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2021.3.16

大学生が提案! 電子書籍の中古販売システム「コミックチェイン」構想

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武蔵野大学工学部数理工学科
「チームCROWN」メンバー 中西 蓮さん、粟國 晴楽さん、小松 歩夢さん
指導教授 西川 哲夫先生


データサイエンスやビジネス創造を志す学生が参加するコンテストが近年活況だ。
なかでも、慶應義塾大学SFC研究所が運営するデータビジネス創造ラボは、様々な社会システムを対象にビッグデータ利活用を実践できる人材を育成すべく、2014年から「データビジネス創造コンテスト~Digital Innovators Grand Prix(DIG)」を実施している。
昨年の第11回は「創り手と読者をつなぐコミック出版戦略~売上データから見る新しい視点のマーケティング提案~」として株式会社講談社をパートナーに迎え開催された。(ビデオリサーチも視聴率データ等の提供協力で参画)

応募71チーム、うち本選出場10チームの中で、栄えある審査員特別賞を受賞した武蔵野大学工学部数理工学科「 チームCROWN」は、ブロックチェーン技術を用いた電子コミックの二次利用システム『コミックチェイン』を提案。
入念なデータ分析と学生ならではの斬新な発想から生まれたビジネスアイデアが、出版業界の未来を切り拓く!?
「チームCROWN」のメンバーと指導教官の西川教授にお話を伺いました。

 


 

数理工学科および研究室で取り組んでいること

 

─まずは数理工学科と研究室の活動内容をお聞かせください。

西川教授 数理工学とは、数学をいろいろな分野に応用する学問です。数学がベースなので、在学中はしっかりと数学を学びます。数学の教員免許も取得できますが、数学を使ったシミュレーションなどを駆使して他の分野に応用することが数理工学の主目的です。

研究室では、主にデータサイエンスの手法を用いて、社会現象の変化をクラスタリングによって特徴付けしたり、スポーツデータから得点の要因を探ったりすることを実践的に学んでいます。データサイエンスはどんな分野にも応用できるので、生命科学、スポーツ、社会問題、経済学、医学、知的財産(特許関係)など、幅広く扱っています。

 

─「データビジネス創造コンテスト」にエントリーされた動機は?

西川教授 数理工学やデータサイエンスの学びを深めるにあたって、私の国家プロジェクトでの研究経験から、生のデータを扱わないと絶対ダメだということがわかっていたので、学生にもそれを経験してもらいたいと考えました。そこで、今は多数のコンテストが開催されているので、積極的に参加させるようにしているんです。

 

─過去にもいろんなコンテストに参加し、成果を出されていますね。

西川教授 最初の受賞は「第8回データビジネス創造コンテスト」。TSUTAYAさんの本の売上の時系列データを扱った内容で、最優秀賞を獲りました。この受賞が大きな自信になり、その後も複数のコンテストやコンペティションで受賞経歴があります。現在は「第10回スポーツデータ解析コンペティション(フェンシング部門と卓球部門)」や「令和2年度パテントコンテスト(フェンシングの光る剣に関する特許)」などに挑戦中です。

ちなみにフェンシングは私が学生時代にプレーの経験があり、統計学会のスポーツデータ解析コンペティションのフェンシング部門での受賞をきっかけとして、フェンシング協会の方々とも交流があります。学内ではフェンシングプロジェクトを立ち上げており、他の先生方や、ここにいるCROWNのメンバー(粟國さんもフェンシングの経験があります)も皆参加しています。

 

ビジネスアイデア、中古電子漫画市場「コミックチェイン」とは?

 

─データビジネス創造コンテストで発表された「コミックチェイン」の概要をお聞かせください。

小松 「コミックチェイン」とは、ブロックチェーン技術を活用した電子コミックの二次流通(中古)システムに改良を加えたシステムであり、電子コミックの一つの中古本を複数回売れるようにしたものです。ブロックチェーン技術を用いて、データを違法コピーなどができないようにしたうえで、複製した複数の電子コミックデータを“中古本”として売買していただきます。電子書籍は紙の書籍よりもコピーしやすいですし、データさえ持っていれば何人にも配れるので、同じ本を複数回売れる仕組みができるのではないかと考えました。

 

─「読む権利」を買うのが一般的な電子書籍に、「中古本」という概念は斬新ですね。

西川教授 紙の書籍であればキレイな新品は値段が高く、状態が劣化した中古本は安くなりますが、電子書籍には劣化がないので、モノとしての商品価値に新品と中古差がありません。新品を買うことに何かメリットが必要な上、新品購入者が中古として積極的に売ってくれるための仕掛けも必要になります。電子書籍の中古売買を市場として成立させるために、皆でアイデアを出し合いました。

 

小松 中古販売の期間に関する制限をつくり、新刊発売後に1ヶ月経たないと中古販売できないようにすることで、新刊の売上増進を図ることにしました。また、販売回数の上限にも差をつけて、中古と新品購入者とで差を設けました。中古購入者の販売回数は元が取れない販売回数になっており、新品購入者は元が取れるまで売れるようになっています。双方必ず上限回数まで売らなければ、閲覧および売却ができなくなるというルールも設けました。「保有しつつ売却利益も得られる」という事例を防ぐためです。

さらに、中古本には広告が付く仕組みにし、新品購入者には広告ナシで読めることをメリットにしました。中古本は広告料金を収益として得られるので、新品と中古の利益の差を埋められるのではないかと考えました。

 

 

「売上積算指数」による分析

 

─「コミックチェイン」のアイデアは、最初からあったのでしょうか。

西川教授 このようなコンテストの場合は、アイデアありきで、それに合ったデータを集めるというやり方が多いと思うのですが、我々は分析から始まっています。当初はアイデアが出なくて苦戦していたのですが、「とにかく分析を徹底的にやろう!」と頑張りました。ちょうど新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインでのリモートゼミになっていたので、時間がたくさん取れたことも功を奏したと思っています。

 

─どのように分析を進められたのでしょうか。

中西 最初にやっていたのは、漫画の売上指数の時系列を可視化すること。しかし、それだと発売日当初のピークしかグラフにあらわれず、ピーク以外の時期の細かい部分がわかりにくかったので、積算値の可視化にシフトしました。そうすると、ピーク以外の部分の時系列の変化が見えるようになったんです。

 

西川教授 発売日当初のピーク以外にも売上の変動はあるはずなのに、売上指数だけでは、“時々”の変化は見えても、逆に“日々”の変化は見えにくかったのです。それを積算指数にかえると、どんどん積み上げられていくので、日々の変化がグラフの傾きにあらわれてくれたんですね。

 

中西 売上積算指数に着目したことによって、急激に増加している部分が見えるようになり、どのように売れているかを分析・定量化することができました。実際に分析を行ったすべての作品で、メディアミックスと漫画の売上の関係性を見たとき、アニメや実写映画・ドラマの放送など、メディアミックスが行われた後に、原作漫画の売上が増加するという現象を確認することができました。

 

─他にはどのような発見がありましたか?

粟國 売上指数の積算値を可視化すると、分析したすべての作品において、2018年6月から電子書籍の積算値の傾きが約3倍に拡大しているということを見つけました。これは、製品書籍(紙の書籍)のグラフには見られなかった変化です。その時期に何があったのかを調べていくなかで、2018年4月17日に違法の無料漫画閲覧サイトである漫画村が閉鎖したことを知りました。そこで、電子書籍の売上が急激に増大した事実は、漫画村の閉鎖と関係しているのではないかという仮説をたて、Googleトレンドによる分析をグラフ化すると、漫画村の閉鎖とともに「漫画村」のワード検索が収束し、コミックアプリの検索数が急速に上昇していました。

このことから、漫画村の閉鎖とコミックアプリの利用者・電子書籍の売れ行き増大には、やはり大きな関連があると確信し、これが「コミックチェイン」のアイデアにつながりました。

 

 

─分析の過程で大きな発見をもたらした積算指数ですが、考え方はとてもシンプルで明解ですよね。

西川教授 高度なツールを使って凝ったことをするよりも、状況に応じた適切な手段で、適切に分析することが大事だと考えています。統計の難しいツールもあるのですが、使いこなせなければ意味がありません。また、最近はPythonなど使いやすいデータテクノロジーのツールがたくさん出てきていて、AIでさえ割と誰でも簡単に扱えるようになっていますが、肝心の中身がブラックボックスになってしまいがちなんですよ。

中身をしっかり理解していないと、状況が変わったときに対応できませんし、新しいツールが出るたびに一から丸覚えしなければいけなくなるので、ブラックボックス化しないよう「中身を理解しましょう」と常に教えています。新しい技術についていくのも大事ですが、中身を理解できていれば、世の中がどういう流れになってもついていけるし、自分が主導できますからね。学生の皆さんには、そういう人材になって欲しいと思っています。

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