HOME テレビ トロント国際映画祭2018取材【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】~映画の“いま”を追い求め、世界中を巡る取材の旅へ~
2018.12.10

トロント国際映画祭2018取材【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】~映画の“いま”を追い求め、世界中を巡る取材の旅へ~

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小西 未来(こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ! 世界が恋する日本酒」の第2弾の公開を控える。


【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】 第6回

当サイト「Synapse」の連載「小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ」でもお馴染みの小西さん。ハリウッド外国人記者協会所属の映画ライターとして、数多くの映画やテレビドラマの取材活動に、世界中を飛び回る忙しい毎日を送られています。今回は、そんな小西さんの近況をお聞きしながら、トロント国際映画祭の話題や、これから本格化する賞レース、小西さん自身が選考するゴールデングローブ賞の裏側について、ざっくばらんに語っていただきました。

 

賞レースの行方を占うトロント国際映画祭

 

―小西さんには「Synapse」の連載で、欧米の映画やテレビドラマについて最新の記事を連載していただいています。そこで今回は、小西さんが普段どのように映画やテレビドラマの取材活動をされているのかをお聞きできればと思いますので、よろしくお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いします。

―まず、ここ最近で印象に残った取材活動はありますか?

なんと言っても9月6日〜16日にカナダのトロントで開催された「第43回トロント国際映画祭」ですね。

 

―不勉強で恐縮ですが、それは大きな映画祭なのですか?

日本で映画祭と言うと、カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンで行われる世界三大映画祭が有名で、トロント国際映画祭はあまり知られていませんが、アカデミー賞を頂点とする今後の賞レースを占う映画祭として、近年では最も注目されている映画祭です。

「TIFF(ティフ)」の愛称で知られるトロント国際映画祭は、1976 年に始まった当初こそ地味な映画祭でしたが、現在では世界 60 カ国以上から選ばれた 300 本以上の作品が上映され、来場客数ではベルリン、カンヌに次ぐ規模に成長しています。世界初公開(ワールドプレミア)となる映画も数多く、TIFF で成功することが、その後の映画の興行を大きく左右するとまで言われる重要な映画祭なんです。

 

―そこまで注目されるのには、何か理由があるのですか?

TIFFがなぜ重要かと言うと、アカデミー賞の前哨戦として位置付けられるからで、TIFFの最高賞である「The Grolsch People’s Choice Award(観客賞)」を獲得した作品が、その後のアカデミー賞のオスカー候補のトップランナーとなるからなんです。

TIFFが特徴的なのは、カンヌやヴェネツィアのように少数の審査員が受賞作を選ぶのではなく、映画祭に参加した一般の観客の投票によって最高賞が決まる点です。少数の審査員が選ぶ場合、審査員の嗜好によって受賞結果が大きく左右されますし、毎年、審査員が代わるので年ごとに受賞作品の傾向もバラバラになります。しかし、TIFFの場合は一般の観客が選ぶので、比較的世間一般の評価に近い結果になりやすいと言えます。

実際、カンヌやヴェネツィアの受賞作品はいわゆる作家系の作品が主流で、一般の観客には難しいものが多く、商業面で大成功するような作品はあまりありません。その点、TIFFで観客賞を獲得する作品は、芸術性と商業性のバランスが取れた作品が多いと言われています。

 

―近年は、どんな作品が観客賞を受賞しているのですか?

2008年の「スラムドッグ$ミリオネア」や2010年の「英国王のスピーチ」、2013年の「それでも夜は明ける」、2016年の「ラ・ラ・ランド」などです。

 

―なるほど、やはり後にアカデミー賞で数多くのオスカーを獲得した作品ばかりですね。

アカデミー賞はご存知の通り、映画の賞としては歴史も古く、最も有名で権威のあるものです。そのアカデミー賞は、授賞式前年の1~12月の間に公開された作品が対象となるのですが、そうなるとどうしてもその年の後半に公開した作品のほうが印象に残りやすいということがあります。ですから、アカデミー賞を狙う作品は10~12月に公開することが多いんです。

そして、そうした作品のお披露目(プレミア公開)の場として、9月に開催されるTIFFは時期的にもちょうどタイミングが合うんですね。

もちろん、賞レースを占う映画祭はTIFF以外にもさまざまあって、8~9月にコロラドで開催される「テルライド映画祭」をはじめ、年末にかけてはNY映画批評家協会賞やLA映画批評家協会賞などの全米各地の批評家が選ぶ賞がありますし、年が明けてから発表されるゴールデングローブ賞の結果も重要です。さらに、2月には撮影や脚本、俳優など映画製作の部門ごとに各分野の組合員が選ぶ賞があって、いよいよアカデミー賞の発表という流れになります。

 

映画祭の取材の裏側

 

―今年のTIFFは、取材されてみていかがでしたか?

毎日忙しくしているので、もうあまり覚えていないけど…(笑)。
7~8日間滞在しましたが、とにかく毎日取材ラッシュでした。

 

―映画祭の雰囲気はいかがでしたか?

TIFFは開催地がアメリカに近いので、各映画に出演している俳優たちや監督などが集まりやすいのが特徴です。ですから、トロントと言うとなんだか地味に感じますが、映画祭自体はいわゆるセレブがたくさん来て、とても華やかでしたよ。

それと、カンヌやヴェネツィアなどの避暑地で開催される映画祭とは違って、TIFFは街中で行われるので、街が映画祭一色になります。熱心な一般の映画ファンがチケットを手に入れるためにそこら中で並んでいたり、活気があふれています。

 

―今年のTIFFでは、コレといった作品に出会えましたか?

毎年これはという作品が見つかっていたのですが、今年は残念ながらありませんでしたね。

ただ、私が帰った後に上映されたピーター・ファレリー監督の「Green Book(原題)」という、割と地味な映画が今年の観客賞を受賞したのですが、記者の間でも評判がいいようで、今後の賞レースの主役になりそうですね。

 

―映画祭ではどれぐらいの数の作品を観るのですか?

実は作品自体は前もって映画祭の前に観ているんです。映画会社も私たちが忙しいのはよく知っているので、事前に記者向けの試写会を開いてくれます。

今年で言うとディミアン・チャゼル監督の「ファースト・マン」のように事前に試写で観ることができなかった映画に関しては、できるだけ映画祭で観るようにしていますが、映画祭の期間中は作品を観るというよりも、ひたすら取材の毎日です。

映画祭期間中は私が所属しているハリウッド外国人記者協会が主催する記者会見が朝から晩まで開催されていて、作品ごとに監督やキャストなどの取材に明け暮れる感じです。

 

―取材後はすぐに記事にするのですか?

映画祭で賞を狙う作品は、日本ではアメリカよりも遅れて公開される作品が多いので、記事にするのはだいぶ先ですね。ちなみに取材した中で、既に日本公開が決まっているのはレディー・ガガ主演の「アリー/スター誕生」で、12月に公開予定ですね。

 

―えっ!それでは レディー・ガガにも取材されたのですか?

ええ(笑)。思ったよりもすごく謙虚な人で、「まさか映画で主演するなんて夢にも思わなかった」と涙ながらに話していましたよ。彼女はアカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされるんじゃないかと思います。

 

―レディー・ガガに会えるなんてうらやましいですね(笑)。ちなみに、TIFFの後で印象に残っている取材はありますか?

TIFFでの取材後、10月にロンドンに行って、「ワンダーウーマン2(仮題)」のセット取材をしたのが印象に残っていますが、本当に毎日のように取材と移動の繰り返しで、数カ月前のことが遠い昔の出来事のように感じます(笑)。

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