えていくことも大事です。地元を巻き込んでいくのは、全国規模の企業としても本当は嬉しいことだと思うんですよ。
ローカル局と組んでタレントを生み出すのも面白いのではないでしょうか。プロダクションにタレントはたくさんいるので、ローカルと組んで何か利益を出していくというのは、双方にとってメリットがあるはずです。実際、東京から地方に行ってベルトで番組を持てたタレントや芸人もいて、彼ら自身も結果として東京にいる時よりお金が稼げていますから。それがさまざまな地方で成立していく形になるといいでしょうね。

 

 

サイマル放送はテレビを殺さない

 

―視聴形態が多様化する一方ですが、テレビはどうしたら元気になると思いますか?

サイマル放送が始まったときに、データの取り方がどうなるのかということが、非常に興味深いです。テレビ局がサイマル放送をやりたくない一つの理由は、“視聴率”なのではないかと。「テレビではなくスマホで観るようになると、数字が下がってしまうのではないか」と。
しかし、視聴者の絶対数や世の中への影響力という観点から見れば、数字は跳ね上がるはずなので、やらなければ相当もったいないと思います。サイマル放送が始まったら、『めざましテレビ』を電車の中で観る人が増えると思うんですよ。テレビの生放送の情報番組、特に朝の情報番組のクオリティは非常に高いので。そうなると、20代向けの情報番組が生まれてくる可能性もあると思うんですよね。

 

―鈴木さんはサイマル放送をポジティブに捉えておられるんですよね。

世の中が求めるものが完全にそちらに流れてきているので、それは仕方のないことかなと思っています。民放局がどれだけ敬遠していても、NHKが始める以上はやらざるを得ない気もします。先手は絶対に打っておくべきです。LINEもFacebookも全部ライバルになるわけですが、テレビの能力は非常に高いので、視聴者との接触のチャンスが増えることで、 “観る番組”も増えるかもしれないという期待感があります。

 

─そのときのデータのあり方については、どのようにお考えですか?

サイマル放送が始まった後、スマホで視聴された“1”と、テレビで視聴された“1”を、同じように捉えるのかどうかは議論に値すると思いますし、やはり世の中への影響力という部分のデータも見たいです。また、年配の方の視聴率を今後どう考えていくかというところも、一つのポイントになってきますよね。

今の時代の若い子たちはあまりお金を使わなくて、逆に僕らのような40~50代、あるいはそれ以上の年代のほうが、購買意欲が高いんじゃないか。そこを考えると、高い年齢層の視聴率は切り捨てずに、きちんと見ていくべきという考え方はあってしかるべきですよね。
20代の視聴率が重視されがちですが、ブームになったドラマ等の視聴率を紐解いていくと、ティーンと40代が親子で観る番組の爆発力や世の中への影響力は本当に大きいので、そこは大切にしていかないといけない部分です。
サイマル放送が始まると、市場にも変化が起きると思いますが、始めなければ視聴者との接触確率は下がっていく一方なので、模索しながらも前に進み続けるしかないと思っています。

 

 

世の中は移り変わる。テレビのこれからは?

 

─放送業界が色んな意味で時代の変わり目にあります。番組企画やコンプライアンス面ではいかがですか?

あらゆることに対して世の中の意識が変わり、昔より配慮が必要になっている部分はありますね。
たとえばLGBTの方々についての認識が深まったことで、“オネエ軍団”を面白おかしく取り上げることがなくなったり、東日本大震災以降に、昔あった“食べ物”をネタにした笑いが、笑えるポイントではなくなったりしました。若い世代の人たちが優しいので、芸人さんがツッコミで頭を叩いたりすることも減っています。

でも、それはコンプライアンスが厳しくなったというよりは、世の中の意識の変化ですから、作りづらいとは思わずに受け止めています。結果として、YouTubeやAbema TV等に居場所を求めて作り始める人もいるでしょうし、テレビで無理矢理“作りやすさ”を求める必要はありません。本や映画と一緒で、趣味がよりパーソナル化、カテゴライズされていくのではないでしょうか。

 

─マネタイズの在り方も多様化していますね。

テレビ朝日の『おっさんずラブ』は、平均視聴率こそ3%台でしたが、SNSを活用したイベントや映画化でマネタイズに成功しました。これって、ものすごく分厚い3%ですよ。
視聴率と売上は必ずしも比例しないところが、評価が難しくなる所以です。仮面ライダーにしても、視聴率は高くないのかもしれませんが、莫大な売上をあげていますよね。テレビの枠を、売上のためのツールとして活用するという方法もあるわけです。

ラジオもテレビも、存続のためには「営業がつくかどうか」に必死にならざるを得ないので、CMの在り方にも変化が表れるのではないかと考えています。たとえば、これまで時間規制のあったCMが、ゴールデンタイムに流れる時代が来るかもしれません。子ども向けのお菓子やおもちゃのCMはYouTubeに流れている部分もあるし、ジュースやファストフードのCMも、若い世代に向けたコンテンツへと流れています。一方で、店頭広告に力を入れ始める企業も少なくありません。
テレビCMのパワーはまだ大きいと思いますが、無駄に打つと効果が少ないということもあります。売り方も出稿の仕方も、従来のやり方から脱却するときが来ています。番組のためではなくビジネスのためにも、より詳細なデータが求められてくるでしょうね。

 

―本日はありがとうございました。

 

<了>

1
2

関連記事


Synapse編集部が行く!日本アニメの現状 Vol.2 「制作現場の問題と、変革の兆し」

PREV

Synapse編集部×Billboardコラボ企画「音楽番組の影響力とは? ~音楽番組視聴率とBillboard Japan Hot 100から分析してみた~」

NEXT

人気の記事

RANKING

最新の記事

WHAT'S NEW

MORE