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2018.10.17

AI が変えていく会社の未来、雇用の未来 ディップ 株式会社次世代事業準備室 室長 進藤 圭さん

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ディップ 株式会社次世代事業準備室 室長 進藤 圭氏


日本最大級のアルバイト・パート求人情報サイトの「バイトル」などさまざまな求人情報サービスを提供するディップ株式会社。さまざまな人材サービスを手がける同社において、AIに着目した新規事業の立ち上げを担う進藤さんに、現在同社が手がけるAI関連サービスや新規事業開発への取り組みをお伺いしました。


 

二度の起業経験を経てサラリーマンに

 

―まず、進藤さんのご経歴を教えていただけますか。

大学を7年かけて卒業し、2006年に新卒で当社へ入社しました。営業や企画を経験した後、2009年に看護師人材のサイト「ナースではたらこ」を立ち上げ、そこから新規事業を手がける「次世代事業準備室」に移り、いろんな企画・事業の立ち上げに関わっています。

 

―そんな事業のひとつである、「聖地巡礼マップ」というWebサービスもユニークですね。

 アニメの舞台になった場所をバーチャルで訪問できるというもので、2014年にサービスを開始しました。これは地方創生が目的としているサービスです。地方の観光協会などと組んで体験移住を企画したり、アニメの舞台にちなんだスタンプラリーをやったりしましたね。

 

―大学に7年おられたということですが、学生時代は何を?

学生時代に起業したんです。1回目が1年生のときで、2回目が3年生の半ばですね。1回目は事業が大きくなりすぎて手に負えなくなって売却し、2回目は失敗して借金を抱えてしまい、その返済に3年かかったんです。だから7年在籍することになりました(笑)。

 

―学生時代の起業についてお聞かせ下さい。

1回目はイベント会社を経営していました。もともとは、幹事の仕事を代行するサービスから始まったのですが、そのサービスを通じていろんな知り合いができるようになり、この人脈を元にイベント会社を立ち上げたんです。いろんな企業からの依頼でイベントにコンパニオンを派遣したり、「ライブ会場に全然、人が埋まっていないから埋めてくれ」という依頼で学生を動員したり。そんな事業を2年生後半までやっていましたね。

最初は個人で手がけていたのですが、管理できなくなってきたので会社にしたんですね。でも、規模が大きくなりすぎて面倒くさいことになったんで、似たようなことをやっている規模の大きな会社に事業を売却しました。

2回目は、家具の輸入販売です。2年生の終わりにインドなどいろんなところに旅行に行ってフラフラしていたんですが、その時の縁もあって、3年生の頃にいろんな留学生と知り合うようになったんです。留学生って実家から食料品なんかを送ってもらったりするのですが、それを利用して家具のドロップシッピングみたいなのを思いついたんです。留学生の家族がバイヤーみたいな感じで。

 

―何故、家具に注目したのでしょうか?

現地で調達したときと、日本で同じようなものを買ったときとの差額が大きかったからです。インドでゴミみたいに置いてあった壺なんかが、日本では1万円売っている様子を見て、「これだ!」と。

留学生の家族に現地で売っている家具の写真を撮ってもらい、それをネットショップに出品しました。オーダーが入ったら、留学生を通じて家族に送ってもらうようお願いするという、小遣い稼ぎの手伝いみたいなことをやっていました。4年生までの約1年間やりましたね。

 

―その事業が失敗した理由はどこにあったんでしょうか?

輸入販売が儲かったんで、仕入れをして在庫を持ったんです。これがミスで、在庫で倒れて借金を作ってしまったんです。それで、3年間はアルバイトなどをして借金を返済し、卒業しました。経営者として、つらい側面を見たのが大きな経験でしたね。預金通帳の桁がどんどん減っていく。それで、「経営者にはしばらくならなくていいな」と思って、就活しました。

 

―そうした経験をされて、入社先としてディップを選ばれたのはどういう理由なのでしょう?

いろんな企業でインターンをさせていただいたんですが、だいたい“普通にいい会社”だったんですよね。ところが、ここの会社だけは野武士みたいな人たちばかりで。これでウェブの商材を売っているというのが、すごいなぁと思いましたね。営業の人はいるけど商品を作る人がいない状態だったので、「いずれは商品企画とか、新規事業とかも必要になる。自分が入ったらすぐにそういう仕事が出来そう」と思って、入社を決めました。

 

AIサービスを世に広める新事業

 

―現在は「次世代事業準備室」という部署で新規事業を手がけておられるわけですが、今日は、さまざまな事業の中でも特にAIについてお伺いしたいと考えています。まず、御社がAIを手がける理由を教えていただけますか?

 いちばんの理由は人口減少です。労働人口が減っているのは、我々にとってチャンスでもあり、危機でもあります。高齢者はこれからも相対的には増えていくので、店舗の側から見るとお客さんは増えることになりますね。でも、一方で人手が足りなくて倒産していくケースも多い。こんな状況のなかで「我々に何かできることがあるんじゃないか?」というところから始まって、AIやRPAを打ち出すようになったんです。

現在、求人業界の景気は良いのですが、将来に対する危機感はあります。「将来に崖みたいなのが絶対あるよね」という話を業界でもしています。これは日本だけでなく、世界的にも同じことがいえると思います。

ディップには営業職が1,500人ほどいます。業界で代理店だけでなく、直販でこれだけの営業部隊を抱えている企業はなかなかないのですが、それがお客さまとの密着度を高めている強みともいえます。今後は人口の減少の影響を受けて、今なら5人の人材を供給できているところが、今後は3人しか供給できなくなってくるでしょう。そのマイナス分をAIで補おうという感じで始めました。

次世代事業準備室でAIに関する事業としては、AIの専門メディア「AINOW」の運営と、アクセラレータプログラムを提供する「AIアクセラレータ」事業、それに社内でのAI開発です。

「AINOW」は2016年の末に立ち上げました。実はこれ、上の人間に通さずに勝手に始めたオウンドメディアなんです。「ワードプレスだし、お金も手間もそんなにかかってないしねー」みたいな感じで(笑)。ただ、たまたま日経新聞に出ちゃったんですよね。それを社長が読んでて、「なんだこれ? 聞いてないぞ」みたいなことになって、「あ、すいません」って謝りました(笑)。

 

―「とりあえず、やっちゃう」って感じですね(笑)。

 そうですね。

 

―AIに関するニュースとか、インタビューとか、結構な頻度で更新されていますよね。取材も進藤さんが行かれるんですか?

初期は私も行ってましたね。今もときどき行ってますけど。その後は、「AINOW」を始めた頃にインターンで来てくれていた学生が今では社員になって、編集長として頑張ってくれています。ライティングもカメラも彼が1人でやっている。編集はインターン体制でやっています。「AINOW」は、社員の編集長が1人とインターン5名という体制で運営しています。平均年齢は21、2歳ぐらいでしょうか。

「AINOW」をやっていて気づいたのが、AIのサービスそのものが日本にはあまりないということ。海外ではAIにたくさん投資されているのですが、日本ではそもそもサービス自体がないから、投資する先がない。それなら、我々でやろうじゃないかということで立ち上げたのが、AIに関わる企業の育成やPR代行を行う「AIアクセラレータ」事業です。

AIに特化した企業育成支援のためのアクセラレータプログラムを開発したのは、当社が日本初。ちなみに、世界で初めてやりだしたのは香港にあるZeroth.ai。当社が2番目で、グーグルが3番目です。

 

―アクセラレータプログラム自体はどのようにして開発していったのですか?

私自身が起業したとき、「お金をどうやって借りればいいのだろう」とか、「営業資料ってどうやって作るんだろう」とかが、わからなくて困ったんです。なので、自分自身の経験を基にプログラムを作っていったという感じでしたね。

 

―プログラム数はいくつあるのでしょうか?

企業ごとに異なるんです。「アイデアがなくて、人だけいる」みたいな企業もあれば、上場まである程度見えていて、組織をどう作っていくかが課題といった企業もあります。だから、プログラムは個別のケースに合わせてオーダーメイドですね。対面で話しながら、「課題はここですね」ってディスカッションして、どうやって解決するか考えています。お客さんを紹介するのがいいのか、商品を改善するのがいいのか、そもそもその事業を続けるのが正しいのか、みたいな感じで。

 

―とても手間がかかりますよね。それを進藤さんがやってらっしゃる?

 はい。私がやっています。たしかに手間はかかるのですが、1社1社面談をしていったほうが、逆に手間がかからない場合もあるんです。たとえば、優秀な企業に対しては「いいねえ~!」って褒めるだけ、というのも全然アリです(笑)。そうすると、テンション上がって自然と伸びていく、という感じですね。

 

―今、「AI.Accelerator」のサイト上に掲載されているパートナー企業の一覧を拝見すると、30社ぐらいありますね。それぞれの企業にお願いに行ったということですか?

 はい。「立ち上げるから協力してください!」って、一社ずつ訪問しました。最初はどうやって進めればいいかわからないので、VC(ベンチャー・キャピタル)の人に「なんでAIに投資しないんですか?」って、純粋に聞きに行ったんです。そのときに「他に、このAIの領域で話を聞いたほうがいい人って、どういう人ですか?」って質問して教えてもらい、いろんな企業を回りました。

みなさん、我々の問題意識に共感してパートナー企業になってくださっています。ビジネス上の利害もあるし、VCだったりするので「AIの銘柄が出てきたら投資したい」みたいな下心も当然あるでしょう。それはそれで歓迎です。

 

―パートナーを募るためにいろんな企業を回ってみて、どんな感想を持たれましたか?

 みなさん、企業を経営したり投資したりするので、育成というところには手をかけられない。だから、「企業の育成をやってくれるなら応援するよ」という感じでしたね。

パートナーの中には、Wantedlyさんのような、当社にとっての競合会社さんもいらっしゃいます。彼らは「Wantedly AI / Robot Fund」というファンドを手がけておられ、我々と課題意識が似ているんですよ。AIに投資することで新たな事業を生み出そうとしておられます。

「AIアクセラレータ」は今年で5期目。1期3ヶ月なので、これまで計15ヶ月間やってきたわけですが、約400社のエントリーがありました。そのうち、採択して育成した企業は48社。その中で、我々が出資したのは実は4社だけです。

それでも、卒業生からビジョンファンド系から出資を受ける企業が出たり、1年でイグジットする企業が出たり、スタートアップの登竜門と呼ばれるICCサミットの「スタートアップ・カタパルト」にも卒業生の4社が出て2社が入賞したりとか、成果は少しずつ出始めています。とにかく今はAIの企業を増やすことが大切だと考えています。

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