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2018.10.17

AI が変えていく会社の未来、雇用の未来 ディップ 株式会社次世代事業準備室 室長 進藤 圭さん

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求人企業にとってAIサービスは競合するもの?

 

―AI系の企業を育てることで、御社へのリターンはあるんでしょうか?

それはよく聞かれます(笑)。我々が出資する企業を選ぶ基準として、ひとつは投資、事業連携の可能性があること。リターンを求めるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の観点ですね。もうひとつは代理店の観点。出資しなくても売り物にはできるので、自分たちの営業網で売れないかという観点でも選んでいます。

 

―御社が投資している3社の技術・サービスを、御社の営業職の方は、具体的にどのように売っていくのでしょうか?

 まず、1社目のXpressoが開発した友人マッチングサイト「フォクシー」は、人材採用にも技術応用ができるんですよね。今は「人事担当者の代わりにチャットボットが会話する」といったことを、一緒に研究しています。

2社目のガウスは、AIで競馬予想をする会社としてよく紹介されるのですが、実はAIの受託開発を行っている企業なんです。競馬の予測というのは複雑でして、芝の状況や馬の年齢などの要素を基に予測をする。答えも毎日出るので、AIのエンジンをより向上させていくには適している素材と言えます。

日々、競馬の予想をするなかでAIの予測技術や、自然言語の解析、馬の身体画像から毛並みを分析する画像認識といった技術を開発していき、その技術を使ってAIの受託開発ビジネスを展開しています。その上で、当社とは採用に関するAIを作るといったことを一緒に行っています。

あと、JOLLY GOODというVRの会社とは、リアリティを感じることができる研修サービスを一緒に作っています。JORRY GOODはもともと映像を制作していた人たちが集まってできた企業で、そうした人たちの技術を使ってVRを作っています。

人間って、ある程度の没入感があると、すごく学習できるんですよね。なので、リアリティのあるVRを研修で使い、その裏側でAI解析をしています。解析結果から、研修時にどこを見ているかとか、かわいい女の子が出てくると、そっちばかり見て逆効果だといったこともわかります。これは「Guru Job VR」という名前で、大手企業にすでに販売しています。

ひとつ事例をお話すると、造船会社は、工員の安全教育にかなりのコストをかけています。ですが、ビデオを見せたりしても、臨場感がないため集中して見られないそうなんです。そこで、VRゴーグルをつけてもらい、実際に指差し確認をする。指差し確認の箇所を忘れると、バーチャルで高い所から落ちる経験ができるという仕組みを使って、正確な動作を覚えてもらうとようにご活用いただいてます。

 

―そのVRゴーグルは、御社の営業の方が、「こんな研修プログラムがありますが、いかがでしょうか?」という感じで、クライアント先に紹介するのですか?

 そうです。AIも求人や人材の事業も、営業の先は一緒です。「研修は、どのような形でやっておられますか?」と尋ねるところから入ります。たとえば、全国チェーンの飲食店を手がける企業さんなんかは、全国の店舗を回る研修チームがあるんです。教える人が変わってしまうと、研修の質が変わってしまうという課題があるそうなので、「では、こういうVRツールを使えば、特定の人が巡回しなくてもできるんじゃないですか」と提案するんです。

 

―「AIアクセラレータ」を始められたのはいつですか?

2017年4月でしたね。ただ、当時は社内の人に「AIアクセラレータ」のコンセプト自体を理解してもらうことが難しかった。社内的にAIって求人事業と競合する領域ですからね。「どっちみちAIが人間の仕事を取ってしまうんなら、自分たちでAIをやったほうがいいよね」という方向になって、始めることができたんです。「将来、求人市場はどうなるんだろう、ウチの会社はどうなっていくんだろう」というところから話し合いました。

 

―役員会で話を通すときはどうでした? 

意見が割れました。既存事業の責任者からすると、求人事業で100億、200億稼いでいるわけですから、議論になりました。ただ、最終的には「一回やってみれば?」という感じになって。それが当社のいいところなんです。あとは冨田のキャラクターも大きいんでしょうね。結局、「とりあえずはチャレンジしてみよう、やってダメならまた考えればいいじゃん」という話に落ち着きました。

 

―実際、「Guru Job VR」のように営業の方に販売しているわけですが、営業の方からの反響はいかがですか?

今、1,500人いる営業職がいますが、ずっと求人の営業をしてきた人にとっては「お客さんに人を採用してもらうのが仕事」。今は少しずつマインドチェンジが始まっている段階です。ただ、新卒で入ってくる若い人は、あまりAIのようなテクノロジーに抵抗がないみたいです。

 

―あとは御社内でAI開発もしておられるのですよね。

 はい。ツイッターを解析して、自分はどれだけモテるか判定するエンジンを作ったりしています。男女判定をしたり、フォロワーとかエンゲージメント率を見たりして、モテるかどうかを判定します。

 

―それは他社との共同ではなくて、御社独自で開発しているのでしょうか?

そうです。新規事業の作り方には2種類あって、ひとつは自前で作るという“内製”、もうひとつは投資でつくる“外製”。両方やっています。社内に社員のエンジニアが1名いて、その下に大学生、大学院生を揃えるという体制です。学生さんのほうが我々よりもずっと優秀なので、ガンガン作ってもらっています。

 

―進藤さんの部署はカバー領域が広いので、AI以外にも、新規事業チームとVCチームもあるんですよね。

はい。新規事業チームは、AIとか関係なく、副業系のビジネスサイトや外国人採用サイト、販促サービスなど、私自身も把握できないくらいの数をやっています。VCチームはAI関係で3社、それ以外で8、9社に投資しています。

私が室長を務める次世代事業準備室には、社員が8名と40数名のインターンがいます。研究室とか部活に近い感じで、ワイワイやってますね。

 

―楽しそうですね。会社に対して、定期的に活動報告はしているのですか?

クォーターに一回とか、半年に一回とかですね。投資の案件だと月1回、場合によっては毎週という頻度のものもあります。案件ごとによって、それぞれという感じで報告しています。

 

面白いこと・新しいこと・人が喜ぶことを追求したい

 

―AIの事業に関して、立ち上げに当初反対だった方々の現在の反応はどのような感じですか?

当初、AIに対して抵抗感はあったと思いますが、実際、始まってみると、商品の姿もきちんと見せられているので、抵抗を持っておられた方々にも納得してもらえるようになってきたと思います。

 

―進藤さんは面白いことをやりたいっていうのが、根幹にあるのでしょうか?

そうですね。“面白いこと、新しいこと、人が喜ぶこと”を追っていくというのはありますね。その方が、結果として儲かったりもするんで。

 

―御社から出資した3社以外で、これは面白かったという企業はありますか?

ありますよ。たとえば、飲食店に監視カメラを置いておくと、人がその空間に何人いるかを特定できるシステムを使って、席が空いているかどうかを判定し、デジタルサイネージにその店の空席確認がリアルタイムで出るというもの。同じカメラを使って、万引きの監視もできます。不審な行動をするときの関節の動きを感知して、万引きの判定をするとアラートが鳴るんです。

 

―御社からの支援プログラムの流れの中で、出資にまでは至らなかったとしても、「何かを一緒にやろう」となったパターンはあるのでしょうか?

全然ありますよ!バッチ(スタートアップ向けプログラム)が終わっても、つかず離れずの関係で、2ヶ月に1回は50社の卒業企業に会っています。当社からの出資はダメでも、他社に紹介することもあります。それこそ我々の競合企業に紹介することもありますよ。「御社に合うと思うので、投資してあげてください」って。

 

―ずいぶんとフリースタイルですね(笑)。

そうですね(笑)。

 

 

 

AIで失われる仕事はあるが、新たに生まれる仕事もある

 

―話は戻りますが、御社にとって、人口減少が課題としてあるというお話でした。今後、人の働き方はどうなっていくと思われますか?

 今、いちばん注目しているのはRPA、つまり事務作業の自動化。実は今、本を執筆しているのですが、テーマはRPAです。労働力は減っていくから、弊社も新卒採用はキツくなる。早めに自動化に取り組もうとして、2013年ぐらいから失敗も繰り返したりしながら、自社でRPAに取り組んでいます。こういった話をいろんなところでしていたら、「本を書きませんか?」と声をかけてもらったんです。RPAを導入して失敗した話とか、うまくいった話をシェアする内容の本です。

あとは、クリエイティブを自動生成するシステムにも注目しています。画像を入れただけで、AIがコーディングしてくれるなど、クリエイティブの自動生成ができる日もいずれは来るでしょうね。特に、脚本やコンテ、バナー、写真の角度、編集、レタッチなどの領域で、案出しのようなことはAIがやってくれる。パターン出しさせるなら、AIのほうが低コストで、かつ速い。そして、ものすごい数のパターンを出してくれますから。

但し、“選ぶ”という作業は人間にしかできません。だから、最後に決定版にまで持って行くには、その成果物を使う企業の好みをエンジンに教え込ませる必要がある。そこはデザイナーさんやクリエイターさんの仕事になってくるんだと思います。いい具合に、AIがやるところ、人間がやるところが分かれていくのでしょうね。人間はより決定するところに近い領域をやっていくイメージを持っていますね。

 

―5年後、10年後のAIはどうなっているとお考えですか?

PCが普及していく頃の状況ととても似ていますね。最初はPCが使えるだけで、すごいことだったのが、今では普通ですよね。AIも同じように、今はすごいって言われているけれど、そのうち入っているのが普通みたいになっていくと思います。

今、画像とテキスト、音声の分野でそれぞれAIの研究が進んでいますが、いちばん早いのは画像でしょう。もう5年以内には「AIが入っていて普通」に近い世界になりそうです。iPhoneのface IDもAIじゃないですか。そんな感覚です。

文字については、日本語は少し遅れる可能性がありそうですね。Gmailのオートコンプリート機能を見ていると、だいたい正しそうなヤツを出してくれます。だから、一問一答のような単純なものなら、自分の代わりに応えてくれるみたいなのは5年後ぐらいには可能かもしれない。文章の自動生成とかもわりと近い将来だと思います。ただ、良い・悪いといった判断については、しばらく出来ないかなと思います。そこを判断するのはやはり人です。結局、AIは良し悪しを判断する基準を持っていないですからね。

 

―自分自身、もしくは会社自身の評価軸で判断していく部分が残っていくということですね。 

そうですね。その際、人間の納得感、あるいは拒絶感というのがキーワードになると思います。たとえばAIがテレアポするリストを推薦してくれるというのがあります。ただリストだけでは、なかなか人は動きません。人を動かすのは理由です。「競合にこれだけ載ってて、昨年のこの時期にこれだけアポが取れています」というと、人は動く。行動を促すという点で、こういう納得感を持ってもらうための材料を提示するという事は重要になってきますね。

AIのサービスが世の中にたくさんあるっていう状態になるまであと4~5年はかかるでしょう。そうなるまでは、アクセラレータプログラムや「AINOW」は続けていくと思います。私が関わらなくなったとしても、誰かが引き継いでくれるように今、がんばっているという感覚です。

 

―AIが導入された職種に身を置いていた人たちは、AI導入後はどういう分野に行くと思いますか?

その仕事そのものは失われますね。ただ、RPAを導入すると何が起こるかというと、そこにはかならず人が付いてくるんです。RPAハンドラーやRPAグロースハッカーとよばれる人たちですね。RPAのお世話をする人が必要になるんです。要するに、新しい雇用がそこに生まれる。

今、雇用が失われるといわれている部分は、ほっておいても将来かならず失われる職種なんです。歴史上の雇用移動は必ず生まれますから。今、新たな雇用が生まれている分野は、介護などの人にしかできない仕事です。自動化が進むことで、雇用は判断や企画をする仕事と人間的な仕事の二極化が進むでしょう。

これは意義の高低ではなく、ロボットの世話をする仕事と、人間の世話をする仕事に分かれていくということなんです。私は良い姿だと思います。本来は人がやらなくてもよかった仕事を、これまでやっていましたからね。人間にしかできないところに、関わっていくということですから。

たとえば、これからは営業職のような対面の仕事は、どんどん価値が上がっていくと思います。“人が来る”ということに価値がある、そんな時代になると思いますね。

 

―AIの話が雇用の将来へつながる話になりましたね。本日はありがとうございました。

(了)


ディップ株式会社次世代事業準備室 室長 進藤 圭(しんとう けい)

早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、ディップ株式会社に新卒入社。営業職、ディレクター職を経て、40件以上のサービス企画に参加。

新規事業と事業提案制度の責任者や、人工知能ニュースなどメディアチームの責任者を務め、スタートアップ支援では投資担当を兼ねている。その他、TBSラジオ「好奇心家族」にてニュース解説者など幅広い分野で活躍している。

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