HOME 新規事業 信用のインフラ化を実現する。ブロックチェーンが日本の未来を変える 株式会社LayerX 代表取締役CEO 福島良典さん
2019.12.26

信用のインフラ化を実現する。ブロックチェーンが日本の未来を変える 株式会社LayerX 代表取締役CEO 福島良典さん

SHARE ON

このエントリーをはてなブックマークに追加

ブロックチェーンの課題とは?

 

──ブロックチェーンは、「コンソーシアムチェーン」「パブリックチェーン」の2種類あると認識していますが、どう違うのでしょうか?

ブロックチェーンは、普通のデータベースと違って複数の管理者がいて、データの状態が正しいか、コンセンサスを取りデータの改ざんを防ぐことができるんです。

コンソーシアムチェーンとパブリックチェーンは、そのコンセンサスを得る対象が違います。コンソーシアムチェーンは、例えば銀行なら、銀行が認めた人たちだけでデータを持ち寄って検証しましょうという仕組みです。アクセスと読み込みは誰でもできるのですが、書き込みと更新は限られたメンバーだけで行います。(※注:あくまで一例となり、実際の設計に依存します)

一方、パブリックチェーンは誰でも書き込みと更新まで行うことが可能です。しかし誰でもできてしまうとなると、どうやって正しい状態を保つんだって思いますよね。そこで働くのが経済的インセンティブです。ビットコインの「マイニング」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、パブリックチェーンは計算資源を使い、その計算をした証明を提出することで、報酬がもらえる仕組みになっています。ネットワークに参加する人に経済的報酬を与えることでデータを正しく保っているんです。

 

──複数の管理者でコンセンサスをとるとなると、処理に時間がかかりそうな気がしますが…。

そこがブロックチェーンの課題でもあります。
「スケーラビリティ」というんですけど、複数のデータベースの合意のプロセスに処理コストがかかるので、パブリックチェーンは1秒の間にそれほどたくさんのトランザクション(取引)を捌くことができないんです。現状捌けるトランザクションは秒間10くらいです。コンソーシアムチェーンなどにしても現状捌けるトランザクションは今だと1秒間で高々数百から数千くらいですかね。

現状は金融機関におけるお金のトランザクションなら捌けるかと思うのですが、例えばWeb広告の入札取引だと1秒間で数億件くらい捌くことになり、今のブロックチェーンのスペックだと対応できないんですよね。

 

──それは日本の技術力の問題なのでしょうか?

これはブロックチェーン業界全体の課題です。
そもそもの前提として、ブロックチェーンはサトシ(ブロックチェーンを発案したサトシ・ナカモト)が作りだしてからまだ10年しか経ってないんですよ。
なので、技術の信用をどう上げていくかというのは、これから10年、20年かけて業界全体で取り組んでいく必要がありますね。

 

──まだまだ乗り越えるべきハードルが多いのですね。

ただ、もう日本でも実用の事例は出始めています。例えば三井住友銀行が始めた貿易金融のデータ共有システム「Marco Polo」は、ブロックチェーンの技術を導入しています。

海外だと、中国はかなりのスピードで実用化が進んでおり、すでにデジタル人民元や、ブロックチェーンベースの勘定系を実装した銀行などが実用フェーズまで到達しています。中国では大手自動車部品会社がブロックチェーンを活用することで、部品のサプライヤーに貸付やファクタリング、請求書ファイナンス、在庫担保ファイナンスなどを行なっている事例もあり、中国の人民銀行は、既にブロックチェーン貿易金融プラットフォーム上での取引額が1兆円を超えたことを発表しています。

中国でそこまで迅速に意思決定できた要因は、アリババやテンセントといった大企業の運用実績があるからなんです。その積み重ねがあったからこそ、実用化まで踏み切ることができているんです。

日本はまだ実証実験のフェーズで止まっているので、実際に商用化するのは1~2年くらい先かなと予測していますが、一度その流れが来たら広がりは早いと思います。

 

──世界から見ると、日本のブロックチェーン技術は遅れているのでしょうか?

日本が遅れているというより、中国がぶっちぎりで進みすぎている感覚です。ここまで事例があるのは世界でみても中国だけです。今のところ、中国以外の国は五十歩百歩なのではないでしょうか。

 

──日本の枠組みの中で、ブロックチェーンはどのような進化を遂げていくと思いますか?

日本のブロックチェーンで求められるのは、日本の金融機関をネットワークに参加させる、日本の法体系・規制に合わせた実装にするといった、どちらかというとローカル色の強い技術になるのではないかと思います。

金融は、その仕組みも含めアプリケーションレベルで国ごとに全く異なるという特徴を持っています。銀行や証券会社のネットワーク、自動車のサプライチェーンのネットワークなどは、しっかりとその国や業界の決まりごとや仕組みを理解しておく必要があるため、極めてローカル性が強いものにならざるを得ないんですね。

僕らが戦おうとしているのはそのローカルな部分なんです。僕らは日本の産業の中心である金融機関をブロックチェーン技術で変革し、日本をデジタル国家にすることに本気で挑戦しています。

 

──そういう意味ではブロックチェーンは参入障壁がかなり高いのですね。

金融のレイヤーまでいくと国政にも関わってくることなので、仮に法律も技術も理解していても、日本の銀行が海外のベンダーに本当に発注するかというとそれは現実的な話ではないですね。

金融機関のシステムは、本当に一つのミスも許されない世界なんです。しかも各金融機関がネットワークで繋がっているので、たった一つのミスであっても単体でおさまらず、いろいろなところに波及してしまう。最悪の場合、社会活動全体を止めてしまう可能性があります。そんな状態なので、金融の根幹システムを本当にブロックチェーンに委ねられるかというのは非常に重大な問題です。ずっと人のオペレーションでやってきたところをデジタルに変えるというのは、それなりのリスクが出てくるわけです。

 

 

常に知識をアップデートし続けるためのLayerXの取り組み

 

──ブロックチェーンで勝負するためには、常に最前線の情報を知っておく必要があると思いますが、御社で何か工夫されていることがあれば教えて下さい。

幅広く技術に関する情報をアップデートしないといけないので、社内で定期的に勉強会を実施しています。勉強会のテーマは、最新技術にどうキャッチアップするかというところがメインですね。ブロックチェーンの領域は、3ヶ月でもサボると課題となるトピックが全く変わってしまうんです。また、金融領域の知識は必須なので、既存の金融システムがどう動いているのか、金融に関する法律などですね。実際の株式の決済の仕組みなどもテーマとして扱っています。

 

──そういった知識はどのような形でキャッチアップしていますか?

専門家に教えてもらうこともありますが、基本的に世の中には専門書がたくさん出ているので、そういったところから基礎知識をしっかりつけることを重視しています。

僕の感覚では、1年かけて7割程度の知識をつければ専門家と会話ができるんです。で、残りの3割は企業とのコラボレーションの中で埋める。残りの3割を埋めるためにはそれこそ10年くらいコミットしなきゃいけないという世界なのでそこはプロとコラボしていくことで埋めていきます。

 

──その感覚は、福島さんのこれまでの経験によって培われた部分も大きいのだろうと感じました。

確かにそうですね。僕がグノシーを作ったときって、メディアについても広告についても知識はゼロだったんです。なんならアプリケーションを作る知識も1くらい。経営の知識もゼロです。

でも、同じタイミングで始めたメディアの中で一番成長したのがおそらくグノシーなのかなと思っていて、それは自分たちに“学ぶ速さ”があったからだと思うんです。今は学ぶ速さが大事な時代であって、あとは自分の持っている武器を使ってどれだけ知識を広げられるかが大事。それさえできれば、いろいろな分野のビジネスで成功できると思っています。

 

 

ブロックチェーンで世の中の仕組みを豊かに変える

 

──ブロックチェーンの技術を通して変えていきたいものや目指しているものはありますか?

日本の社会問題のひとつに、労働の効率性や生産性が低いため、結果、労働時間が長くなっていることが挙げられます。そこを一番改善したいですね。テクノロジーを使いこなすことで効率化しますし、その世界にこそ豊かに暮らせる未来があると思っています。しかし、多くの人が「技術が進歩して人間の仕事がなくなるかもしれない」といった、漠然とした不安でテクノロジーの進展を止めてしまっているようにも感じます。

しかし、今一度現実を見つめて、今までの日本も進化しながら変わってきているということを認識していただきたいです。例えば自動車は、社会を大きく変えた技術であり、それによって新しい産業ができ、多くの雇用を生み出しています。ECvsリアル店舗といった話も出ますが、ECが広がったからといってリアルな店がなくなっているかといったら違っていて、むしろコマース自体がマーケットとして大きくなっています。オフラインとオンラインの融合といった形で実現されるところも多分にあるのです。

日本は積極的に変化を受け入れてきた国なんです。むしろ、2000年もの間、外から技術を取り入れることで変わり続けてきた国ですよね。ここ30年程、それをやめてしまっているという状態の方が歴史的に特殊であり、変化を楽しむスタンスこそ自然な状態だと思います。

 

──AIなどの最新技術が人間の仕事を奪うという意見は、結構根強いのかもしれませんね。

マクロな視点で見て、日本は人口が減り始めているので必然的に生産性を上げないといけません。
だから新しい技術をどんどん取り入れて1人当たりのGDPを上げていかないといけないんです。

それはつまり、技術のおかげで今までより働かなくていい人が増えているが、同じ経済規模が保てるということで、誰がみても明らかに豊かになっている状態です。日本はそれができる国だと思うので、自分のビジネスを通じてモデルケースを作りたいです。逆にデジタル化に舵をきれないなら、国は滅ぶと言っても過言ではありません。

もう一つ、別の視点を挙げると、実は最新技術は人間の仕事を奪わないということです。例えば無人スーパーとして有名な中国の「盒馬鮮生(フーマー)」は実は全く無人ではありません。決済はAlipayを使い無人で行えるのですが、実際に見にいってみるとフードコートには人間らしい接客のための人が大勢いる、デリバリーで運ぶための人もたくさんいます。日本のスーパーよりも実は多くの雇用を生み出しているのでは?とも思います。

そしてそこでやられている仕事は人間にしかできないコミュニケーションだったり、おもてなしだったりします。人が人らしい仕事をすること、機械的な作業は機械にやってもらうことで顧客にとっても温かく、働いてる人にとってもやりがいがある。そんな空間に僕には見えました。我々が実現したい「デジタル国家」なるものは決して冷たい世界ではなく、人が人らしく働ける、そんなことに人が集中でき温かい世界なのです。

 

──金融だけでなく、あらゆる業界がそれにあてはまりますか?

そう思います。あらゆる業界でブロックチェーン技術の導入を進められる存在になりたいです。

 

──本日はありがとうございました。

 

<了>


株式会社LayerX 代表取締役CEO 福島 良典(ふくしま よしのり)

東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。2012年大学院在学中に株式会社Gunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。2018年にLayerXの代表取締役CEOに就任。2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。

1
2

関連記事


アニメコンテンツとツーリズム、両者の発展の鍵を握るものは?~アニメ聖地巡礼が生む幸せな出会い~ 近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 准教授 岡本 健さん

PREV

人気の記事

RANKING

最新の記事

WHAT'S NEW

MORE