HOME 新規事業 ~リベラルアーツとテクノロジー~意志ある番組は未来を創る 人とテクノロジーの共存のために 株式会社ABEJA 代表取締役社長 岡田陽介さん
2019.1.31

~リベラルアーツとテクノロジー~意志ある番組は未来を創る 人とテクノロジーの共存のために 株式会社ABEJA 代表取締役社長 岡田陽介さん

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株式会社ABEJA 代表取締役社長 岡田陽介 氏


幼少の頃、コンピュータに触れると同時に最新テクノロジーと共に歩み続け、2012年に起業したディープラーニング系ベンチャー企業 (株)ABEJAを設立。同社は今やリーディングカンパニーとなり、日本のテクノロジー界を先導しています。今回は、テクノロジーとゆたかな世界の関係性や、テクノロジーの観点から見たメディアの問題点や可能性について、深く語っていただきました。

 

 

テクノロジーの力でより良い未来を、そして世界を構築したい

 

―岡田さんの起業までの経歴を教えてください。

大学在学中に仲間と一緒に起業したことがあるのですが、そのときに知り合いになった経営者の方々から紹介されたご縁で、あるIT系のベンチャーに入社し、入社後数ヶ月ほど経ってシリコンバレーに派遣されました。現地で過ごした期間は数ヶ月と短いのですが、(株)ABEJAの軸となるディープラーニング(※)との出会いや、シリコンバレーのカルチャーを肌で感じることができ、とても有意義でした。

(※…人間が行っている音声や画像の認識などあらゆる予測をコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつであり、人工知能(AI)の急速な発展を支える技術)

 

―帰国されてから、起業に至った経緯は?

アメリカでディープラーニングが飛躍的に伸びていることは明らかだったのですが、日本ではまだ専門的に扱っている企業が一社もありませんでした。そこで、ディープラーニング系のベンチャー企業である(株)ABEJAを立ち上げました。

 

―社名の“ABEJA”の由来を教えてください。

“みつばち”という意味のスペイン語です。スペイン語にした理由は、世界で一番話されている“面積”が広い言語だからです。“面積”というのが重要でした。言語の分布は人口で考えられることが多いのですが、人口分布が絡んでくるため、あまり正確な数値統計にならないのです。しかし、世界的にみても“面積”だけは有限なので、面積ベースで考えました。

 

―御社が目指すものは?

テクノロジーの力で「ゆたかな世界を、実装する」をフィロソフィーとして掲げています。教育プロセス等、改変の余地を残した社会構造は世の中に溢れているので、テクノロジーの力でより良い世界が実現できるよう、強くコミュニケーションしていきたいと思っています。

 

AIは魔法の杖ではなく、手段の一つ

 

―ABEJAプラットフォーム開発の経緯や、現在に至るまでのお話を聞かせてください。

最初はディープラーニングのモデルを開発運用するための基盤「ABEJA Platform」を作りましたが売れませんでした。そこで、「ABEJA Platform」を基盤としてインダストリー(産業・工業)特化したSaaS型のAIを活用した店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を作って、小売流通業へのシェアからスタートしました。次第に製造やインフラにも伸びてきて、今現在は「ABEJA Platform」に関してもどんどん市場に伸びてきているというのが、大きな流れです。

 

―AIをビジネスや社会に実装するという事を御社のHPでも謳われていますね。

AIはあくまでも手法の一つで、AIそのものを売っていても仕方がなくて、AIを作る仕組みを売っていきたいと考えています。例えて言うなら、魚を売るか、魚の釣り方を教えて報酬を得るかの違いです。
AIに関しては、魚を売っていても仕方がないんですよね。なぜかというと、欲しい魚がそれぞれ違うからです。だからといって、大人数を抱えてありとあらゆる魚を釣って、こちらで全てさばくというのは難しい。
そこで我々は、高性能の釣竿を各企業にお渡しして、魚の釣り方をレクチャリングし、各企業に最適の魚を釣っていただいています。そうやって、釣竿を持っている限りは弊社のサービスを提供させていただくという所でビジネスが成立します。各企業は釣り方を既に知っているので、この仕組みをいくらでも自分たちの業務に取り入れることができます。これが、我々が作っている仕組みです。
今では小売流通、製造、物流、インフラなど150社以上の本番運用実績があります。弊社が提供しているサービスも、イノベーター層まではだいぶ浸透してきている状況で、これからはマジョリティ層に向けて、AIをはじめとした最新テクノロジーの普及を促進していくという段階にまで来ています。

 

―AIの更なる普及に向けて、課題となることはどんな事でしょうか?

AIを魔法の杖だと思わないことですね。「AIが全てを解決できる」といった話をされている方を時々見かけますが、まず「AIで何がしたいのか」をしっかりと考えることが重要なのです。
「AIで何かしたいのですが、何かないですか?」という話が来ることもあるのですが(苦笑)、何をするかは我々が決めることではありません。もちろん、その段階から介入してコンサルティングを行うこともあるのですが、先方がきちんと把握されているケースのほうが、圧倒的に良いディスカッションができます。
目標とするビジネスモデルが見えていない状態のまま、AIが全て解決するということは有り得ません。AIが、“考えることを放棄する道具”にならなければいいなと思います。

 

―企業側の意識も変わりつつあるのでしょうか。

だいぶ変わってきた印象はあります。創業した頃とは全然違いますね。最初は、ひとつひとつ丁寧に話したとしても、まだ分からないかもしれないくらいの感じでした。そこを耐えて待って、今ようやく乗り越えて、これから普及に向かっていくという段階です。
現在、普及率においては我々がほぼリーディングカンパニーになっているので、大体はまず我々にお話をいただくことができ、非常に良い形になってきています。

 

 

―御社がその先に目指すのは、AIを含めた最新テクノロジーの実装によるゆたかな世界の構築というイメージでしょうか。

テクノロジーに限らずとも、ゆたかな世界を構築できれば何でもいいというスタンスです。テクノロジーがない世界のほうがゆたかなのであれば、テクノロジーを放棄したほうがいいとさえ思っています。
ただ、テクノロジーを使うことで飛躍的なプロセスイノベーションを起こせるのは間違いない。これは過去が証明していて、産業革命の前と後はどちらが良かったか、電気が発明される前と後はどちらが良かったか、インターネットが生まれる前と後はどちらが良かったかというと、明確に後者に軍配が上がりますよね。ただ、それによって生まれた矛盾点や歪みも、テクノロジーの側面の一つとして存在しています。

 

―矛盾点とは?

わかりやすい例としては、マンハッタン計画で核爆弾ができてしまったことが挙げられます。AIも含め、全てのテクノロジーに言えることなのですが、良いほうにも悪いほうにも作用するという“諸刃の剣”なのです。悪いほうの側面をどう抑えられるかということが課題になってきます。リベラルアーツが求められていると強く感じます。

 

―こういう不確実性の時代だからこそ、リベラルアーツの重要性は以前よりも高まっているのかもしれませんね。

昔は核爆弾のボタンを押せる人が数名だったので、その人たちがリベラルアーツ感を持って、「世界のためにはどうするべきか」を考えれば良かったのですが、今は誰でもAI等のテクノロジーを使うことができるので、より多くの人々がリベラルアーツに基づいた高い倫理観を持ってテクノロジーを利用することが求められています。リベラルアーツ感を持って、テクノロジーを良いほうに活かせる人々を、どう育成していけば良いのかという論点になってきていると思います。

テクノロジーは基本的にファッショナブルなので、タイムラインに沿って新しいものがどんどん出てきます。「テクノロジーを使って何をするのか」を考えるのが人の仕事なのですが、そのとき必ず二面性が出てきます。そうしたときに、全員でしっかりと「悪のほうに使わない」という同意を取っていくことや、社会が良くない方向に流れていかないように、シビリアンコントロールをすることも重要になってきます。

そして、そうなってくると、人としての在り方のようなものが今まで以上に求められてくると思っているので、啓蒙や人の育成をしていくことは必須課題ですよね。
その上で、AIや量子コンピューティングなどの、テクノロジーの最先端を追っていき、そういった先端技術を取り入れたプラットフォームを使って、いろんな産業界や人の生活に影響を与えるプロセスをインテグレーションしていく。そうすることによって、はじめてゆたかな世界が実装されていくと思っているので、我々としては非常に重要視している部分です。

 

―御社における人材育成で気をつけていることは何ですか?

難しいのは、リベラルアーツは勉強しようと思ってもダメなのです。人それぞれの考え方の違いもさることながら、何がリベラルアーツなのかわからない状況なので、数学の問題みたいに正解がなくて、永遠に解答が出ない。常に自分の中で疑問を持ち続けて、試行錯誤を繰り返しながら、矛盾点に苦しみつつ、あるべき姿を模索し続けるしかないのです。

 

―確かに、画一的な教育が出来るような簡単な話ではありませんね。

高名な科学者でも、それをやっている人とそうでない人が明確に分かれます。マンハッタン計画のとき、広島・長崎に起こった惨劇について、アインシュタインは「なぜこんなことが起こったのか」と悩み、ルーズベルト大統領に原爆開発を進言したことにずっと苦しみ続けていましたよね。そういうことをできる人が重要だと思っています。アインシュタインのような感覚を、全員が持つ必要があると思うんですよね。

 

―社員の方々にもそのような話をされるのでしょうか。

はい。ただ、社員には「これが答えだ」という話は一切せずに、とにかく考え続けることが重要だと伝えています。勉強し続けた上で、自分がどういう意思決定を取るのかという所を、追い続けるしかないですよね。

 

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