若者にとってYouTubeもTikTokも「ラジオ」。
音声メディアはライバル
―Twitterのライブ放送やポッドキャストなど「音声メディア」がブームになっていますが、どう捉えていますか?
音声メディアが人気になっている理由はいくつかあると思いますが、ひとつは「いい距離感の他人の話を聞くのは面白い」ということだと思います。知らない人の恋愛話や上司の愚痴は、直接害がないからこそ楽しんで聞けますよね。そうした楽しみに気づき始めた人が増えたのではないでしょうか。
そして、もうひとつは「音声メディアがブームだ」と世間でも言われ始めたからだと思います。人気が人気を呼ぶという相乗効果で、周りでも話題になっているから聴いてみた、という人は多いですね。
―音声メディアのブームの中でラジオの注目も高まると思いますか?
ラジオが盛り上がるというよりは、ライバルが増えただけ、と捉えています。学生たちに「ラジオ聴いてる?」と質問すると、「YouTubeで聴きます」「TikTokで聴きます」という答えが返ってくることが多いんです。もちろん法的にはダメなことなんですが…。
タレントさんが自分のチャンネルで映像を入れず“音声だけ”を配信することも増えて、ラジオの概念が変わってきたと感じています。だからこそ、聴く人を増やさないといけないと考えています。
―森本さんはSNSなども積極的に活用されていますが、それも若者との接点を増やすためでしょうか?
いえ、Twitterを使うのが当たり前だと思っているからです。もちろん社内で議論はありましたが。
今の学生にとってラジオも音声メディアのひとつで、どの媒体で聴くかは関係ないんですね。だからこそ電波で流しているラジオ番組に触れてもらうには、若者が利用しているYouTubeやTwitterで情報を発信することが効果的だと考えています。
よく若者の「ラジオ離れ」「テレビ離れ」という話題が出ますが、「〇〇離れ」というのは一度、そのメディアに触れているからこそ使われる表現ですよね。でも今は、若者にまずはラジオに触れてもらうことから始める必要があります。そのためには、こちらから若者がいるところに出向いていくのが大切。オンエア中にも「みなさんのリツイートやいいね!が番組の存続を決めます!♯(ハッシュタグ)を付けて拡散してください!」と呼び掛けています。
タイムラインで「IMAREAL」の話をしていたら、そこに私がいきなり参加してみたり。「本人が来た!」と盛り上がって、リスナーになってくれることもあります。
人気のあるものがさらに人気になる
ラジオもその循環に入れるはず
―ラジオを盛り上げていくには何が必要だと思いますか?
今は「人気なものがより人気になる」という循環があると感じています。音楽でもチャート上位のものを聴く人が多く、さらにその曲は売れていくというような流れがありますよね。いいものはたくさんあるのに、知る機会がないのはもったいない。ラジオは人気のものを聴けるし、知らない世界にも触れられる。ジャンルレスでどんなものでも扱える無限の可能性を持つメディアです。そのことは僕も発信していきたいですし、ラジオ界全体で人気コンテンツをつくって、各局のパーソナリティーを前に押し出していくことも必要だと思います。
コロナ禍で「ラジオが見直されている」という記事を書いていただくこともありますが、そうした「ブームが来ている」という雰囲気も後押しになります。メディアに関わっている僕たちが「ラジオめっちゃキテます!」と言い続けることで裾野も広がっていくはず。
「IMAREAL」もこの1年は「日本一のラジオ番組になりました!」と積極的に発信してリスナーを増やしたいと思っています。
―日本一のラジオ番組に選ばれてできることも広がると思いますが、今後についてはいかがでしょうか?
少し大げさかもしれませんが、夢を与えたいと思っています。地方はローカルだから…という扱いをされますが、生活している人にとっては「セントラル(=中心)」です。北海道でもこんなことができるんだぞってことをリスナーに伝えたいです。例えば「Zepp Sapporo」を貸切ってライブをやるとか、「スゴイことやっているな」と思ってもらえるような大きいことをしたいですね。
あとは、いい意味で変わらないことも心がけていきたいです。賞を獲ったら変わるような番組ではリスナーをがっかりさせてしまうと思うので。
―世の中的に、オンデマンドでコンテンツに接することが多くなっていると思いますが、生ワイドの良さは何だと思いますか?
生ワイドの良さは、リスナーが参加することで放送内容が変わっていく、どうなっていくのかわからないワクワク感です。番組でも「あなたのメッセージやリクエストで番組は変わります」と言っているので、そこはブレずにいきたいですね。
生ワイドの意義は“リスナーと番組を作ること”です。また、いい意味でタイムフリーで聴いたときに「生で聴いてみたい」と思う内容にしていますし、生番組の熱量は高いと感じています。
これからも周囲から選ばれる番組であり続けるために、1回1回の放送を大切にしていきたいと思います。
「イマリエール!」ポーズの森本さん
―番組はもちろん、ラジオ界を盛り上げたいという熱い想いが伝わってきて、若者の前向きなリアルを伝える森本さんの姿勢は本当に素敵だなと感じました!
また、今回お話を伺って、ネット経由の音声サービスの広がり、推しのタレントの生声が楽しめるコンテンツなど、ラジオと若者との距離感は近づいている。若者がインターネットで誰かとつながる、コミュニケーションする行為は、ラジオ(音声メディア)と親和性が高いのではないかと改めて感じたインタビューでした。
森本さん、貴重なお話をありがとうございました。
「IMAREAL」AIR-G’ エフエム北海道 金曜18:00-22:00
<了>