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2017.11.21

参加したくなるクラウドファンディングを。そのためにはコミュニケーション!

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思いもよらないアイデアは、気が付くとそこにも、ここにも。あまり関係のないジャンルにこそすばらしいヒントは転がっている。そんな、時代の風を巻き起こす方々に話を聞き、メディアの仕事にフィードバック。初回は、モール型クラウドファンディング「GREENFUNDING by T-SITE」を運営する株式会社ワンモアの沼田健彦さんだ。

 

沼田健彦

東京大学卒業後、電通でANA担当営業を経て、フェアトレードのサッカーボールを販売するイミオに参画。2011年6月、クラウドファンディング領域で事業を起こすべくワンモアを創業。CCCグループと提携する日本初のモール型クラウドファンディングサイト「GREENFUNDING by T -SITE」の運営を行う。単発のプロジェクトが直接起案できる直営サイトを運営しながら、クラウドファンディングをビジネスとして展開していきたい企業をフランチャイズパートナーとするビジネスモデル。パートナー企業はASPシステムを借りて「モール」に出店ができ、プランによって様々なコンサルティングサポートが受けられる。

 


 新鮮なお金が世の中を動かす!

 

―なぜ「GREENFUNDING」なんですか?

「僕が企業で扱っていたお金って、いろんなところを介して流れてくる濁ったイメージで。一方クラウドファンディングのお金は生水のように透き通ったお金。その新鮮さを表現するために“緑”をブランドにしたんです。きれいな水でつくられたお米がおいしいように、新鮮なお金でつくられたコンテンツやモノは、世の中を動かしていくはずだと思っています」

―では会社を立ち上げた経緯を教えてください。

「新卒で電通で働き始めたのは2004年でしたが、すでにこの頃からコンテンツやイベントに対する企業の協賛がかなり取りにくくなってたんですね。ANAさんの営業担当をしながら、その兆候をリアルに感じていました。特にANAさんはネットでの航空券販売を強化していて、僕もおのずとインターネットに注目するようになるなかで、Amazonの成功からいわゆるロングテールという考え方に触れたんです。

これって、物販だけじゃなく協賛や提供にも応用できるんじゃないか、と。モーターショーやオリンピックみたいにすぐ協賛の取れるヘッドなプロジェクトの陰に、スポンサーが全然つかない小さなプロジェクトが無数にあって、その需要を積み上げるとヘッドより大きくなるんじゃないかなって考えたんです。電通で扱うのは難しいけど、インターネットを活用して需給をマッチングさせるのはいいんじゃないかと考えたり」

― その後、「イミオ」という会社に入られた。

「中高大の同級生が始めた、フェアトレードのサッカーボールをつくって売るベンチャーです。実際に商品を製造してB to Cで扱うわけで、電通とは真逆なところに興味があったんです。この時に成長のための資金供給の問題に気が付きました。ベンチャーキャピタルの投資先は基本的にIT領域。そこから逆算してITビジネスを選ぶスタートアップが増えてしまい、イノベーションが起きる事業領域が狭くなっていると感じました。

イミオのようなモノづくりのスタートアップは、より初期資金を必要とするので、銀行から借りて商品をつくることが多いのですが、まさに『半沢直樹』の世界(笑)。銀行の担当者の胸先三寸で融資額が決まり、それで業績や成長が左右される。キャッシュへの不安が取り払われないと、世の中を大きくイノベーションするようなビジネスにトライする人は増えないよなって、渦中にいながら考えていたんです」

―モール型クラウドファンディングにしたのは?

「ソーシャルメディア黎明期に『Kickstarter』や『Indiegogo』を見つけて、ソーシャルメディアが広がると確実に来ると思ったんです。同時に、絶対に日本でも注目しているところがあるから、単純にアメリカのモデルを持ってきても、リソースがない自分が、資本力のある企業や有名な起業家が前面に出るところと競合するのは厳しいとも思いました。

そんな時にある友人の“ノウハウや運営するツールを販売するとリスクが少ない”という話を思い出したんです。いわば“ゴールドラッシュの時にはツルハシとジーンズを売れ” の発想ですね(笑)。案の定、2011年に著名な起業家が関わった『Campfire』や『READYFOR?』が立ち上がり、2013年にはサイバーエージェントさんが『マクアケ』で参入されてきました。

僕は最初ひとりでやっていたんですが、フランチャイズパートナーさんとのリレーションシップを積み上げることで、着実に独自の成長ができたと自負しています。以前は、パートナーのみなさんが我々の提供するシステムを借りるという印象でしたが、今では『GREENFUNDING』という場に出店するという認識に変わってきていると感じます。

『GREENFUNDING』自体がユーザーを抱え、ブランドが“できてきた”かなと。『ZOZOTOWN』も最初は有名ブランドの商品が買えるECのように見えましたが、今や“ZOZO”がある種のブランド。そういう認識の変化を起こせるのがベンチャーの醍醐味だと思います」

―力はついてきたなという感じですか?

「はい。今年7月からはTSUTAYAやTポイントなどの運営を行うCCCグループと資本業務提携をしました。CCCグループでデジタル事業を統括するT -MEDIAホールディングスが株式の1/3強を持ち、グループ入りして、サービスブランドも『GREENFUNDING by T -SITE』へリニューアルしました。

クラウドファンディングは、お金を取り扱うビジネスですから、パートナーや起案者、支援者には“のれん”も判断材料。提携で更に信頼あるブランドに成長できたと思います」

― 今回の提携で、いろんなことができますね。

「例えば、先日目標額を達成し、元AKBの森あんなさんの写真集を出したんですが、その発売イベントを『SHIBUYA TSUTAYA』『EBISUBASHI TSUTAYA』と協力して行い、リアル店舗を活用してマーケティングソリューションを提供しました。単にお金を集めるだけでなく、オフラインでは実店舗、オンラインではメディアなど、CCCグループの資産を活用し、クラウドファンディングをマーケティングサービスへと進化させようと考えています」

 

伝えねばならないのは「なぜそれをやりたいか」

 

― エンタメコンテンツ分野が多いのは?

「フランチャイズパートナーにメディアコンテンツ企業が多かったからだと思いますが…..たまたまです。まずはサイトとして面白くないと。だから魅力的なプロジェクトを揃えたいと意識しています。エンタメコンテンツはソフトですから、そもそも魅力的でないと存在し得ない。分かりやすいし、興味を持ってもらいやすいと思うんです。

日本で,ファンドでものづくりというと、工業部品のイメージが強くて、単なる自己満足なアイディア商品みたいなものも多い。“クラウドファンディングサイトに上げたら何にもしなくて資金を集められる”というのは夢物語だと思っています。まずはソーシャルメディアのマーケティングをしてファンを集めたり、事前にしっかりとリテラシーを高めたりしなければ一足飛びの成功はありません」

― シビアな世界ですね。

「それこそT-SITEに置いてあるようなワクワクできる、尖ったプロダクトであれば、どんどんやりたいですね。クラウドファンディングって、スポンサーが企業から個人に代わったようなものなんです。企業相手以上にワクワクしてもらえないと、個人からはなかなか支援は入らない。

ワクワクさせるには商品そのものだけでなく、コミュニケーションが非常に重要です。例えばこのお茶を(と、卓上のペットボトルを持つ)会議室で写メで撮ってもいい感じには見えません。表面に水滴をつけてきちんとライティングして撮影して、“宇治の至宝開発メンバー募集プロジェクト”みたいなコピーをつけると、印象は全然違うでしょ?通常の広告と同じく、クラウドファンディングでもコミュニケーションは大事だと思います」

― そういうアドバイスもされるんですか?

「します。どの程度支援金額に結びついてるかの分析まではされていませんが、プレゼンテーションの大切さは徹底します。もうひとつ社内でよく言うのは、大手出版社みたいに広い知見・情報・ネットワークを持とう、と。エネルギーのあるコンテンツなら学術からサブカルまで全部やっていい。

クラウドファンディングだからといってエコやNPOなど社会貢献的な美しいものだけを扱いたくないんです。全部の興味が集まるサイトにしたいと思っています。セグメントしないのは不利だといわれますが、的を絞ることで価値観が凝り固まるのはもったいないと思うんですよね」

― どういうジャンルが合うと思います?

「今、相性が良いのは、一見くせがあったりマイノリティだったりするジャンルですね。バイク雑誌の案件ですごく成功したものがあります。ハイテクも社会貢献もオタク的な領域もそうですが、高いエネルギーで対象に向かう人たちのコミュニティが合うと思います。同じ性質を残したまま大きくなれば、もっと支援が集まるでしょう。

そういう意味で日本最大だと僕が思うのは、阪神タイガースファン(笑)。例えば今年は阪神タイガースが優勝するはずだから、道頓堀を完全に安全にして誰でも飛び込めるようにするというクラウドファンディングプロジェクトが起案されたら、結構支援が集まるだろうって話を最近しました。

阪神ファンって数百万人はいるはずだから、決して少数派ではないんですが、巨人に対してマイノリティ精神がある。そういう熱量を持つコミュニティはいいですね」

― 自分で立案したいとか思わないんですか?

「クラウドファンディングって選挙に近い部分があって、ノウハウが分かっているからといっても必ずしも票が集まらない(笑)。自分が起案した時に基になる熱量を最大限に高めて周囲に伝えられるかを考えると、メソッドが分かっているだけに逆に難しいかもしれません。結局クラウドファンディングって魔法の杖じゃないんです。

見せるテクニックも重要だけど、その根幹にあるべきは“なぜそれをやりたいと思うのか”という原点。僕はよく、そこに立ち返ってくださいって伝えるんですけど“それは人に言う話じゃない”って語らない方が多いんです。でも、それこそ人に言う話なんです。『情熱大陸』でラストに、取材対象者がポツッともらす本音ですよ。

あれが支援者の胸を打つ。政見放送みたいなよそ行きの理念を並べても全然面白くない。今、インターネットのサービスって、ほとんどが検索経由だと思うんです。“旅行先でうまいもの食いたい”とか。でもクラウドファンディングに関しては、“どこにお金を出そう?”って検索はしない。SNSなんかでシェアされてて、面白そうだから見に行くんですよね。町を歩いてたらいい匂いがしてきたからフラッと入った店みたいな感じ。熱量から発せられる匂いや情緒ってやっぱり非常に大事ですね」

 

成功の秘訣は“人”の熱さ。夢はアジア進出。

 

― 例えば、地方局である広島テレビさんとの取り組みはどんな風に始まったんですか?

「個人です。“このままではローカル局に未来は来ない”っていう熱い方がいらして。そうして最初に切り拓く方がいてこそ。初期費用だけで維持費はほぼいらないので、休眠していても担当者が代わったら再開するケースもありますし。あと、意外と、テレビ局でも出版社でも中心になる人がいなければ社内から起案の種となるアイディアも集まってこないんですね。

編集・編成など企画のつくり手は現業で忙しいですし、営業はクリエイティブな案件は企画セクション任せになるケースが多い。仕組みだけを導入しても新しいビジネスは生まれません! クラウドファンディングに合う企画をお持ちなのは、社内でも断られるような尖った企画を考えるような人たちですね(笑)」

― メディアの新規事業の難しさって何でしょう。

「最近お会いした京都の精華町という自治体が、ゆるキャラならぬ萌えキャラをつくってすごく先進的なんです。ツイッターでも積極的につぶやかれてて……。“他の自治体からあのツイートって、どうやって稟議通してるんですか? って聞かれた”と(笑)。“業務時間外ですよね?”って。

メディアでも同じような意識の硬直化が起きているのかもしれません。例えば既存事業で評価に使ってきた指標にこだわる人が多すぎますね。クラウドファンディングを使っても視聴率も新聞の部数も上がらない。なのに、そこにつなげて事業プランを練らないと稟議を通らなかったりする」

― どうしたらいいと思います?

「例えば、組織を場所ごと外に出して、好きにやらせる。外に出して顧客を共有しない。本社の営業に頼らずに自分たちでやる。会社としても新しいことを始める部署には負荷をかけた方がいい。“自分たちで事業をつくらないと仕事がない”ような部署にしたら、しがらみもないし、スタートアップと一緒でそこに行った人は反骨精神で頑張るんじゃないでしょうか」

― 今後のビジョンを教えてください。

「グローバル、特にアジアに展開していきたいです。今、西日本新聞さんのサイトでの軍艦島プロジェクトなどフェイスブックでも3万いいね! とかあって、海外からも支援の問い合わせがあります。

将来的には『GREENFUNDING by T -SITE』を多言語・多通貨決済対応して、日本のプロジェクトでアジアのマーケットからの支援を集めたいですね。CCCグループのネットワークで一層強くなるエンタメコンテンツ分野は特に相性がいいと考えています。アニメ・映画・音楽・出版などのプロジェクトですね。東京オリンピックをめどに、アジア向けにファンディングのスキームをつくれているようにしたいです」

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