HOME テレビ ~テレビ「給与明細」演出家、プロデューサー テリー伊藤さん~TheGreatMesseage「今は番組づくりのチャンス。世間を見て、自分なりの面白さを」
2017.11.1

~テレビ「給与明細」演出家、プロデューサー テリー伊藤さん~TheGreatMesseage「今は番組づくりのチャンス。世間を見て、自分なりの面白さを」

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※本記事は2015年6月発売のSynapseに掲載されたものです。

 

演出家、プロデューサー
テリー伊藤 てりー・いとう

1949 年生まれ。73 年IVS テレビ制作に入社。

『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』総合演出、

『ねるとん紅鯨団』ゼネラルプロデューサー。

著作も多数。長嶋茂雄の魅力を独自の視点から分析した愛あふれる著作『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』(ポプラ新書)が2015年4月に発売。

 


“革命”は若い時代ゆえ。テレビは今も面白い

 

「テレビが面白くない」ってよく聞くけど、オレはそんなことないと思うよ。クオリティは昔よりもはるかに高い。特に編集技術。今はコンピュータが使えるから、タイトなカット割りができるしスーパーや特殊効果も、昔よりははるかに凝ってる。昔のクルマより今のクルマの性能の方が断然いいように、どんな産業だって常に進化・発展するもの。

オレが『元気が出るテレビ!!』を始めた時に考えてたのは、誰も見たことのない番組にしようということ。テレビの世界に革命を起こしたかった。あの番組は、たけしさんこそスタジオにいるものの、企画は実質ロケだけ。当時では新しかった。

昔のことだから、細かい話はしようと思わないけど、自分の持ち味を発揮して、それまでにないテレビ番組をつくれたと思う。『元気』をやってたのは30年も前で、今は「新しいこと」というのは大体出尽くしている。だから単純に「企画が通り一遍」だとか「どこかで見たことがある」なんて言うのは、若いテレビマンにとっては酷なこと。

視聴者は視聴者で成熟して好みも多様化しているから、視聴率も取りにくいよ。10%ぐらいでいいんじゃないの? 30%取るような番組が今の時代にボコボコ出てくるのは、むしろ気持ち悪い。そんなの真っ当な社会じゃない。

ただ、ひとついえるのは、数字を取る番組は感受性を問わない番組だと思う。食べ物でいうとカレーライスとかラーメンとかおでん。お年寄りも子どももみんな好きでしょう。それをどう化粧し、イマ的な魔法の粉をふりかけることができるか。

 

“場”が広がったことで若手にも未来が

 

今GYAOとかHuluとかYouTubeとか見逃し配信サービスとかいろいろあるけど、ソフトがまだあまりそろっていないよね。普通に地上波の番組が自由に見られるようになったら、スマホでゲームしてる人の何割かはそっちを見るようになりますよ。

昔はオンエアを見るしかなかったテレビが、録画という革新を経て、いつでもどこでも番組を見られるようになったわけだしね。また次への新しい流れが来てるんじゃないかな。 はっきり言ってつくり手にとってはチャンス。特に今の地上波は、失敗を許してくれないから、なかなか若手がチャレンジする機会がない。

つくり手がいちばんオラオラなのって、20代後半から35歳頃でしょ。この年代に何か自分で仕切ってやるのは大切だから、ネット系で経験を積むのは絶対にいいと思う。 かつて森田芳光や相米慎二が日活ロマンポルノから出てきたように、Huluみたいな場所が新しいテレビ界の才能のスタート地点になる気がする。

オレだってネットでやりたいよ。PCやスマホの小さい画面ならではの、覗き的な、ちょっと変態的な心理にうまく訴えかけるようなことができそうな気がする。江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』とか『人間椅子』みたいな味わいが合いそうだよね。 今のつくり手は平成生まれだったりするでしょ? ファッションも考え方もオレたちとは違う。

平成の町を平成の目で見て、平成の耳で音楽を聞いて食事もしてきた。オレたちがいいと思う感性とは明らかに違う。それは当たり前なんだけど、さらにそこで聞く耳さえ持っていれば、オレなんかの言うことも感じ取って、いいと思ったところを盗めるわけ。平成の彼らのセンスでつくりつつ、一部だけはオレたちの感性を参考にする。

つまり両方を感じ取られるわけだよね。そうなったら強い。 もちろん前提として彼らなりの感性が必要だから、そこは「世間を見ろ」と。テレビマンっていつも仕事に追われてるから、結局内へ内へこもってしまう。本読んでもいいし映画見てもいいし女の子とチャラチャラ遊んでもいい。

大切なのは「誰のためにテレビをやってるのか」と考えること。己のため? いやいや、オレなんかほとんど女の子にモテるためにやってた(笑)。「テリーさんの時代は良かった、今はコンプライアンスが云々」って言うヤツもいるけど、面白い番組がつくれないのをそのせいにしちゃダメだよ。修学旅行を思い浮かべてごらんよ。

あんなもの全部がコンプライアンスだったでしょ。団体行動しなきゃいけない、小遣いは5000円、行く先は決まってる、門限に就寝時間に起床時間……。でも楽しかったよね? 全部フリーだったら逆に楽しくないんだよ。やりたいことがあれば、規制をいかにごまかしたりなだめすかしたりするか。コンプライアンスのなかで、ベロ出してつくるのが楽しいんでしょ(笑)。

オレ思うんだけど、べつに才能にあふれてなくてもテレビはつくれるよ。達筆も丸文字も両方持ち味で、それぞれの表現方法。勝利の方程式は一個じゃない。百も二百もある。だからオレが言ったことなんてべつに正解じゃないんですよ。みんなそれぞれ生きてきたなかで面白いと思ったことのひとつぐらいあるじゃん。

それを番組という形で表現するだけで、個性になる。だって、それぞれ面白さの感じ方は違うわけだからね。 例えば『給与明細』って番組なんか、クルマ運転してたら、隣にハタチぐらいの女が運転してるフェラーリが停まって思いついたもん。「この女の財布の中身どうなってんだろう」って。そんなことから番組を企画していけばばいいんだよ。

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