HOME テレビ 見る人も、作る人も楽しめる。そんな番組を20年続けたい 新潟総合テレビ(NST) 制作部副部長 北村芳貴さん
2018.12.21

見る人も、作る人も楽しめる。そんな番組を20年続けたい 新潟総合テレビ(NST) 制作部副部長 北村芳貴さん

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新潟総合テレビ(NST) 制作部副部長 北村芳貴氏


NST(新潟総合テレビ)の自社制作番組『八千代ライブ』は、2017年4月の放送開始以来、新潟で異色の番組として徐々に浸透しつつあります。その生みの親が、番組のプロデューサーを務める北村 芳貴さん。理想とする番組を、限りあるリソースの中で出演者やスタッフと各々アイデアと工夫を凝らし、実現させています。MCであるスーパー・ササダンゴ・マシンさんの力も得ながら「とにかく番組を長く続けたい」と話す北村さんが、『八千代ライブ』にかける思いを語っていただきました。後半にはササダンゴさんにもお話を伺っています。

 

憧れが、番組制作へのこだわりに

―NSTにおける北村さんのご経歴を教えてください。

僕は2007年に入社したときから制作部です。他の部署に呼んでもらえないまま11年が経ちました(笑)。入社する前から番組制作を志望していたので、運が良かったなと思います。

 

 ―どういった番組を作りたいと思って入社されたのでしょうか?

フジテレビのバラエティを観て育ったため、あの世界観に強い憧れがありました。新潟で就職したかったので、フジテレビ系列のNSTがいいなと。実際には、ローカル局ではなかなかバラエティ番組を作ることはできないのですが、情報番組の中にも自分なりにバラエティ要素を足していきたいと、入社当時から思っていましたね。

 

―入社される以前、NSTにバラエティ色が出ている番組はありましたか?

2001年から土曜夕方に放送している『スマイルスタジアム NST』というローカル情報番組があり、当時はこの番組がNST唯一の情報番組でした。

その番組で3年ディレクターをやって、4年目にプロデューサーになりました。視聴者の方から主に求められるものがグルメや旅の情報なので、あまりバラエティ要素を盛り込むと視聴率的にも反応が良くないな、と感じていました。それでも、1本のVTRの中に1ヶ所は笑えるポイントを作りたいと思って制作していましたね。

 

―もっとバラエティに寄せた番組を作りたいという思いも当然あったのでしょうか。

そうですね。そこで2013年に僕がプロデューサーとして『八千代コースター』という情報番組を立ち上げました。放送時間は土曜の朝ですが、番組説明に「土曜日の朝に相応しくない情報番組」というワードを入れました(笑)。

土曜朝はUX(新潟テレビ21)さんが『まるどりっ!』という伝統ある情報番組を放送していて、後発で同じ時間帯に『八千代コースター』が入ることになったため、差別化をする必要がありました。(※現在、八千代コースターの放送時間は変更されています)

 

―差別化は、どんな点を意識されましたか?

『まるどりっ!』は、1時間の生放送で、ニュース、中継、旅コーナー、グルメが盛り込まれた、王道の情報番組。同じことを後発でやっても勝ち目がありません。かつ、スタッフも限られていましたから、『まるどりっ!』と逆のことをやろう、というくらいの意識でした。

 

会社からは生放送の指示があったのですが、僕は「絶対に収録で」と考えていました。地方局で収録の情報番組はとても珍しいと思うのですが、同じことをやって視聴者を引き抜くよりも、違う視聴者を引きつけたほうが生産的だと感じたのです。バラエティ要素に加え、ファンタジー要素やコメントフォローを入れる等、生放送にはないテンポの良さも演出できるので、差別化できたのではないかと思います。

 

―「収録にしたい」という思いを、会社にどうやって通したんでしょうか?

先発番組との差別化、それと番組スタッフの少なさ、それらの打開策として提案しました。土曜夕方の『スマイルスタジアムNST』が生放送なので、同じ土曜の朝に『八千代コースター』を生放送でやるのは無理が生じるという事情もありましたね。

『八千代コースター』は放送開始当初から、火曜日の夜に収録しています。地方局の番組はどうしても土日に重なりがちなのですが、火曜日あたりは割と空いていて、タレントも「土日だと営業に出ているけれど、火曜の夜なら出演できる」という方も多いので、うまくハマったなと思います。

 

―番組名である「八千代」へのこだわりは?

八千代はNSTの社屋があるエリアの地名なのですが、実は新潟の方でも八千代の認知度は高くありません。ですので、もっと八千代を知ってもらいたい、そして八千代(永遠)に続いて欲しいという願いを込めました。

周囲のスタッフはあまりピンと来ていなかったようなのですが、慣れればどんな名前でも定着するものですね。

 

 

『八千代ライブ』の誕生秘話

―『八千代ライブ』は『八千代コースター』の姉妹番組として2017年4月から始まっていますね。『八千代ライブ』はどういう経緯で始まったのでしょうか?

まず、局として夕方のニュースの数字を上げたいという狙いがありました。各局とも同じだと思うのですが、夕方のニュースの数字が上がると、その後のゴールデンタイムも強くなります。本当は月曜~金曜の帯でやれたら良かったのですが、まだその体力がなかったので、週末が良いだろうということから金曜のこの時間帯を与えられました。

とはいえ、新番組を作るとなると、経費面や運用面で考えることが山積みです。かつ、ハード面でも課題があり、番組セットの収容キャパが局内では限界でした(笑)。

そこで、『八千代コースター』の姉妹番組にしよう!と決めました。「八千代」という冠を入れることで、セットが共有できるため、新たに作ったり収容する場を考える必要がないですし、出演者が似通っていてもオッケー、といろいろ融通がきいて効率的です。

あとは純粋に、立ち上げから関わった『八千代コースター』に愛着がありましたし、「八千代」の名前をもっと出していきたいという気持ちもありました。

 

―ニュースのボトムアップが目的だったんですね。金曜25時から再放送もありますが、この狙いは?

番組の露出を増やして知名度を上げるため、それと金曜夕方には物理的に観ることができない人たちにも観てもらいたいという背景で始めました。

 

 

 (左から)出演者のNao☆さん(Negicco)、スーパー・ササダンゴ・マシンさん、水谷悠莉アナウンサー

 

─『八千代ライブ』の制作で意識されたことは何でしょうか?

『八千代コースター』と同様、裏局の先発番組との差別化を意識しました。平日の夕方はローカル情報番組の王者のような番組が放送されている時間帯ですので、スタッフの数の違いや他局が培ってきた伝統を考えると、同じことをやってもおそらく太刀打ちできません。

また個人的な思いとして、子どものころ、学校から帰ってきてもニュース番組しか放送していなくて退屈だった記憶がありました。この時間帯はやはりニュースが多いのですが、『八千代ライブ』では逆にその“ニュース”というテイで、笑いを取り入れるというコンセプトで番組を立ち上げました。

 

―番組の内容や作りの部分で『八千代コースター』との違いはありますか?

『八千代コースター』には長尺のVTRが入っているのに対して、『八千代ライブ』は今でこそVTRを入れていますが、最初はVTRを入れない方針でした。

理由は、純粋にスタッフがいなかったからです。『八千代ライブ』を見た他局の方からは、「タレントをたくさん使っていて豪華だね」と言っていただくのですが、実情は真逆。NSTの場合は今あるもの以上にVTRを作ろうとしたら外注するしかない状況です。VTRって意外と制作するのに費用がかかるんですよね。その費用を出演者に充てようと考えました。新潟の番組でこれだけタレントさんを呼んでいる番組はなかなかないのですが、こうした裏事情もあって結果的に豪華に見えます(笑)。

 

SNS、イベントで伝わる視聴者の熱量

―視聴者は『八千代ライブ』をどう楽しんでいると感じていますか?

僕はエゴサーチが大好きで、ツイッター等を見ていると良い反響が多くて嬉しくなりますね。最近は、街で撮影をしていても「観てますよ」と声をかけていただくことが増えたなというのを、視聴率以上に感じています。

 

―視聴者の反響を特に感じる機会はありますか?

NSTが主催している秋の「NSTまつり2018」で「八千代ライブステージ」という番組のイベントを開催したときは、たくさんの人が集まって本当にみなさん盛り上がってくれて「ああ、愛されているなぁ」と嬉しかったですね。「八千代ライブステージ」は番組でも放送したのですが、イベントでもオンエアでも、どちらを観ても納得していただける内容にしたいという強い思いがありました。

 

―視聴率についてはどのようにお考えですか?

何となく数字が予測できる番組もあるのですが、金曜夕方の『八千代ライブ』は少し勝手が違っていて、自信のある回や有名なタレントさんが出演した回の数字が思いのほか伸びないことや、その逆も大いにあります。金曜夕方という時間帯は視聴者の出入りが激しく、天気等に左右されることもあるでしょうし、ニュース番組の多い時間帯なので、裏で大きなニュースが報道されているとやはりそちらに流れてしまいます。

 

―読めない要素が大きいですね。

ですから視聴率を上げることは一つの目標ですが、一喜一憂しすぎないように心がけています。「結果が出なかった=この内容はダメだ」とは思わないように、判断を焦らずに続けていくしかないのかなと思っています。たとえば僕が中高生だったら、『八千代ライブ』を選ぶだろうという気持ちもありますし。とはいえ、その時間にテレビを見る若い人自体が少ないのも事実。それでも、元々テレビを観ている層に向けたコンテンツを狙っていくよりも、テレビを観ていなかった人が観てくれるようになったら嬉しいですね。

 

―SNSやデジタルコンテンツの活用状況について教えてください。

ありがたいことに、ツイッター等で新潟県外の方から「全国放送してください」というお声をいただくことがあります。地上波では難しいので、ネットで同時配信ができるような仕組みが選択肢になってくると思うのですが、まだマネタイズの部分で動き出せないというのが実情です。

また、「新潟県民だから視聴できる」という特別感も大切にしたいです。ツイッターの反応で嬉しいのは、「新潟に住んでいて良かった」とか、県外から来た方が「やっと八千代ライブ観れたよ!」といったツイートをいただいたとき。出演者のひとりであるNegiccoさんのファンで、『八千代ライブ』を観るためにわざわざ他県から車で来てくださって、車の中で観たという方もいらっしゃいました。そういった“特産品”のような感覚を大切にしていきたいです。

 

―飲食店の不人気メニューを紹介する「埋蔵グル次郎くん」や、スーパー・ササダンゴ・マシンさんが街の方に“座右の銘”と“座左の銘”をインタビューする「THE左右の銘」など、変わった企画が多いですが、突っ込み所の多いシュールな作りはSNS向けの戦略だったりもするのでしょうか?

SNSを盛り上げようという意識はなく、付加価値だと思っています。スポンサーに「これだけ人気のある番組です」と示すための手段にもなりますし、スタッフさんも自分たちの番組が好きなので、各々エゴサーチをしてLINEで共有したりしています(笑)。

突っ込み所や余白を残しているのは、僕ら番組側で完璧なものを作ることは難しいので、だったら出演者さんに突っ込んでいただける状態で出したい、出演者さんたちが活きる作りにしたいという狙いがあります。出演者のみなさんが優秀なので、ちゃんと成立させてくださっていることに感謝しかありません。

 

 

 『八千代ライブ』の攻め方

―NSTの局内で『八千代ライブ』はどう受け止められていますか?

あまり数字が良いわけではないのですが、続けさせていただいていることに感謝しています。生放送なのでリスクも伴うのですが、自由にやらせてもらっているので、NSTは大らかだなと感じますね。

また、うちの営業部の皆さんが優秀で、提供チェンジ(競合同士が同じ番組にスポンサーにつくのを避けるため、一つの番組でも前半後半などに分けること)が入るくらい『八千代ライブ』を売ってきてくれるので、ありがたいなと思っています。

 

―『八千代ライブ』は、企業の方が出演されることも多いですよね。毎回ユニークな演出で思わず笑ってしまいます(笑)。

企業とのタイアップ企画をやる際も、単なる紹介ではなく何かしら企画、演出を工夫するようにしています。

タレントさんが急に商品紹介を始めるような作りは少し不自然ですよね。なので、企業や商品を紹介する場面でも、何かしら「理由」が欲しいのです。

たとえば、単に「今日は○○さんが××の紹介に来てくださいました」ではなく、「○○さんがお悩み相談に来てくださいました」とか、「カリスマモデルを目指す△△さんが、よりキレイになるために××の取材に行ってきました」といった前フリをして商品紹介につなげる。できるだけ番組になじませたいので、何かしら違う切り口での設定を重視しています。

また、出演していただく企業の方にも楽しんでいただけるような作りにしたいですね。僕は企業タイアップものが割りと好きで、企業側の「伝えたい情報」をいただいたら、どういうやり方でその情報を出そうかと考えるようにしています。

 

―そのあたりは『八千代コースター』と比べても『八千代ライブ』は特に攻めていますよね。

『八千代コースター』は今年の4月で担当を外れたのですが、それまでは両方に携わっていたので、意識してそうしていました。まずは番組を知ってもらうことが大切なので、最初は変わったことをして、成熟していくごとにマイルドになっていくというのは、番組の成長の過程で必要なこと。『八千代コースター』は認知されているので一般化していく時期、『八千代ライブ』はまだ攻める時期だと考えています。

 

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