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2020.3.25

個人情報のあり方を変え、新しい社会を創りたい vol.1~Planetway Japan株式会社 代表取締役CEO/ファウンダー 平尾憲映さん

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保険会社、エネルギー会社の業務効率化を実現

 

—実際のビジネスは日本企業に展開されていますよね。具体的な取り組みをご紹介いただけますか?

東京海上日動火災保険さんとの取り組みを紹介します。2016年にIBMさんが「IBM BlueHub」というオープンイノベーション型のプログラムを立ち上げられ、ご縁があって当社も参画することになりました。そこで「PlanetCross」について3分ほどのプレゼンを行いました。ほとんどの人がポカンとするなか、東京海上日動の担当者さんだけが我々の技術を理解してくださり、声をかけてくださったのです。

後日、ミーティングをして先方の業界の課題をヒアリングしました。「こういう課題があって、それを克服できれば業界全体としても、世の中全体としても嬉しいことだよね」という話になり、そこから1週間で話が決まりました。

東京海上日動さんとのビジネスが「X-Road」を民間に取り入れた初めてのケースです。「X-Road」の民間への導入、この成功が、エストニアからの信頼を勝ちとることができた出来事のひとつです。

 

—具体的にはどのように「X-Road」を取り入れたのでしょうか?

簡単に言うと、保険会社の“保険金支払いプロセスの効率化”です。

通常は保険金を支払う際、ユーザーはA4の申請書を2枚手書きで記入します。たくさんの記入項目があるのですが、本当に保険金の支払いプロセスに必要な内容は1行くらいしかなくて、病名と通院日数、本人確認ぐらい。ユーザーにとって、こんなに面倒くさいことはありません。

一方、保険会社の立場からすると、手書きの申請書が誤りや虚偽の申請がないか目で確認しなければならない。とてつもなくオペレーションコストがかかります。ゆえに、保険金が支払われるまで約2か月かかると言われています。

 

これらのプロセスを、当社と東京海上日動さんで完全にデジタル化しました。具体的には保険会社と病院のデータを最初からつないでおいたのです。こうすることで、ユーザーは申請時に書類を書く必要はなく、申請すれば保険金支払いプロセスが瞬時に行われます。

東京海上日動さん、福岡市の飯塚病院さん、麻生情報システムさん、そして当社とで医療情報連携の実証実験を行い、企業の業務効率化やお客様の利便性向上につながる可能性を確認できました。

 

これは世界的にも高い評価を頂き、2017年のEfma主催の「Innovation in Insurance Awards」という保険業界の世界一を決めるセレモニーで、優勝しています。また、ガートナー社主催の「APEC 2017 Award」では、その年で最もイノベーティブなデジタルビジネスモデルの部で準優勝を頂きました。
たったひとつのPoCでそこまで評価していただいたのは嬉しかったです。なお、その時に東京海上日動さん側の社員で実際のプレゼンし優勝した牧野司氏は3月1日より当社のアドバイザーになって頂きました(2020年3月5日プレスリリース)。

 

—他にも、ニチガス、凸版印刷、市川市など、企業・自治体との展開がありますね。

ニチガスさんでは、コールセンターの最適化をして業務効率を格段に改善し、コストも大幅にカットできた為、商用化を決めて頂きました。ニチガスさんのコールセンターの利用者数が130万人ですから、当社の直接のユーザーではないものの、当社のインフラの利用者数が130万人いるということです。

今は固有のサービスに対するIDしか持たないユーザーですが、例えば別のエネルギー会社のサービスに対してもそれらをつなぐIDを我々がお渡しできる。それこそがグローバル化につながると考えています。

 

そのためのファーストステップは、企業内のインフラを最適化して外とつながる準備をすること。日本の企業が抱えている大きな問題の一つは、社内インフラの整合性が取れていないことです。これまでの日本のベンダーは、インフラがバラバラでも一箇所に集めて作り直せば大丈夫と考えられてきました。

しかしそれではコストが高すぎて、そのベンダーしかできないインフラになってしまいますし、そもそも一点集中はセキュリティ上タブーです。堅牢なバベルの塔を築いても、虫が一匹入ったらそこから漏洩する。我々の場合は分散されたシステムをつなぐことで利便性とセキュリティの双方を担保します。

 

A社とB社が持っている全く別のシステムを統合しようとすると、一箇所に集めて作り直したほうが早いのですが、我々の場合は共通言語に変えるソフトウェアのモジュールを使います。例えて言うなら、日本語で話す人と中国語で話す人がいたとき、我々のシステムを入れると双方が英語に変換され、英語同士でのやり取りが可能になる。それぞれのシステムをそのまま使った状態で、バーチャルにシステムが統合されるのです。

まとめると、ステップ1で内部のオペレーションコストやインフラコストを最適化します。ニチガスさんの例のように、浮いたコストを新規事業に当てることができるようになります。

ステップ2では、ステップ1でできた仕組みを自分たちのグループ以外の会社とつながっていくことで、これまで実現できなかったサービスやデータの利活用モデルをつくります。例えば保険会社と病院、銀行と家電量販店などが連携するというように。

 

現在、金融や保険、不動産、さらには自治体など、さまざまな分野の方に興味を持っていただいています。だいたい100以上の企業から当社の技術を使いたいというお話があります。売上1兆円以上のクラスの企業も少なくありません。あとは海外から十数カ国もの引き合いをいただいていますね。

 

─自治体と組めば街の主要なインフラになりますね。たとえばファーウェイが取り組むスマートシティとは御社の構想は異なるのでしょうか?

全く違います。「自分たちが何かを独占したい」という考え方は我々にはありません。おそらく両社が共存する期間を経て、いずれ一つになるときが来るでしょう。一般の方々の思いがこちらに傾いた途端、社会はあっという間に変わる可能性がありますが、段階的に変化していかないと、色々な権利関係のビジネスが一瞬で滅びてしまうリスクがあります。

ファーウェイ以外にも、グローバルの大手企業や日本のナショナルベンダーなど、表面的に見え方が似ていて競合といわれる企業はありますが、抜本的な考え方が違っています。
そして当社には、軍事技術をベースにしたエストニアの強固なセキュリティ技術をレベルアップする「開発力」という強みがあります。このエストニアとの連携や、当社独自のユニークな特許等は、大手企業には手が出せないところなので、そこは大いに活かしていきたいです。

 

ホワイトハッカープログラムやオープン・イノベーションなど人材育成にも着手

 

―2018年5月には、国内大手企業9社を新規事業である「PlanetGuardians」と「PlanetEco」の発表会を開催されています。

新規事業発表会では三井不動産、三大メガバンク、アクセンチュア、凸版印刷、大日本印刷、日本ユニシス、東京海上日動火災の役員の方々にも登壇していただき、それぞれ3分ほどのスピーチをしていただきました。みなさん、当社や僕を応援すると言ってくださって、本当にありがたかったです。
1社ずつ口説いて、登壇していただいたのですが、世界の動きを見ている方たちなので、「個人データを個人の手に戻す」と当社の理念にも賛同していただいたと思います。

 

—御社の事業のひとつである「PlanetGuardians」についてお聞かせください。

当時構想していたのは、ホワイトハッカーやセキュリティ人材の育成プログラムです。一般の個人のもとにデータ主権を返し、彼らが安全・安心に、自分たちの意志で情報公開できるには、テクノロジーが必要です。しかし、テクノロジーの力だけで安全・安心が担保できると言うには語弊があります。なぜなら、技術は進歩するし、ハッカーのスキルもどんどん上がっていくからです。

山登りでたとえるなら、遭難したらレスキュー隊が来てくれるといった人的インフラがありますよね。個人が安全・安心に自分のデータを公開するような世界を実現するには、テクノロジーの部分で守るところと、人的なインフラで守るところが両方でセットになっていないとダメだと思い、「PlanetGuardians」を立ち上げました。

自分で言うのも何ですが、すごいメンバーが揃っていますよ。当社には、エストニアがロシアからサイバー攻撃に遭ったときに、それを防いだメンバーもいますし、NATOサイバー防衛センターで世界最大と言われるサイバーレンジのブロックシールドを作った人間もいる。日本だけでは絶対集められないメンバーです。

現在では、上記の構想をさらに発展させて、個々の企業のCISO業務をサポートするような「MyCISO」サービスや、GDPR対応の支援などの事業に発展しています。

 

—「PlanetEco」に関してはいかがですか?

「PlanetEco」は、特定のテーマのもと各社・団体と協力して、オープン・イノベーションによる新たなサービス開発を行うことを目的としたプログラムで、当社を介さなくてもA社とB社が有機的に接続してくれて新しいビジネスを始めてもらえるようにすることも目的としています。オープン・イノベーション、オープン・コラボレーションなどといわれていますが、日本はまだまだクローズドな社会です。

 

2020年2月の「Planetway Forum」では、[Planetway®️ Data Sovereignty Alliance](以後、PDSA)というものを立ち上げました。

これは、世界最先端エストニア電子政府の国家インフラ技術を日本市場で更にレベルアップさせ、世界最高水準の情報セキュリティインフラ技術を創出し、排他的、独占的、中央集権的な社会構造を変革させるコミュニティです。

データの主権を個人に取り戻すという理念・ビジョンに共感頂ける法人、個人の方は誰でも参加できます。日本以外からも参加ももちろん歓迎です。
コミュニティメンバーになると、様々なメディアコンテンツ(映像・音声・文章)、パートナーマッチング、最新動向情報、トライアル製品の早期・追加特権、その他多数の特典を得ることが出来ます。 

パートナー企業のみなさんを含め、多くの方とともにチャレンジし、データの主権を個人に返したい。そのためにも新しいインターネットの形をつくり、新しい資本主義社会を実現する必要がある。日本だけでなく、世界の企業、個人のみなさんを巻き込んで革命を起こしていきたいです。

 

 

★平尾さんのインタビュー後半はコチラ


Planetway Japan株式会社  代表取締役CEO/ファウンダー 平尾憲映さん

1983年福井県出身。アメリカで宇宙工学、有機化学、マーケティングを学ぶ傍ら、ハリウッド映画や家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社を創業。2008年、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校マーケティング学部を卒業後、ソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)に入社。その後、次世代半導体分野の企業を立ち上げるも清算を経験。サーコム・ジャパン、ワイヤレスゲートを経て、2015年7月にPlanetwayを創業。

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