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2021.3.16

大学生が提案! 電子書籍の中古販売システム「コミックチェイン」構想

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アイデアが生まれるまで

 

─「コミックチェイン」のアイデアが生まれた経緯をお聞かせください。

小松 分析によって漫画村の閉鎖と電子コミックの需要増大の関連性を発見したことで、値引きや「1巻無料」のようなサービスが一般的で、価格を抑える施策が打ちやすそうな電子書籍に着目することにしました。電子書籍は市場が拡大中ですが、「中古本」という概念がないことに気づき、電子書籍の中古本について調べ始めました。皆で記事をあさっているなかで、メディアドゥ社がブロックチェーン技術を使って、電子書籍の二次流通事業を始めようとしていることを知りました。ブロックチェーンという技術についても、このとき初めて知ったんです。

 

─ここからブロックチェーン技術の活用に繋がったのですね。

小松 ブロックチェーン技術がどういうものなのか、何ができるのかを理解することから始めました。理解できたところで、ちょうどその頃に新型コロナウイルスの感染拡大や、PCRにおけるウイルスRNAの増幅など、「倍々で増加する」という事象が世の中を騒がせていて、ブロックチェーン技術を使って、電子書籍をコピーの連鎖で増やしていく…というアイデアを思いついたんです。電子書籍は劣化しないのでコピーしやすいという利点もあり、このアイデアにぴったりだと思いました。

 

─初めて知った技術をうまく理解して活用を考えられたのは本当に素晴らしいですね。

西川教授 PCRというのは、試料を混ぜて温度を上げ下げするだけで目的のDNAを倍々に複製していき容易に100万倍まで増幅できるという、非常にシンプルかつ革命的な技術で、1993年にノーベル賞を受賞しています。それと同じで、感染症も倍々で増えていきます。世の中で話題になっている事象を、ブロックチェーン技術と組み合わせたら面白いのではないかということになり、やっとアイデアが生まれました。なかなかアイデアが出ずに長い間分析をやっていましたが、一旦アイデアが出たらその後はどんどん進みましたね。「コミックチェイン」を中古電子漫画市場として成り立たせるために考えなければいけないことを、皆で知恵をしぼって少しずつクリアしていきました。

 

 

今後の可能性と期待

 

─ブロックチェーン技術を調べて興味深かったことは?

西川教授 コンテストで販売数と出版社利益を推定するシミュレーションも行いましたが、Kt値(1購入者あたりの平均販売数)が常にモニターできるのは非常に良いと思いました。販売促進の施策を打ったときなどに、Kt値の上下を見れば有効だったかどうかすぐにわかるので、施策最適化のための試行錯誤をしやすい技術だと感じました。

じつはこのKt値というのも、「倍々で増加する事象」と同様、新型コロナウイルス感染症からヒントをもらったんですよ。一人が感染させる平均人数のことをKt値と呼んでいて、それを見て「使ってやろう」と思いました。このシミュレーションは審査でも評価していただいたので、数式をメインに扱っている身としては、とても嬉しかったですね。

 

─ブロックチェーン技術は、他にはどのようなことに活用できると思いますか?

小松 僕はゲームが好きなのですが、ゲームも漫画と同じだと感じます。ゲームにはディスク版とダウンロード版があって、ディスク版は製品書籍と同じように新品が高くて中古は安い。ダウンロード版は電子書籍と同じように、使い勝手はいいけれど、僕が知っている限りではダウンロード版を売ることはできません。もしブロックチェーン技術を活用してダウンロード版のゲームを売れるようになれば、中古版ダウンロードゲームの市場が創れるのではないでしょうか。

 

─「コミックチェイン」を商用化するとしたら、アピールポイントは?

小松 製品書籍の中古市場では出版社側にお金が入りませんが、コミックチェインでは、システムさえ作ってしまえば、出版社が利益を得ることも可能になります。中古本の売上が増えている一方で、新刊の売上が下がっているという話もありますし、ここは大きなメリットになるのではないでしょうか。


粟國
 私の家には本がたくさんあって、祖母や母から借りた昔の本を持ち歩いて読むことが多いんです。だんだん電子化が進んで、紙の本を手に取る人が少なくなっても、電子版で中古の売買ができるようになれば、知らなかった本との出会いが生まれるという意味でも、とても良いことなのではないかと思います。レコメンドを付けて売れるようなシステムを作れば、より販売を促進できるかもしれませんね。

 

コンテストを振り返って

 

─メディアデータの分析を行って面白かったことや、さらに活用できたデータなどがあれば教えてください。

中西 漫画の売上を社会の傾向や社会で起きた事象と関連づけて考え、そこから発見したことを自分たちのアイデアに付け加えていくという作業が、とても面白かったですね。

欲しかったのは、Twitterのツイート数のデータです。作品の関連ワードが、どの時期にどれだけツイートされたかを調べたかったのですが、人力で数えるくらいしか方法がなかったので、キーワードに関するツイート数を調べるツールがあれば便利だったなと思います。

 

 

小松 メディアミックスの後の、作者さんのSNSフォロワー数の増減なども気になりました。数年前にアニメ化されたような作品だと、調べてもメディアミックス前後での原作者SNSフォロワー数のデータをあまり見つけることができなかったので。コミックアプリの売上指数に関しては、セール実施時期などの情報があれば、もっと良かったと思います。そういった施策が実際にどれくらい売上に影響しているのかを見たかったです。

 

粟國 実写の映画やドラマをやった後の、役者さんのSNSフォロワー数の推移にも興味があります。役者さんが好きで映画を見た人が、映画を見た後に原作も読んだ…など、つながりの変化が何かしらで見られると面白かったのではないかと思います。

 

─最後に、昨今のメディア業界やコンテンツ業界に対して、ご意見があればお聞かせください。

中西 僕は漫画が好きで、自宅にも1500冊くらい並んでいるので、漫画のさらなる発展を期待しています。ただ、デジタル化が進んでいるといっても、出版社によってデジタルに対する向き合い方が違っていて、新しい技術を積極的に取り入れるところと、慎重な姿勢のところがありますよね。

しかし今のところはどの出版社も、電子漫画はコミックアプリしか出していませんし、どのアプリも似通っていて「1日に何話読める」というような特典のパターンしかないので、どこか1社くらい違ったパターンのものを出してくれたらいいなと。具体的なアイデアはないのですが、どこも同じではなく挑戦していって欲しいなと思います。

<了>


中西 蓮(なかにし れん)さん/粟國 晴楽(あぐに せいら)さん/小松 歩夢(こまつ あゆむ)さん

武蔵野大学工学部数理工学科3年生(2020年12月現在)。西川教授の研究室にて、データサイエンスを学ぶ。「第11回データビジネス創造コンテスト~Digital Innovators Grand Prix(DIG)11」で審査員特別賞を受賞したチームCROWNのメンバー。

西川 哲夫(にしかわ てつお)先生

武蔵野大学工学部数理工学科教授。民間企業や出向先の文部科学省科学技術・科学政策局にて、研究員・調査員として活躍した経歴を持つ。

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