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2018.9.28

膨大な気象データを顧客のソリューションに役立つ、より価値ある情報に 株式会社ハレックス常務取締役 足海 義雄さん vol.2

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株式会社ハレックス 常務取締役 兼 ビジネスソリューション事業部長 足海 義雄氏


前回の記事はこちら(vol.1)

 

気象情報をマーケティングへ活用

 「HalexDream!」は、さまざまな分野で応用できそうですね。

農業でも防災でも、マーケティングでも応用できると考えています。

例えば、雨が降ると店舗にはお客さんが来なくなりますよね。そうしたときに「HalexDream!」が「そんな時はこうしましょう」とマーケティングに関する提案をする、といったイメージです。

もっとも、雨が降ると困るビジネスばかりじゃなく、助かるビジネスもある。ビジネスによって気象がもたらす影響は千差万別なんです。雨が降ると捗る仕事の例としては、アウトバウンドで電話セールスの仕事があります。この電話セールスで効率よく成績を上げるには、雨が降っているエリアの人に電話をかければいいんです。在宅率が高いはずなので。このように、セールスの電話を請け負う会社に「HalexDream!」をご活用いただく方法もあると思います。

気象とマーケティングを組み合わせて活用する方法はわれわれも考えていますし、お客様がこちらの思いもよらない活用法を考え付くケースもあります。

お客様から具体的な要望を受けることが多いですか?それとも御社から提案されるのですか?

どちらのケースもありますね。ただ、気象をビジネスに活用するという発想が一般的にはまだまだ浸透していません。気象情報をハンドリングできるSI会社もほとんど無いため、設計は当社の中で行っています。当社で開発までトータルで行うことも多いのですが、社内リソースにも限界がありますので、いずれはノウハウを他の企業様にも共有していきたいと思っています。いろんな会社に「HalexDream!」を使ってシステムを開発してほしい。そうしないと広がっていきませんしね。

お客様からご相談いただいたパターンですと、京浜急行電鉄様の事例があります。4年前、京急沿線で土砂崩れが原因となる乗り上げ事故が発生しました。鉄道会社は一定の距離間隔に雨量計を設置することになっているのですが、事故当時は雨量計を設置していない場所でゲリラ豪雨が起こり、地盤が弛んでいたのを感知できなかったのです。そこで、雨量計だけでなく、気象レーダーで監視できないかと国交省から指導が入ったそうで、当社にご相談いただきました。

このとき、ちょうど「HalexDream!」を完成させたタイミングでした。気象レーダーの数値を取り込んだシステムがあったので、線路上を網羅的に見張ることを目的にご導入いただき、現在もご利用いただいています。

ちなみに、ハンドリングできる情報の種類によって利用料が変わります。京浜急行電鉄様も初めは雨と土砂災害の情報だけでしたが、お使いになる中で利便性を感じられたようで、雷なども追加でご導入いただけました。

今後狙っていく顧客はどういうところですか?

気象情報を提供するターゲット分野としては、初期はメディア、その次は自治体を中心とした防災分野、さらにはライフライン企業と公共性の高い企業・自治体を中心として移り変わってきました。電力やガスなど自社設備を持っている企業は、気象情報や地震情報をいち早く取り入れており、すでに飽和状態です。そうなると、残っているのは一般企業。マーケティングの領域が今後当社が狙う分野です。

たとえば生鮮食品系のメーカーは、豆腐やパンの製造と気象を絡めることで、無駄の出ない効率的な生産が可能になります。実際にそのような運用を行っているところはまだまだ少ないようです。

実は先日、当社で小規模のパン屋さんの売上と気象の関係を分析しました。過去2年分の売上データと気象情報を突き合わせてみたら、夏場に売上が落ちることがわかったんです。そして秋口に入り、気温が20度前後まで下がると、また売上が上がっていくんです。商品ごとにも変化があり、食パンは年間通じて安定しているのですが、それ以外の商品には波がありました。そういう傾向を把握したうえで、気象に合わせて製造すれば、効率的に売れるのではないでしょうか。

 

変わりゆく気象予報士の役割

 パンの売上と気象の関係性の分析など、どういう方がされるんですか?

当社の気象予報士です。気象情報からビジネスに役立つことを自分で考えて話せることが求められるので、気象情報にプラスワンの知識をつけるために分析をしてもらっています。統計分析ソフトなども使っていますね。気象予報士がこのような能力を身に着けることで、会社全体の底上げにつながるという考えです。

気象情報を生産や販売に活用すること、「ウェザー・マーチャンダイジング」は10年ほど前から話題になり、みなさんトライされています。残念ながらPOSの情報が脆弱だったり、気象情報の精度が甘かったりという理由から条件が揃わず、本格的な分析にまでは至っていませんでした。しかし、最近になって環境や条件が整いつつあると感じています。

「気象予報士の派遣事業からの転換」というお話が出ていましたが、気象予報士の仕事内容も変わりそうですね。

今後、当社の気象予報士派遣事業は廃止する予定です。ただ、当社社員の1/3ぐらいいる気象予報士を減らす予定はありません。
やはりお客様は生身の人の言葉が欲しいので、気象予報士にはお客様に「こういった豪雨が起こりますよ」というレポートをメールで送る役割をしてもらっています。

いくら「明日は雨が降るから外出しないほうがいい」とシステムが提案しても、「いや、明日はやっぱりゴルフしたいな…」って、いざとなると人は悩むんですよね。そうした迷いに対して、「今はこういう状況だから3日間は雨が続きますよ」とアドバイスする役割はやはり人間じゃないとできない。

いくらシステムが良い情報を伝達しても、それは単なる数値でありアラートにすぎません。また、同じ気象情報を営業担当者と気象予報士が言うのでは、やはり重みが違います。システムの提供に加えて、気象予報士のサポート、つまり生身の専門家によるアクションを加えることで、提供する情報の説得力が増すと考えています。

 

データをつなげて新しいビジネスを生み出す

「売上と気象の関係」が課題になることが多いのでしょうか?

そうですね。最初にそういう話が出ます。気象が売上に影響するということは、みなさんご存知ですから。これからは「気象情報を使ってビジネスの課題を解決しよう」という段階に入っていると私は思っています。

日本列島は南北に長いため、地域によって気候も異なります。北に位置する北海道から寒くなるので、アパレル業界なら北海道にいち早く冬物を投入するのが良さそうですよね?気象情報を利用すれば、売上も変わってくると思いますが、当社も準備段階で確証はないため、お客様と答えを一緒に見つけましょうというスタンスで臨みたいと考えています。

日本では、コストカットの手段としてのIT投資が一巡した状況で、これからは売上を上げるための投資としてITが求められていると考えています。当社のサービスもこの流れに乗りたいですね。

昨今、さまざまなビジネスでAIが活用されていますが、AIと気象データを絡めた事例はあるのでしょうか?

デジタルマーケティング支援などを手掛ける株式会社ルグラン様と当社で作った「TNQL(テンキュール)」というWebサービスがあります。「TNQL」は「天気を着る」ということから付けたネーミングで、その日の天候に合わせたコーディネートを提案するサービスです。

ユーザーは、その日にどんな服を着たかを写真に撮って保存します。すると写真が溜まっていくことでその人の趣味・嗜好がわかり、AIが分析してコーディネートを提案してくれるんですよ。気象情報には当社のサービスを活用しており、1キロメートル四方のメッシュ単位で1時間ごとのデータをもとに最適なコーディネートを提案する仕様になっています。今はオススメの服をイラストで表示していますが、将来メーカーさんとつながれば、実際の商品をプロモートするといったビジネスにもつながると考えています。

また、「TNQL」に蓄積されているデータから、北海道の方は赤い服が多い、高知県の方はミリタリー調の服が多いといったおもしろい分析結果も出ていますので、マーケティングにも活用できるかもしれません。

元々アイデアをお持ちだったルグラン様の女性社長と、当社の女性社員で、構想を固めて実現しました。改めて気象データ活用の幅の広さを実感した、良いソリューションだと思っています。

では、今後の御社の展望についてお聞かせください。

やはり「HalexDream!」をいろんな業界に入れていきたいです。

極端な話、1キロメートル四方のメッシュという単位で情報が保持できる仕組みがあれば、どんな情報も紐づけられると思います。気象情報や、客層の男女比率、富裕層かどうかなど、どんな情報でもいい。今あるデータから何ができるのか、考えることから始まるビジネスでもいいじゃないかと思うんです。

これから勝ち残る企業とはデータを持っている企業ではないでしょうか。更に、データを持っている企業同士で手を組めば、相乗効果、副次的な効果も生まれると考えています。そういうジョイントができればと思っています。

続々と新しいビジネスが生まれそうですね。本日はありがとうございました。

(了)


株式会社ハレックス 常務取締役 兼 ビジネスソリューション事業部長

足海 義雄(あしがい よしお)

IT会社で、SEや商品企画、営業に従事。新ビジネスの企画や、ソリューション営業を経験し、営業部長を務める。その後、2012年にハレックスに入社。

 

株式会社ハレックス

総合気象情報会社として、気象情報の活用ノウハウを提供。

 

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