HOME メディア 【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】新型コロナウイルスが変える映画のライセンスビジネス
2020.11.27

【小西 未来のハリウッドのいま、日本のミライ】新型コロナウイルスが変える映画のライセンスビジネス

SHARE ON

このエントリーをはてなブックマークに追加

小西 未来(こにし みらい)

ロサンゼルス在住の映画ライター&映画監督。1971年東京生まれ。
ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会所属。ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」に続き、最新作「カンパイ!日本酒に恋した女たち」が現在、劇場公開中。

 


 

大作映画を抱えるスタジオの配給担当にとって、公開日の選定ほど重要なことはない。毎週のように注目作が封切られる昨今のアメリカでは、公開第一週に好成績を叩き出さなければ作品が埋没してしまうリスクがある。だからこそ連休や夏休みなど動員が期待できる日程を選ぼうとするのだが、往々にして絶好のポジションは他社作品に取られているものだ。そこで、数年先のカレンダーをひっぱりだして、制作が始まっていない新作の公開予定日を先取りしてしまう。

各社がそんな感じだから、数年先まで公開スケジュールがいっぱいになっている状態だ。「アバター」シリーズの最終章「アバター5」の全米公開日にいたっては、なんと2028年12月22日である。

 

公開日を先におさえておくのは、多岐にわたる宣伝キャンペーンの足並みを揃えるためでもある。

たとえば、新作映画の玩具を制作するのに、18ヶ月から24ヶ月かかると言われている(※1)。CGアニメ作品であればアニメーション作業がはじまる前、実写映画であればデザインが決定した時点から、プロモーションの準備を開始しなくてはならない。ハリウッド大作の場合、ネタバレを防ぐために徹底した秘密主義で制作され、セット取材をする記者にさえも敵キャラや登場するデバイス、ヒロインの衣装などが伏せられたりするものだ。

そのような環境下でも、ライセンス契約を結んだ玩具メーカーの担当者たちは、カメラが回る前から、こうした機密情報にアクセスできるのである(もちろん秘密保持契約を結んでいる)。

公開日が近づくと、ショッピングセンターでは関連グッズやアパレルが売られ、ファストフード店はキャンペーンを展開し、映画の公開を盛りあげる。大作映画のリリースをイベント化できるのは、長期にわたる周到な準備の賜物なのだ。

 

だが、他のあらゆる業界と同様、ライセンスビジネスも新型コロナウイルスの影響を受けている。

 

たとえば、人気アニメシリーズの最新作「ミニオンズ フィーバー」は2020年7月3日から全米公開予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて2021年7月2日に延期。公開延期にともない関連キャンペーンの多くも延期となったものの、米マクドナルドは変更できなかった。かくして劇場公開作がないのに、90体もの「ミニオンズ」グッズが当たるキャンペーンが全米の店舗で行われることになった(※1)。

 

このクリスマスシーズンにも、来年に公開が延期された「トップガン マーヴェリック」や「ブラック・ウィドウ」のアパレルが、作品が公開されていないにも関わらず発売されている(※2)。ハリウッド大作の度重なる公開延期の影響で、キャンペーンの足並みが揃わなくなってきているのだ。

 

さらに、「ムーラン」、「ソウルフル・ワールド」がDisney+で配信(「ソウルフル・ワールド」は12月25日から配信開始)(※3)、「ワンダーウーマン 1984」もアメリカでは劇場公開と同時にHBO Maxで配信と、超大作が劇場公開を前提とせずストリーミング配信されるケースも出てきた。これでは、大規模な劇場公開を期待してライセンス契約を結んだ企業はがっかりだろう。

かつて映画スタジオはライセンシーに対して厳しい条件を課していたが、こうした状況から柔軟に対応しているという。映画スタジオにとってライセンス収益は重要な収入源であり、企業側にとっても映画の知的財産(IP)は人気コンテンツだ。業界団体Licensing Internationalによると、映画やストリーミングのIPは、2019年には1248億ドルもの利益を生みだしているという。

 

新型コロナウイルスの影響で大作映画の公開日が当てにならないなか、新たな動きが生まれている。

これまでは「スター・ウォーズ」や「ジュラシック・ワールド」、マーベル、ピクサーといった大型作品のIPに集中していたが、Netflixの「ストレンジャー・シングス」やDisney+の「マンダロリアン」をはじめとする、ストリーミングのオリジナルコンテンツのIPにも分散投資されるようになったという。商品としての映画作品の開発において、よりクリエイティビティが求められるようになったことで、新たなヒット商品が生まれることになりそうだ。

 

 

(※1)https://variety.com/2020/biz/features/covid-19-wonder-woman-1984-minions-1234823228/

(※2)https://licensinginternational.org/news/agility-will-be-key-in-film-based-licensing/

(※3)https://licensinginternational.org/news/where-does-streaming-fit-into-licensings-future/

 

<了>

関連記事


【ラジオレコメンダー“ やきそばかおる ”の I love RADIO】~型にはまらず本音で語る!ベテランパーソナリティーたち~MRT宮崎放送『GO!GO!ワイド』川野武文アナウンサー他

PREV

【ラジオレコメンダー“ やきそばかおる ”の I love RADIO】~作品を生み出すアーティストの顔も持つ、多才なラジオパーソナリティー~NBC長崎放送『あさかラ!』村山仁志アナウンサー他

NEXT

人気の記事

RANKING

最新の記事

WHAT'S NEW

MORE