HOME 新規事業 私のつくり方「『兜予報』アナリストの分析とAIを活用した株予報サービスのつくり方。」株予報アプリを公開した財産ネット 荻野 調さん
2017.11.8

私のつくり方「『兜予報』アナリストの分析とAIを活用した株予報サービスのつくり方。」株予報アプリを公開した財産ネット 荻野 調さん

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『兜予報』は、株の日々の値動きを予測するサービス。いや、「日々の」ではなく「刻々と」である。プロのアナリストが毎日の経済ニュースやIR 情報から株価に影響しそうな情報を分析し、プラス/マイナスのどちらに影響するかを投票する。情報の選別と分析にはAIも活用している。予測の的中率は81%を超える。だが、その秘密は?財産ネット株式会社の荻野調社長にサービス誕生の背景を聞いた。……そして、ネットの未来も。

※本記事は2017年3月発売のSynapseに掲載されたものです。

荻野 調

1973年生まれ。ハーバード大学修士号、東京大学博士号取得。大学院に通いつつソニー等で500億円規模の事業再編を含む事業立ち上げを経験。30代は住友系、伊藤忠系VCにてシリコンバレーなど数十社に投資、数十社のM&A、IPOを実現。2011年よりグリーにてグローバル事業立ち上げ、事業開発部や子会社を率いて、提携・投資・Exit・事業立ち上げ・事業売却等に従事。2015年に財産ネット株式会社を設立し現職。フィンテック協会理事。

 


 

荻野調のつくり方。

インターネット黎明期からネットビジネスに関わり、かつ、無数の事業を立ち上げてきた。フィンテックの申し子はいかに誕生したのか。

 

 

― 荻野さんのご経歴を教えてください。

「私は早稲田の理工学部出身で、修士の時にハーバードに留学し、サーチエンジンの研究をしていました。当時はまだGoogleのサーチエンジンがイケてない時代でした。そこでメタサーチエンジンの研究をしてつくったり。それから早稲田に戻ったあと、東大の博士課程に進んだ頃には大学に在籍しながら、ネット企業で週5で働いていました。

当時は回線速度の標準が64kbpsだったのですが、アメリカの会社が最大1・5Mbpsのケーブルモデムを持ち込んで日本で事業化しようとしていたので、そこに加わりました。その後、その時の上司に引っ張られてソニーに移りました」

 

― ソニーでは何を?

「3年ぐらい事業の立ち上げに関わりました。新しいアプライアンスをつくる事業とか、子会社の統合とか。当時はまだ景気が良くて、年間100件弱のプロジェクトを走らせていました。1件あたり年間10億円の予算と10人の社員をつけて、うまくいけば大きくする。そういう仕事を20代の後半頃に3本ほどやらせてもらえました。いい経験でしたし楽しかったんですけど、1年に1件ペースだったんで飽きちゃうんですね(笑)」

 

―「飽きる」って、すごいですね(笑)。

「同時にもっと多くのプロジェクトを回せると思ったんです。それでVCに行きました。住友系から伊藤忠系に行き、通算100社弱ほど投資し、20〜30社はIPOや買収に至ったので、打率は良かったと思います。しかし、他の担当者が損したらファンド全体ではトントン。自分が増やしても全体として儲かるとは限らない。

日本のキャピタリストの多くは、事業立ち上げの経験がないんです。そうすると目利き力も微妙。私も外しますが、打率3割は相当いいほうです。普通は1割、良くて2割ですから。

さらにファンドとしての打率を上げるためには相棒が大切だと痛切に感じましたね。そこで、目利きができる人間と組んでファンドをやろうと2011年にお金も集め始めたんですが、20億〜30億程度しか集まらず、それではスタッフを養えないということで、一旦ファンドは断念して、当時景気の良かったグリーに入社したんです」

 

―グリーでは何をされていたんですか?

「まずグローバル事業の立ち上げを担当しました。ゲームのUS進出前に、現地でプロモーションできるよう現地メディアを囲い込みました。でも1年経ってもなかなかゲームが出てこない(笑)。そうこうしているうちに海外事業から軒並み撤退になって。

その頃には全社の事業開発部が手元にあり、提携・投資・Exit・事業立ち上げなどに加えて、事業売却・訴訟・和解・清算などを処理し、色々な国の法律にすごく詳しくなりました(笑)。その後、子会社の整理ができたタイミングで手が空いたので辞めました」

 

― それでようやく、ご自身の事業の立ち上げに至ると。

「ちょうどその頃フィンテックがトレンドとして来ていると気付き、2015年に財産ネット株式会社を設立し、『兜予報』をスタートしたんです」

 

 


 

『兜予報』のつくり方。

的中率5 割以上のアナリスト十数名を集めて的中率を上げる。超高精度だがユーザーフレンドリーな予報サービスの秘密を聞く。

 

 

― 『兜予報』の仕組みを簡単に説明いただけますか?

「株価が動く材料になりそうなニュースを選んで、それが株価に対してポジティブに影響するのかネガティブに影響するのかを一定の時間内にアナリストたちに予想投票してもらい、結果を多数決でお伝えするのです」

 

―予報情報は1日に何本ぐらい配信されるのですか?

「10〜20記事です」

 

―かなり絞ってますか?

「ニュースの99%は不要な情報なんです。判断材料になるのは残り1%。その重要な部分だけを見せようと考えています」

 

―どのように重要な情報を抽出しているのでしょうか?

「うちのサーバーには、上場企業のIR、PR情報が発表後1分以内に溜まるようになっているんです。そのなかからネタになりそうなものを、独自システムで自動的に選別します。ここでAIを使っています。それをさらに『兜予報』の編集者が、人間の目で絞り込む。ただ、重要情報の見落としはどうしても発生するので、別のエンジンがあります。

トレーダー間で話題になっているネタがアラートとして挙がってきます。彼らは全員現役のデイトレーダーですから、いいネタに目を付けるんですよ(笑)。気にするのはすなわち、"材料視されている"もの。一見つまらない情報でも、みんなのあいだで話題になっていれば、それは材料になる。イケてるニュースでも注目されないと埋もれる。その判定も独自システムでしています」

 

―予報の的中率は8割超。その秘訣はなんでしょう?

「当社サービスに協力しているアナリスト一人ひとりは少なくとも51%以上の的中率を持っています。彼らの判断には経験上、"絶対外さないもの"が一定数含まれているんです。"こういう発表があると株価はこうなる"と知ってる部分があるんですね。だからそれ以外の判断が五分五分でも、的中率は51%を超えます。そういう人を十数名集めて、集合知的に判断すれば、統計上、8割は当たっちゃうんです」

 

―アナリストを選ぶ条件は?

「約半分は私の繋がりで、残りは契約している証券会社のアナリスト。彼らの仕事は情報収集とレポート提出だから、いずれにせよ常時ニュースはチェックしています。あとはそこでの判断を投票してもらう。少し負担は強いますが、トレーダーを先方企業へ送客しますのでWIN‐WINです(笑)」

 

―うまい仕組みですね。

「社会人の多くは証券会社に口座を持っていると思うんですが、入金しない人や1回取引して終了する人が大半。証券会社からすると口座維持費の負担が発生する"赤字の人たち"。収益を生むのは、毎日デイトレードする人たちです。我々は、その実際に取引している人たちに必要な情報を提供しています。

ネット証券大手の売上高計3000億円のうち、約7〜8割、2000億円程度を、そのデイトレーダー約5万人がつくってます。仮に1万人がうちの情報を元にトレードしているならば、400億円程度の売上をうちがコントロールしていることになる。このインパクトがフィンテックの醍醐味だと思います」

 


 

未来のメディアのつくり方。

USのトレンドから予測する近未来。スマホアプリの次に来るのは何か。

 

―『兜予報』のサービス化で苦労されたことは?

「特にないです(笑)。事業立ち上げは何十回もやったし、VC時代には約1万社の事業計画を見て、成否を分けるベースラインを知ってますから」

 

―何かビジネス上の参考にされているものはありますか?

「常にUSのトレンドを見ています。ITテクノロジーの多くはシリコンバレーで生まれたサービスを1〜2年後に日本人がコピーして、日本に"来る"。フィンテックの場合は、ITから金融へ展開されるのにさらに1〜2年のズレがある。その意味で今、フィンテックスタートアップを日本でやるのは楽なんです。USを見ていれば、3年ぐらい先までは見通せるので」

 

― 今後はどういうことを目論んでいますか?

「この春に立ち上げる『資産の窓口』という財産管理プラットフォーム事業があります。普通のサラリーマンは、若い頃に株やFXに手を出しスッて終わります。でも、それではもったいない。それぞれの資産形成の方法をご提案できる仕組みを提供していきます」

 

―『兜予報』の今後の展開はどんな感じですか? AIなどの拡充はあります?

「マイクロソフトのBingの元となったPowerset社の社長と話したんですが、この20年、AIは本質的に変わっていません。何かを勝手に見つけてくれるのではなく、正しい解により早く近づく。今のUSのトレンドでは、AIの開発の方向性としてエージェント研究が大半を占めています。例えば言語認識ではSiriとかOKGoogle、アレクサなどがエージェントの主流ですが、あの辺りが人間とのインターフェイスになりつつある。USは早晩そうなりますね」

 

―今、そういう方向に向かっていってるんですか。

「そう思います。例えばiPhoneには50個以上のアプリがインストールされてますが、どんどん減ってきています。よく起動しているのはSNSぐらいでアプリって廃れてるんですよ。つまり既存メディアの力も変わるんじゃないかと。

あるニュースサイトがウェブメディアを捨てて、すべてSNSに移行しましたが、ユーザーにわざわざアプリを開かせるより、すでに起動している"何か"のタイムラインで見せる。2020年までにはそれが一般的になっているはず。『兜予報』も第一リーチはダントツでツイッター。毎月1000万近いインプレッションがあります。ベンチャーで1000万PVのサイトをつくるのは資金的に大変です」

 

―すごいですね!

「エージェントの進化に伴い、おそらくSNSアプリすら起動しなくなり、SiriやOKGoogleに尋ねるのが普通になる。その時に、価値を持つのはナンバーワンかオンリーワンの情報を持っていること。世の中の多くの製品やサービスは、どこで買っても本質的に変わりません。

ならば、いちばん安いという方向か、そこにしかない情報という方向に行かないと、エージェントが選んでくれることはなくなる。今後の展開というには少し先の未来かもしれませんが、我々はその対応を今から仕込んでいます」

 

 

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