「福井テレビ」から気鋭の報道マンが登場!福井の課題を掘り下げ、解決に繋げていくための報道のあり方について聞きました。
※本記事は2016年6月発売のSynapseに掲載されたものです。
福井テレビ
報道制作局 報道部長
横山康浩さん
中学校の教師を経て、1992年10月、中途採用で入社。以来、報道畑を歩み、2年間の福井新聞への出向を経て、現職。2012年、プロデューサーとしてドキュメンタリー番組『原発のまちに生まれて ~誘致50年 福井の苦悩~』を制作し、第8回日本文化大賞準グランプリを受賞。
― 横山さんはずっと報道畑を歩んでおられますが、福井新聞での2年間のご経験はテレビマンとして大きかったですか?
「新聞もテレビも報道については仕事のサイクルも含めてそんなに違わないと思います。ただ、テレビのストレートニュースは短い時間でよく本質をついているなと思うようになりました。新聞を経験して良かったのは、後々残るので裏取りをより丁寧にやろうという意識が芽生えたことです」
― 福井県内の取材を通じて、個人的に気になるテーマは芽生えてくるものでしょうか?
「4年前に『原発のまちに生まれて 〜誘致50年 福井の苦悩〜』というドキュメンタリー番組をつくりました。原発がある敦賀市出身の若手をディレクターに、私はプロデューサーとして参画し、日本放送文化大賞で準グランプリをいただきました。福井では原発ネタを東京では考えられないくらい日々のニュースで取り上げています。
何といっても、全国最多の14基の原発を抱える県ですし、東日本大震災以降、エネルギー政策としても脱原発の流れになっているものの、原発が県の発展を支えてきたという側面もあり、我々の生活から切り離せないテーマなんです。今年の5月30日にも、夢の原子炉といわれた『高速増殖炉もんじゅ』に関する番組を放送しました。そういう福井県ならではの地域課題をより深く掘り下げたいと常に思っています。そうしないとNスペに勝てませんからね(笑)」
― 県の課題を伝えるお仕事をされていると、「その先」へ行きたくなったりしませんか?
「よく分かります。“その先”とおっしゃるのは、課題解決のための行動という意味ですよね。現在各都道府県ではまちづくりへの取り組みが盛んです。もちろん福井県内でも、その動きは活発化しているので、当社も参画した方がいいのだろうとは思います。福井経済が縮小していけば当社の将来もありませんから。しかし、一方で福井テレビの“報道”部門に身を置く立場としては、一線をひいて、伝えることに徹したいとも思っています。『光と影』の影があれば、当然批判せねばならないので、各プレイヤーから一定の距離はとる必要があります。メディアに散見される“伝えるだけ”“批判するだけ”という姿勢ではなく、当社の報道はより県の課題に対して、当事者の立場で伝えなければいけないと考えています。具体的に、私がいつも心掛けているのは、“主語探し”です。その課題に対して、誰が解決に向けて動くのか?という視点ですね。先ほどのまちづくりの例だと、地銀は代表格のひとつといわれています。地銀は、その独自のネットワークを駆使して、まちづくりの課題を解決しようと動くプレーヤーのひとりなんです」
― 横山さんは、報道に携わっておられる部下の方々へ、日々どんなメッセージを発しておられるのでしょうか?
「頭がネジれるくらい考えろ、です。考えて考えて、仕事の期限ギリギリで決断した内容が、その伝え方も含めて、その時点での正解なんだと。これまで著名なつくり手の方々とご一緒してきましたが、みなさん悩んで悩んで時間ギリギリまで考え続ける人ばかりでした。誰かに情報を“伝える”というのは、きっとそういうことなんだろうと考えています」