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2017.11.8

「ローカル局 × VR で新たなビジネスチャンスを」 guruvrソリューションを提供するジョリーグッド 上路健介さん

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「テクノロジー×マスメディア」。先進技術をエンタテインメントと組み合わせることで、広く一般に伝えてブレイクに導いてきた。ローカル局出身の上路健介さんが今取り組んでいるのはVR。そこには、「ローカル」への強い思いがあった。

※本記事は2017年3月発売のSynapseに掲載されたものです。

ジョリーグッド
上路 健介

株式会社ジョリーグッド代表取締役CEO。IBC岩手放送で技術者としてキャリアをスタート。2000年ごろから放送とインターネットを連携させたサービスやコンテンツを多数開発。08年より博報堂DYメディアパートナーズに。『ブラタモリ』や『龍馬伝』などのテレビコンテンツと最新のセンシング技術を掛け合わせたサービスを手がける。11年より2年間単身渡米。アメリカのメディア企業との事業開発に従事する。14年、株式会社ジョリーグッドを設立。『GuruVR』やオリジナルの360度撮影用ギア『ウェアラブルマウント360』などを開発。VRは必ず来るという感触と、普及させるための戦略。

 


 

― そもそも、VRビジネスに参入しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

「ご存じのとおり、VRはまずゲーム業界から火がつきました。ただ、僕自身はゲームをやらないし、VRを体験するためのハードが高価だったのでスルーしていました。ただ2014年3月、FacebookがVR向けのヘッドマウントディスプレイを開発した『オキュラス』を買収したことで風向きが変わりました。

その直後に、Goog leの開発者向けカンファレンスで、スマホをセットするだけでVRが体験できる段ボール製のヘッドセットが配られました。これをきっかけにVRが一般層に広がるはずだと感じ『ジョリーグッド』を設立したんです」

 

― 上路さんはもともとはローカル局で働かれていましたよね。

「IBC岩手放送の技術者として働いていました。僕自身は新しいテクノロジーが好きで、転職してからも常にテクノロジーと関わってきました。世の中にはテクノロジーピラミッドという考え方があります。エキスポなどで発表される先端テクノロジーは面白いんですけど、だいたい実験レベルで終わってしまい、一般にまで浸透しないものが多い。

そこで僕らは最先端テクノロジーと既存のマスメディアを掛け合わせたサービスにすることで、一般の人たちに広く伝えて、ビジネスチャンスをつくり出しています。例えばIBC岩手放送の時代には、視聴者が携帯電話で参加できるクイズ番組を東北で初めてやったんです。当時はガラケーの時代でしたけどね」

 

― その後も「テクノロジー×マスメディア」を意識して活動をしてこられたのですね?

「僕は、自分の親世代が分からないようなことをしたくないんです。大河ドラマ『龍馬伝』と画像認識を掛け合わせたアプリや『ブラタモリ』と位置情報を組み合わせたアプリをつくりましたが、とにかく分かりやすくしたい。そうすると、親世代の人もiPadを買って使ってみようかな、みたいなことになると思うんですよね。僕自身は、そうやって先端技術を広く世の中に伝えて楽しんでもらってきたという自負があります」

 

― VRに関しても、同じような仕掛けをする潮目に来ていると感じられたんですね?

「はい。やはりスマホで簡単にできるのがいいと思っていたので、端末の傾きだけで直感的に操作できる『GuruVR』というアプリを開発したんです。いちいち手で入力するのも心地よくないですから。ただ、体験するのはいいのですが、テレビ局のつくり手出身者としてどうしても許せないことがありました。それは、VRカメラって撮影すると360度全部映ってしまうので、カメラマンも映像に入ってしまうことです」

 

― 真下を見るとカメラマンが一脚持ってたりする映像もありますよね(笑)。

「せっかく没入エンタテインメントなのに、興ざめでしょう! それで色々考えて、カメラを宙に浮かせればいいんだって思いついた。そうして『ウェアラブルマウント360』という撮影装置が生まれました。これを装着して街ブラ番組などを撮れば、リポーターが普通に歩きながらも、映像的には自然に番組に入り込めます」

 

― でき上がったコンテンツを実際に拝見すると、非常に簡単な操作で視聴できますね。

「UIの簡単さにはこだわっています。ここがハードルになると、もう親世代が理解できない。首の動きだけでコントロールできる『GuruVR』と『ウェアラブルマウント360』は、特殊な撮影編集加工技術と併せて、特許申請中です」

 

― コンテンツの尺が短いのには何か理由があるのでしょうか?

「VRゴーグルで長時間、動画を見ていられないので。我々のコンテンツは1分半程度。適度な尺のなかで、何を見せるのかを意識しています」

 

― 短い尺でも、一度VRの世界に入ると、没入感がすごいですね。

「大人の男性目線で言うと、ヴァーチャルデートすると、なかなか戻ってこられないですね(笑)。また、子どもに動物のVR映像を見せると、普段近づけない距離に寄れるので、何度も見てなかなか戻ってこないと言われます。VRは、4K・8Kよりも可能性があるのではないか、という声もあります。ただ、これまでのテレビとはまったく違う映像表現なので、画質はもちろん、撮り方、映像の見せ方も相当研究しています」

 

ローカルならではの強みが必要になる。

 

― 御社は、VRでマネタイズするために、どのような活動をしてこられたのでしょうか。

「当初は、自治体から映像制作を受託して、観光用VR映像制作や、物産展での産地の様子が見られるVR体験コーナーを開いたりしていました。地域PR用のVRは、今後もどんどん増えていくのは間違いないと思いますが、コンテンツを僕らだけが制作していてもスケールはしない。そこで始めたのが、テレビ局向けのソリューション『GuruVR Media Pro』です」

 

― VRコンテンツ制作ではなく、VRコンテンツの制作支援ビジネスという意味ですよね。

「メディア企業が、短期間で簡単にVRビジネスを始めることができる導入ソリューションです。そもそもテレビ局、特にローカル局は、地元に密着しているので独自の取材網を持っているし、コンテンツを制作する力もある。

ただその出し先がテレビ放送しかなかった。そこに僕らがVR撮影のソリューションや機器を提供すれば、ローカル局自身が質の高いVRコンテンツを制作できるはずだと考えました。これが広まれば、全国規模でスケールすることもできるんじゃないかと」

 

― 導入に際しては、VR制作のレクチャーもやられるのでしょうか。

「『GuruVR BOOT CAMP』というトレーニングメニューがあります。制作に留まらず、機材の選び方から撮影方法、撮影後の360度映像の加工方法、完成後のCMS管理の仕方、そしてマネタイズまで、我々が2年半かけて培ったノウハウを約1カ月で伝える内容になっています」

 

― 今までに導入したローカル局を教えてください。

「いちばん早かったのは北海道放送さん。女子アナの方の雪まつり案内とか、鷹匠体験とか……北海道を象徴するスポーツやアクティビティ、観光、動物などをVRで楽しめるアプリ『HBC VR』をリリースしました。

今、北海道放送さんは、独自にVRビジネスを展開されていて、我々がキャッチしきれないくらい様々なことに取り組んでいらっしゃいます。あと、東海テレビさんとはSKE48のライブステージやヴァーチャルデートを楽しめるコンテンツをつくりました。

ステージ上と花道にカメラを設置。VR用に振り付けを変えてもらって、カメラに向かって踊るような工夫もしてもらいました。テレビ西日本さんとも『VR Kyusyu』アプリをつくってますし、そのプラットフォーム上で、この2月から鹿児島テレビさんと始めた『KTS VR』の第一弾として鹿児島県長島町の海や大地から生まれる食産業の魅力を伝える作品を配信しています」

 

― 観光協会などと同様に、VRはローカル局との親和性も高いようですね。

「特に今年は経産省が、自治体によるVR・AR制作に関して費用の半分を補助するという事業を始めました。そこはローカル局にとっても狙い目ですよね。制作力も情報網もコネクションもありますから。地域をPRしたくてもそのスキルのない自治体に対して、VRの提案をする、みたいなかたちは今後増えていくのではないでしょうか」

 

― で、御社がローカル各局のVRソリューションを後方支援なさる、と。

「何度も申し上げますが、ローカル局にVRは本当にオススメだと思っています。組織としてのサイズも大きすぎず、フットワークも軽いほうがいいのです。テクノロジートレンドは3カ月サイクル。巨大な放送局で社内調整をしていたら、追いつけません。技術が革新する時期は、誰でもフラットな状況からスタートできます。

キー局だから有利ということはなく、むしろ、大きすぎると動きが遅くなる可能性があります。そういう意味でも、VRのような新技術がメディアに広まるタイミングは、ローカル局にこそ有利かもしれません。私は、テレビ映像もずっとテレビ受像機だけで見られる時代じゃなくなると思っていますから」

 

― 例えば、どういうイメージでしょうか?

「普通に生放送やアーカイブがネットでも見られるようになるでしょう。その時にあえてVRが切り離されるようなことは想像できないんですよね。それらが併せて見られるようなアプリケーションが必要になるだろうな、と。……それが実は『GuruVR』でもあるのですが(笑)」

 

― 御社でVR動画のプラットフォームをつくろうというような考えはないんでしょうか?

「あります。VRで色々なことができるということを起点に考えてるんですが、最終的には局さんがプラットフォームを持たなきゃいけないんじゃないかと思っているので、その時は我々の出番かなと。ネットサイマルになると、キー局と地方局の関係は変わっていくでしょう。

その際にローカル局には、ローカル局ならではの強みが必要になる。そこでVRという手法を確立しているかどうかが勝負になると思います。2Dが残るのは間違いないんですが、“VRで面白い局はどこだっけ?”と言われて手を挙げられるか。従来の観光コンテンツだけでなく、バラエティ番組のひな壇に360度カメラを置いて、出演者の目線で番組を見るのが普通の時代になりますから」

 

 

VRコンテンツは爆増!?5Gで高画質ストリーミングも。

 

―上路さんは、VRは今後どんどん増えていくと考えてらっしゃるんですよね。

「私が講演する時にいつも言っているのですが、2020年までに爆増! です(笑)」

 

― それは自然にそうなりますか? 現時点で、何か解決すべき課題はありますか?

「今ある課題はどんどんクリアされていくと思います。ゴーグルは大げさなので、いずれ3D映画のメガネぐらいのサイズ感になっていくでしょう。あとは容量かな。

VRの撮影ってカメラを4~6台使うので、情報量は普通の動画の4~6倍になるんです。4Kだとさらに重くなる。今後はこれをスムーズに再生できる処理能力を持った端末と、あと回線速度が必要になりますね。ただ、まあ最新端末だったら4Kも問題なく再生できるし、5Gが来たら、高画質VRのライブストリーミングも可能になるでしょうね」

 

―2020年の東京オリンピック・パラリンピックでもVR視聴を、ぜひとも体験してみたいですよね。

「見たいですね! これまでの映像メディアって横幅を表現するのに長けていたんですが高さはあんまり得意じゃなかった。VRは幅も高さも360度くまなく伝えられます。たぶんスポーツでもこれまでにない新しい映像表現ができると思いますよ。他にも様々な方法が議論されたり、実験されたりしているので、東京オリンピックはそれらを試す絶好の機会になるでしょう」

 

― 放送局などがVRコンテンツを制作した際のマネタイズについてですが、自治体からのオファーでつくる分には制作費が出ますよね? でも、それだけだとワンショットで終わってしまいます。継続的にVRコンテンツを制作して、ネット経由で見られるようにする動機付け・インセンティブは他にないでしょうか?

「それについては色々考えています。例えば、当社でもシステムを構築したのですが、うちのVRコンテンツは、視聴者の“視線方向”のログを取得・解析しているんです。要はVR映像内で体験者がどこを見たか、何に興味を持っているかを把握していますので、それに応じたバナー広告や店舗情報を出すことができます。

例えば、メルセデス・ベンツは昨年、VRショールームを期間限定でオープンしました。気に入ったクルマを数秒見つめるとVR試乗ができ、終了後バナーが出現し、実際にクルマを展示しているディーラー情報を提供してくれます。そういうVRコンテンツをきっかけにした広告費や販促費などを広告主さんから持ってくるようなところまでを、制作される方々とご一緒したいと考えています。

VRはこれまでにない映像表現なので、まずは“面白い”という感想が先にくるんですが、それだけで止まっていては、ビジネス的な広がりが出てきません。広告システムとうまく連動させる工夫が必要です。あとは、まだ実用化していませんが、インタラクティブVRなんかもやってみたいんですよね。

見るだけではなく、洋服屋さんに入っていって、実際に買える。あるアイテムを見ていたら、それに合うオススメのコーディネートと商品情報が表示され、そのまま購入したり、お気に入りとして登録できたり。それって現実世界では無理でしょう?せっかくのVRなんだから、バーチャル世界ならではの見られ方を展開したいですよね」

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