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2018.6.22

「放送外の新しいビジネス創出のために 地方発のニュースをマネタイズする」 北海道文化放送 加藤 雅俊さん vol.1

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北海道文化放送  加藤 雅俊氏


今回は、北海道文化放送(UHB)の総合ビジネス開発室で活躍されている加藤さんに、ローカル局における新しいビジネスのあり方について伺いました。キー局のように豊富な番組コンテンツや潤沢な人的リソースを持たないローカル局にあって、新たにネット向けのニュース配信ビジネスを立ち上げるなど、放送外のビジネス創出を推進する加藤さんに、今後の放送事業の方向性について、さまざまな角度から語っていただきました。

 

「ヤフー」から「ローカル局」へ

 

―まず、加藤さんが北海道文化放送(以下、UHB)に入社するまでの経緯について教えていただけますか?

大学を卒業し新卒時には、テレビ番組の制作プロダクションに入社して、営業職をしていました。そこでテレビについて色々学んだのですが、当時はまさにIT黎明期ということもあって、「ITビジネスを知らずに生きて行けるのか?」という危機感から、ヤフーへの転職を決意したんです。ヤフーでは、主にテレビ局担当のビジネス開発職として、約10年間でさまざまなプロジェクトに携わることができました。

―会社は違うとはいえ、どちらも「テレビ」に関わるお仕事ですね。

約10年前のこのころからキー局が積極的にネットビジネスに参画し始めました。当時のYヤフーとテレビ局との関わりは、番組表やキー局のニュース動画ぐらいでしたので、私はヤフーのテレビ局担当として、テレビ局と連携したインターネットビジネスを進めてきました。

ネット動画配信サービスGyaO!(現GYAO!)で番組を配信したり、Yahoo!テレビで番組プロモーション企画を展開したり、番組と連携して「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」でコラボ商品を販売したり…キー局のネットビジネスが大きく成長した時期だったと思います。

―その後、2016年にUHBに入社されたわけですか、何かきっかけはあったのですか。

ヤフーでの仕事もテレビ局のコンテンツを単純に活用するところにとどまっていた感覚もあって、ネットビジネスに関する経験を生かして、主体的なビジネス展開にチャレンジしてみたいと感じ始めていました。であれば、キー局よりもローカル局の方が様々な事業にチャレンジできるのではないかと。

なかでも“北海道”という圧倒的なブランド力を全国に発信できるUHBというテレビ局に、大きな魅力を感じて入社を決めました。

―ご自身の中では、特に迷いなく決断できたでしょうか?

もちろん、急成長し続けるIT業界から厳しい時代を迎えようとしているテレビ業界に転職するわけですからね(笑)。リスクも感じた事は事実ですが、それでもやはり「自分が一番得意なのはテレビだから」と考えて、決断しました。

―もともとテレビに注目されていた加藤さんにとっては、まさに「原点回帰」だったわけですね。現在は、「総合ビジネス開発室」という部署に所属しておられますが、その業務内容をお聞かせ下さい。

テレビ局が地域で主催している「イベント事業」やニュースや番組をネット配信したり、DVD制作などテレビ番組の2次利用を行う「コンテンツ事業」、VR(バーチャルリアリティ)など「新規事業の推進」を担当しています。

―業務の幅が広いですし、それぞれの内容がかなり異なるので、時間の調整が大変そうですね。

そうですね(笑)。テレビ局、特にローカル局は今、人材不足ですし、特に北海道の夏はイベントが多いので、結構時間を取られます。そうは言っても、受け身で待っていては、いつまでも自分のしたい仕事はできないので、様々な業務の合間をぬって、新しいビジネスの企画を練っていますね。

 

ネット向けのニュース配信ビジネス

―ニュース配信ビジネスを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

やはりテレビ局が「放送」以外で収益を得る手段としては、「既存コンテンツの2次利用」が中心になると思うんです。実際に今、フジテレビが運営する動画配信サービス「FOD」や日本テレビの動画配信サイト「日テレオンデマンド」などが脚光を浴びていますよね。当然、ローカル局も自社のコンテンツを有効利用する発想は非常に大切になってくると思います。とはいえ、ローカル局であるUHBには、キー局のようにお金をかけて作ったバラエティ番組やドラマのような豊富なコンテンツは正直言ってありません。

もちろん、UHBにもEXILE TRIBEのメンバーが出演する『男旅』や、人気の吉本芸人タカアンドトシの『発見!タカトシランド』などの人気番組がありますが、制作できる絶対量はキー局には到底かないません。一括りにテレビ局と言っても、キー局と同じ発想で「放送外収入」を作ることはできないと思います。

―そこで「ニュース」に目を付けられたわけですね。

はい。キー局ほどの豊富な番組ラインナップがないUHBが、ローカル局として売れるコンテンツは何か?と考えたら「ニュース」しかない、と。ニュースというコンテンツの魅力は、ローカル局が唯一、継続して量産できるコンテンツであるということ。週に1回、30分や1時間放送する通常の番組だと、週にひとつのコンテンツができるだけですし、番組改編などでなくなる可能性もあります。

でも、ニュースなら必ず毎日何かあるわけです。これをただ、一度ニュース番組内で放送して終わりにするだけではなく、ネットなど他のメディアで2次利用できれば、と考えました。事実、UHBの場合は、平日には平均して9~10本、土日でも5~6本のニュースをネットへ配信できています。

―しかも、ニュースであれば「北海道らしさ」が出やすいですよね。

ニュースなら、キー局にはできないローカル局ならではの独自のコンテンツが制作できます。しかも、ニュースは単発で終わるのではなくて、その後の経過を追っていくと、どんどん枝分かれしていって、はじめは1本のニュースであっても、それが3本にも4本にもなっていく。キー局と違って「商品」の少ないローカル局にとって、継続的に展開するビジネスとして理想的なコンテンツだと思います。

 

 

 

 

新ビジネスを作り出すのための苦労と工夫

―この新たなビジネスの立ち上げにあたって、特に苦労したこは何でしょうか?

一番苦労したのは人手不足ですね(笑)。僕以外には報道部からデスクをひとり、ネットニュース配信に特化して動けるデスクに付いていただきました。あと、グループ会社から技術担当ひとり、基本的に3名のチームをコアメンバーとして立ち上げました。少ないリソースで必要な作業をいかに簡単に、手間ヒマかけずにできるかをまず考えました。そこで、ネットにニュースを提供する作業を簡単にできるよう、コアメンバーで協議して、独自のニュース配信用の入稿ツールを開発しました。

―配信するためのツールをオリジナルで作られたのですか?

そうです。オンエアされたニュース映像をネット向けのデータに変換したり、テキストや映像を配信用に編集したり、「Yahoo!ニュース」やSNSなどニュース映像を提供する先のプラットフォームを選択したり・・・。ニュース配信に必要な、ほぼすべての作業が簡単にできるオリジナルツールを開発しました。誰でも簡単に扱えるように、余計な機能のないシンプルな設計にしたので、大幅に業務効率を上げることができました。

ちなみに、このツールはなかなかよくできていて、同様の事業に取り組んでいる他のローカル局の方々から問い合わせをいただき、ご提供させていただいています。

―ヤフー在籍時のご経験がずいぶんと役立ったのではないですか?

そうですね。今回取り組んだニュース配信ビジネスは、UHBが提供するニュースを配信してくれるプラットフォームがなくては成立しません。数あるプラットフォームの中でも最大手のヤフーに在籍していた経験は、ビジネスの立ち上げから収益化するまでの“最短距離”を行けるという意味で、とても役にたちました。

テレビ局の方にしてみれば、ネット向けのニュース配信ビジネスはまったく未知の領域です。その点、僕はネットの世界もテレビの世界もある程度、文脈が分かっているので、その中でこれからのローカル局のビジネスを創って行きたいと考えています。

(vol.2)に続く

 

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