【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】ディズニーが投資家向けイベントで新作を大量発表

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【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】ディズニーが投資家向けイベントで新作を大量発表



新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミックは、今もなお、アメリカの映画界に深刻な影響を及ぼしている。再開した映画館は入場制限が課せられているうえに、スタジオが注目作の公開を相次いで延期したり、新作をストリーミング配信しているため、観客を動員できる魅力的なコンテンツが少ない。

制作に関しても少しずつ再開しているものの、厳格な感染予防対策が敷かれているため、コストが増大し、陽性者が出るたび中断を余儀なくされている。

幸い、有効性が認められたワクチンが数種類開発され、緊急使用の認可が下りているが、全世界に行き渡るまでは相当時間がかかるため、先行きが見えない状態だ。


そんな中、12月11日(現地時間)、米ウォルト・ディズニーが投資家向け説明会を実施した。

この「ディズニー・インベスター・デイ」と題されたオンラインイベントが映画業界の注目を集めたのには、大きな理由がある。

数日前、ライバルの米ワーナー・ブラザースは、「マトリックス4(仮題)」や「DUNE /デューン 砂の惑星」といった大作映画を含む2021年公開予定のラインナップ全17作品を、親会社のストリーミングサービスHBO Maxで配信することを発表し、映画業界に衝撃を与えていた。

もしも、業界最大手のディズニーが今後のラインナップすべてを動画配信サービスDisney+で配信すると発表すれば、瀕死状態にあるアメリカの映画館が絶滅する恐れがあったのだ。

結論から先に言えば、ディズニーは従来のビジネスモデルを堅持する姿勢をアピールした。「ムーラン」のように、Disney+での配信リリースが噂されていたマーベル映画の「ブラック・ウィドウ」をはじめ、「インディ・ジョーンズ5(仮題)」や、「ワンダーウーマン」シリーズのパティ・ジェンキンス監督が手がける新スター・ウォーズ「Rogue Squadron(原題)」などの超大作映画はすべて劇場で封切られる。この知らせにほっと胸を撫で下ろした業界人も少なくないだろう。


同時に、ディズニーはDisney+に全力を傾けると宣言している。

Disney+は、昨年11月にアメリカ、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージーランドでサービスを開始。その後、ヨーロッパ各国や日本でも展開し、現在、20カ国以上でサービスを展開している。

コロナ禍で、映画興行やテーマパークなどあらゆる部門が損害を被るなか、Disney+は着実に会員を増やし、わずか11ヶ月で7370万人に到達。業界トップを走るNetflixの1億9500万人には及ばないが、Netflixが獲得に7年を要した会員数を1年未満で達成したのだ。Disney+は、いまやディズニーにとって最も有望な事業なのである。


Disney+の成功を牽引したのは、「スター・ウォーズ」シリーズ初の実写ドラマ「マンダロリアン」だ。

賞金稼ぎ“マンダロリアン”と、フォースの力を秘めた孤児“ザ・チャイルド”との物語は、ベビーヨーダと呼ばれるザ・チャイルドの可愛さもあいまって社会現象となった。現在はシーズン2が配信中である。

「ディズニー・インベスター・デイ」において、ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長は「マンダロリアン」シーズン3への継続を発表するとともに、シーズン2に登場したキャラクターたちを主人公にした「スター・ウォーズ:アソーカ(原題)」「スター・ウォーズ:レンジャーズ・オブ・ザ・ニュー・リパブリック(原題)」というスピンオフ2本を制作すると発表。

さらに、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のキャシアン・アンドーを主人公にした「スター・ウォーズ:アンドー(原題)」、ユアン・マクレガー演じるオビ=ワン・ケノービを主人公にした「スター・ウォーズ:オビ=ワン・ケノービ(原題)」、「アコライト(原題)」、「ドロイド・ストーリー(原題)」といった「スター・ウォーズ」ドラマも制作するという。


映画界でマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)と呼ばれる共通した物語世界を構築するマーベルも、Disney+にその世界を拡張する。

MCUの人気キャラクター、スカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)とヴィジョン(ポール・ベタニー)を題材にした「ワンダヴィジョン(原題)」、サム・ウィルソン/ファルコン(アンソニー・マッキー)とバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)を主人公にした「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」、トム・ヒドルストン主演「ロキ(原題)」、ジェレミー・レナー主演「ホークアイ(原題)」などをつぎつぎと公開。

他にも、「ミズ・マーベル(原題)」「シー・ハルク(原題)」「ムーンナイト(原題)」「シークレット・インベージョン(原題)」「アイアンハート(原題)」「アーマー・ウォーズ(原題)」などの準備が進行中だと、マーベルのケヴィン・ファイギ社長は発表。これらの作品は単独ではなく、MCUの一部として機能するという。


4時間にも及んだディズニー・インベスター・デイでは、他にもこの場では書ききれないほどの新作が発表された。そのあまりの数の多さと、種類の豊富さに、ぼく自身、いつしか心が躍っていることに気がついた。

この感覚は、毎年7月に米サンディエゴで行われる世界最大級のポップカルチャーイベント、コミコン・インターナショナルに参加したときと同じだ。新作映画のフッテージを見たり、登壇した出演者の制作秘話を聞いて、まだ見ぬ映画への期待を思いっきり膨らませる。それが4日間にわたって続くのだ。

あいにく今年のコミコンは中止となった。期待の映画も、楽しみにしていたイベントもぜんぶ中止だ。そんな日々を過ごすなかで、いつしか心が鬱ぎこんでしまっていたようだ。

でも、ディズニー・インベスター・デイをオンラインで見ているうちに、気持ちが晴れていくのを感じていた。今この瞬間も、気になるエンタメがたくさん作られているのだ。あともう少しの辛抱だ。

トンネルの先に光が見えてきた気がしている。


<了>

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