【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】コロナ収束後初のサマーシーズン。ハリウッド映画の動向は?

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】コロナ収束後初のサマーシーズン。ハリウッド映画の動向は?

サマーシーズンは映画興行にとって最大の書き入れ時だ。

コロナが事実上収束して初めて迎える夏だからこそ、ハリウッドは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3」を皮切りに、「リトル・マーメイド」「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」「トランスフォーマー/ビースト覚醒」「マイ・エレメント」「ザ・フラッシュ」「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」といった大作をつぎつぎ投下している。


だが、大方の予想を裏切り、この夏の話題をさらったのは「バーベンハイマー」だった。

「バーベンハイマー」とは、「バービー」(グレタ・ガーウィグ監督)と「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督)を掛け合わせた造語だ。

「バービー」は世界的に有名なファッションドールを題材にしたコメディ、「オッペンハイマー」は「原爆の父」と呼ばれるJ・ロバート・オッペンハイマーを主人公にした歴史ドラマである。

2作はストーリーもテーマもジャンルも水と油ほど違っているものの、全米で同日(7月21日)に封切られた野心作とあって、一緒に語られるようになった。

公開3日間の北米オープニング成績は「バービー」が推定1億5500万ドルでトップ、「オッペンハイマー」もR指定作品ながら8050万ドルを稼いでワンツーフィニッシュとなった。

2作合わせると2億3550万ドルとなり、コロナ以降最高となる(歴代最高のオープニング成績は2019年に「アベンジャーズ/エンドゲーム」が樹立した3億5700万ドル)。


驚くべきは、いずれも続編でもリメイクでもないことだ。

「バービー」に関しては、世界的なIP(知的財産)を題材としているものの、それがヒットに直結するわけではないことは、「ダンボ」や「ターミネーター:ニュー・フェイト」の失敗を見ても明らかだ。

実際、「バービー」はバービー人形が人間世界に行くドタバタ劇と見せかけて、ジェンダー問題に切り込む野心作となっている。

「バービー」は、「レディ・バード」、「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」を手がけ、アカデミー賞に3度ノミネートされているグレタ・ガーウィグが共同脚本と監督を手がけている。

「オッペンハイマー」は、「ダークナイト」シリーズや「インセプション」「インターステラー」などのヒットメーカー、クリストファー・ノーラン監督の最新作だ。

ノーラン作品常連のキリアン・マーフィーが主人公を演じ、ロバート・ダウニー・Jr.、エミリー・ブラント、マット・デイモンら豪華キャストが脇を固めている。

IMAXカメラを駆使して再現した原爆実験のシーンがハイライトとなっているが、本質は政治ドラマで、娯楽大作とは呼びがたい。


「バービー」は女性観客が6割、「オッペンハイマー」は男性観客が6割としっかり分かれているものの、「バーベンハイマー」として2本が注目を集めたことで、連続鑑賞している人も少なくない(クエンティン・タランティーノ監督やトム・クルーズは2本立てで鑑賞すると宣言している)。

批評家のみならず、一般観客の評価も高い。実際に映画を鑑賞した観客の評価を集計した「シネマスコア」はいずれもAを獲得している。

つまるところ、観客は独創的で新しい物語を求めているということになる。


DCコミックス原作の「ザ・フラッシュ」や、シリーズ第5弾となる「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が期待外れの結果になったことも、この説を裏付ける。

だが、ハリウッドは観客からのメッセージをきちんと受け取っているのだろうか?

2024年夏に公開予定の映画をみると、「デッドプール3(仮題)」、「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART TWO」をはじめ、「ツイスター」の続編「ツイスターズ」や、「マッドマックス」のスピンオフ「フュリオサ」、「ジョン・ウィック」のスピンオフ「バレリーナ」などが並んでいる。

「バービー」を手がけた玩具メーカーのマテルも、「バービー」ユニバースを構築すべく、すでに続編やスピンオフの企画開発に着手しているという。


「バービー」と「オッペンハイマー」のような野心作がサマーシーズンに公開されたのは、むしろ奇跡かもしれない。

<了>

※7月28日時点で執筆した記事です

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