「リアリティショーは、まだまだ面白くできる」「オンバト+」プロデューサー NHKエンタープライズ 松井 修平さん vol.1

  • 公開日:
テレビ
#テレビ
「リアリティショーは、まだまだ面白くできる」「オンバト+」プロデューサー NHKエンタープライズ 松井 修平さん vol.1

NHK エンタープライズ エグゼクティブプロデューサー 松井 修平さん


大阪生まれ、奈良育ちで、毎日お笑い番組を見て育ったという松井 修平氏。

新たなお笑い番組として、若手芸人が参加する数々のお笑いドキュメンタリー番組を企画し、また今も新たな形を追求し続ける同氏に話を伺った。

―これまでのご経歴を教えてください。

子どもの頃からテレビが大好きで、大学院時代にNHKの文字放送で、ニュース内容を入力するアルバイトをしたことをきっかけにて、バラエティ番組をつくりたいという思いがつのり、NHKに入局しました。当初から『クイズ日本人の質問』のフロアディレクターを担当させてもらい、出演者の桂文珍さんにかわいがってもらいました。

続く『小朝が参りました』では春風亭小朝さん、『コメディーお江戸でござる』では伊東四朗さん、『欽ちゃんのしゃべって笑って』では萩本 欽一さんと、笑いのエキスパートの方々とお仕事をさせていただきました。出演者とディレクターという間柄でしたが、〝笑いとはなんだ? 〟ということについて、相当鍛えられましたね。

入局して12年目に、広島局へ異動となり、プロデューサーとしてドラマ『帽子』や『火の魚』の制作にかかわりました。『帽子』は平成20年度文化庁芸術祭優秀賞受賞作品で、『火の魚』は平成21年度文化庁芸術祭大賞受賞作品。いずれも同期の黒崎博の演出で、横で見ながらドラマの制作手法について学びました。4年で制作局エンターテインメント番組部へ異動となり、東京に戻ってきました。

『鶴瓶の家族に乾杯』をやりながら、『松本人志のコントMHK』を演出。その後、自身としては初のネタ番組『オンバト+』を担当、最後のチーフプロデューサーになりました。これは『爆笑オンエアバトル』の後継で、15年間の歴史がある番組。この『オンバト+』に携わりながら、ネタ番組を考え始め、その後、『爆笑シャットアウト』や『笑けずり』、『笑あがき』などを制作しました。

―これまで数多くのお笑い番組をつくってこられた中で、どのようなことを学びましたか?

萩本欽一さんからは、面白い素人の見分け方を教えてもらいました。『細かいことは聞かないの。お父さんは? って聞いてみな。そしたら面白い人はそれを聞いただけでスゴイ話が返ってくるから。名前ですか? とか逆質問が返ってきたら面白くないと思った方がいい』。そういう質問を投げることで、ある程度、面白い人を見分けられるということを教わりました。

松本人志さんには笑いの構築の仕方ですね。みんなで集まって番組の企画会議を行うのですが、『〇〇ってあるけど、あれおもろない? 』って、6~7割が松本さんの発言がきっかけでスタートしていきます。そこからブレーンストーミングをやりながら、コントをそこでつくり上げていく。ブレストの醍醐味ですよね。やっぱり一線でやってきた人は違うな、と思いますね。

―番組を企画・制作するうえで、自分自身の流儀のようなものはありますか?

子どもの頃からテレビばかり見ていたので、過去のどんなネタ番組も、だいたい覚えているんですよ。それらの情報を元に、今までにない企画演出としても斬新なものを目指します。最終的には内容をよりシンプルにし、かつ視聴者にとって面白ければ勝ち。実際に、僕の番組は至ってシンプルだと思います。

『笑けずり』は芸人を合宿させて、先輩芸人がネタを教えて、ネタの披露をして、その結果1組ずつ落ちていく(けずる)というだけ。番組内で試練があるので、ほかの一切のドッキリをやめよう、余計なことはしないでおこうと決めましたね。1回1回のハードルが漫才を上達させるハードルにもなる。そこが一番の見どころだと考えました。



―お笑いを取り入れたドキュメンタリー。松井さんが今、手がけておられる番組はひと言でいえばそんな新たなジャンルだと思いますが、どのような経緯で、そんなジャンルを開拓されたのでしょうか。

長く続いた『オンバト+ 』終了時のチーフプロデューサーとして責任を感じてしまう自分がいて、お笑いをどうにかして盛り上げたいという思いで企画を考えています。これまで私が携わってきたお笑い番組はコメディが中心でしたが、『オンバト+』が終わることがわかってからは、ネタ番組をモチーフにした企画を考え始めました。

『オンバト+』のような真剣ネタバトルは『M-1グランプリ』をはじめとして個人戦ばかりなので、これをチームでやったらどうなるのだろう? と思って、企画したのが『爆笑ドラゴン』という番組です。『笑けずり』の企画は、『オンバト+』の地方公開の時に、若手芸人と一緒に旅した時に思い付きました。本番直前までネタ合わせするコンビもいれば、ひとりがネタをつくって、ひとりはプラプラしているコンビがいたり。

そんなネタをつくっているリアルな現場を、共同生活しながら見せられたら面白いんじゃないかと一瞬頭をよぎったんです。それからしばらくして、ある企画会議の時に放送作家が、『テラスハウスが流行っているので、芸人でテラスハウスがやりたい』と言い出したんですよ。その時に思わず、『ソレいける!オレもそういうの考えてたんだ!』と。

彼が口に出してくれなかったら話が前に進まなかったと思います。やっぱり考え続けないとダメだし、お互いに常に話していることも大事。さらに言うと、自分の頭の中に過去の名番組をはじめ、数多くの番組の内容が入っていれば、新しいことができるのかもしれませんね。

―新番組『芸人先生』も、お笑いの力をビジネスに活用するというような新しいジャンルの番組だと思うのですが、制作された狙いはどこにありますか?

(vol.2)に続く



関連記事
vol.3はこちら


関連記事