HOME テレビ 数字の本質を見極め、既成概念にとらわれない発想が将来へのビジョンにつながっていく 長崎文化放送(NCC)東京支社 業務部副部長 朝長孝至さん
2019.1.29

数字の本質を見極め、既成概念にとらわれない発想が将来へのビジョンにつながっていく 長崎文化放送(NCC)東京支社 業務部副部長 朝長孝至さん

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数字のマジックは惑わされずに利用するもの

 

―2018年上期、各ローカル局の東京支社では、売上の前年同期比で100%割れをする局が大半の中、NCCさんは104.8(スポットは105.8)%という数字を叩き出しました。この背景にあるものは何だったのでしょうか。

大前提として、とにかく営業がもの凄く頑張ってくれたということがあります。僕自身が営業を経験しているので、営業が一番大変だということが身に染みてわかっています。
サッカーでたとえるなら、ゴールを決めるのは営業で、スポットデスクはアシスト。だからこそ、最高のキラーパスを出して営業がゴールを決められるようにしたいと思って取り組んできました。

 

―最高のキラーパスを出すにあたって、どんな事に留意しているのでしょう?

営業時代から抱いていた疑問を常に根底に持つようにしています。「なぜ値下げしちゃいけないの?」「なぜコストが4桁を切ってはいけないの?」「今、稼働率が90%だとして、なぜ99%までいくのがダメなの?」といった、営業として当たり前とされてきたことに対する疑問の数々を、「今までがそうだったから」で片付けずに、もっと本質的に考えていくことを心がけています。
たとえば、閑散期の1月と8月だけサービスを出す文化については、見直す余地が大いにあると思っていました。
僕は帰省をするとき等に飛行機に乗るのですが、長崎なので遠いうえに、お盆とお正月は航空券の値段が跳ね上がります。万単位で値段が違うのに、家族と過ごしたいからみんな飛行機に乗って帰ります。要するに、完全に売り手市場なんですよね。
でも、テレビ局はそうしたビジネスの構造とは真逆で、繁忙期(7月、11月など)に値上げができるわけでもない割には、活況ではない1月と8月にこちらからサービスをバンバン出している。それって変だよなという疑問がずっとあったんです。

 

―そうした疑問も踏まえて、独自のコスト設定をされていると伺っています。

1月と8月を閑散期設定にするというセオリーに縛られずに、全体のコストを調整して、コストを相対的に上げるという方針にしました。平均が下がることを懸念する声もありましたが、この業界には「サービスを提案する」というプロセスが絶対にあるので、そこをうまく利用し、売り手市場時にどうなるかを考慮し続けました。

 

―年間を通しての実質的なプラスを重視されたのですね。

たとえば、101万円の車が100万円になるのと、500円のペンが250円になるのを比べると、半額のペンのほうが一見お得に思えますが、実は車のほうは1万円も落ちているんですよね。人はつい「相対的に落ちた」ということに着目してしまって、絶対額を考えない傾向があります。つまり、“見せ方”も重要なのです。実質的な金額よりも、落差が大きいほうが得をした気分になりますから。

 

―コスト設定で、ほかに留意されていることはありますか。

パーコストの設定にあたって、数十円の違いを大切にすることですね。細かく設定することが非常に重要なのです。東京支社だけでも年間約90万GRPくらいあるので、パーコストが30円あがると年間2700万円の売上アップにつながります。会社全体で170万GRPあるとしたら、5100万円もの売上アップになる。いきなり5100万円稼いで来いといっても、どんなに優秀な営業マンでも無理がありますよね。それが、この30円の意識で自然と実現されていきます。ある月は、実際に42円上がったんですよ。小さな数字に見えるかもしれませんが、パーコスト42円アップ=月間売上315万円(東京支社月間使用7万5千GRPとすると)アップです。

 

―そのようなコスト設定法を、営業のみなさんと共有されているのですか。

実は、あまりしていません。見積もりは状況によっても変わっていきますから、第一線にいる営業マンたちが常に全てを把握し続けるのは難しいのです。
でも僕は、細かい部分に関しては、こちらがわかっていればそれでいいと思っています。それがスポットデスクの仕事であり、アシストですからね。

 

自分で考え、分析し、斬り込んでいく

 

―枠全体の「構造」についてはどのようにお考えですか。

使っていない時間帯をいかに使うのか、脂がのっている時間帯をいかに残すかが大事ですよね。ムラをなくして、売れていないところも上手に売っていけば、自然と売れ筋枠の在庫も残っていくはず。そういう意識を持ちましょうというのは、営業はもちろん本社にも常に言っています。
あとは、全部の空き枠がラスト1本になったら・・・という事も考えます。一見、もうほとんど在庫がない程に少なく感じるかもしれませんが、稼働率をきちんと計算すると約93%くらい。約7%の枠が余っている事になるんです。15万GRPを持っていたら、約1万500GRP分余っていることになります。パーコストが1000円だとしても、1050万円分ですよ。全部の空き枠がラスト1本って、それくらいの物量なのです。
まずは理解することが大切ですよね。在庫がどれだけあって、コストがどれくらいで、GRPがこれくらいで・・・それを把握していなければ、売上とコストの最適化はできませんから。

 

―朝長さんの構造解明気質をいかんなく発揮されていますが、それはスポットデスクになってからすぐに取り組まれていたのですか。

最初は単純に、線引きをするのが大変でした(笑)。だんだん余裕が出てきて、いろんな計算をするようになっていましたね。計算で全てが済むとは思っていませんが、手応えも感じています。
サービスの出し方や、バイアスのかけ方はかなり計算し工夫しています。ハイカロリー部分の“のみ取り(土日のみ取りなど)“なのにコスト設定が低いという、過去の実績も見直しています。

 

―ハイカロリー層の枠が余る心配は?

枠が余るということは、また別のところに枠を売れるチャンスですよ。繁忙期の枠不足問題にも対応することができます。

 

 

中長期的なビジョンをもって

 

―スポットデスクとして大切にされていることは何ですか。

ぱっと見では小さく見える数字に隠れた大きなインパクトに気付くことです。凄く単純な例を出せば、パーコストを1%上げることに成功すれば、売上が1%上がります。たかだか1%と思うかもしれませんが、ローカル局といえども、NCCの年間売上からすれば、1%でも数千万円です。ここに気付いて策を練ることができるかどうかが大事なのです。

 

―スポットデスクが舵取りをしていけばいい?

現場で頑張ってくれている営業マンが細々と考えなくてもいいように、僕らスポットデスクがうまく提案を作るべきだと思っていますし、毎回の案件ごとに細かい計算をしていると大変なので、数式を埋め込んだ表を作成して活用したりしています。
ただし、営業は時間との勝負になることも多いので、最低限の設定だけは覚えて欲しいと伝えています。ある案件で代理店を訪れて「これ高いよ」と指摘されたときに、僕に電話して確認していたら勝負に勝てないですよね。その場ですぐにレスポンスを出さないと。
僕も営業の経験があるので、100%全ての見積もりを追うことができないというのは分かっているのです。キーマンが営業なのか業務推進なのか、案件・お得意様ごとの事情や、今後の広告展開のスケジュールなども絡んでくるので、完璧に把握することは至極困難です。
僕らスポットデスクの役割は、瞬時に判断できる範囲での“価格の出し方”を営業に示して、理想的な着地点にはまるように“仕向ける”ことだと思っています。

 

―見事、その戦略が実を結んだ上期でした。

そうですね。前年比105.8%という数字も然りですが、主要代理店のシェアがほぼ上がった(前年比)という事は、大変嬉しく思っています。

 

―ローカル局の課題をどのようにお考えですか。

地方局はどうしても人が少ないので余裕がないという実情があります。しかし、本当なら統括デスクみたいな部署が存在して、実勢価格や限界コストの大体のイメージを掴んだ上で、全社として売上をどこまで上げていきたいのか、持っているGRPをどう料理していくか、戦略を練っていけると良いですよね。市況は良いとは言えないので、いかにクレバーにやっていくかだと思います。
また、発想の転換も必要だと思っています。ナショナルクライアントの動向は変えられないので、まずはシェアを取りにいかないと、前年比も売上UPも実現は難しいですよね。ただ、叩き合いでシェアを取りにいくと、将来的にエリアの枠は崩壊して、値下げにも歯止めがきかなくなります。そうしたずっと先までのビジョンを持って、備えていくようにしないといけないと考えています。

 

夢を叶えた先に広がる世界は

 

―これから新しく取り組んでいきたいことはありますか。

テレビ以外の勉強もしたいですね。これからの時代は、テレビだけやっていても取り残されてしまいますから。ちなみにウェブ解析士も取得しました(笑)。
一方で、地上波の良さも大事にしていきたいです。今はインターネットテレビに勢いがあって、200万~300万視聴といった大きな数字が目立っていますよね。でも、世帯数と視聴率を元にきちんと計算すれば、ローカル局の地上波だって負けていないはずです。
視聴率を視聴数に直して提示することは簡単ではありませんし、難しい計画かもしれませんが、テレビの信用度があるうちにトライしていきたいなと思っています。
営業時代にコンサートを主催させて頂きましたが、ある年にAbemaTVの中継を実施し、25万視聴を突破しました。先ほども少し触れましたが、こういう媒体との関わり合いについても、これからしっかりと考えていきたいと感じました。テレビとネット。それぞれに得意分野や強みがあると思うので、ローカル局にいながらも、上手くそれぞれに関わっていく道を切り拓いていきたいなと感じました。

 

―本日はありがとうございました。

 

 


長崎文化放送(NCC)東京支社 業務部副部長 朝長 孝至(ともなが たかし)

1980年長崎県西海市生まれ。入社後は編成業務部に配属、5年間の編成経験を積む。その後東京支社へ転勤となり、ネットワーク担当、営業を経て、2017年スポットデスクに就任。2018年上期、開局以来初のローカル計1位の快挙を達成し、東京支社で社長賞を受賞した。

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