【ラジオレコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO】「嘘をつかない」ラジオで、深く心に響く番組を〜FM愛媛『ニンジニアネットワーク 和田ラヂヲの、聴くラヂヲ』九官鳥さん〜

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【ラジオレコメンダー

ラジオ レコメンダー" やきそばかおる "の I love RADIO 第66回

今回はFM愛媛の九官鳥さんに注目。同局の人気番組『ニンジニアネットワーク 和田ラヂヲの、聴くラヂヲ』(現在は『ニンジニアネットワーク 和田ラヂヲの、聴くラヂヲ2』として放送。土曜 21時~21時30分)を立ち上げたほか、数々の番組を支えています。ヒットメーカーであり、出演者としてもおなじみの九官鳥さんに、ラジオに対する思いをじっくりと聞きました。

▲九官鳥さん


※九官鳥さんの担当番組

『マシンガンエチケット』土曜 25時~25時30分。パンクロッカー・ガッツムネマソ(from BONKURA FEVERS)、松山の老舗バー、 ROPPONGIのオーナーバーテンダー・マイケル、九官鳥によるトーク番組。

『LIVE KIDS BOX』水曜 21時30分~22時。毎週様々なミュージシャンが登場して、ライブについて語る。九官鳥が注目のライブ情報や、ライブレポートなども紹介。

『一平くんのゲコゲコ相談室DX』月曜 20時~20時30分。愛媛FCの非公認サポーターのカエルの一平くんが、ニンゲンの悩みにこたえる。九官鳥も参加。

(スタッフ)

『井坂彰のGreat Noisy Club!』月曜~金曜 18時~19時55分

『ティモンディの決起集会』日曜 24時~25時

『ジャパハリネットのハリハリラジオ』日曜 18時~18時30分


▲『ティモンディの決起集会』生放送回でのひとコマ

▲FM愛媛主催のリレーマラソン大会で日本記録に迫るタイムでぶっちぎり優勝する
『マシンガンエチケット』のリスナーチームとパーソナリティー3人


「九官鳥」の謎

やきそば 早速、ラジオについてお聞きしたいのですが、その前になぜ「九官鳥」という名前なんですか?

九官鳥さん 名付け親は愛媛出身のギャグ漫画家の和田ラヂヲさんです。2013年に『和田ラヂヲの、聴くラヂヲ』を立ち上げました。ラヂヲさんとは飲み仲間を通じて知り合って、ある日「ラヂヲさん、ラジオをやってみませんか?」とお誘いしたのがきっかけです。

やきそば ラヂヲさんとだったら面白い番組になると、ピンときていたわけですね。

九官鳥さん 間違いなく面白くなると思っていました。っていうかむしろなんで今までやってなかったんだ、というくらい。ラヂヲさんは普段の会話からめちゃくちゃボケてくるんです。収録ではボケの投稿に対してラヂヲさんもボケを被せてくると思うから、「ツッコミ役がいたほうが良い」ということで、僕がラヂヲさんの相手役として入ることになりました。

番組を進行するうえで、僕が話したことをラヂヲさんにオウム返ししてほしい、といった流れから"喋る鳥"ということで、いろいろ考えた結果、九官鳥になりました。

やきそば そうだったんですか!

愛媛以外の人にも聴いてほしい

やきそば 今はradikoがあるので有料会員になれば全国どこにいても聴けますが、『聴くラヂヲ』は立ち上げの段階からポッドキャストで聴けるようにしていましたよね。

九官鳥さん ラヂヲさんは全国にファンがいるから、はじめから全国に向けて発信することを考えていました。当時はポッドキャスト配信をやっている番組が少なかったので、タイミングは良かったと思います。

やきそば そのおかげで他の地域のファンも多くて、radikoのエリアフリー機能が始まる前の段階で東京、大阪、福岡で『聴くラヂヲ』のイベントをされてましたよね。

九官鳥さん 大阪のイベントは、当時Loft PlusOne Westの店長が番組を聴いていて、柿落としとしてイベントを開催できないだろうか、と連絡をいただきました。蓋を開けてみれば大盛況でした。

やきそば 九官鳥さんは愛媛を軸にしながらも、「全国各地の人に聴いてほしい」という気持ちがとても強いのを感じます。

九官鳥さん 個人的に王道があまり好きではなくて、むしろ王道をどのようにやっつけるかを考えるのが好きなんです。愛媛にいても都会の番組よりも面白い番組はできるとずっと思ってます。弊社は自社制作枠が多いので、タイミングを見計らっていつでも出せるようにアイデアは常にストックしておいて、隙あらばどんどん出しています。

オーディションに一平くんがやってきた

▲カエルの一平くん(愛媛FC・非公認サポーター)


やきそば 九官鳥さんは何かと話題の『一平くんのゲコゲコ相談室』(現在は『~DX』)の生みの親ですが、番組の誕生エピソードを教えてください。

九官鳥さん 弊社でパーソナリティーのオーディションを開催した時に応募してきたんです。一平くんには以前にも他の番組に出てもらったことはあって、番組を持てば面白くなるのは分かっていましたが、自分から応募してくるとは思いませんでした。もともと一平くんは面倒くさがり屋だっただけに「まさか!」な出来事でした。

やきそば ええ!!

九官鳥さん しかも受け付けを始めてすぐに応募してきてました(笑)。オーディションは完全な一般公募で、魅力的な人がいたら声をかけて何かの番組に起用するといった感じでした。もちろん、一平くんにも普通にオーディションを受けてもらいました。


▲オーディションで自分の出番を待つ一平くん


▲オーディションで一生懸命原稿を読む一平くん


やきそば 本当にオーディションを受けてますね! その後、どのようにして番組が立ち上がったんですか?

九官鳥さん 最初は帯の5分番組にして、占いとか天気予報とかどうでもいい企画をやることも考えたんですけど、週に一度の15分番組の枠が空きそうだったことと、ほぼ同じ時間帯に他局で真面目な相談番組を放送していたので、真摯な相談番組とは真逆で、どうでもいい悩みにテキトーにこたえる番組にすることにしました。

番組を立ち上げた時がコロナ禍で、世の中がピリピリしていてしんどい思いをしている人が多かったので、本当にどうでもいいことをやりたかったんです。それにパーソナリティーがカエルだったら、少々のことは許してもらえるんじゃないかと思ってました(笑)。今は夜に放送していますが、一平くんの変わった声が昼に流れるだけでも引きはあるかなと思いました。

やきそば 一平くん自身の反応はいかがですか?

九官鳥さん 一平くんはすぐに凹むタイプなんですけど、番組がいろいろなところで話題になってることもあって、楽しそうにやってますよ(笑)。

やきそば 先日は文化放送の『おとなりさん』の企画「教えて!全国☆ラジオスター」にもリモートで出てましたよね! 生放送だったのでドキドキしながら聴いていました。

九官鳥さん あの時は一平くんがソワソワして緊張していたので、本番前にひたすらおだててました(笑)。

ライブの素晴らしさは自分語りで

やきそば ライブ情報番組『LIVE KIDS BOX』では九官鳥さんがパーソナリティーを務めてますよね。

九官鳥さん 僕は音楽が大好きで、ライブハウスに年に100回以上行ってた時もあります。ライブの素晴らしさは観てきた自分で語ったほうが伝わると思って、自分で話すことにしました。

今は僕が放送に出て話す番組も増えてますが、『聴くラヂヲ』に僕も出ることになった時に、アナウンサーでもパーソナリティーでもない僕が番組に出ることに社内がザワついたんです。ほかの地域の番組ではスタッフが出ることが普通にあるので僕自身は違和感を覚えなかったのですが、番組の人気が出てくるとそういった雰囲気もなくなりました。

やきそば 音楽が好きな九官鳥さんが音楽番組を持てるのは幸せなことですね。

九官鳥さん 不定期で地元のライブハウスの名物店長であるアニキ(Double-u Studio/WstudioRED)にも出演してもらってるんですが、その人が全国各地のバンドマンと繋がっていて、たまにとんでもない大物の出演が叶うことがあります。

例えば細美武士さん(ELLEGARDEN/the HIATUS/the LOW-ATUS/MONOEYES)。ELLEGARDENがおよそ10年ぶりに活動を再開することを発表した直後に『LIVE KIDS BOX』で貴重なインタビューを放送することができました。全国からとても大きな反響がありました。


ラジオでの面白さが伝わり...

やきそば 九官鳥さんのおすすめのアーティストを教えてください。

九官鳥さん 個人的に仲良くしているバンドでもある「八十八ヶ所巡礼」。3人のメンバーのうち2人は愛媛出身です。ジャンルでいえばプログレ。とにかくテクニックがすごい。既に東京でのライブはチケットが入手困難です。

やきそば 早速聴いてみます。

九官鳥さん あと、東京に「ラジカセ狂気」というなかなか変わったミュージシャンがいます。愛媛では全くといっていいほど知られていなかったんですけど、繋がりがあって僕が担当している『マシンガンエチケット』にお呼びしたんです。収録はめちゃくちゃ楽しくて、その後愛媛でライブをすることになったら、いきなりSOLD OUTになりました。お客さんもみんなラジオを聴いてくれた人で、とてもしびれる経験でした。

やきそば へぇ~~!

九官鳥さん この仕事をしていて本当に良かったと思いました。愛媛の人はどこか保守的なところがあって、新しいものになかなか興味を示さない傾向があるのですが、ラジカセ狂気の例もあるから、たくさん覆していきたいです。

やきそば 夢がありますね。

九官鳥さん 今は世に出てから売れるまでのスピードがとても速いので、気づいた時には売れていることも多いです。逆に自分が「いい」と思ったものに対して世間が反応していないこともあります。それも何かをきっかけに一気に有名になることがあるから、自分が好きなものを紹介することは大事だと思ってます。

やきそば ちなみに、九官鳥さんは関取花さんのことも大好きですよね! 『LIVE KIDS BOX』で話をしたり、関取さんの特番を組んだりしてますし。

九官鳥さん 大好きなんですよ。このあいだ(2023年6月10日)も松山で花ちゃんのライブがあって、MCで僕のことも話していてくれてすごく嬉しかったです。

やきそば 関取さんの魅力はなんでしょう?

九官鳥さん 音楽はもちろんですけど、ラジオでの喋りも面白いし、花ちゃんが書く文章も大好きです。それが花ちゃんの人柄がにじみ出た歌詞となって曲になってるのがすごくいいなあ、と。あと、「飾らない人柄」と見せかけて、実はものすごく頭が良いですよね。

やきそば 九官鳥さんは「好きなものを世に紹介したい」という気持ちがとても強いのを感じます。

九官鳥さん こうした考え方になったのにはきっかけがあります。僕はずっと野球部だったんですけど、高校の最後の大会でスタメンを外されてベンチだったんです。それなのにいろいろなメディアから取材を受けました。

理由は僕の声がとても大きかったから、というだけです(笑)。なかでも読売新聞は声がでかいというだけで特集を組んでくれました。日なたにいたわけではない(ベンチだけに)僕を取り上げてくれて嬉しかった経験が、番組を作るうえでの下地になっています。いろいろな人と関わって、自分が良いと思うものをみんなに知ってほしい!という気持ちでやってます。


過激な時こそ丁寧に

やきそば 九官鳥さんが番組を作るうえで、心がけていることを教えてください。

九官鳥さん ものすごく自由なメディアなので変なブレーキをかけないこと。人を傷つけないとか、不快な思いをさせないのは前提として、ラジオにNGはないと思っています。

そのかわり、放送の内容が過激であればあるほど、内容以外でつっこまれるところがないように丁寧に作ります。それは曲やジングルを入れるなら最高に気持ちいいタイミングやボリュームで、とか、不快な音は極力取り除く、といった点です。「こんなん誰も気づかんかもしれんけど...」と思いながらも細かい部分を気にして作っているので、そこに気づいてくれた人がいたら嬉しいです。リスナーさんが聴いた時に、編集なしの一発で収録したように聞こえてたら、狙い通りです。

あと、すごく大事にしてることは「嘘をつかない」ことです。情報はもちろん、気持ちにも。

▲『マシンガンエチケット』生放送で熱心なリスナーの京都の芸妓さんをゲストにお呼びした回


深く心に響く番組を

やきそば 昨今のラジオ番組について思うことはありますか?

九官鳥さん 僕が地方でノビノビとできているから思うのかもしれませんが、反応にビビっている番組が多い気がします。せっかく話が盛り上がっているのに変に綺麗に着地させようとしているのを聴くと、「最後までいけば良いのに」と思います。

やきそば 確かにそうですね。

九官鳥さん ラジオは最大公約数を狙うメディア...というわけでもないから、変に気を遣いすぎることはない、と思うんです。仮に聴取率が5%だとします。100人を対象にして5人にうっすら響くよりは、ターゲットを絞って5人に深く爆音で響いたほうが良い番組になるんじゃないでしょうか。心に深く刺さったリスナーは、番組から離れない気がします。そういうリスナーが増えてほしいです。

やきそば 好きな番組がひとつずつ増えていって、そのうち「FM愛媛の番組は面白い!」と思ってもらえるようになったら最高ですね。

九官鳥さん 僕は番組の"横の繋がり"をとても大事にしています。『ティモンディの決起集会』と『一平くんのゲコゲコ相談室DX』をリンクさせたり、『ゲコゲコ相談室DX』と『マシンガンエチケット』をリンクさせたりしています。

番組を聴いている方にほかの番組の話を小出しにしていて、それがうまくいっている状態です。『マシンガンエチケット』の収録の時に、偶然局内を歩いていたパーソナリティーに出てもらうこともありました。そしたらそのパーソナリティーも自分の番組で喋ってくれるだろうと思って。

やきそば それを意図的にやっているのが良いですね。

九官鳥さん 結構、狙ってやっているところはあります。

やきそば ここ数年、ひとつのラジオ番組が他の地域のラジオ局の番組とコラボする流れがありますが、自社のほかの番組の面白さが伝わるのが理想ではありますよね。

九官鳥さん おっしゃる通りです。

ほかにもラジオの仕事をやっていて良かったことを聞きました。


日常を放送すること

九官鳥さん 東日本大震災の話はいろいろなラジオ番組でテーマに挙がりますが、『聴くラヂヲ』では震災について触れるか、あえて触れないか、かなり真剣に話し合った結果、触れないという結論に至りました。

震災発生から間がなくて、しんどい思いをしている時に無理をしてまで聴く番組でもないし、ラジオを聴ける心の余裕が出てきた時に聴いてくれて、いつもと変わらない放送をしていたほうが安心なのではないかと思ったんです。

震災発生から数年経った時に「震災直後はラジオを聴ける状態ではなかったけど、少し生活が落ち着いた時に番組を聴いたら、相変わらず面白いことをやっていて、やっと日常に戻れた気がしました」というメールをもらって、これこそが日常に寄り添う、ということなんじゃないか、と思って。この仕事をしていて良かったと思いました。


ラジオがきっかけでライブハウスに

九官鳥さん 『LIVE KIDS BOX』や『マシンガンエチケット』などがきっかけで、「初めてライブハウスに行った」という人からメールをもらうととても嬉しいです。若い世代の人に限らず、30~40代の方からも報告が届きます。ライブハウスの会場でリスナー同士が交流している光景もみますよ。

僕は昔から行っているからライブハウスは身近な存在だけど、ライブハウスに行ったことがある人って割合としては結構少ないと思うんです。でも、ライブハウスの楽しさをもっと知ってもらいたいので、ラジオがきっかけでライブハウスに足を運んでくれて、楽しさを知ってもらえたとしたら、それはまさに僕の仕事のやりがいです。


被害に遭ったリスナーを救う

九官鳥さん 2018年に起きた西日本豪雨でのことです。あるみかん農家のリスナーが大きな被害を受けました。「メールを送るかどうか迷ったけど、大変なことになっているから助けてほしい」と書かれていました。

そこで『マシンガンエチケット』で僕と話しているガッツムネマソさんが立ち上がりました。ラジオとSNSで呼びかけたところ、信じられない数の支援物資が届いたんです。ガッツさんが営んでいるTシャツ工場の倉庫に運んだんですが、何台もの車に積んで毎日何回も往復しても全然減らないほどでした。

支援の話を聞いた全国各地のバンドマンとの縁も生まれました。東日本大震災が発生した当時、関東のミュージシャンの皆さんが支援活動に動いていたなか、僕はこれといった支援ができなくて心残りだったのが、この時の行動のきっかけになりました。万が一の時に役に立てたらと思っています。

▲『マシンガンエチケット』周防大島特番にて。後ろには元銀杏BOYZのチン中村さんも。




ここからはスタッフも出演しているラジオ番組から一部の番組を紹介します。


MBSラジオ『メッセンジャーあいはらのYouはこれから!』(水曜 15時~17時54分)はメッセンジャー あいはら、武川智美アナウンサーと「今週の話し相手」の週替わり出演者による本音まみれの生ワイド。絶対に手加減をしないあいはらさんを中心に、トークを飛ばしまくります。さらに放送作家の"さんちゃん"が良いタイミングでツッコミを入れたり、フォローコメントを入れたりで場を盛り上げます。以前、番組でトークイベントを開催したところ、とんでもない数のリスナーが配信で楽しんだ人気番組です。


WBS和歌山放送ラジオ『らしくあれ!』(土曜 22時30分~23時)は和歌山放送が好きな人におくる人気長寿番組。既に650回をこえています。パーソナリティーは同局のスタッフも務めているCherry。和歌山放送で起きたこまか~い出来事を紹介する「裏・和歌山放送ニュース」は本当に細かい話題が満載。それにしてもCherryさん、よ~く喋ります。


福岡のRKBラジオ『#キューパレ 「服部さやかのシュンすぎ』(金曜 21時~24時)は服部さやかによる、どこに火の粉が飛んでいくのか分からない破天荒トーク。服部さやかの良き話し相手でもあるADやまびこ、ディレクターのDJ Mobyもちょくちょく加わります。ひとクセあるリスナーからの投稿メールを服部さやかがバッサリ斬りながら進行していく様子は痛快です。

<了>

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