HOME テレビ 「海外番販の放映権料は0円。逆転の発想で海外ビジネスへ挑戦。」「明日、どこ行くの⁉」のTOKYO MX 城田信義さん
2017.11.8

「海外番販の放映権料は0円。逆転の発想で海外ビジネスへ挑戦。」「明日、どこ行くの⁉」のTOKYO MX 城田信義さん

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※本記事は2016年3月に発売したSynapseに掲載されたものです。

 

TOKYO MX
城田信義

編成局国際部長。2015年に新生・国際部を取り仕切るために中途入社。すべて中国人の制作スタッフによる、全編中国語の番組『明日、どこいくの!?』を立ち上げ、新しい海外向けビジネスモデルを展開中。また、インドネシア・ラトビアとの案件も進行中。

 


 

いかに中国人社会に深く入っていくか。

 

― MXさんは、昨年から国際部の体制を大きく変えられたんですよね。

「以前はアメリカのNY1とかロンドンのITNのような海外のニュース会社とのニュースの交換がほとんどでした。組織としては報道局の下にあって、報道部員が兼務していたんです。それが昨年から、編成局に移りまして。中国をメインにしつつ、インドネシアなども視野に入れて多角的に国際ビジネスを展開をしていく部に生まれ変わったんです」

 

― 城田さんは、そのタイミングで入社されたんですね。

「ええ。前職では営業をやっていました。主にミュージシャンをブッキングしたイベントを売っていたんです。その売り上げが好調な時期に、TBSとTFMと講談社と組んで、ファッションと音楽のイベントをやったんですよ。青山テルマと倖田來未が歌い、『ViVi』のモデルがランウェイを歩く。

これが2008年だったのですが、会場の前のほうに50人ぐらい中国の人がいるのに気づいたんです。特に告知してもいないのによく知っていたなと思ったんですが、これこそがまさにインバウンドのハシリで、それから中国事業をやりたいと考えるようになりました」

 

― 当時から中国向けビジネスにをされてました?

「ええ。渋谷のかわいいニュースを毎日インターネットで中国向けに配信したり。デジカメで撮って5分ぐらいの番組にして。そしたらそのサイトに人が集まるようになってきて広告が取れるようになりました」

 

― 中国事業をやろうと思い立った時、最初に何から着手されたんですか?

「まずはジェトロに行って教えを請いました。そうしたら日系テレビのチャンネルをやっている人とか、中国でいろいろな商売をしている日本人を紹介してくれました。そういう方々を何度も尋ねているうちに、少しずつ中国の友だちを紹介してくれるようになって。

紹介いただいた中国の方々を起点に、いかに中国人社会のなかに深く入っていけるかが大切だと思いました。僕、実は子どもの頃、インドネシアに10 年ほど暮らしていたんですが、駐在してる日本人は日本人社会でかたまることが多く、インドネシア社会にはみ出したほうが面白いぞっていう感覚もありました。

だから、異国社会に入り込むことができれば何かができると思っています。まあ今はニイハオと握手でだいたい乗り切ってますけど(笑)。あと一緒に飲んで早めに潰れる(笑)」

 

― どうしてMXさんに入られたのでしょう?

「制作会社という立場で向こうのテレビ局と向き合うとなると、仕事が限定的になってしまう傾向があります。スポンサーがいなくなったらやめると思われるのかもしれません。こちらがテレビ局という立場だったら、編成で枠を保証してもらえるので中国ともイーブンに向き合えます。加えて、チャレンジングな局がいいなと」

 

― 城田さんの入社のタイミングで編成局に国際部ができたのは、会社として海外とのビジネスを強めていこうという考えがあったんですか?

「あったと思います。会長は笑顔で"これからは海外とインターネットだから、走り回ってみなさい"と。テレビの概念を飛び越えるようなことに期待されてたと思います。社長からは"国際部長第一号だから奮起して、大手放送局にできないことをやりなさい"と」

全編中国語の番組、『明日どこ』のねらい。

 

― 国際部の事業計画は城田さんが?

「これまで国際部の仕事は海外番販で制作費を10%も回収できるかどうかという程度だったんですよ。以前、某国民的ドラマを売ってた担当の方と飲んでたんですが、版権も制作費も莫大にかけてつくっても海外に売ったら数十万円しか入らないって聞いて愕然としました。国内では営業部がイベントを開いたりセルパッケージで補うんですけど、そもそも海外では収益化することが難しかった。ほんの一部回収するだけで褒められてたんです。それじゃあダメです」

 

― 具体的に、どうされたのでしょうか?

「逆転の発想で、その"番組を売る"という部分を無料にして中国に展開したんですよ。すると、当然のように使ってもらえます。でも代わりに我々が番組内での広告やタイアップを取ったり、番組中で日本のものを売る企画に関してはそのままオンエアしてもらうようにしたんです。そして、販売の受け皿としてアリババとか中国のECと組んだ。番組で紹介した物がすぐそこから売れるような仕組みに挑戦してみました。キー局なら普通、何千万も掛けたコンテンツ自体を無料で渡すことはあり得ないです。当社は非常に柔軟なところがあって、コンテンツ代はゼロ円でいいと。そのコンテンツ内で紹介しているものの販売で回収してみようと切り替えてみた。挑戦でしたね」

 

― その番組が『明日、どこいくの!?』ですね。来日した中国人観光客を捕まえて密着取材するという、あの番組の構想は城田さんのなかにあったんですか?

「どんな番組がいいか中国の人に聞いたんです。そしたらあんな感じがいいんじゃない?って」

 

― 普段から中国の方の声を拾うのですか?

「中国のFacebookといわれてるウィーチャットに番組の公式ページがありまして。彼らはみんなウィーチャットが大好きで始終見ているんですけど、そこに"今度こういう場所を取り上げて"という投稿をいただきます。それを日本にいるオール中国人スタッフの制作会社に伝えて方針を決める参考にしています」

 

― 番組をつくってるのも中国の方ですよね?

「そうです。日本在住で中国の元テレビ局員の人たちを集めたんです。番組用に制作会社をひとつつくってもらって」

 

― 中国のスタッフと番組をつくる苦労は?

「やっぱりコミュニケーションですね。"日本人はこういう中国人が見たいんデショ"っていうところに気を回し過ぎてるというか。"浅草で日本文化に触れて盛り上がる中国人イカガデショウ、シロタさん?"って。僕はもっとリアルな中国人の姿が見たいので、"今時浅草なんて行かないでしょ?"って聞くと、"正直いうとソウデース"って(笑)。そういう配慮は要らない。だから" 放送禁止用語さえ使わなければ、100%好きなことやってください"って言ってます」

 

― スポンサーはついているんですか?

「5社ぐらいからお声をかけていただきました。ただレギュラースポンサーはなかなか難しいですね」

 

― 他に課題はありますか?

「社内の体制づくりです。MXは若い人が非常に優秀な会社です。各部署にはそれぞれスタープレーヤーがいるんですけど、今は社内で有機的なつながりをつくれておらず、私が海外で構築しているネットワークにどうつなげていくかが課題ですね」

 

― しかし、番組を無料提供するってすごいですね。

「我々としてはそこで紹介したアイテムが買えるようにするという販売の部分に力を入れていますからね。でも元のコンテンツが無料がゆえに、テレビで、飛行機で、インターネットでどんどん流されるようになって……今度は業務提携した大連テレビから、商品を卸してほしいという相談があります。他にも番組を見た旅行代理店から、上海~福岡のパックツアーを企画したいって相談されたり、中国社会に深く食い込んで広がりをつくるのがとても面白いと感じています。先日は中国の銀行から問い合わせがあって。顧客のVIP向けに日本の特別なパックツアーがほしいと」

 

― いわゆる爆買い目的のツアーですか?

「じゃないんですよ。自然を楽しめる体験旅行とか、従来の旅行会社だけだと実現し得ないことも、テレビ局なら情報を持っていて企画できるだろうと。で、その模様をまた『明日どこ』で放送したら、中国の人はみんな興味を持つだろうと。あとは中国の航空会社が、VIPのケアハウスを海外につくってたりするんですが、空気のきれいな日本の田舎に注目していて、"いい物件はないか"なんて相談に来たり」

 

― 中国の方も日本の地方に目を向けてるんですね。

「そうなんです。それで地方にロケに行き、そこの産品をECで扱ったりしてるんですが、ただ、番組編成予算ではそこまではまかないきれないんです」

 

― では、その資金はどう調達するのですか?

「そこが総務省の案件です。コンテンツ振興課は、"テレビ局が地方創生のために担える役割を考えよう"と謳っていて、その文脈に則ってコンペで勝って予算を計上しています。実はもうひとつ、郵便局の海外展開の調査事業も受託しています。郵便局は全国2万4000局あるんです。全国の郵便局が地方ごとの産品を開発して世界に売っていこうと。インターネット時代に地方創生を実現する仕組みをテレビと通信が連携してどのように組み立てるかという調査事業を当社が受託してるんです」

 

― 入り口がテレビコンテンツじゃない(笑)。

「総務省との調査事業には5つの試験的な販売チャネルの構築があって、そのひとつがECなんですが、今年度中にあと4つ実行する予定です。とはいえ、映像を扱うのはテレビ局としてマストです。そこは絶対に忘れちゃいけない。郵便局経由で産品を世界に売るという座組みは商社でもできます。でも商社はメディアを持っていない。売る機能をつくって"メディアで広める"というところが、テレビ局の強みだと思っています。我々は東京のローカル局として、日本の表玄関である東京が地方のためにできることを考えています」

 

― 具体的に進んでいるのはなんですか?

「海外の人がふるさと小包を買えるような仕組みをつくっています。やっぱり最初は中国なんですが、ここではケーブルテレビ連盟さんに名産品をピックアップしていただいて、我々が映像で中国の人に紹介し、郵便局が届けるという仕組み。商品紹介の動画も『明日どこ』の制作会社につくってもらってるんですよ」

 

 

「9レイジー」に新しい事業を生み出す!

 

― 番組はMX、大連テレビ、ネットでも流れてますよね。通販に関して、ネットで流した動画からショッピングサイトに飛ばすのは容易だと思うんですが、放送から買ってもらうにはどうするのですか?

「画面にQRコードが出てくるんです。3月の『明日どこ』では『神戸プリン』を取り上げます。番組のなかで"好吃~(=おいしい)"って食べるシーンを見せて、その瞬間に大連テレビに出るQRコードにスマホをかざすとショッピングサイトに飛ぶんです。外部のプラットフォームなんですが、中国で見てる人は大連のECで注文して買い物できる。TOKYO MXで出たQRコードは中国の航空会社のECサイトにつながるんです。で、そこで注文すると、日本国内16カ所のその中国の航空会社のカウンターで引き取れるんです」

 

― 外部のプラットフォームに飛ばして決済させる場合は、御社が手数料を取るんですよね?

「はい。販売手数料をいただきます。大連テレビと中国の航空会社との連携が、総務省との販売チャネル調査事業の2つ目と3つ目です。テレビって、これまでは単純に"神戸プリンおいしいですよ!"って発信するところで終わっていましたけど、販売チャネルが多様化するインターネット時代に番組として何ができるか。宣伝だけでなく、商品を売る仕組みにまで関与することはテレビ局のプロデューサーとして面白い時代だと思います。もちろんテレビ局が物流や倉庫をやるのは大変なので、そこはパートナーを選んでやっていきます」

 

― 4つ目5つ目っていうのは……?

「この部分に関してはキー局さんでは、なかなか真似できない案件じゃないかな。4月に発表の予定ですが、そのために今、ラトビアによく出張してるんです」

 

― ラトビア!?

「今は言えませんが、総務省に採択いただいた際も、"Made in Japanでどこにも負けないものをつくろう!"と。真剣にキー局に負けない企画とスピードで、東京のMXから日本の地方創生を進める仕組みを海外のパートナーと一緒につくりあげます。ウチは開局20年の若い会社なんで、いつも前例がないところから始まって新しい事業を生み出します。『9レイジー』にこれからもテレビ局の概念を越えていきたいと思いますので、よろしくお願いします(笑)」

 

 

販売チャネルが多様化するインターネット時代に番組として何ができるか。

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