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2018.5.22

「その地域で生きることを肯定すること」そして「いつも新たな挑戦を」熊本朝日放送  小野 史修さん vol.3

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熊本朝日放送 東京支社営業部 東京業務部長 小野 史修氏


前回の記事はこちら(vol.2)

―小野さんの話を伺っていると、常に熊本のために何ができるかを考えていることが伝わってきます。

やはり社会人をスタートしたコミュニティFM時代の影響でしょうか。第三セクター事業とはいえ、市民の税金をお預かりしている以上赤字では具合が悪い。利益を出さなくてはいけません。自分なりに必死に努力して成果を出していたつもりでしたが、初代の社長がいつも声をかけてくれました。『会社を儲けさせてくれるのはうれしいけれど、『熊本シティエフエム』は災害が起きたときに市民に正確な情報を提供するためにつくられた防災放送局であるということを忘れないでほしい』と言われたんです。

設立された経緯が、阪神淡路大震災を受けてのものだったので、行政が筆頭株主となり、万が一のときは防災ラジオ局としての任務があったのです。『売上を増やし続けてくれるのは嬉しいが、君の仕事が熊本のため、熊本市民のためになっているのかをいつも考えてほしい』と。この社長がいなかったら、地元に根付き、地域のためにつくられたメディアの役割など考えず、売上や会社の利益だけに一喜一憂する俗物的な営業マンになっていたかもしれません。

―コミュニティFMでのご経験が小野さんの仕事の原点なんですね。

テレビでも同じと考えています。ローカル局の使命は、その地域に生まれたこと、その地域で生きることを肯定するということ。それに尽きると思います。それはコミュニティFMであっても、テレビ局であっても変わりません。映画をつくったことで、地元の人から見れば一見派手な仕事に関わっているように見えるのかもしれませんが、これも熊本の人達が「熊本人でよかったー」と思ってくれるだろうと確認したから関わりました。

行定勲の力をお借りすることで、高良健吾、橋本愛、阿蘇、熊本城、菊池渓谷…熊本の魅力ある宝の存在を県外の人へ伝え、その賞賛を県内の方が受け取り自信に繋がる。熊本の放送局だからこそできる役割と出番があり、『東京も、大阪も、福岡もいいけれど、やっぱり熊本が良かばい』と思ってもらえるような仕掛けを、いろんな人の力をお借りして今後も仕掛けていきたいです。

 

 

 

―最近はどのような取り組みをされていますか?

熊本市現代美術館で『熊本城×特撮美術 天守再現プロジェクト展』を現在(~3/18)開催しています。映画『シン・ゴジラ』も手掛けた熊本出身の特撮美術監督の三池敏夫さんとも『東京ひっとでとらす協会』の活動で知り合ったのがきっかけでした。三池さんが故郷にできる自分の役割として、緻密に計算して1/20のスケールで、地震が起きる前の熊本城(天守閣・宇土櫓)を復元、制作しました

映画『うつくしいひと』の第3弾となる特別編『いっちょすかん』も公開に向け、準備を進めています」

―ローカル局がこれからさらに良くなっていくために、これからどのようなことをしていければよいとお考えでしょうか。

当社の話に限っていえば、2019年に開局30周年を迎えます。個人的にはこれまで撒いてきた種がどんどん形になれば嬉しいし、そこには困難であっても“嬉しい楽しい”が必ずあるはずです。

ローカル局全体に話を広げると『これからの時代はシンドイよね』とよく言われます。従来の仕事だけをしていたら、厳しいのは確かです。がしかし、まだまだやれることは山のようにあるんです。コミュニティFMにいた時、経営状況はいつも苦しかった。ですが“そこでしか出来ないこと”を追求していけば、必ず存在意義は見いだせましたし、売上だって上げることができました。ローカルといってもテレビ局はまだまだやれます。

全国的に地方テレビ局の若手社員が自分の描いていた職場と違ったのか、他業種への転職をする話をたまに聞きます。それは非常にもったいない。テレビだからできることはまだまだある。社会から求められているテレビの役割は何か、自分の出番がどこか、自分は何をカタチにすれば楽しいと思うのか、そもそも何がやりたくてテレビに入ったのか、若い社員から教えられることもたくさんあります。年齢や年次は関係ない。局のみんなが“地域プロデューサー”になることが理想だと思っています

―若手社員に、どんなことに挑戦していってほしいですか。

ずばり“新しいこと”。でもそれは、誰にも思いつかないような世界初の新発想という意味ではありません。どこかでやっているとか、昔同じようなことをやったとか、そういうのどうでもいい。そもそも全く新しいことなど、ほぼ無いんです。担当する人間が、自分の思いや、社外の方のアイデアをかりてでも、少しでもいいので「今までと違う新しい切り口や内容に進化させる」ことが大事と思います。その新しい切り口やポイントを担当した者が“ジブンゴト”として一生懸命カタチにし続けることが、もっと大事なことと思います。

熊本県の民放4局とも現在のところ経営危機にはなっていません。“放送業界は冬の時代”と言われているにもかかわらずです。こんな業界なかなかないです。まだ余力や体力のあるうちに、失敗を恐れず若い人に限らずどんどん新しい挑戦をし続けたいです。私も45歳。若くないですが、まだまだチャレンジ精神で“ちょっとでも新しい”ことを開拓していきたいです。

 (了)


熊本朝日放送 東京支社営業部 東京業務部長

小野 史修 (おの ふみお)

1996年九州で初めて開局したコミュニティFM「熊本シティエフエム」入社。2006年熊本朝日放送(以下KAB)転職。5年の本社営業を経て、11年に東京支社配属。ラジオ時代から様々な企画を立案。「商店街ラジオ」「子ども新聞」は今でも続いている名物企画。テレビに転職して手がけた「まち×ひとチャンネル」は、中心市街地の商店主たち500人を主役にさせる企画。WEB動画の配信やガイド本の発売などを企画。経産省の助成を請けて実現。

 

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