HOME テレビ 「企画・デザインからスタイリングまで。全方位的に女性を意識した番組。そして見つけた新たな女性の姿。」NHK『あさイチ』プロデューサー渡辺悟、ディレクター石澤かおる
2017.11.8

「企画・デザインからスタイリングまで。全方位的に女性を意識した番組。そして見つけた新たな女性の姿。」NHK『あさイチ』プロデューサー渡辺悟、ディレクター石澤かおる

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NHK『あさイチ』

渡辺 悟
制作局 生活・食料番組部チーフ・プロデューサー

2000年入局。NHK福岡放送局、長崎放送局を経てNHK放送センター制作局青少年・こども番組部で『週刊こどもニュース』を担当。『東京カワイイTV』、『パフォー!』ののち、生活・食料番組部で10年『あさイチ』の立ち上げに参画。12年9月より英国Bournemouth University大学院で、番組フォーマットづくりを学ぶ。帰国後『あさイチ』デスクを1年半担当し、今年6月よりチーフ・プロデューサーに。

 

石澤かおる
制作局 生活・食料番組部 ディレクター

2008年入局。NHK岐阜放送局に4年勤務。3年目で地方発ドラマの制作を担当。12年より『あさイチ』に。2年間、特集担当のディレクターを経験し、14年夏よりビジュアルに基づいた番組全体のブランディングを担当。出演者のコーディネートから番組の見え方をブランディングする。

※本記事は2016年9月に発売したSynapseに掲載されたものです。

 


 

― 『あさイチ』との関わりを教えてください。

渡辺「僕は、2010年の立ち上げから参加してます。最初の半年間は、演出で『あさイチ』のなかでの会話の流れとかコーナーの流れのつくりを担当し、その後ディレクターとして3本だけつくりました。『情報LIVE ただイマ!』とか『ひるブラ』っていう、同じ部がつくる番組の演出をした後、イギリスに番組フォーマットの勉強に1年間行って、帰国後また『あさイチ』に。1年半ほどデスクを担当し、今年6月にチーフ・プロデューサーになりました」

石澤「私は2008年に入局して、岐阜に4年いました。その後2012年に『あさイチ』に呼んでもらったんです。最初の2年間は、普通に特集をつくるディレクターをやり、3年目の夏に、渡辺さんから番組全体のブランディングに関わる仕事に誘われまして。今は、アナウンサーの衣装を中心に、視聴者への印象を目に見えるかたちでつくる仕事を担当しています」

 

― スタイリストさんは別にいますよね?

石澤「います。私がしているのは、制作の演出意図に合わせた衣装の設定なんです。特集のタイトルを書いた月ごとの予定表があるんですが、例えば『8/4戦争特集』って書いてあると、スタイリストさんは、厳粛なイメージがない、と考えて喪服みたいな服を用意しちゃうかもしれません。

でも『あさイチ』は今回、子どもたちと戦争をポップに語りたい、という意図があるとします。すると喪服は違いますよね。演出の意図とか、出演者がその回でどんな役割を持っているのか、それを視聴者にどう見せたいのかを整理してスタイリストさんに伝えるんです」

 

― 番組の意図を翻訳して伝えるようなお仕事なんですね。

 

石澤「特にアナウンサーの衣装は難しいんです。視聴者のみなさんが考える“NHKのアナウンサー”のイメージがありますよね? そこに合わせつつ、でも“『あさイチ』だからちょっとゆるいでしょ?”みたいな別の期待感も満たして、その日の出し物の温度感も組み合わせて考えるんですね」渡辺「服を1個1個選ぶのではなく、そのひとつ上の段階です。画面から伝わる総体的な印象のブランディングみたいなところで有効だと思っています」

石澤「うちの母なんてニュース番組を見ていて、ニュースの中身は覚えてないのに“あのアナウンサーのネクタイの柄がイマイチだったわ〜”とか言うんですよ。すごく近いところの肉声が入ってくると、意外と番組の好き嫌いにそういう要素って重要なんだなと実感します。それで、私はディレクターなんですけど、スタイリストさんのような仕事をしてるんですね」

 

― 石澤さんはファッション系の方なんですか?

石澤「全然やったことはないです(笑)」

渡辺「大切なのは洋服に詳しいことではないんですよね。番組のコンセプトやビジュアルの意図をスタッフだけでなく、出演者に説くコミュニケーション力と、それをきちんと継続する粘り強さが必要な仕事なんです。番組の立ち上げから同じ役割の人間がいたんですが、なかなか後継者が見つからなくて、最後に僕と前任者の意見が一致したのが石澤さん」

石澤「なんか、私の性格が悪いからって適任だって言ってたと聞きましたよ(笑)」

渡辺「それもあながち冗談ではなくて(笑)。『あさイチ』って、出演者を憧れの存在みたいにしようとは思っていないんです。視聴者の中心である主婦のみなさんが “ちょっと勝てそう”って思えるようにしたい。“有働さんって素敵だけど、ちょっとどこか……”って思ってもらえるようなビジュアルを目指しているんです。出演者が“それ、ダサくない?”って嫌がっても、“ダサいでしょ、だから着てほしいんです”ってはっきり言える人間じゃないとダメなんで(笑)」

 

― 視聴者から突っ込まれやすくするために工夫されていますか?

石澤「番組は8時15分から始まりますけど、出勤とかで8時30分までの15分しか見られない方もいらっしゃると思うんですね。そういう方にも話題にしてほしいといつも思っていて。例えば『まれ』のスペシャルの時には、有働さんに“ま”と“れ”の形のクッキーをイヤリングにしたものをつけてもらったんですけど、番組開始からとりあえず何の説明もしないんです。

で、カメラさんにも、視聴者に突っ込まれるまで絶対アップで抜かないで、ってお願いしておいて、ツッコミファックスをひたすら待つんです。見てて気づいたらうずうずしますよね。15分しか見られない人も、出かけないといけないのに出られない、みたいな感覚のコミュニケーションをつくりたくて」

 

セックスレス・閉経・戦争……。朝らしからぬテーマを盛り込むわけ。

 

― 企画はどんなふうに決まるんですか?

渡辺「この番組はひとりの人間が企画立案から放送まで全部やるスタイルなんです。長い時には1本60 分を超えるぐらい。その尺で、担当者は“この企画はこういうターゲットに刺さる”という根拠づけからネタの選定、取材、どう並べて見せるかという構成まで手がけます。企画のとっかかりは、9週間前くらい前から。そこから1〜2週間以内に企画書を出して、スタッフ全員原則出席の全体会議に諮るんです」

 

― スタッフ全員で何人ぐらいですか?

渡辺「全員が来ると90人ぐらいかな? でも毎回揃うのはおおよそ40人前後です」

 

― やはり会議の中心になるのは女性ディレクターだったりするんですか?

渡辺「それが違うんです。特徴的なのは、ターゲット層に入っている女性制作者の意見が重視されるとは限らない、という点です。テーマが、がんとか選挙とか、世代や性別間で関心の落差が激しくないものは平等に検討します。例えば、女性目線になれる男性プロデューサーやディレクターが、客観的な経験値や分析をもとに“こっちのほうがうまくいく”って提案することもあります。

一方で閉経とかおっぱいの問題に関しては、女性ディレクターからの声をしっかり聞いて生かしていく。議論は基本、客観的な姿勢を重視しつつ、一部は当事者になれるスタッフの主観を取り入れるようにしながら、テーマごとにその比重を調整しながら制作しています」

 

― 閉経とか、セックスレスのようなテーマを朝の番組で取り上げて話題になりました。抵抗感はありませんでした?

渡辺「そもそも視聴率的に成功するのは白菜とか切り干し大根とかアボカドなどのいわゆる鉄板ネタで、この辺は、前番組の『生活ほっとモーニング』からほぼ同じ。そのなかで、閉経とかセックスレスとか戦争とかを取り上げることで “何かが起こるんじゃないか期待値”が生まれると考えて企画しているんです」

 

― “何かが起こるんじゃないか”というのは、女性たちが番組そのものに対して思うことですか? あるいは見ている女性自身の内面に起こることですか?

渡辺「まずは前者です。番組で何かとんでもないものが見られるんじゃないか、っていう視聴者の期待値ですね。でも同時に、後者の女性の内面での変化にも期待しています。例えば戦争についてこの番組で見ることで、社会問題にも自分が関わっている実感を得られるかもしれない。それまで当事者だと意識していなかった問題も、興味を持ってフォローしていただけるようになるといいなと思っています」

 

― セックスレスとか閉経みたいなテーマを番組にする時の“調理術”ってありますか?

渡辺「これはディレクターやプロデューサーそれぞれに意見があると思うんですが、僕が考えているのは目線の低さですね。NHKって入局すると最初のほうに“世のため人のためにこれを伝えねばならぬ”という目線の高さを学ぶトレーニングをするんですよ。でも、その高い目線を徹底して下げる。

戦争や選挙を主婦目線で語ると、当然抜け落ちる部分もあり、高度な議論はできなくなるリスクもあるんですが、それは構わない。低い目線から見えることこそ真理なんだよね、っていうところに行きたいんです」

石澤「私はセックスレスとおっぱいの特集は、岐阜にいる時に視聴者として見たんです。で、その回をつくった担当の方とあとでしゃべったら、実は主婦の人ってこういう話はひとりで見たいんじゃないかって。だからダンナさんもお子さんもいない朝のほうがむしろいい、という話を聞きました。

これは勝手な想像ですけど、『あさイチ』って一人視聴の人が多いんじゃないかという気がしていて、例えるなら女性週刊誌みたいな感じじゃないかと。なんとなく美容室とか婦人科の待合室で読んでて、フフフッて笑って突っ込みながら楽しむみたいな。ツイッターでつぶやいたり、ファックスやメールを送ったり、テレビに向かって言いたくなる感じと似ていますよね」

 

― それは面白いですね。

石澤「夜のスペシャルで家庭内別居を取り上げた時にお叱りを受けたことがあるんです“夜にやられるとダンナがいるから気まずい”って。朝ひとりでこっそり楽しんでいた番組を、公衆の面前で広げられたみたいな恥ずかしさがあったのかなって。だから閉経とかセックスレスのような話は、実は朝やるほうが向いてるんじゃないかと思ってたりします」

渡辺「家庭内別居みたいなテーマの時は、目線をクリアにするために、あえて女性からの意見だけを聞いたりします。放送のルールでいえば多面的な取材をして公平公正に伝えるということになるんですが……できませんよね? ダンナさんのところに行って“奥さんの言ってることは本当ですか?”なんて聞けない。

そこは権利を侵害しない範囲で、取材対象者を守る。同時に取材対象者に批判されている対象も守る。取材して番組の素材が十分揃う場合でも、あえて再現にしたりしています。で、家庭内別居に限らず、タブーっぽいテーマの時は当然、批判の声が絶対に挙がるので、そういう時は“我々の今回の取材は偏ってます”と宣言するんです。これが完成形かどうかは分からないですけど、それを踏まえて見ていただけるくらい、視聴者のリテラシーも上がっているだろう、と」

 

― 身近なテーマだけでなく、人工知能やアドラー心理学なども取り上げたりされていますが、主婦の方の知識欲や、番組を見てもっと成長したいという気持ちには強いものがありますか?

渡辺「“主婦だからこの程度しか理解してないんじゃないか”っていう空気を出してしまったらおしまいだと思います。我々は、主婦の方はみんな相当知的だと考えてつくっています。目指すのは、知的な方々にも興味を持続してもらえる平易さ。“今の説明分かりやすかったよね”って思ってもらえるようなテレビ的なプレゼンのやり方については相当心を砕いています」

 

― 平易さはどのように出していくのですか?

石澤「私が見ていて『あさイチ』っぽいなと思ったのは、ジャーサラダを取り上げた時です。あの、ガラス瓶に野菜を詰めてきれいなサラダにして持ち歩くのありますよね。ニューヨークで流行っていて、まあカワイイっていう紹介の仕方だったんですが、それを見た有働さんが“でも、洗い物増えるじゃん”って(笑)。

それを言える『あさイチ』を大事にしたいと思っているんです。だから、MCとの打ち合わせの時にも“こういうことは言わないでください”って言わないように気を付けています。カワイイけど洗い物は増えるんです。そういうデメリットもきちんと踏まえたうえで、なおSNSをおしゃれに演出したいならばやればいいし、流行ってるけどやらないって人にも、“ですよねえ”って番組から相槌を打ちたいと思っています」

 

番組づくりに関わる人々すべてが、番組を“我がこと化”するために。

 

― 番組の転機ってありましたか?

渡辺「東日本大震災ですね。『あさイチ』はお得な情報とか美容的にいい話、40代の女性が素敵な生き方をするための節約術などの生活情報をお届けする番組ですが、そのベースになる価値観が震災で一変しました。

『お手頃』『お安い』『節約』って、どのぐらいのことをいうのか体感的に分かっていたことが、本当にそれでいいのかつかめなくなってしまった。例えば500円ランチは安いといえるのか。東北で1万人以上が亡くなって福島で牛乳を捨ててるのに“美しくなる”とか言ってていいのか。震災後初の放送が……?」

石澤「3月14日でしたね」

渡辺「その日は、価値判断の基準がつかめないままとにかく始めました。番組上でみなさんから情報を募って、共有しながらスタンスを決めていったんです。例えば、ひとつひとつが思い出の品の積み重ねだから“瓦礫と呼ぶな”と。“続いての話題は〜”って振らないほうがいい。なぜなら話題という呼び方は軽すぎるから……などなど。いろいろなことを双方向である番組を使って、見ている人にとってどんなことが大切なのかを学ばせていただきました。

だからその後、例えば戦争のことを語る時とか、女性を傷つけかねないような繊細なテーマの時に、バランスをとって放送できるようになった気がします。当たり前と思っていたことが当たり前じゃないと分かった機会でした」

 

― 去年、セットを変えられましたが、反響は?

渡辺「最初はいろいろ批判がありました。目がチカチカするとか、もっと落ち着いて見られるようにしてほしいとか。でも我々は、批判がこなければむしろ大失敗だと思っていました。40代の女性は移り気なので、安定、安心なものだと、どんどん飽きてきて見てもらえなくなる。多少気持ち悪くても目に引っかからないと残らない。

で、予想通り猛烈な批判をいただきました(笑)」石澤「色にもテーマがあって、渡辺さんからのオーダーで“女性が普段触れているもの”から選ぼうと。色数は多いほうが良くて、普段触れていても飽き始めているものから外していこうって考えてたんです」

渡辺「例えばスマホアプリみたいな、ベタ塗りの質感は違うよねと。2年前ぐらいだったらあっちを採用してたかもしれません。最終的に、セットの背後に置いてあるものは、世の中に実際にあるものになっています、野菜とかタオルとか」

 

― どういう流れで決めていったのですか?

石澤「ブレストに2カ月ぐらいかけました。実はその1年前にもテロップのデザインチェンジをしてるんですが、仕事の進め方はたぶん独特ですよ。テロップデザインの時は、デザイナーさんと美術さんと、毎週1回定例の打ち合わせ時間を持って、ひたすらお話ししました。その1週間で気になったものとか面白かった本とか、新しい写真集とかオシャレな雑誌とか、何か流行ってるものとかを持ち寄って、“おしゃべりティータイム”をしてたんです。それが3カ月ぐらい?」

渡辺「NHKで、そういうスタイルでつくることはあんまりないです。通常の制作物みたいにオリエン・プレゼン・発注ってかたちで、セットもアートもテロップも完結するんです。ある時、あるデザイナーさんに、普通にその流れでつくってもらったものに、イマイチ満足できなかったんです。その人ならもっといいものができるはずなのに。

オリエンとプレゼンの時に会うだけだからお互いの思いを共有できない。だからきちんと共通言語を紡ぐ機会を持ったほうがいいんじゃないかと、仮説を立てたんです。あとは統一感。セット、グラフィックス、テロップ、小道具……それぞれつくる人が違って別々に発注するから当然統一感は出ない。だから、みんなで集まって話し合う場を持ったほうがいいなと思ったんです。

この、新しいテロップの開発は2013年10月からスタートして、翌4月にリニューアルさせたんですが、とにかく毎週会いました。美術さんもデザイナーも呼んで、 毎週おやつを食べながら話す。そのうち、みんなの好みとか何を考えてるかが分かってきて、お互いに意思の疎通がきちんとできるようになるんです」

 

― 参加しているみなさんにも思い入れが出てくるかもしれないですよね。

渡辺「そうなんです。発注を受けて返すという仕事の仕方だけをしていると、その番組に対して主体的な思い入れをしていただけない。これ、デザインだけの話じゃなくて、仕事に関わるみんなの問題です。それこそ自分の企画を9週間自分で考えてきたディレクターと、最後の数日だけお手伝いするディレクターとではその企画に対しての気持ちの濃淡が出ますよね。

その差は小さいほうがいい。“今日は7時に帰ろう”じゃなくて、“8時になってもいいから何かアイディア出そうぜ”って、みんなが主体的に考える。番組制作のチームはそうなるのが理想ですね。濃淡は必然的に生まれるものですけど、そのバランスをとり、差を埋められるようにしているつもりではあります」

 

『シンデレラ・テクノロジー』に見る、新たな女子のあり方とは。

 

― 『あさイチ』を担当されてて気づく、主婦特有の悩みとかってあります?

渡辺「これは完全に体感なんですが、同調圧力のようなものから少し解放され始めているのではないかと思うんです。周りに合わなくてつらいっていうムードから、少しずつ、自分の人生は自分の人生だから、気にしないっていう空気感があるような……」

 

― なぜそう思われたんですか?

渡辺「『あさイチ』のデスクという仕事は、自分の担当回のメールとファックスを選ぶことなんです。放送中に目を通して、数十通、数百通を選んで有働さんに渡す。それをここ1年半やってたんですが、そこに届く文章の空気感から、そんな雰囲気を感じたんです」

 

― 当社で実施している30代、40代女性のグルインからも「自分らしく」という言葉がでてくるようになりました。若い女性に感じる変化はありますか?

石澤「今回、『あさイチ』チームでつくった新番組『シンデレラ・テクノロジー』の取材で10代の女の子に取材したんです。もともとこの企画の始まりは、プリクラの会社さんが主催するミスコンがきっかけでした。男の人の視点を入れずにプリクラの写真だけで予選をして。最終選考になって初めて本人が登場するというイベントなんですが、『シンデレラテクノロジー』という言葉をつくった久保友香先生は、それがすごく面白かったっておっしゃっていて」

 

― 写真と実物とのギャップはかなりあるのではないですか?

石澤「ミスコンの決勝戦では、案の定ちょっとふっくらした女の子が出てきて、大人はみんな残酷だと思うんでしょうけど、会場は拍手喝采なんですよ。彼女たちは、その子がそこまで盛れる技術をたたえていて」

 

― それはすごい世界ですね。

石澤「私は普段『あさイチ』で、ママ友と教育費を争ったりしてるような女の人を見ると、いつも何かモヤッとするんですね。なぜこの人たちはこんなに自信がなくて、誰かに褒められたがってるんだろうって。私たちより上の世代では、お化粧とかファッションとかには、いわゆる“モテ”がくっついてたんです。

男性から評価され、メンズをゲットするという目的。そこから“自分がやりたいからやる”っていうフェーズになってきてるようです。それで、最初は10代の女子がどう変わったかっていう番組にしようと考えていたのですが、やっぱり今の10代の子たちのリアルな自己表現に近い番組にしたほうが面白くなるんじゃないかと」

 

― 今回、多くの若い女の子たちと会われたと思うのですが、ほかに何か特徴って感じられました?

石澤「強い子が増えたと思いますね。田中芽衣ちゃんという16歳のトップモデルと会った時です。彼女はゆるふわ可愛い系のメイクだったんで、強めのギャルメイクとかって興味ない? って聞いたら、やるんですって。だから“ゆるふわかギャルか”の両極じゃないんですよね。

私より上の世代だと、雑誌も行く店も分かれていて、一緒にされると嫌だったと思うんですよね。今はそんなカテゴライズの必要はないんですよね。ディズニー行く時はおそろコーデやるし、水着の時はパリピっぽいメイクで、デートはゆるふわで対応して、女友だちと遊ぶ時はギャルメイクもやる、みたいな。

どう評価されるかなんて気にせずに、そこも計算のうちっていう女の子たちにたくさん会って、価値観がずいぶん楽になってるって思ったんです。で、そういう子たちの近くにいる40代、50代のお母さんたちも逆に影響を受けてきているのではないかと」

 

― 憧れの人も変わってきてます?

石澤「それは明確に変わってきています。SNSでフォローしている人とか好きな人、どういう人の情報をチェックしてるかなどを取材したら、あんまり芸能人の名前は出てこないんですよね。出てくるとしたらテイラー・スウィフトとかアリアナ・グランデで、すごく遠い(笑)。で、参考にしてるような憧れの人となると、私たちが聞いたこともない読モの子たち。あとはリアルで知ってる人とか」

渡辺「それもあって『シンデレラ・テクノロジー』ではメイクやファッションを教えてくれる人を“先輩シンデレラ”と名付け、身近な人の設定にしました。20年前の女の子たちだったら“カリスマ美容師のなんとかテク”とかが重視されてたと思うんです。

でも今は同じクラスとか、1学年上のちょっと盛るのが上手な人のテクを実践する、みたいな感覚。憧れの人が身近にいて……憧れというより、それをちゃんと目指してる意識を感じましたね。もしかしたら、若いうちから現実を知りすぎてるのかもしれません(笑)」

石澤「自分の顔に対する自己評価とか超冷静ですもんね。若い女の子って、ある時期までは世界で自分がいちばんカワイイ、と思うもんだと思ってたら、すごくシュールなこと言いますよ。ちょっとおでこの出た子は“私、コブダイみたいでマジやばいんです〜(笑)”ってギャグで。のぺっとしたフォルムの子は“サラダせんべい”とかいうし。笑っていいのかどうか(笑)」

 

― 取材の現場でそういうこと言えるって、すごいコミュニケーションスキルですよね。

渡辺「コミュニケーションっていう意味では、笑いに持っていくほうが評価高いんですよね」

石澤「でも本気出すとめっちゃかわいくなれる自信があるから、そういうことを言えるんだと思います」

渡辺「改めて思うんですけど、『シンデレラ・テクノロジー』って感動的でした。プリクラのミスコンで優勝した子が実はぽっちゃりで大喝采って、すごくイイ話だと思います。ものすごく大きな時代の変化を感じます。他人の評価を期待して、イイ男をつかまえたいという考えから自由になっているんじゃないかと。

プリクラとかメイクとかで自分がその一瞬一瞬にキレイであればいい、自分の一世代の生き方が幸せであればいいんだと人間が思えるって、すごく価値があることです。若い女性を中心にいろんなしがらみから解放された生き方ができてきているように思いますね」

 

一見ハードなテーマも実は朝向き低い目線から真摯に扱う。

 

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