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2020.2.7

仮想通貨「イーサリアム」元開発者が語る 仮想通貨とブロックチェーンの現在と未来~IOHK CEO チャールズ・ホスキンソン氏~

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仮想通貨への投資ブームは、2018年から現在にかけてはその取引レートとともに、2017年の急騰時ほど話題に上がらなくなってきました。しかし実際には、仮想通貨を支えるブロックチェーンの技術開発は着々と進み、送金など様々な分野に応用されつつあります。その仕掛け人の1人が、天才数学者と呼ばれ、ビットコイン後の最有力の仮想通貨としてイーサリアムを開発したチャールズ・ホスキンソン氏です。
現在、ブロックチェーンのオープンソース・ソフトウェア・プロジェクトである“Cardano(カルダノ)”を運営する、IOHKのCEOチャールズ・ホスキンソン氏に、仮想通貨やブロックチェーンの現状や今後についてお話いただきました。

 

―御社の事業内容を具体的に教えてください。

IOHK(Input Output Hong Kong)は、イーサリアムプロジェクトを離れた私とジェレミー・ウッド氏が2015年に設立した企業です。学術界、政府、企業が活用できる仮想通貨とブロックチェーン技術の開発を主な事業としています。

Cardanoはカルダノ財団が開発するブロックチェーンのオープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトの名称でもあり、このプロジェクトにおいて分散アプリケーション (DApps) やスマートコントラクト(契約の自動化)を構築するためのプラットフォームです。コミュニティとしての側面と、ビジネスパートナーとしての側面を両立させながら、収益を上げているという意味で、あまりない存在だと思います。

世間的な認知として、Cardanoは“仮想通貨”と“ブロックチェーン向けOSS”という2つの顔を持っていることになります。Cardanoのネイティブトークンは「ADA」で、イーサリアム(ETH)、ビットコイン(BTC)などとともに人気通貨の1つになっています。

IOHKはブロックチェーンと、ブロックチェーンの1つの活用例とされる仮想通貨を、企業や人々が広く使えるツールにするために長期的視野で取り組んでいます。
特に仮想通貨は、市場の乱高下やハッキング、詐欺行為などネガティブなイメージもある分野ですが、IOHKは信頼を得るために根気強く取り組みを進めてきました。改ざん不能、非中央集権的というブロックチェーンが可能にするシステム環境が、これまで難しかったような社会インフラの構築を可能にするという理念を変わらずに持ち続けています。

 

―日本とのつながりは、あるのでしょうか?

日本の東京工業大学や、スコットランドのエジンバラ大学、ギリシャのアテネ大学と共同研究をしています。仮想通貨にとどまらず、ブロックチェーンによるシステム基盤を開発することで、社会インフラを含めて、従来は難しかったような仕組みの構築を支援しています。

2018年の秋にFinTechのイベントに参加するため、日本を訪れました。金融庁や日本の金融コミュニティが海外のコミュニティと交流を持つという意味で重要な機会でした。ブロックストリームのアダム・バック氏をはじめ、その筋では有名な方が多数来ていて、日本のブロックチェーン業界についていろいろな情報交換がされました。

仮想通貨やブロックチェーンへの日本の規制環境は、良い意味であたたまってきています。金融庁だけでなく、投資家、事業社と消費者保護のバランスや業界の成長を重視したイニシアチブが多く取られ、優先事項が固まってきており、最終的には取り組み全体が透明化していくと思います。

日本では、金融庁という規制当局と取引所、そして取引所とほかの取引所の間でのコミュニケーションチャネルが2017年あたりから安定し始めて、関係各所でのコミュニケーションが活発化し始めました。これは、海外を見てもあまり例がなく、ポジティブな流れだと思います。

 

―金融庁の話がありました。具体的には金融庁とどのような話をしているのでしょうか?

残念なことに、制度を整えようと動き出すタイミングに合わせて、悪いニュースが出るようなことが何度も続きました。特に、ここ数年で言うと、仮想通貨の価格が乱高下したり、取引所がハッキングにあったりなどです。金融庁としても、そういった事件によって、建設的な発表ができずに、慎重な動きになった側面もあるようです。

それでも、業界の発展や規制が整ってきており、今後のビジネスや消費者保護に関しても、慎重な姿勢ではありながらも、すごく期待しているという意見をもらいました。

前述のFinTechのイベントで来日していたシンガポールの規制当局の方が、「シンガポールでは今、企業家、業界のリーダーの方々と規制当局の方々が、みんなWhatsApp(メッセンジャーアプリ)でつながっていて、コミュニケーションできるんだ」と自慢すると、日本の規制当局の方が「日本ではそういうのは必要ない。みんなよくご飯に行くから」と言って笑いが起きました。
アメリカではSEC(証券取引委員会)の当局の方々と食事に行く企業家というのはまずいないと思うので、そういう意味ではポジティブな状況にあると思います。

 

―仮想通貨市場は、2017年の高騰から、2018年は下落しました。今後どのように推移すると考えますか?

2017年、2018年、2019年のいずれを通じても、仮想通貨市場は業界全体で、技術面、規制面、安全面いずれにおいても大きく躍進していることは間違いありません。

この業界の動きを例えるなら、Amazonの過去の動きになぞらえることができるでしょう。
ドットコムバブルのピークのとき、Amazonの企業価値は、非常に高く見積もられていました。しかしその後、株式市場の受けたダメージとともに、Amazonの暗い時代が始まったのです。そこから11年くらいかかったと思いますが、現在では世界的にも類を見ない大企業で、そのオーナーは今、世界で一番裕福な人間の1人です。業界の中で価値が広く認められたとしても、世界で最も影響力を持つようなインフラになるまでには、まだ時間がかかるでしょう。

 

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