【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】必然だった "韓国ドラマ「イカゲーム」現象"。日本はガラパゴスから脱出できるか?

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】必然だった

Netflixで独占配信中の韓国ドラマ「イカゲーム」の勢いが止まらない。

巨額の賞金に目がくらみ、生死を賭けたサバイバルゲームに身を投じる人々の葛藤を描くこのサスペンスドラマは、9月17日にNetflixで世界配信されるやいなや、たちまちその過激な展開と、視聴者の共感を呼ぶ登場人物たちが呼び起こすドラマ、格差社会という今日的なテーマが話題を呼び、SNSを通じて世界に口コミが拡散。

その結果、世界90カ国において1位でデビューを飾ったのだ。その後もブームは続き、配信開始28日間で1億1100万もの世帯で視聴され、同社が提供する新ドラマとして史上最高記録を樹立した。Netflix史上最高のヒットドラマとなるのが確実と言われているのだ。

物語の舞台は韓国で、全編ほぼ韓国語のドラマが、どうして世界的な社会現象を巻き起こしているのか?実は、非英語圏のコンテンツが世界的大ヒットを巻き起こす予兆は、数年前からあった。


アメリカの動画配信サービスは市場の拡大を急いでいる。先駆者のNetflixは、いまや中国や北朝鮮など一部の国と地域を除き、ほぼ全世界で展開しており、Amazonプライム・ビデオもほぼ同様である。後発のApple TV+(100カ国以上)、Disney+(59カ国)もアグレッシブに追従している。

動画配信サービスが、販路を開拓・拡大するのは当然だ。たとえばNetflixの北米の加入世帯は7400万で、人口が3億3000万人(2020年時点)であることを考慮すると、今後大きな成長は期待できない。それに対して、全世界の人口は約79億人いるのに、Netflixの加入世帯はまだ2億918万と拡大の余地がある。


市場を拡大させていくためには、インフラ整備のみならず、コンテンツを各言語に対応させる、いわゆる「ローカリゼーション」が必要になる。さらに、「ローカルプロダクション」にも力をいれなくてはいけない。現地、つまり非英語圏の加入者を増やすためには、それぞれの市場に合わせた独自コンテンツが鍵となるからだ。

2015年から2020年の間に、Netflixは韓国市場のために7億ドルもの資金を注入しているという。つまり、ローカルで作られた映像コンテンツが、世界中で視聴できる環境が整っていたのである。

実際、Netflixでは、「ザ・クラウン」や「クイーンズ・ギャンビット」「ブリジャートン家」といった英語コンテンツと並んで、「ペーパー・ハウス」(スペイン)、「ダーク」(ドイツ)、「Lupin/ルパン」(フランス)が人気ランキングに登場していた。"「イカゲーム」現象"は、時間の問題だったのだ。


すでにさまざまな分析がなされているので、「イカゲーム」が世界を魅了した理由については割愛する。むしろ、ここではアジア発のコンテンツが世界を席巻できるグローバル時代が到来したことに着目したい。

日本は市場が大きいため、国内だけを相手にコンテンツ作りをしてきた経緯がある。そのために、内容においても、品質においても、国際基準に満たないものが大半だ。一方の韓国は、市場の小ささもあって、常に世界を意識したコンテンツ作りをしてきた。「パラサイト 半地下の家族」のアカデミー賞受賞や、BTSの世界的人気を見れば、その違いは一目瞭然だろう。

"「イカゲーム」現象"は、動画配信サービスが主導するグローバル時代の到来を象徴する出来事であり、今後、同様のヒット作が世界の至るところから生まれていくはずだ。日本がその波に乗るためには、ガラパゴス化したコンテンツ作りから脱却する必要がありそうだ。


<了>

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